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80:それぞれの幸福〜ベリエット〜

ベリエ視点です。

同じタイトルで違う視点の話が続く予定です。

ハルトの婚姻式と即位式を終えて私はルークと話し合うため城に泊まりたい、と前もってハルトにお願いしていた。ハルトが快く承諾してくれてルークにも承諾を得る。ルークはとても困惑した表情だった。


「ルーク」


元々第三王子妃として教育を受けていた時に滞在していた客間でルークを待っていればルークが困惑した表情のままソファーに腰掛けた。


「ベリエ。話って何?」


つくづくとルークを見る。王子だけあって整った顔立ち。ハルトの為政者としての表情よりはやや気弱なイメージを与える雰囲気に痛い目に遭った人間は何人いる事かしら。ハルトよりも出来の良いと言われている私の目の前の人物は、だけど私が居ないと生きる屍になりかねない。

本当になんで私に執着しているのかしら。


「ルークにはきちんと話しておこうと思って」


「何を?」


「トホルスが帰国した時の私の気持ち」


ルークが目に見えて身体を震わせる。私は城の侍女に予めお願いしてあったハーブティーを自分とルークの分として注ぎながらどう切り出そうか考えていた。


「やっぱり私との婚約を悔やんでいる?」


ルークの声に思考が中断され思わずルークを見てしまった。俯いて自信の無い様子を見て気付かれないように息を吐き出すと、ハーブティーを差し出す。私も自分のハーブティーを一口飲んでからおもむろに口を開いた。


「いいえ。悔やんでいないわ」


静かに言葉を返せばルークがハッと顔を上げた。そんなルークの一挙一動を見つめながら言葉を紡ぐ。


「トホルスが帰国すると聞いた時ね。やっぱりって思ったのよ」


「やっぱり」


「トホルスに初めて会った時。前世の私みたいな表情をしていたの。現状を嫌っているのに変えたくても変えられない。そんな表情。望まない現状から抜け出したいのに抜け出せない。そんな表情だった」


ルークは驚いたように目を瞬かせた。私はクスリと笑う。


「トホルスは……あの時逃げていたのね」


トホルスの本当の素性を知ってしまえば逃げたくなる心情も理解できる。心が休まる日など無かった事だろう。けれど


「段々と逃げているだけじゃどうにもならない事を悟った感じがした」


逃げる事をやめたトホルスの顔つきが精悍さを発揮した。その表情を見てやっと「もう大丈夫」だと思えた。


「だからね。トホルスが帰国する事はやっと帰る事にしたのね。って思いだったの。やっぱり逃げる事をやめて立ち向かう事にしたのね、と」


「アイツは……トホルスは私とベリエが婚約することが見ていられなくて、じゃないのか?」


ルークは苦い物を食べたような表情を浮かべたけれど私は首を傾げた。確かにトホルスは私を好きでいてくれたし自分以外の男と結婚を約束するなんて見たくないと思ったのかもしれないけれど。


「そうかしら? 私はトホルスってそういう人じゃないと思うのよ。前世の事は関係なくてトホルス自身と過ごしてきた時の中でトホルスは本来逃げる事を良しとしない性格ではないか、と思ったの。彼が隣国から逃げて来たのは不本意だったと思うわ。でも命に変えられない。公爵家の三男で居たかったとは思うけれどね」


私は私が見て来たトホルスについてルークに告げた。ルークも何となく理解したのか納得したような表情を見せた。

さて、ではここからが私がルークに問いかける番ね。

お読みいただきありがとうございました。

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