第一章 ツンデレって何だ⁈【2】
カインはとりあえず周りを見渡してみたけれど、白いウサギは何処にも見当たらない。
「嘘だろ……俺…どうしろってんだ」
完全に知らない部屋だ。と、いうか、そもそも部屋なのがおかしいだろう!俺は蔦のアーチを潜って来たんだから。確実にドアも何も無かったし、民家がある感じなんてどこにも……
落胆、というか一種の恐怖の色を隠せないで項垂れていると、カタ…っと、後ろで何かが動いた音がした。
カインは頭を上げ勢いのまま音のした方を見た。すると……
「いや〜、見つかっちゃいましたねぇ〜」
頭をかき、ヘラヘラと笑いながら一人の、おそらく男であろう人物が此方に歩み寄ってくる。
その丸眼鏡の男を見て、カインは口を開けて絶句した。
「……?どうしましたか?あれ〜聞こえてます?」
「お…っ、おまっ、耳っ!」
カインはパクパクと口を開け閉めさせながら、必死に訴える。
「え〜?これですか〜」
言いながら男はピコピコと耳を動かして見せた。
その男の耳は何故か顔の両脇には無く、代わりにさらさらと揺れる銀髪からウサギと同じピンとした立派な耳が見えている。
「それ…コスプレ…って訳ではなさそうだな」
ふぅ…っと、息を吐いて、ようやく自分を落ち着かせるとカインは問いかけた。
「そんな訳ないじゃあ、ありませんか〜」
男はカインに後ろの尻尾もフリフリ見せながら、そう答えて微笑んだ。
「わかった!わかったから、それヤメろ」
何故か少しイラっとして、カインはぶっきらぼうに男に伝えた。更にたたみ掛けるように、思い切り怪しいその男に警戒心を剥き出しにする。
「で、お前は誰だっ」
「いやだな〜、おたくの方でしょう?うちの子つけてきたの」
強気に出た筈が、逆に問い返されてしまい、カインはうっ、と言い淀んでしまった。
「お、俺は誰もつけてなんかない。」
「ウサギを追いかけて来ただけだからな」
変な言い掛かりを付けられたので、カインはしぶしぶ今までの経緯と白ふわウサギの事を話した。
腕組みをしたうさ耳男はうんうん、とさもさも私聴いてます、という風に軽く相槌をうちながら、カインの話を聞いていた。
「で・す・か・ら、ソレうちの子なんですよっ」
男はそう言い終わると指をパチン、と鳴らした。
すると、奥からおずおずと現れたのは、なんと先ほどの白いウサギだった。
「ね?」
爽やかに凄まれ、カインは何故か自分の顔がかぁ…っと赤くなるのがわかった。