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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第一章 僕の学園生活?
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04.咄嗟に悲鳴を上げなかった自分を褒めてやりたい。

 無いのだ。無いのだ。無いのだ。


 いや、いろいろ言いたいことがあるだろう。とにかく無いのだ。

 イヤイヤイヤ。どういう世界の選択ですか。これマジっすか? 神様どういうことですか説明しやがれです。


 色々ヤバいことがわかったんですが、とりあえずトイレはどうにかなりました。ありがとう和式便所。マジで小便器しか無かったら詰んでましたわ。 ビックリして最初は何も出なかったんですが、諦めたようでチョロチョロと出てくれました。コントロールしにくい。いや、腰をぐぐっとすればこ~・・・・・・。いやまぁこれは要練習かもしれません。床を拭きながらそんなことを思っていました。


 元々栄養不足の塊みたいな体なので、凹凸の少ない僕の体は昨日と大差ないように思えます。これなら着替え中に凝視されない限りは大丈夫かな? いや用心しないとダメだろうけど。少なくともプールとか行きたくない。いや行かないけど、学校の授業とかどうしよう。学校っていえば身体測定とかがヤばいかもしんない。って今年のは先月だったっけ。一安心一安心。


 そういう訳で、とりあえず朝の新聞配達に向かうのだった。


 最初に感じたことは「とにかく体が軽い!」ってことです。ステータスをいじられたせいでCONってのが5にされたせいらしい。あんまり急激に変化させるとまずいからってとりあえず最低限と言われる数字にしたそうだけど、今までよく生きてたと思う。


 いつも1分も走れば息切れしちゃうような体力の無さだったけど、3分くらい走れているので凄い成長だと思う。汗だくになりそうなのでそろそろやめておきましょう。配達が遅くて担当エリアの配り終わりが一番遅い僕だけど、今日はいつもより30分も早く終えることができました。


「お、今日は結構早かったな。いつもこんくらいで頼むぜ!」


 集配所代表の竹中さん。この道20年のベテランで、この地域のまとめ役。いつもだと僕が帰ってくる頃にはいなくなっているんだけど、今日はいなくなる前に出会えたみたいだ。この人は色々と気を使ってくれる人なので正直助かっている。僕の配達エリアを現在の範囲にしてもらえたのもこの人の一言のおかげです。でないとこの2倍の範囲になってしまい、集配所に文句が来て僕が殴られるというサイクルが完成していました。いや殴られてたんだけどね。


「ほら、早終わりのご褒美だ。こいつでも飲んでけ!」


 と差し出してくれたのは紙パックの牛乳。しかもイチゴ味です。


「あ、ありがとうございますっ」


 僕の手に握らせるように持たせてくれる。いやほんと有難いです竹中さん。


「……お、おう! んじゃ勉強もガンバレよ!」


 といって集配所を出て行った。ちょっと顔が赤く染まっていたような気がするけど、きっと柄にもない事をして照れてたんだろうな。



----------


 イチゴ牛乳を飲みながら学校に向かう。朝飯? そんなもんありませんよ? もう慣れましたし。 一応孤児院に戻れば用意されているハズなんだけど、多分僕の分は無くなっているでしょう。「腐るともったいないから食べちゃう」そうで。納豆なんて最初から腐ってるだろうに。


 なのでイチゴ牛乳がとてもありがたい。久々に朝から栄養を確保できる喜びという奴です。どうしても我慢できないときは、なけなしの所持金からパンを買って食べたりもするけど、買い食いしている所が見つかると「金出せや!」とばかり全裸にする勢いで財布が向きとられることになります。でも竹中さんから牛乳をもらったってことは誰かほかの人が見ているはず。つまり比較的安全な食料なのだ(竹中さんは顔役ってこともあって彼の行動を反故にすると色々と問題になるのだ。普段はとても優しいいい人なんだけどね)

 いやもうこれはラッキーとしか言いようがない。なので取り上げられる前にとっとと飲みきるのが最善なのだ。


 というわけでコンビニ前のごみ箱に紙パックを捨てて、っと。


 今の時間は朝7時半。授業は8時半からだから一時間程早い。でも朝練とかで既に校門は開いてるし、図書室も自習を促すということで解放されている。授業前に余裕があるときは教室ではなく図書室に行くのが僕の基本行動だ。

