似ていて助けられて
標的にされているとは知らず、スチルは面倒な事にならないよう、刃物が他の人々に当たらぬよう能力を発揮する。彼の能力とは、影を操る能力。そんな能力も、彼は性格同様大嫌いだった。この能力が役に立った覚えなどない。一人ひとつの能力なら、もっと実用的な能力がよかったのに。
そんなことをブツブツ呟くスチルを横目に、大きな鎌を敵である2人に向ける少年、レイトは運命のようなものを感じていた。彼とは今日道でぶつかっただけの、赤の他人。だが、この2人が放った攻撃をなんの躊躇もなく防いだ。そう、俺と同じように面倒な事にならないように。それに、能力だって意外と似ているかもしれない。あの黒い物体がなんなのかは検討もつかない。だが、黒タイプの異質系なのは分かる。俺の死神の能力と同じだ。彼だ、彼こそ俺と相性が一番合うパートナーだ。
「何をぼさっとしてる、舐められては困るわ」
その声と共に襲いかかる、先ほどと同じ刃物。量は少ないが、当たったら無傷ではいられない。
その刃物は俺と下にいる奴目掛けて飛んでいく。奴は気づいてないようで、呑気にあくびをしていた。
「あいつ……!」
構えていた鎌を片手に、自分でも今まで出した事のないようなスピードで地上へと降りていく。
「危ね……」
そう言いかけた時だった。
「……危ねぇのはお前の方だろ」
そう言われて上を向くと、目の前に刃物。そして、その刃物から守るように覆い被さる、黒い幕のようなもの。助けられたんだ、こいつに……
俺の悪い癖、それはすぐに言わないと気が収まらない事は、どんな状況でも言ってしまうこと。この癖は絶対に治らない。そして今、攻撃されているこの時も。
「お前、どっかのパーティーに入ってないよな?!俺のパーティー、ラットハイドに来い!」
「……はぁ?」
この時スチルの脳内は、パーティーという言葉と目の前にいる意味不明な奴の事、そして襲ってくる2人の事でいっぱいだった。