表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青の魔女  作者: ズウィンズウィン
第二章 アルフヘイム編(上)
45/186

墓所探索

 ヴォーダン魔導学園。生徒会長執務室。


 ツヴェルフは私の対面に座っている。

 蓮華姉様はいつも通り、私の隣だ。


 ソニア達が出発してから一週間ほど経った。

 私達は大会後の対応に追われて慌ただしい日々を送っていたが、それもようやく一段落つこうとしていた。


「もう一週間経ったのだな。ソニア達はもうアルフヘイム王国へ入っただろうか……」


 私が誰にともなく言うと姉様がそれに応えた。


「ソニアが居ないと平和ですね。」

「……そうでもない気がするのは私の気のせいでしょうか?」


 相変わらず姉様が近い。私は不審げに見るも姉様は言った。


「散華は箱入り娘ですからね。知らないのも無理はないでしょう。わたくしは旅をして回ったので知っているのです。これが姉妹というものであると!」

「姉様……いえ、蓮華先生。一体どんな辺境をまわったんですか……」


 姉様は完全にソニアに毒されてしまっていた。

 するとツヴェルフが言った。


「聞いた事があります。何でも辺境には女戦士しかいないアマゾネスなる狩猟民族がいるとか」


 ツヴェルフは良くも悪くも真面目だ。知っている情報を提示しただけで他意はないのだ。

 それは分かっているのだが……

 案の定、姉様が調子づく。


「ふふ。やはりわたくしが正しかったようですね」

「いや、私達はアマゾネスじゃないですし……」


 勝ち誇ったように言う姉様に私はため息をつくと、姉様が言った。


「こちらもだいぶ落着きましたね。そろそろソニアに頼まれていたことを行っても良いでしょう」

「何か頼まれたのですか?」

「ええ。正確には私ではなくアイリーンが頼まれたのですが、「闇の魔女の墓所」について調べておいて欲しいそうですよ」

「闇の魔女の墓所ですか? 何故そんなものを?」

「それはですね……」


 蓮華はソニアに頼まれていた事、「闇の魔女の墓所」について調べて欲しいということについて諸々の状況を踏まえて話した。


「あいつはまた! あれほど相談しろと言ったのに!」


 私は憤慨するも姉様が宥める。


「まあ。こちらもゴタゴタしていましたから気を使ったのでしょう。わたくしも知っていたのに隠すような真似をしてすみませんでした。相思相愛と言っても過言ではない散華に隠し事をするなど言語道断! わたくしは甘んじて罰を受け入れましょう!」

「……過言ですよ蓮華先生。あと嬉しそうに言わないでください」


 するとツヴェルフが言った。


「丁度良いかもしれません」

「丁度良いとは?」


 ツヴェルフには何か考えがある様だ。私はその真意を聞いた。


「大会ではよくやってくれていましたが、立場が対等になったせいか暗黒騎士団と聖騎士団の協調に軋轢(あつれき)のようなものが生じてしまっています。聞けばダンジョンへ向かう必要がありそうですからこの機にそうしたものの修復が出来ればと」


 つまりはもう一度共同作業をさせて、意思の統一を図ろうと言うのだ。


「なるほど。危険はあるがやってみる価値はあるか……。しかし、そう時間はかけられないだろう? ソニア達がいつエルフの女王に会えるか分からないが」

「そうですね。ですが間に合わなかったとしても向こうで何とかするでしょう」

「確かに……元はちゃんと言わなかったあいつが悪いな。ツヴェルフすまないがそれで準備を頼む」

「はい。わかりました」

「蓮華先生も協力をおねがいします」

「ええ。もちろんです」


 こうして私達は闇の魔女の墓所の探索の準備を始めた。



 †



 ヴォーダン魔導学園。教授室。


 ツヴェルフから話を聞いたアイリーンはツヴェルフと共に教授へ相談に来ていた。

 アイリーンから話を聞いた教授は言った。


「……闇の魔女の墓所かね?」

「はい。教授ほどダンジョンに詳しい人物はいないので」

「確かにツヴェルフを見つけたのも私達だからね。……しかし何故そんな場所を探しているのかね?」


 教授の眼光が鋭い。

 こうなる事は予測済みだ。私はそれでもデメリットよりメリットの方が大きいと判断した。


 教授に嘘をつくなど無意味だ。

 ちらりとツヴェルフに目をやると、私と目が合った彼女は頷いた。

 ツヴェルフは話の腰を折らないように聞き役に徹する気だ。

 私は覚悟を決めて全て話した。


「そうか……エルフの女王もついに耐え切れずに動き出したというわけだね」

「やはり教授は知っていたのですね」

「ああ。これは非常に繊細な問題だからね。触れずにやり過ごせれば良かったのだが、そうも行かなくなったようだね」

「……それほどですか?」


 教授の様子から想像以上に深刻な事態のようだ。


「うむ。女王の個人的な考えは置いておくとして、君は山賊の話を聞いたかね?」

「山賊ですか? ええ。国境の近くに出るらしい事は……」


 何故ここで山賊? とは思うが続きを聞く。

 