 教室だと色々あってね~。面倒なんだよね。ちょっと。



 朝の図書室は非常に静かで気持ちがいい。空気中を漂う埃が朝日を反射してキラキラとしている様子は閉じられた密室ならではの光景だと思う。こういうシンとした静かで孤独な空間が僕は好きだ。


 さて、最初に確認すべきことは、この一つだろう。


「ステータス」


 ってやっぱり出るか。

 まぁ、体の変化もあるし、こっちも出来て当然だよね。

 称号とかの変化も無い。といっても僕を呼び出したあの魔法も触媒?になる紙が無いせいで使用できないとは思うんだけど、どうなんだろ? まぁとにかく現状できることを考えねば。


 フィリー姉様に言われたからというわけでもないけど、やっぱり斥候系のスキルは欲しい。自分の身を守らねばならないし、こんな秘密が漏れたとしたら一大事だ。守れるなら守り通したい。だがまずはこっちか。せっかく選べるレアスキル。取らない手は無いってものだよね?



・[獲得経験値増加] 獲得する経験値が増加する。増加量はLUKの値に依存[レアスキル]


・[レベルアップボーナス増加] レベルアップ時のステータス上昇、ボーナスポイントが増加。増加量はLUKの割合に依存[レアスキル]



 これで100ポイント。残り45ポイント。

 LUK依存というのがちょっと悩ましいが、自分のLUKは随分と多いようだし、結構いい選択だと思う。あっちに呼び出された時に大きく変わったらしいのだけど、どういう理屈なんだろうか? 誰かに教わりたいものだ。


 ステータスの情報も確認しておいた。ヘルプ機能?みたいなものがあって非常に助かる。


・STR:筋力、物理攻撃力を示す。

・CON:耐久力、物理防御力や最大HPに影響する。

・DEX:敏捷性、器用さを示す。

・INT:知力、魔術攻撃力を示す。

・POW:精神力、対魔防御力や最大MPに影響する。

・APP:魅力、主に外見的特徴を表す。

・LUK:幸運を示す。



 数値が大きい程に強いことを示すことは間違いないらしい。ついでに言うと何でアラビア数字で共通なのかがわからないけどまぁそういうものなんだろうか。こればっかりは知っている人に聞くしかないだろう。って誰か知ってる人いるんだろうか?


 あ、あと[ステータス]は他の人にも使えるらしいことがわかった。対象は一人しか選べないし、他人のボーナスポイントを勝手に操作するとかもできない。僕がやられたのは従魔契約のせいらしい。そういえば、「ステータス」って発音しなくとも使えることが分かった。「発音するように意識する」だけでいいらしい。


 さて、残りのポイントで普通に使えそうなスキルを選びましょうか。



----------



 今は歴史の授業中。厳部先生の授業はわかりやすいけど解りにく。

 いや、内容は丁寧なんだけどね。お国訛りが酷くてなかなか聞き取りにくい。


「すっだらこげっちゃことなるっさ~、こいずんどごテストにだすっちゃ、よ~け覚えとけっちゃよ~」


 どこの訛りなのか非常に気になるんだが誰も聞いたことが無いらしい。

 さて、そんな授業の最中だが、僕は絶賛修行中なのだ。

 まず[ステータス]だが、使えば使う程に情報の精度が上がるらしいことがわかった。 ただ単に使えばいいというわけではなく『未鑑定の人を調べる』方がより良い経験が得られるらしい。

 クラスメイトの殆ど(一人休みなので)と、校庭にて体育中の人、あと外を歩いている人等の[ステータス]をかたっぱしから調べていく。


 そこでわかったのだが、ボーナスポイントが200もあるのが誰もいなかった。

 あの世界に呼び出された後でもないと[ステータス]のルール内に取り込まれないからなんだろうか? それとも他の条件があるのかもしれない。


 ボーナスポイントは無いけど、色々なスキルがあることがわかった。例えば厳部先生のスキルにはこんなのがあった。


[忍耐 Lv3][発音障害(不明言語への変換)]


