リュカ先生は俺に優しくない
別に、これといって変わることはなかった。いや、正直に言うなら飽きたのだ。
この異世界ということに。
転生した頃は、すごく楽しみにしてた。だけど、現実は甘くないって言うのが定番の決まり文句で、いざ魔法だ、やれ剣術だと、この異世界のものに触れてみた。そして、感じたのだ。
ア、コレ一緒ダワーーー。
魔法は勉強で、剣術は部活という、才能があると人気者になり、あんな感じで
「キャーキャー、キャーキャー」
よくあるモブによる黄色い声援が人気者を中心に波紋を広げている。波紋使いなら、あの山吹き色の波紋が見えるかもしれない。この世界だと、期待できる話だ。ハッ! もしかすると、俺にも波紋が見えるということは、とうとう覚醒したのか!
ということはなく、魔法も剣術も人並みです。はい。
少しぐらいさ、ないの!? 俺、転生してんだよ!? なんかこう、自分じゃなくてもいいからさ、師匠が賢者とか、魔王の一人息子とかあってもいいと思う。肩書も普通、特技なし、転生しただけ。そして、俺のまわりで大事件が起きることもなく、普通の第二の人生を送った結果……
現在、この魔法学校の一年生である。元の世界でいうところの高校生といったところだ。
だが、さすが異世界の学校といったところだろう。様々な亜人がいる。これは、入学した時に、転生してよかったと、心から思う。
まぁ、特にギャルゲーのようなイベントはないまま、入学してから一か月が過ぎたんだが。ラブコメの神様は、この世界にも存在しない。
だから、俺はもう諦めたのだ。
「リゼ、頼みたいことがあるんだが」
「いいですよ、リュカ先生」
「……まだ、内容も言っていないが」
くっ、しまった。つい、ここから何かのイベントに発展することを期待するあまり、返事をしてしまった。さすが、俺の担任である。
「だが、いつも頼んでいる私も悪いか。よし、今回はウィルにでも頼むとするか」
「いえ、俺がやりましょう」
「むっ、そうか。なら、リゼ私についてきてくれ」
この担任なかなかの策士! 別にあの人気者のやつなんかに、この機会を渡したくなかったわけではない。決して違う。
だが、今回は期待できそうだ。いつも、荷物持ちや掃除とかの雑用しかされなかったが、俺の代わりをだしてきたのだ。しかも、それはあの人気者である。俺は、平然を装いながら、リュカ先生の後をついていった。