出会い頭に異性とぶつかれば、
遅刻だ、と慌てるあたしは急いで家を出ている。そんな中、異性と出会い頭にぶつかってしまう。そういうあたしはちょっとおっちょこちょい(笑)
バタバタと騒々しいかもしれませんが、あたしは今とても急いでいます。
「もー! チコク、チコク!」
自分の家の階段を一気に駆け降りる。その直後、弟のコウキが姿を見せた。
「あっ!」
「うわっ」
あたしたちの身に何があったのか、ご想像ができよう。そう、あたしはコウキと出会い頭にぶつかってしまったのだ。その場に痛そうな音が響く。
「いたぁ~。もー、ちゃんと見てよ!」
「何だよ、姉ちゃんこそ階段を走るからいけないんだろ!」
コウキの言うことは尤もでもある。だが、ここで押し負けてしまっては年上としての尊厳が保てない。ここは姉らしく、理不尽ながらも「違うもん、コウキが悪いもん!」と責任転嫁をする。
というか、それよりもここで論争をしている場合ではない。あたしはとても急いでいるのだ。遅刻寸前なのだ。急がなければ。
「もぉ、コウキのせいでチコクしちゃうでしょ!」
あたしはこのまま玄関へと行き、ローファーを履くと、勢いよく飛び出したのだった。出た瞬間に感じる朝のにおいはなんて清々しいんだろうか、というようなことを考える暇なんてありません。
「チコク、チコク~!」
とは言っても、自分の家と学校は近いからね。走ってでも五分は着けるのだ。家を出て、右へと三ブロック突き進んで左に曲がって道なりに行けば、学校に辿り着ける。
もうすぐで曲がり角。あたしが、左へと曲がろうとした瞬間。
「うわっ!」
「わうっ!」
誰かとぶつかってしまった。というか、今日って誰かとぶつかる確率高いな。どうでもいいけど。
「いたた……」
勢いよくぶつかってしまったものだから、あたしはその場に尻もちを着いてしまった。意外と、尻もちを着くとすごく痛いんだよね。すぐに立つことなんてできやしないし。
あたしが一人尻の痛みに悶絶をしていると――。
「ご、ごめん……だ、大丈夫?」
こちらを心配したような表情で見てくる美青年が一人。かっこいいと思ったのも束の間。彼もあたし同様に尻もちを着いているから、苦痛の表情を見せているのだ。いや、それでもやっぱりかっこいい。
「だ、大丈夫、です。あ、あたし……ち、チコクするから……」
それよりも、行かなくちゃとあたしが痛む尻を我慢して立ち上がるも――「あれ?」とその人は声を上げるのだった。
「キミって、そこの学校の生徒だよね?」
「へ、あ? は、はい! そ、そうです!」
思わず、声が上ずってしまう。というか、この人って学校の制服を知っているならば、編入生かな? 着ている服装――ブレザーである。この辺で茶色のブレザーなんて見ないし。
「オレ、編入生なんだけど……」
やっぱりそうくるか! これは期待できそうだぞ!
なんてあたしがわくわくとしていたのだが――。
「あの学校って始業時間は八時四十五分からだよね? 今七時半だよ?」
あたしの恋はすぐに崩れ落ちるのだった(笑)




