プロローグ
初投稿です。お目汚し失礼します。
親愛なるチャールズへ
これは、実際に俺の身に起きた物語だ。
今だに現実だったなんて思いたく無いが、
とりあえずこれを読んでいるお前に言っておく事がある。
ーウサギなんかみつけても絶対に追いかけたらダメだからなー
カイン=ウォルター
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都会の喧騒から離れること一時間…
俺を乗せた乗合いバスは、ゴトゴトとお世辞にも綺麗とは言えない道を走っている。
「っ……たく、なんで俺がこんな田舎に」
そんなボヤきも、もう何度ついただろうか。
これまたお世話にも綺麗とは程遠いオンボロ乗り合いバスには、乗客はもちろん俺一人。
誰かがほじくり出したであろう、ワタが飛び出たくたびれた座席が七席と、これまた黒ずんだつり革が三つ。
俺が一番後ろの長椅子の左端に座り、顎ひじを付いたバスの窓枠からぼんやりと見る景色は、既に半刻前からまったく同じものしか映らなくなっていた。
「いけども、いけども畑、畑、畑……か」
ぼんくらクソ馬鹿親父のせいで俺は、こんな“ど”が百個以上も付くような田舎に引っ越さなければならなくなった。
(親父のやつ、本当にこんなとこ住むつもりかよ)
そんな愚痴を何万回かぶつぶつ零していると、運転手が声を掛けてきた。
「お客さん、終点だよ、ドジソン村」
それを聞いて俺は、百一回目の溜め息を吐いて重い腰を上げた。
遥か昔は白かったであろう、茶褐色に変色したバス停に降り立つと、周りを見渡す限り見飽きた延々畑と長閑な草原が広がる。
他には何一つ見栄えのするものは無い。
「おいおい、親父の奴、迎えにくるんじゃなかったのかよ…」
くそ親父のくそ手紙には、バス停まで迎えに行くと書いてあった。
しかし、右を見ても左を見ても、上も、はたまた下までみたが親父の姿は無い、というか人の気配が全く無い。
俺はこの時、心底あの親父の元に産まれた事を呪いたい気持ちになった。
いつだって親父は勝手な男だ。
ふらっと何処かへ出かけては、数ヶ月後にふらっと帰って来る様な人だった。お陰で母親は苦労しっぱなしのまま亡くなった。
はっきり言って俺は親父が大嫌いだし、理解はきっと今後も出来ないだろう。
今回だって独りぼっちになった俺なんてお構いなしで、一人で勝手に引越しを決めた定だ。
学生じゃ無かったら、俺がもっと一人前なら、こんな横暴無視出来るのに。
…母さんだって、楽させてあげられたのに。
無力な俺は結局親父のいいなりで、此処にいる訳だ。
本日第二章更新します。