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青の魔女  作者: ズウィンズウィン
第三章 魔窟編(下)
134/186

功罪

 

 祈りを捧げた場所にはまるで墓標のようにアストライアの遺した衣装、その上に豪奢な装飾の細剣(レイピア)が落ちている。

 その衣服に隠れるようにしてそれはあった……。


「黄の書。青の書……」


 ついに青の書が返って来た。長年の相棒が帰って来た事で、ほっとする。

 黄の書は私には扱えない。はずだったのだが……。


「あれ……これロック解除されたままでは……」


 触って見ると一部が微妙に反応した……。ということは使えるのか?


 アストライアが最後に言ったように放置しては誰の手に渡るかわからない。

 アストライアの意思を継ぐわけでもないが、回収して鞄にしまっておく。

 黄の書、青の書、青の書・外典。さすがに魔導書が三冊もあると鞄は満杯だった……。

 しかも、ちょっと重い。疲れもあって鞄ごと手近に置いておくことにした。


「師よ……。これは私が預かっておきます」


 アイリーンの方も遺品の細剣を剣帯とともに提げる。

 戦闘でボロボロでさらに血まみれの衣服はその場に埋めた。

 残った装飾品の腕輪、首飾りなども迷惑料として貰っておく。このままここに放置しても魔物が踏みつぶすだけだ。有効利用させてもらおう。


 今手元には黄の書、青の書、黒の書がある。家には白の書が封印されるように置いてある。

 そして、緑の書はアリシア先輩。紫の書はエリスが持っている。

 つまり、なんだかんだで「赤の書」以外揃ってしまっていた……。


「なんだか踊らされているようで、嫌な感じですね……」


 アイリーンがそう言ったように、神が七識の書の回収を望んでいるというのならそれはもう、ほぼ叶っている。


 アストライアは最後に言った。私の宿縁だと……。

 今はそうならないことを願うだけだった……。



「ああ、もう無理……」


 張りつめていた糸が切れたように、私も限界だった……。

 依然として熱っぽく、ガンガンと頭痛がする。失くしたはずの左目が疼き、その度に魔導式が浮かんでは消えていく……。

 私は崩れるように膝をついて……。


「ソニア!? 大丈夫ですか?」


 驚いたアイリーンによって私は抱きとめられていた。

 そしてそのまま、寝かせられて……。


「すいません。もっとかっこいい所を見せるはずだったのですが……」

「何を言っているのですか……。十分ですよ」


 アイリーンは膝枕をしてくれる。そのまま、しばらく休ませてもらう。


 悔しい……。頭痛さえなければもっと堪能できるのに!!


 ああ、きつい……。


 それでもアイリーンの膝は気持ちよく、いつしか寝落ちしていた……。



 †



 ソニアが眠ったのを確認して、アイリーンは懺悔を言葉に乗せていた。


「私はソニアの目にならなくてはなりません……」


 アイリーンはソニアの失った左目にそっと触れて決意する。


「いえ、私の命はソニアのもの……。貴女が拒絶するまでは絶対にもう離れはしない」


 ギュッと抱きしめたソニアからは何やら良い匂いがする。


「うう……ですが、どうしましょう。やっぱり美味しそうな匂いが……」


 アイリーンは悶々として、吸血衝動に耐え続ける……。


「……いつでもオッケーれす!」


 それはソニアの寝言だったらしいと気付くのに数舜を要した。


「!? 寝言で私を誘惑しないでください!」


 己の心に負けそうになるアイリーンだった……。



 †



 しばらくして目を覚ました私の前に誰かいた。

 アイリーンは私の傍で警戒している。


「黒の魔女……。ベラドンナ……」


 黒の魔女は人目をはばかるようにして、私達の前に現れていた。

 模造女神達が現れたので、もしかしたらとは思っていたが……どうやら封印は解けていたらしい。

 私は師匠に大丈夫ですと言って、警戒を解いてもらう。


「黒の書の反応があったのでな……。来てみたのだ」

「私がわかりますか?」

「ああ……見てはいた。ベラドンナと共に世話になった」


 彼女達は女王とアルヴィトによって先に逃がされたそうだ。たとえ、女王でも不死者たちを匿っていると知られれば、批判だけでは済まないからだ。

 そのお供には全身鎧(フルプレート)の数名のデュラハン達……。兜を被っているので常人と見分けはつかない。


 デュラハン、まだいたのか……。


「発動してしまった新世界計画……。異物の私は排除されたらしい。我等は強制転移させられた。正確に言えば、神殿と十一柱の模造女神が転移したのだ」


 新世界計画? ああ。あの手記にあった……。


「模造女神たちはさっきここに来ましたけどね!?」

「なんと……。いや、そうなのか……。であれば今は塔の頂上で玉座を守っているだろう……」

「塔? 玉座?」


 何を言ってるんだろう?


