『仕方ない』世界
十七歳の誕生日を迎えた直後に高校生ユーゴは見知らぬ世界へと召喚された。そんな彼は召喚された世界を平和にするため、守るべき三人の少女と共に旅をするのだった。
一応、ハーレムものです。慣れなくてすみません。
世の中が『仕方ない』で済まされるならば、オレはこうして剣と魔法が飛び交うファンタジーな世界にはいない。
辺りはすっかり闇夜に包まれてしまっている。オレたちのパーティはここで野営をするつもりでいた。乾いた枝に炎の魔法を点火して暖を取る。
「ねえ、ユーゴ」
パーティで魔法使いのシェリルが不安げな目でこちらを見てきた。そんなに大きくて青色に澄んだ目で見られても、自分が置こうとする視線の先が困る。
「何? シェリル」
「この旅が終われば、ユーゴは元居た世界に帰るんだよね?」
「そうだが?」
シェリルの言う通りである。オレはこの世界の人間ではない。俺自身の右隣にちょこんと座っている白銀の長髪が目立つ女の子を見た。彼女はテノという。この世界における古代人の末裔であり、様々な勢力から実験体として狙われているんだ。
元より、古代人は膨大な魔力を持っていて、魔法使いのようにして普通の魔法は扱えないものの、特殊な魔法――それこそ召喚魔法を簡単に扱えたりする。
早い話、オレはテノによってこの世界に召喚されたんだ。その理由は、オレは古代人の勇者としてだそうだ。古代人が悪と見なしているのはこの世界そのものだ。だが、オレたちは世界を壊すために旅をしているのではない。この世界に平和が訪れるのを願って、である。
「ユーゴが帰っちゃったら、寂しーの」
オレの向かい側に座るオオカミの耳を持つ少女がそう言った。彼女はフィーナと言って、オレたちのパーティの中でも一番の武闘派である。持っている剣で地面に落書きをしているようだ。
「そうは言ってもなぁ。オレも向こうの生活もあるし……」
それ以前に、戻る方法はテノしか知らない。だから、オレは燃え盛る炎をぼんやりと見つめる彼女に声を掛けた。
「なぁ、テノ。オレを元の世界に返す方法は知っているよな? どんな方法なんだ?」
「……ユーゴが頭なでなでしてくれたら、教えてあげる」
「…………」
そういう反応に困る条件を出されてもな。こうすればいいのか?
オレは戸惑いながらもテノの頭をやさしく撫でた。さらさらとした髪が心地よいと思う。それに伴い、彼女は嬉しそうに目を細めるのだった。
「あぁっ! テノちゃんずるいよ!」
「フィーナも! フィーナも! ユーゴ、なでなでして!」
シェリルとフィーナがずいっと詰め寄ってくる。三人とも我儘だなと思いつつも、オレは彼女たちを撫でるしかなかった。だって、やらないとずっと言ってくるからな。
「ほれ」
全員分の頭を撫で終えて、再びテノの方へと向き直った。改めてオレが帰る手段を聞くためである。
「テノ、オレの帰り方……」
尋ねたいのは山々だ。だが、誰かが眠っている最中に起こすなんて無粋な真似はする気はない。そう、テノはオレに寄り掛かりながら眠ってしまったのだ。これでは聞くに聞けないじゃないか。
「…………」
またしても戸惑うオレ。だが、困惑するオレをお構いなしにまだ眠っていなかったシェリルとフィーナも同じようなことをしてくるのだ。
「えっ、ちょっと二人とも?」
流石にと断りを入れようとするのだが、それを断固拒否する彼女たち。絶対にオレから離れたくないと言う。全く、やれやれ。
「こうして、ユーゴといるなら夜行性の魔物も平気だもん!」
「そうだよ、ユーゴ強いもん。神様の力を持っているだもんね」
神様の力。それについては否定しない。こちらの世界に召喚された時、それが原因かは定かではないのだが常人では考えられないくらいの膨大な魔力を持つようになったのだ。もちろん、前に居た世界は魔法なんて使えるわけがない科学の世界なのだから。
「「だから、もしも私たちに何かあったらユーゴが助けてね!」」
割と軽い約束をしているが、これはもう変更できそうにはない。断るに断れない。何故ならば、彼女たちは既に夢の中に入っているのだから。
「『仕方ないな』」
オレは小さく肩を竦めると、自分たちのいる場所に結界を張って寝ることにした。
そう、これら全てが仕方ないで済まされるからこそ、オレはこの世界で生きている。共に旅をする彼女たちを守るためにも『仕方なく』オレはこの世界で生きなければならないのだ。




