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青の魔女  作者: ズウィンズウィン
第二章 アルフヘイム編(下)
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サバイバル(三)

 私が一息ついてスカディに乱された精神状態を落ち着けていると、散華ちゃん達本隊が追いついて来た。

 散華ちゃんは私の許へ来るなり、途中で見たものについて聞いて来た。


「さっき、泥まみれのスカディが泣きながら走り去って行ったが……何があった?」


 聞けば余りにも悲し気な様子に声をかけられなかったそうな……

 私は散華ちゃんに事情を話すと、非難がましい目でみられたのだった。


「……そうか、とりあえずその技? は禁止だ」

「ええっ! 何で!? 偶然だったけど、むしろ散華ちゃんに使いたいのに!」

「何故私に……とにかく禁止だ」

「泥まみれの散華ちゃんは美しいと思うのですが……」


 睨まれました。

 確かにエルフはプライド高いからな。

 今回のこともそういうことだったのだろう……たぶん。

 ならば下手をすれば外交問題になりかねない。私もこんなことで外交問題を作りたくはない。


「だが、ともかくこれで一勝か。あまり褒められた勝利ではないが、良くやった」


 褒められているのかいないのか、複雑な心境だ。

 もうスカディのことはどうでもいいので、現状を話そうとして私は気づいた。


「しまった!」


 そうだった! アリシア先輩とエリスが交戦中のはずだ!

 罠にかけたスカディを速攻で倒して駆け付ける手筈だったのだ。

 あまりのスカディの行動に時間を浪費してしまった。

 だが後悔している時間も惜しい。

 すぐに散華ちゃんに二人のことを告げる。


「それを早く言え! 行くぞ!!」

「待ちなさい!」


 とそこで待ったの声をかけたのは蓮華姉さんだった。


「霧が濃いです。そしてこの場には罠が張ってありますね?」


 私は蓮華姉さんに頷く。


「ならば大将はここに布陣するべきです」

「確かに……」


 その意を汲み取り散華ちゃんも同意する。

 罠を最大限に効果的に使うためにはやはり餌が必要だからだ。


「エリス達の所へは私が行きましょう。私もエリスとはそれなりには長いですから。藤乃、ツヴェルフ、散華を頼みます」

「はい。お嬢様」

「了解しました」

「姉様……わかりました」


 蓮華姉さんの提案に皆が了承した。

 そうして話が纏まると、蓮華姉さんは私に向かって言った。


「ではソニア行きますよ」

「はい!」


 私は連れて行くらしい。となるとアラネアだが……。


「アラネア、罠の補強をお願い。まさかスカディが破るとは思わなかった」

「そうですね。私も驚きました。わかりました、完璧に仕上げます!」

「ということで散華ちゃん達はアラネアを守って欲しい」

「ああ。任せておけ」


 こうして方針が決まると私と蓮華姉さんは頷き合い、霧の中を進んで行った。



 †



 魔法がその内的精神力に由来するように、個々の得意、不得意な属性はどうしても出てしまう。

 独自魔法を己で定めた生き方と表現するなら、それはもう性格と言っても過言ではない。


「アリシア……本当にお前とは相性が悪いな」

「そうかしら? 私は嫌いじゃなかったわよ?」

「能力の話さ」

「分かってるわよ」


 ミストの霧は既にアリシアの風魔法によって散らされていた。

 加えて周囲にはアラネアの張った罠がある。迂闊に逃亡も許されない。

 袋の鼠という言葉が相応しい状況にあった。それは状況だけ見ればという条件つきだが。


「すぐにソニア達が来るでしょうね。でも……」

「ああ。できれば私達で方をつけたいわね」


 アリシアに賛同するように、隣に立つエリスは応じた。

 同じ施設で育った仲間だ。

 そうした因縁から決着は自分達で着けたかった。

 それは相手も同じだった。


「良く言いました。成長した貴方達の力、存分に見せてみなさい!」

「ああ。技の相性だけで勝敗が決まるわけではない。来るがいい!」


 対峙したアルヴィトとミストは同調するように言い放つと、ミストが駆けてアリシアへ肉迫した。

 アルヴィトは後方で待機している。


 ……のではない!


「天空に輝く数多の星々よ……その力の片鱗を今ここに示せ……」


 すでに詠唱に入っていたのだ。それに勘付いたエリスは……


「させない! 紫電!」


 エリスは紫電を身に纏い、雷の如き速度でアルヴィトへと迫る!