「気付いてないか? ダンジョンの構造が変化していることに……」

「ええっ! まさか……!?」


 洞窟状の代わり映えしない状態では分かるはずもない。

 いや、帰り道がおかしかったのはそのせいか!?


 となると……まずいことがある。ここは中層のはず……。

 塔だとしたら下に降りなくてはならないのか?

 それは無論、散華ちゃん達と鉢合わせることになる。


「うう……。結局戻ることになるのか……。土下座コースか、いや場合によっては晒し首も有り得る……」


 ほぼ、強盗だからな……。慈悲をくれ!


 っていうか黒の魔女が戻ったんだから、功労者で押し切れないだろうか……。無理か……。


「何があったかはおおよそ視ていた……。黒竜が迷惑をかけた。あれはかつての私の分身でな……」

「それは言わない方がいいかと……。貴女のせいではありませんし」


 あれはお互いに不幸な事故だった……。

 転移門による転移魔法、厄介な魔法だ。私は先ほどのことも思い出して萎える。


「そうか……そうかもしれんな」


 黒の魔女は寂し気にそう言うのだった。


「ああ、そうだ黒の書を返さねば……」

「それは、お前達が持って行くが良い。見たところ、そこの者には適性があるようだ」

「私ですか……?」


 アイリーンが戸惑っている……。

 ああ、そういうことかと思い当たる。私に使えないはずの黒の書がなぜか反応した。

 それは私ではなく、アイリーンに反応していたのだった。


「私の未熟のせいで、不愉快なものが混じってしまったかもしれない……すまない」

「いえ、私も同じかもしれません」


 二人とも謙虚だな……。黒の書の所持者として何か通じるものがあるのかもしれない。

 黒の魔女はそれを手放したいらしいので、ありがたく受け取っておく。


「ベラドンナ……それで、お前はどうする?」


 私はその傍で手持無沙汰にしている死霊に尋ねた。


「そうね。とりあえず、身を隠すわ。このままじゃ退治されるだけだもの」

「うむ。正直、おまえのせいだった感はある……」


 私が悪霊に取り憑かれたと思われたのは(ひとえ)にこいつのせいだ!

 噂を流したのはヴィアベルだが……。


「ソニア、それ、正直すぎでしょ……。もう少し言い方ってものが……」


 その抗議には取り合わずに尋ねる。


「私達と来るか? 逃亡中だけど……」

「行かないわよ! 行く当てないってことじゃない!?」


 そう、私達は今回の件がどうにか有耶無耶になるのを待つしかないのだ!

 ベラドンナは死霊になってもいつも通りだな!


「でも、どうするんだ?」

「そうね……。アストリアへは戻れないし……」


 そう、不死者、死霊は「死」を体現したような存在。他の魔物とも一線を画す。

 潜在的な恐怖が人々を怖れさせ、排除に向かう。

 魔族でさえ、否定されることが多い世の中だ。残念ながら今のアストリアに彼女の居場所はない。


「ならば私が連れて行こう」


 そう言ったのは黒の魔女だった……。


「不束者ですが、ベラドンナをお願いします」

「お前は、あたしの親か!?」

「まったくベラドンナは平常運転だな……」

「あたしに責任があるみたいに言わないでくれる!?」


 なんかキーキー言ってる。ああ、こういう奴だったなと、思い出す。

 そんなベラドンナに別れを告げる。


「ベラドンナ……我が弟子よ。魔法は常に共にある。それをゆめ、忘れるな」

「師匠……じゃないわよ!? ソニア、なんで偉そうなの!?」


 ふっ、ベラドンナだからさ……。


「でも、散華ちゃんたちと鉢合わせしたら……」


 アルフヘイム女王でも逃がさなくてはならなかった。それは散華ちゃん達でも同じだ。

 それに応えたのは黒の魔女だ。


「知らないだろうが、私は結構凄いのだよ?」

「ある程度は……あの嘆きの鎧、造った人……」

「良く知っているな。だが、その話は……」

「いや、これだけは聞いてもらう。アイリスって元模造女神だった子がいるんだけど、今はアストリアで暮らしてる」

「そうか……。であれば、彼女か。良かった」


 なんとなく繋がりがあるのかな、くらいの推測でしかなかったが知り合いだったようだ。

 彼女に対して心残りがあったのだろうか……。黒の魔女は沈黙しながら涙を流していた……。

 それからしばらくして……。


「その左目……知恵の泉を見たのだろう? わたしのように呑まれないようにな……」


 やはりそうなのか……。

 彼女は不死者だ。泉に「死」を捧げてしまったのだ。

 だから永遠に死ぬことは無い……。


 あの手記「その魔法……。大丈夫か?」か、もうちょっと詳しく書いておいてくれないとな!


 まあ、アイリーンのためならこのくらいは……。

 でも、見づらいな……。彼女の美顔が近くにあるのにっ!

