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39:膝を屈していた唯一人のお方〜ヌベログ〜

本当はランスベルト視点にしてからこの話を書こうと思っていたのですが、話の流れ的にこっちが先が良いかと思いましたので。

宰相視点です。

私が陛下にお会いしたのは宰相である父に城へ連れて来られた日だったからまだ年端もいかぬ子ども時分の頃のこと。賢くはあったけれど勉強嫌いでヤンチャでイタズラ好きなお方だった。だがその目には既に玉座に伴う国民が映し出されているかのように「この国を守ること。豊かにすること。人々が笑顔でいること。それが私の使命だ」と口にされていた。だから私は「では勉強も頑張りませんと」とお答えした気がする。陛下は一瞬嫌そうな表情でけれども「それもそうか」と納得されて勉強を頑張っておられた。


長じて王太子の風格を身につけられ気付いたら国王の威厳を身に纏って玉座におられた。その頃には私も宰相の位に就けた。婚約者だった方を王妃に据えられ仲睦まじく相思相愛の様子だった。2人の王子にも恵まれて光輝く人生だった。ーーあの日までは。


隣国からの使者を迎えて歓待の宴を開いていた時のこと。有ろうことか陛下に酌をしていたとある貴族の娘が陛下に薬を盛った。その時にはある程度陛下も酔っておられた。無論直ぐに効き目が出るものでは無いので最初は気づかなかった。少し夜風にあたる……と仰る陛下をその娘が支えて庭園に連れ出し。少々遅い気がして私が迎えに行ったところ、陛下は庭園でその娘と行為に及んでいた。少しだけ呆然としていたが我に返って「陛下!」と声をかけたところ、陛下はハッとされて娘から身体を離し近くにあった陛下の剣を手に取ると斬りかかろうとされた。


「お子が! お子がいるかもしれません。この腹の中には!」


娘が陛下に訴えて陛下は迷われた。望んでいない。と微かに苦しげに呟いてから、それでも子が本当に居るとしたならその命は奪えない、と陛下は剣をおろした。私は娘を一時的に保護する名目で城内に閉じ込めた。それから陛下に仔細を聞いたところーー


「おそらく薬を盛られた。油断した」


そう嘆いておられた。それはそうだ。陛下はどれだけ酒を呑まれても理性を失った事は無い。ましてや人払いをしたとはいえ、誰の目にも付きやすい庭園などで女と戯れるようなお方では無い。直ぐに治癒魔法を使える者を密かに呼んで陛下にかけてもらったところ、おそれながら……と媚薬が盛られた事を教えてくれた。


結局娘は陛下の子を身篭っていて、陛下はこの世の終わりのような表情で王妃に話をされたところ王妃はその夜遺書を残し自らのお命を絶ってしまわれた。遺書にはそのような女は謀略に長けているから後々争いになるかもしれない。だったら……という事らしかった。陛下は結局娘を王妃に迎えたが、亡き王妃を想い嘆き哀しんだ。


そうして表向きは変わらぬ国王であらせられたが徐々に精神が壊れ始めていたのだろう。私と居る時は偶に支離滅裂な事を仰るようになった。

バイスルーク殿下とベリエット嬢との婚約もこの支離滅裂の言動の一つだった。あの王妃に言われたからといって、いつもの陛下ならば聞き入れるわけがなかった。そうして政務も少しずつ怪しくなりかけた頃からハルトリッヒ殿下に国王の執務を少しずつ任せるようになり……


そうして現在、王妃と第三王子のランスベルト殿下とその側妃とランスベルト殿下は主張する愛妾のやらかしの責任を取って、陛下は退位を申し出された。

亡き王妃の一件から徐々に壊れてしまった陛下の精神。それでも尚、国を守ろうとしたお方。


ーー私が唯一膝を屈した方。最後までお付き合い致します、陛下。

国王があの王妃を妻にした理由とか書いておきたいと想いまして、宰相視点で語ってみました。


お読み頂きありがとうございます。

次話はランスベルトの予定です。

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