表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごちゃごちゃ  作者: 池田 ヒロ
8/37

ラブレター

 あたしは今日こそやるぞと決めたの。昨日の夜に徹夜で書いたあたしの思い。これが先輩に届いたらいいなって思う反面、怖いとは思う。

 でも、くよくよしていられない! だって、行動をしないと何も始まらないもん!


 やることは決めている、今日こそは……!


 あたしは自分が通っている学校の校門前に立つと、大きく深呼吸をした。これでも緊張をしているみたい。心臓がバクバク言っているもの。その音が耳元で聞こえているから尚更恥ずかしいと思う。


 そんな緊張感がほぐれないまま、あたしはバッグの中に入れていた一通の封筒を取り出した。勘の鋭い人ならば、解るはず。


 そう、これはラブレターだ。


 A中学校で一番人気の先輩にこれを今日渡すべく、書いてきたのだ。初めてのラブレターという物を書いたからこそ、何度も書き直したよ。


 さて、これをその先輩の下駄箱に入れたいのだが――。


「ははっ、マジかよ」


 駄目だ。先輩と同じクラスの女子がたむろしている。違う学年の奴がなんでここに来ているのかととっちめられた挙句の果てに、頑張って徹夜して書いたラブレターを読み上げられそうだ。しかも、わざと他の人の前で。


 入れたいのに、入れに行けないジレンマ。これがあれか、恋の障害とやらか。


 それならば、あの人たちが立ち去ってから入れるしかないのだが――。


「でさ、でさぁ。メガネザル、なんて言ったと思う?」


「あれっしょ、『女子がそんなに足を広げて座らない』!」


「あいつだけには言われたくないよねー」


 早く、教室に行けよっ!


 思わず、その思いの丈を口にしてしまいそうだった。だが、それを抑えなければならない。何故って、そんなことあたしが年上の人に向かって言える度胸があるわけがないでしょ!


 小学校だったらまだしも、中学校って学年が違うとかなりよそよそしくなるよね。ああ、メンドイ。


 言いに行けるはずもないあたしはひたすらにあの人たちに対して「早く教室に行け」という念を向けていた。するとどうだろうか。分かってくれたのか、念をキャッチしてくれたのかは定かではないが「もう行こ」とその場を退散してくれた。


 よしよし、その調子だ。これで気兼ねなく先輩の下駄箱にあたしの気持ちがいっぱいに詰まったラブレターを投函できるぞ。


 そうあたしが行動をしようとした時だった。


「おっす! こんなところで何してんの?」


 好きな先輩と同じクラスであり、あたしが所属している部活の先輩が登校してきた。何というバッドタイミングか。これではラブレターを下駄箱に入れられないじゃないか。


 そうだ、できることならばこのラブレターの件を誰にも知られたくない。だからこうしてこっそりこそこそとしているのに!


「誰かと待ち合わせ?」


 部活の先輩のその問いにあたしは頷いた。それと同時に「さっさと教室行ってくれ」と念を飛ばす。それが効いたのかは分からないが「じゃあね」と退散してくれた。


 今度こそ、誰も来ませんように。そう願って先輩の下駄箱にラブレターを入れようとしたのだが――。


「あれ? どうしたの?」


 お目当ての先輩に見つかってしまいました。はい、ガッツリラブレターを下駄箱に入れようとしたところも見られてしまいましてね。


 この急展開にあたしはあたふたとするしかなかった。どうしたらばいいのだろうか。どうすればこの先輩の頭の記憶からこの現状を消し去ることができるのかというとんでも思想に誰もがびっくりするのではないだろうか。


 何を血迷ったか、あたしはすぐさま下駄箱に入れようとしたラブレターを出して、そのまま先輩の口の中へと突っ込んでしまった。


 ぐしゃっと音がした時はもう遅い。何もかもが。


 どうしようか、訂正するべきか。いや、何をだ。謝る? そうだ、謝ろう。というか、謝るべきだ。


 後が怖いと判断したあたしは九十度の角度を作って「申し訳ありませんでした!」と勢いをつけて謝罪を述べた。これで許されるならば、先輩がヤギ男のハーフだとカミングアウトするぐらいのレベルだ。ていうか、これが本当ならば、勘弁である。いや、ありえないだろうけど。


 恐る恐る、あたしが顔を上げると――。


「いいよ、別に」


 先輩は許してくれた。まさかの許しが得るとは思いもよらず、安心感がとても大きい程である。


「ていうかさ」


 先輩は言葉を続けようとした。何を言われるのだろうかとドキドキしていると――。


「キミがくれたこの紙美味しいね」


「へぁ!? お、美味しいんですか……?」


「うん、オレには判るよ。これは良い紙を使っているね!」


 いや、それは知らんけれども。何故にそれが分かるのだろうかとあたしが不思議がっていると、先輩は「実はさ」と苦笑いをした。


「オレ、ヤギ男のハーフだからね。キミが毎日この紙をくれるっていうなら……オレと付き合わない?」


「あっ、結構です」


 こうしてあたしの恋は終わった(笑)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