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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第一章 僕の学園生活?
7/45

07.能力値って減らす方法無いんですね。どうしましょう(困惑)

 今日は色々な意味で大変だった。まさか坂東さんがあんなことになるなんて想像もしていなかった。いや想像してないってのもアレだが、あの後の女子からの扱いには困り果てたを通り過ぎてもはや暴力でしかないと思った。「モミクチャにされた」としか言いようがない。ああいった時の女の子のパワーは恐ろしいとしか言いようがないと思った。僕もそのはずなんだけどまだそんな兆候は無いからいいとして。


 もう今日は大人しく寝てしまおう。と思ったが消灯前の点呼の時間だと思い返す。


 まぁいつもは誰がいるとかいないとか確認するだけ。ここのところ帰ってこない一人を除けば全員が揃っているから問題はないだろう。どうも彼は「いてもいなくてもどうでもいい」と思われているのかもしれない。



「……優、お前、なんか付けてるか?」


 今夜の見回り担当、先輩にあたる無道さんが僕の服とか髪とかの匂いを頻りに気にしている。そんなに変かな? 昨日から妙なことばかりだし。


「つぅかさ、ホントにお前って優か? なぁ~んか変なんだよなぁ~……」


 クンクンとまるで犬のように鼻をまとわりつかせる様子はまるで警察犬か何かのようだ。


「あれですよ、食事の時に女子が色々してきたから匂いが移っちゃっただけですって!」


 現状で一番解りやすい理由。つまり「女子から匂いが移った」で誤魔化すしかないのだ。実際そういう匂いもあるんだろう。というか女の子ってなんであんな匂いするんだろね? フェロモンっていうのは匂いだけではないと思っているけど、実際男と女じゃ全然匂いが違うから不思議だよね。


 ……あれ? もしかして僕って変な臭いするのかな? あれ? それはちょっと困るぞ? 何しろ何がイジメのキッカケになるかわからないのだ。攻撃のキッカケになるようなものは極力減らすに限るだろうし。


「あ~。そういやそんなことあったなぁ。しっかし珍しいよな女子があんだけ盛り上がってるのも。まぁいいや、純也とかまたいね~けどあいつのことはどうでもいいってさ。んじゃさっさと寝ちまえ!」


 それだけ言うと無動さんは次の部屋の確認の為に移動していった。



----------



「おやすみ優君」

「うん、武志君も早く寝なよ~」


 消灯になると部屋の電気は消されてしまうので大したことはできない、と思うかもしれないが一応「勉強をしている」ということで机のライトをつけることは禁止されていない。まぁこの部屋にいる子はそんなことほとんどしてないけど。

 実際のところ武志君だってそのまま寝てしまうわけじゃない。携帯ゲーム機を取り出してベッドの中での優雅なゲームタイムだ。孤児院の中ではこの時くらいしか自由にゲームをする時間が無い。というか安心できないそうだ。


 ベッドの上、頭から被った毛布のスキマからたまに漏れてくる光が床に落ちる。ちなみにヘッドホンはしているから大丈夫。それでなくても音量は最低限にしてるらしいので万が一にも外れても心配ないそうらしい。一応こういうオモチャは所持しているだけで色々問題になるんだが、武志君はなんとかごまかし続けている。今後も見つからないといいんだけどね。



 さて、ゲームと言えば僕自身のステータスの確認でもしておこう。こういう時は言葉にしなくとも表示が可能なのが助かる。

 あれから随分と経つんだけど、MPが一向に回復しない。夜になれば変化すると思っていただけにこれは当てが外れたとしか言いようがないかもしれない。もしかすると回復させるためには何かスキルが必要なんだろうか?