 それを考えると悔しすぎる……。

 なんとかならんだろうか……。

 教授に相談してみるか……何か良い魔導具とかあるかもしれない。


 そうして別れを告げた私達だったが……。

 でもどうやって帰るんだろう? 街中を通らなくてはダンジョンから出られないはず……。

 闇夜に紛れれば行けるか……?


「転移する。二度も見せられればさすがに覚えた」


 なんと黒の魔女は転移魔法を覚えてしまったようだ……。


「でも、どこへ?」

「魔界へ行こうと思う。そこならば私達も差別されることはない」

「なるほど……」


 魔界……大昔の勇者と魔王が戦ったとされる土地。今では魔族が多く住んでいるという。

 たしか、リリスの故郷だったか?

 ともかく私は噂でしか知らない。きっとほとんどの人がそうだと思う。

 魔界の方が差別がないとか……どっちが魔界なんだかとお思ってしまうが……。


「お前たちも送ろうか?」

「……いえ、大丈夫です」


 やはり一度、誰かが報告をしなくてはならない。断罪の剣の脅威が去ったことを……。

 伝える相手は散華ちゃんでなくても、アルフヘイム女王かアルヴィトで構わない。

 黒の魔女を先に逃がしたと言っていたことから、ここで待てばじきに来るはずだ。


 別れを告げて黒の魔女、ベラドンナ、デュラハンたちが黒の魔女の張った転移魔法陣へと消えていく。

 私たちは不死者の軍団を見送った。


「私もついて行った方が良かったのでしょうか……」


 吸血鬼はどうなんだろう……。わからん!