「良い判断です。ですが……私の戦歴を甘く見ないでもらいましょうか!」


 エリスの最速の剣はアルヴィトの杖によって止められていた。


「なッ!?」

「さて、お返しです」


星屑(スターダスト)


 至近距離でまともに魔法を浴びたエリスは弾き飛ばされた。


「くっ……」


 一撃で大ダメージを負ったエリスはあまりの力の差に愕然としてしまっていた。


「もう終わりですか? エリス……貴女には期待しているのです。ここで私を超えて見せなさい!」


 体中から悲鳴が上がっている。既に満身創痍だ。


「これほどか……それでも……先生に期待されてるなんて言われたら、奮起するしかないわよね!」


 エリスは息も絶え絶えで立ち上がる。

 今の一撃で負けていてもおかしくはなかった。

 しかし、それは嬉しいことだ。エリスの目指すべき先に彼女はいるのだから。


「さあ続けましょうか!」

「行きます!」


 アルヴィトは嬉しそうに微笑む。

 エリスはそこへ、今一度迫るのだった。



 †



「どこ見てんのよ。相手は私でしょう!?」


 視線を外したミストにアリシアは苛立つ。

 そう言われてもミストはいつも通りの余裕の態度だ。


「ふふ。師弟というものは良いものだと思ってな……」

「ずいぶんと余裕じゃない」

「そうでもないさ。私は霧使いだろう? 相手をはぐらかすのが上手くなってしまって困っているのさ」

「!?」


 相手にしていたミストが突然アリシアの前から消えた。それはもう霧の如くに。

 そしてすぐさまアリシアは後ろから切りつけられていた。


「……ほう良く止めたな」

「やってくれるじゃない」


 辛うじてミストの剣を止めたアリシアだったが、気を許せる状況ではない。


「くっ……」


 次の瞬間には止めたと思っていた相手がまた消えているのだ。


「相性が悪いのはどっちよ!」


 アリシアは自身の性格がやや直情傾向にある事は自覚がある。

 こうした相手を惑わす剣技は苦手だった。


「くっ……」


 辛うじて大気の流れから先読みはするものの、反応できなくなれば終わりだ。

 魔法を放とうにも相手の場所を特定できなければ、躱された上に背後を突かれてこちらがリタイアだ。


「つまりはジリ貧ってわけね。さて、どうするか……」


 ミストの剣を辛うじて受けながら考える。

 しかし、どうしても勝てる案が浮かばない。

 焦りだけが募っていく。


 しかも戦っているうちにエリスとも離れてしまった。

 いや、ミストのことだ。意図的に引き離したのだろう。

 エリスの援護は期待できない。


「抜け目ないわね。まあ、勝てないのなら仕方ないわよね……」


 やはり不敗の将軍の名は伊達ではなかったのだ。


「どういうつもりだ?」


 気配が変わったアリシアにミストは警戒する。


「決まってるでしょ? 勝てないなら道連れにすんのよ!」

「ふふ。それは怖いな。だがそうはさせぬ!」

「やってやるわよ!」


 ミストは強い。

 ならばどうするのか……

 アリシアは決めたのだ。後に託すと。


「私が決めて……私が創る……」


「風は思いのままに吹く あなたはその音をきいても それがどこから来て どこへ行くかを知らない」


「『緑風の聖霊(ルーアハ)』!」


 アリシアを中心に風が嵐の如く吹き荒れる。

 それがミストへ向かって放たれた。


 だが無茶な独自魔法は当然、自身の首を絞める事になる。


「『霧幻』」


 風がミストへ向かったと思われた時、その言葉と共にミストは消えていた。


「終わりだ。アリシア……」


 アリシアは突然背後に現れたミストの攻撃を受けて倒れた。

 そしてミストは勝った。


「ぐッ!?」


 その時、雷撃魔法が背後からミストを撃ち抜いていた。

 ミストは驚くようにそれを見つめて。そして納得すると微笑む。


「そう言うことか……やられたよ。見事だ。アリシア」


 そう言い残すとミストは倒れた。


 

 ミスト将軍を撃ち抜いた雷撃を放ったのは私だった。

 アリシア先輩は私の接近をいち早く気づいていたのだ。


 アリシア先輩の独自魔法はミスト将軍も警戒せざるを得ない。しかも相打ち覚悟なら尚更だ。

 それは見事にミスト将軍から私の存在を隠していた。

 そしてアリシア先輩に勝った時、一瞬の隙ができたのだ。


 私はアリシア先輩に駆け寄ると抱き起して声をかける。


「アリシア。良くやった……」

「そうでしょ。ソニアもっと褒めて良いわよ……」


 そう言い残すとアリシア先輩は眠る様に意識を手放した。

 その表情は誇らしげで美しいものだった。



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