 [▼取得可能スキル]の中を一通り確認してみるが特にめぼしいものは無い。というわけではないんだけどなんだかこの状況を打開してくれるものかは疑問なものしか見つからなかった。


 一応今のところ一番有用そうなものは[MP回復強化]。これは時間当たりのMPの回復量が増加するものらしい。と書いてあった。本来なら『時間』で回復するはずなのだ。単純に考えれば『1時間あたり』ってことだろう。

 強化するってことは元になる回復量が前提になるはずなんだけど、今の所の回復量は0だ。0に何を掛けても0のまま。となる危険性がある。少なくとも自然に回復する量、もしくはタイミングを把握するまでは取る意味が無いと思う。


 万が一にも回復しないようであれば、別手段を検討しないといけないことになる。今のMPは19。これで獲り得る手段を講じないといけない。できれば[生活魔術]を取得したいのだけど、名前的にどう考えてもMPが前提のスキルだし、MPの使用が条件となると今のままでは頼れない。本当に困ったもんである。



 そういえばステータスのSTRとかの数字に括弧が付きっぱなしなのも気になる。レベルアップで変化する数字を意味するのかと思っていたけど、それなら既に確認した後、つまり今の段階なら無くなっているはずなのにそのままだ。


 数字の変化が反映されるまでに


 ……


 解決の糸口が全く見えない問題に答えが出る訳も無い。もう今日のところは大人しく寝てしまおう。



----------



 微かな足音がだんだんと近づいてくる。夜の静けさに溶け込む様子もなく、足音の主は夜の静けさを乱すことへの恐れなど何もないようだ。


「……ってことだから、後始末よろしく頼んだぜ」


 何かしらの囁く声、多分誰かと通話中だったのだろうが一方的な依頼で会話は途切れたように聞こえた。


 裏口の戸が無造作に開かれる。何らかの細工をする様子もなく堂々と入ってくる様子からもこの施設の関係者、もしくは出入りが許されている者だとわかる。

 街灯から微かに届くような薄明りのためにおおよその体形しか見測ることができないが、少なくともこのシルエットの主は子供……いや少年のようだ。


 彼は特に逡巡することもなく裏口に施錠をすると、慣れた様子で廊下を進んでいく。実際のところ彼はこの孤児院の住人の一人であり、優と同室の最後の一人であった。

 手にはスマートホン。ここの住人として似つかわしいとは言い難い持ち物ではあったが、彼にしても特に意識するほどのこともない。単なる道具の一つといったところなのだろう。何かの確認をしていたのだろうが、そのままポケットに押し込むと手荷物を担ぎなおしつつ歩みを進めた。



 廊下を抜け階段を上り自室の前にたどり着く。すると入口の目の前に変な物を見つけた。



・・・



「あれ? 何してんすか?」


 久々に孤児院に戻ってきたら妙なことになっていた。俺らの部屋の前で先輩がなにやら血走った眼をしながらドアの隙間を覗き込んでいたのだ。


「……た、武本。 戻ってきたんか?」


「んまぁ一応、月に1回程度は帰って来いって言われてるんで。別にここを出ててもいいんすけどね」


 明らかに動揺した様子をしているらしい先輩。ちなみに名前は知ってるけど覚えてやらんことにしている。向こうもセンパイって言われてりゃぁ納得するし。どうでもいいねこんなの。


「ん、んじゃぁな! 早く寝ろよ!」


 明らかに焦った様子で帰って行った。ドタバタと煩く走り回って大丈夫なんだか。あ、こけた。

 まぁいいや、どうせ寝るだけだからどこでも大差ない。今月の仕事はそんなに面倒でもなかったし、後は月末まで自由にさせてもらおう。


 部屋に入って真っ先に感じる違和感。

 つぅかこの部屋の中だけ妙に女く…… いやそんなことはないはずなんだが。

 とにかく寝てしまおう。もう今日はクタクタなんだ。


 隣のベッドのユウは起きてこなかった。俺がかえってくるとどんな時でも気が付いて声をかけてくる変わった奴だったんだが、今日はどうかしたんだろうか? と見てみると熟睡しているらしい。 口元がだらしなく開かれて変な奴だ。ってこんな無防備な寝顔を晒すような奴でもなかった気がするんだが。まぁいい。


 眠気で思考がまともに働いてないことも、部屋が暗くてよく見えてないせいもあったんだろう。だがここで優の事を『よく見て』さえいればもうちょっと別の未来があったかもしれないと、少しだけ後味の悪い思いをすることになるのはこれから後の事だ。



----------



(……う、うみゅ……)