 パッと見、バレなければいける気はする。

 家の三魔族も基本は隠してるし……。

 だが、質問の答えは決まっている。


「絶対駄目です!! アイリーンは私のもの!」

「しくしく……私は悪い魔女に捕まってしまいました」


 彼女は珍しく嘘泣きをして。


「手離しちゃ駄目ですよ?」


 そう言って可愛く微笑むアイリーン。


「ええ、絶対離しません!」


 本当に私は彼女が大好きらしい……。



 だが、そう狙い通りにはいかなかった……。

 私達は先に散華ちゃん達と鉢合わせてしまっていたのである。

 律儀にも散華ちゃん達はアルフヘイム女王へと報告に戻って来たためだった。


 再会した散華ちゃんはまるで亡霊のように無感情に私を見る。

 その顔はやつれ、覇気が無い……。

 とはいえ、こちらも満身創痍で、片目を失っている。向こうから見たら、似たようなものかもしれない。


「ソニア……」

「散華ちゃん……」


 私は覚悟を決めて跪き、伝える。


「処罰はいかようにも……」

「待ってください! 罰は私に!」


 アイリーンは責任を感じて、間に割って入るように声を荒らげた。


「追って沙汰を言い渡す……」


 散華ちゃんの表情は険しく、それだけを告げる。

 酷く疲れた声音だった……。


 そこへ遅れて進み出たのはアルフヘイム女王陛下だった……。今到着したらしい。


「何があったかは今、ブリュンヒルデから報告があった。であればこれが私の女王としての最後の務め……」


 アルフヘイム女王は整理するようにして告げる。


「もとは我等のわがまま、念願は叶い、そして黒の書は不要となった。我等アルフヘイムの民はこの恩義に報いよう。故に今回は不問にしてはもらえないだろうか?」


 それは非常に助かる! もっとも、散華ちゃんの返答次第だが……。


「それはできない。それをすれば示しがつかない。今回ばかりは駄目だ」


 ですよね……。


「だが、アルフヘイム女王陛下の温情に報いて、減刑は約束しよう」


 それはどこか疲れ果てた様子もあって……。

 正直私も疲れ果てていたので、このあたりは流されるままに口を出すことはなかった。

 一応、アルフヘイム女王陛下へ感謝のお辞儀だけはしたと思う。

 ともかく女王陛下の仲裁で私は首の皮一枚で繋がった形だった。


 そして散華ちゃんと別れた後、アウラとグレイスが無事に務めを果たしたことを報告に来た。代わりにアイリーンがこちらで起きたを報告していた。

 それからアリシア先輩とエリスが私の許に来て何があったか教えてくれた。双樹氏の死も……。

 ツヴェルフさんもアイリーンの無事を喜んでいた。ノインや他の守護兵たちも同行していた。怪我の治療で教授に見てもらうためだ。

 これからはもう、あの廃墟の街との行き来は頻繁になるだろう……。


 その日はそこで休息となった。皆が疲れ果てていた。

 そして翌日……。


 設営された大き目のテントへと案内された私とアイリーン。

 中にはアルフヘイム女王、アルヴィト、散華ちゃん、蓮華姉さんが席についていた。

 散華ちゃんは一晩考えたのだろう……疲れが取れていない様子で、私達へと沙汰が下る。


「ソニア、アイリーン……お前達を国外追放処分とする。無論、宰相の職も罷免だ」


 そうか……。

 血の気が引くというのはこういうことかと実感させられる……。

 いや、かなりショックだ。他ならぬ散華ちゃんにそれを言わせてしまった事が……。


「待ってください! 断罪の剣の一員だった私はともかく、ソニアは解決に尽力を……」


 そのアイリーンの猛抗議にまったく耳を貸さず、私に詰め寄る散華ちゃん……。

 ああ、これは本気だ。本気で怒っている……。


「これは私の最後の慈悲だ。わかるな?」


 その剣幕には私は頷くしかない……。


「仰せのままに……」


 そう答えることしかできなかった。


「功績に免じて、猶予はやる。怪我を治して、親しい者に挨拶を済ませるがいい……」


 悪くなってしまった折り合いはどうしようもなく……。

 それはあるいは、私がアイリーンを蘇らせてしまったことも関係していたかもしれない。

 

 詳しい報告はしていない。ただアストライアと戦ってこうなったとは伝えた。

 だが、勘の鋭い散華ちゃんは凡そ察してしまったのだろう。

 私の片目の消失、アイリーンのわずかな変化……。アストライアでさえ見抜いたのだ。


 きっと私は黒の魔女と同じことをしてしまった。

 人の死に尊厳というものがあるのなら、私は確かにそれを踏みにじり……。

 散華ちゃんはそれを望まなかった……。


 去り際にただ一言……。


「お前を見ていると私の選択が正しかったのか、わからなくなる……」


 それが別れの挨拶となった。


 光が強いほど陰が濃くなるという……。

 濃い陰に呑まれたのは私か、あるいは……。


 お互いが遠ざけるようにして……。

 私達は一度、離れる必要があったのだと思う……。


 散華ちゃんはそれだけ言い残して、テントから去って行った。蓮華姉さんもそれに従い、終始無言を貫いていた。

 怒れる散華ちゃんに私は何も言えなかった……。


 残された私達へアルフヘイム女王からは……。


「彼女にもいろいろあったようだ。察してやってほしい。それと、いつでもアルフヘイムは歓迎しよう」

「ありがとうございます……」


 私の罠で捕まった断罪の剣の修道女は多かったらしい。結果的にはあぶり出しに成功していた。

 そして私と師匠が今回の騒動の発端である教主アストライアの死亡を確認。

 また、アウラとグレイスがヴィアベルの死亡を確認したこと。

 そこに政治的な判断も加わっては散華ちゃんも折れざるを得なかったようだ。

 

 だが、私の行動が混乱を招いてしまったのは厳然たる事実だった……。

 国外追放の身ではあるが、懲役や禁錮などの実刑を課せられたわけではない。

 妥当と言えば、妥当なのかもしれない……。


 私は不安だったのか、アイリーンの手をぎゅっと握っていた。

 彼女もまた、それを握り返してくれていた……。


 それから私達はアストリアの街へと帰還した。その様子はまるで敗残兵だ。多くの兵を失っていた。


 黒の魔女の言った通り、ダンジョンが巨塔に変わっていたことは驚かされた。

 そのまま上に移動した形で、下層が出入り口となっていた。深層の街は地下にあるようだ。

 そして頂上には転移した神殿があり、模造女神達がいると推測されている。

 だが、それは私達の傷を抉るような気持ちにさせただけだった……。


 帰還後、双樹氏を筆頭に散って行った者達の為に盛大な葬儀が行われ慰霊碑が建てられた。

 国を挙げての長い葬列は犠牲者の多さを示している。

 荘厳ではあったが、沈鬱な街の光景だった……。


 いまや悲劇のヒロインとなった華咲姉妹を誰もが責めることはなかった。できなかった。

 皮肉にも双樹氏の死によって国は一つにまとまっていた……。



 †



 国を挙げての服喪にアストリア王城内もまた陰鬱としていた。

 散華と蓮華はその私室でなにをするわけでもなく、ただ悲しみ、喪に服していた。


「姉様……こういうのを()()()なことをしているというのでしょうね。父様の死を利用するなど……」

「散華、あまり思いつめるものではありませんよ。私達が何をしようと自然とそう見られてしまうものです。決して利用しているわけではないのです」

「……そう、ですね」


 喪服を纏った華咲姉妹は王城の窓から街を見る。

 街では曇天から雨が降り注ぎ、その中心の巨大な墓標を濡らしていた。

 かつてのダンジョン、今は塔となった巨大な墓標だ……。


「ソニア……どうやら私はもう、止まれないらしい」


 散華のその言葉は、その場にいないソニアに届くことはなく……。

 姉の蓮華のみが黙して聞き流すのだった……。



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