「その山賊なのだがね。どうもエルフを狙っているらしい」

「それはエルフだけを狙っているということですか?」

「ああ。そのようだ」

「それは、つまり……」


 私は言い淀む。エルフは総じて容姿が美しい。捕まれば碌な目には合わないだろう。


「ああ。奴隷にするのだろうね」

「そんな! 奴隷は大昔に禁止になったはずです!」

「無法者に法が通じないのは君も良く知っているのではないかね? いや、尚悪い事に法を守るべき王侯貴族とも繋がっているらしい。あくまで情報で確証では無いがね」

「それは本当ですか!? そんな事をしたら戦争の口実を与えてしまうだけじゃないですか!」

「バレなければ大丈夫とでも思っているのだろう。エルフの女王を舐め過ぎだがね。もう戦争は避けられないだろうね。しかも向こうに大義名分があるとなれば、こちらの士気はガタ落ちだろう。我々も準備だけはしておくべきだね」


 私は驚愕する。このことは早急に皆に知らせておかなければならない。

 続けて教授は言う。 


「なに、それほど心配することは無い。この国が滅びてもこの街は華咲家(あの爺)が護るだろう」

「それはそうかも知れませんが……」


 そうなれば散華と蓮華は確実に巻き込まれるだろう。


「……ああ。闇の魔女の墓所だったね。中層の奥に大勢のデュラハンが護っている場所があってね。我々は深層へ行くために避けたのだが、恐らくその先がそうなのかもしれない」

「そうですか。ありがとうございます」


 お礼を言って私達は退室した。


「厄介なことになりましたね。無事に帰って来られれば良いのですが……。ツヴェルフ、皆に今聞いた事を知らせてください」

「わかりました」

 

 †



 生徒会長執務室。


 散華と蓮華はツヴェルフから報告を聞いていた。

 聞き終わると散華は言った。


「ご苦労……とりあえず戦争云々は置いておこう。今、私達がどうこうできる問題ではない。それに王都には父様がいる。今は父様を信じよう」

「そうですね。心配ではありますがそうするしかないでしょう。とはいえ準備だけはしておきますよ。私が内密に各方面へ掛け合っておきましょう」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 こうした時、姉様が居てくれるのは頼もしいと思う。姉様は勇者のパーティーだったので私よりも顔が利く。


「では片付けられる物から片付けるとしよう」

「分かりました。簡単な地図を貰ってきました。見てください」


 ツヴェルフが私に地図を差し出す。

 この街のダンジョンは表層、上層、中層、下層、深層の五層で構成されていると言われている。

 中層の地図を見ると広間の奥に道がある。だがその先は描かれていない。


「なるほどここをデュラハン達が護っているのだな……厄介だな。さらにアイリーンも来られないのが痛いな。姉様とツヴェルフはどう思う?」


 アイリーンはまだアイリスを残しては行けないということで参加できない。

 ソニア、アリシア、エリスの三人はエルフの国に向かっている。

 クロはいつも通り店番をしている。

 つまり「青薔薇」で動けるのは私、姉様、ツヴェルフの三人だけだ。


 ツヴェルフは応えた。


「厳しいと思います。ですが偵察程度なら可能かもしれません」

「そうですね。デュラハン達には手を出さないようにして周囲を探るぐらいなら可能でしょう」


 その答えに姉様も同意したので私は言う。


「ではそれで行こう。パーティーメンバーだが、我々三人について来られそうなのは先の大会で活躍した暗黒騎士団のアリス、聖騎士団のクリスティ、聖女リリィくらいか……」

「そうですね。その三人を我々のパーティーに組み込むとして、他は支援や退路の確保に回しましょう。あと名目ですが調査と実地訓練ということで良いでしょうか?」


 ツヴェルフが細部を決めてくれる。


「そうだな。さすがに真相を知られるのは拙いだろう。場合によってはソニア達が帰って来られなくなる」

「そうですね。無事に帰って来られるように最善を尽くしましょう」


 姉様の言葉に私達は頷き合うのだった。



 †



 学園校庭。

 聖騎士団と暗黒騎士団の面々が集まった。

 事前に決めた通りに皆準備をしている。


 散華が皆の前へ出る。


「皆、復旧作業ではよく働いてくれた。また今回は急な要請にもかかわらず応じてくれたこと、重ねて感謝する。事前の連絡の通り、これより我々はダンジョンの調査を行う。ダンジョンでは危険もあるだろうが、皆が協力して乗り越えてくれると信じている! それでは皆よろしく頼む!」


「「おおおおお!! 聖天使様万歳!!」」


 学生たちの士気は高い。のだが……


 ツヴェルフが私に言う。


「すっかり聖天使様が定着しましたね」

「……慣れかけている自分が怖い」

「士気が高いのは良い事です」

「そうか……そうだな」


 慰めてくれたのだろうか。微妙な気持ちで私は同意するしかなかった。


 そうして我々はダンジョンへと向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