 ぼやけた思考が何かを告げる。定められた時間、長年の習慣が自分の起きるべきタイミングに主たる肉体を起こすべく活動を始めた。


 というか、眠い。


 もっとぼんやりしていたい。というか思考が動かない。

 もうちょっと寝てたいなぁ…… ふわぁ……。


「ほら、優君起きた? 今日は大丈夫だね」


 そんな風に声をかけられて初めて気が付いた。もう朝なのか。

 急激に意識が覚醒していくのがわかる。誰かの声を聞いたり、誰かと会話するってのは起きるためには大事なことなのかもしれないね。


 隣のベッドを見ると寝る前と違って布団が膨らんでいた。多分お隣さんが帰ってきたんだろう。いつも何をしてるのだかよくわからない子なので一度聞いてみたことがあるんだけど、「セカイヘーワにコーケンしてる」とか訳わかんないことを言われたことがある。本当によくわかんない子だ。

 ちなみに機嫌のいい時はすこぶる気前がいい。武志君のPSVは彼がお土産で貰ってきたものだし、僕もたまにクッキーとかお土産にもらったりしている。今日もなんかもらってきてないかな~…… なんてこと言っちゃうとちょっと意地汚いかな? うん、だめだよね。善意でくれているんだから強請るようなことしちゃ。


 さぁってと、今日もがんばりますか!




 昨日と同じ様な朝だった。今日のノルマもきっちり30分前に完了。ステータス様様だね! って迂闊に強化しすぎるのもポイント的にもったいないのでやめておこう。

 実はステータスの上昇には「レベル×1」ポイント必要らしいんだ。つまり今はレベル5なので最低でも5ポイント。APPとかを上昇させようとすると50ポイントは必要になるという鬼畜仕様だ。レベル1の時にある程度のステータスを割り振っておくのはとても重要なことだったらしい。最低限って大事なんだなぁ。


 残念なことにMPは回復していなかった。しっかり?睡眠をとるというのは条件に含まれないらしい。本当にどうすると回復するんだろうか?


 こうなるとスキルによって回復させるための方法を取るしかないかもしれない。実は方法を2つほど模索していた。


 1つは直接MPを回復させるアイテムを作成しそれを使用することだ。MPを回復させるアイテムは大きく2種類、ポーションとジェムに分けることが出来る。


 ポーションは文字通りの回復薬で、材料をそろえて[調薬]することで作成ができる。問題は材料が見つかるか? という一点だが僕には[鑑定]があるのである程度探し回れば見つけることができる『かも』しれない。


 ジェムはMPを保存し必要な時に自分のMPの代わりに使用することができるアイテムだ。人によっては『魔石』とか言うほうがわかりやすいかもしれない。これは[錬金術]というスキルで周囲に漂うMPを集めて保管しておくためのものだが、素材として使えるほどの宝石をどうやって手に入れるかが問題だ。自慢できることではないが僕にはそんなものを買えるような財力はない。あったらとっくに自活しているだろう。


 さて、難易度的に考えれば宝石の入手は絶望的なので、選べる選択肢は必然的にポーション作成になる。ただ、本当に材料が集まるかが問題だ。


 僕は朝の新聞配達の時に[鑑定]を使いまくって材料を探しまくった。

 探しまくったんだが、材料になりそうなものを見つけることができなかった。

 いちおう「レア度1:一般的に入手可能」ってレベルのものらしいんだけど、どう考えても地球基準の表記じゃないよね。あっち?の世界だと普通なんだと思う。


 本当はジェムを作りたい。だってそうでしょ? 説明文にあった『周囲に漂うMPを集めて』とあるのだ。つまり自動的にMPを回復させる機能がある。ということだ。1つ作れれば後はノーコストで使い放題(回復待ち)というのは非常に魅力だろう。


 だがここで一つの疑問に立ち返る。ジェムが自動でMPを回復するのなら、なぜ僕のMPは回復しないのだろう? もしかするとせっかく作ったジェムが無駄になる可能性だってある。




 そんなことばかり考えていたせいもあって、そろそろ午前の授業が終わりそうってタイミングで気が付いた。

 僕のMPが回復していたのだ!


 1だけだけど。


 ……もしかして、一日1ポイントしか回復しないんですか?


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