第二章 だからツンデレって何なんだよっ!【1】
……ここは……何処だ……
俺は見知らぬ道を一人歩いている…
まわりは霧が濃くてまったく視界が効かない…
今まで何をしてたんだっけ……
そうだ…親父………
何かを思い出しかけた時、霧の向こうにぼんやりと光が見える…
俺は何故か光の方に駆けてゆく…
光の先には人影が…
あれは……まさか……母さ…
俺は一生懸命手を伸ばした……
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カインはいつものベッドで目を覚ました。
(久しぶりにこんな夢みた…)
カインは口元に手を当てたまま、眉間に皺を寄せている。
「カイン、それ癖だよね〜♪」
「うわっ…!!」
いつの間にかベッドの脇にはイデスが居て、両手で頬杖をしながら此方を見つめていた。
「イ、イデス…お前…いつから居た!」
「え〜?んとねぇ、カイン君が泣きながら寝てた時からかなぁ〜」
「なっ……!誰が泣くかっ!」
カインは、真っ赤になりながら、イデスに食ってかかった。
「大体、なんでお前がここに……って!おい、今、夜じゃないだろ?!」
そうなのだ、今は夜じゃない。その位は寝ぼけてたってわかる。なのに、イデスはちゃんとヒト型で俺と会話をしているから驚いた。
イデスはにこにこしながら、カインの予想通りの表情を見て、満足そうにしている。
「ふふん!今日は年に一度の“昼じゃない日”だからねっ」
カインは、はぁ?と叫ぶと、頭を抱えてしまった。
頭の中はクエスチョンマークで一杯だ。
ようやくこの世界の理に慣れて来たと思っていたのに、どうやらまだまだ道のりは険しいらしい。
イデスによると、アイシスでは国王が絶対的な力を持っていて、国王が決めた決まり事には季節、時間、天候でさえも左右されてしまうという。
「だから、今日は“昼じゃない日”、つまり昼が無いんだよ。ずっと夜だから、僕もこの姿のままいられるのさ」
イデスは、とりあえず外に出ればわかると言って、無理矢理カインをベッドから引き摺り出した。
「わかった!わかったから、一旦着替えさせろ」
「じゃあ、着替え手伝ってあげよっか?」
「……っ、いるか!」
いちいち可愛い顔で意地の悪い事を言ってくるイデスに、カインは心臓が幾つあっても足りないな、と思った。
そんな事を知ってか知らずか、イデスは
「じゃ、部屋の外でまってるから、早く来てね」
とあっさり、部屋を出て行ったのだった。