 教師というのは耐え忍ぶものなのかもしれないとちょっと思った。僕ですら[苦痛耐性 Lv1]しかないのにLv3なのだ。どれだけ耐えてるのかが伺い知れる。

 あの訛りも治そうとしたのかもしれないけど、スキルのせいで治せないのかもしれない。これからは「変な言葉使いのおっさん」というレッテルで見ないであげよう。いや今までも見ていた訳じゃないけど。


 よく見る称号は[学生]とか[社会人]。たまに[努力家]とか、[経営者]とか[自宅警備員]とかいうのもいた。そのまんま[穀潰し]ってのもいたから、もしかすると当人の自覚次第で称号ってのは変わるのかもしれない。

 スキルを持っている人もいるにはいたけど、基本的にはあんまり持っている人はいなかった。スキル習得にはそれなりに高いハードルを超えねばならないようだ。僕があれだけ持っていたのは多分環境によるものだろう。全くありがたくないんだけど。


 また、みんなそろってレベルが一桁代だった。多くて8が精々。学生の殆どは2くらいまでしかいない、ちなみにレベル8の人の称号は[中隊長]だった。お爺ちゃんだったし戦争経験者なのかもしれない。



 他の人のステータスを見て思ったんだが、みんなステータスのSTRとかの数値が基本的に6~14くらいの間で収まっていた。ミス三中の御木本さんのAPPは15。あれ? 僕のって16だったよね? ちょ、おま、どういう、って、ちょっとどうしようヤバイ。前髪卸して伊達眼鏡で隠さないと不味そうなレベルになりそう。そもそも僕のいじめられる最大の原因がコレだったらしいけど。そうだとしたら今日に限っていじめっぽい行動の殆どを受けてない理由もコレなのかな? どっちかっていうとLUKの方かもしれないけど。こっちが上昇していた理由は全くの不明だ。そういえばあっちで急に上がったみたいなことを言われたから、変化した原因はあっちにあるんじゃなかろうか? いやはやさっぱりわからないや。


 色々と悩みつつ、スキルを試しつつ比べつつなんてことを繰り返していたら突然頭の中で[ぴろり~ん!]って音が鳴り響いた。一瞬ビクッってなったけどなんとか誤魔化した。授業中に目立つなんてことする訳がない。そんなことすると何が飛んでくるかわからないし。


 どうやらレベルが上がったらしい。スキル使用でレベルが上がるとかどんだけヌルゲーなんだと言いたいけど、きっと[獲得経験増加]のおかげだろう。レベルは…… うん、2になってるね。で、効果だけど…… おぉ? 数字の横に別の数字が括弧付きで現れた。すぐには上昇しないってことなんだろうか? いずれは変わるものと信じたい。括弧内の数値は軒並み1づつ上がってる。APPとLUKは変わらず。こっちは変動しないのかな。


 HPとMPの最大値が上昇した。HPが2、MPは5上がっていいことづくめである。こっちは括弧が無かったので即時反映なんだろうか。

 ステータス上昇で身体が痛むかと思ったけど、実際には上昇してないせいなのか、それとも[苦痛耐性]のおかげか、思ったよりキついことにはなっていないみたい。


 こんなことを繰り返し、昼前にはレベル5に到達していた。流石に全て[ステータス]ばっかりなのは飽きるので他のスキルも使用したんだけどね。

 そうそう、途中から[ステータス閲覧]が[鑑定]に変化した。レベルアップでもしたんだろうか? これによって人限定だったものが物品の鑑定が使用可能になった。おかげで経験値稼ぎが加速した、って程でもなかったような気がする。いや他の人と比較できるわけではないのでどうなんだろうね?




 さぁって、やっと給食のお時間だ。実は去年に給食廃止の声が上がったことがある。他県の話なんだが集団食中毒が発生したかららしい。「自分の子供には安全な自分の作ったお弁当を持たせたい」って要望かららしいが。普通の稼ぎがある家庭ならともかく、こちとら自分の食い扶持は殆ど自分で稼がねばならない身の上。ついでにいうとほとんどパくられちゃうからかなり厳しいのに固定で確保できるはずの昼飯まで無くなるとシャレにならないのだ。


 まぁその話は頓挫して今日も給食にありつけるのである。いや毎日ごはんが美味しく食べられるのはありがたいのですよ。


 今日のメニューはホワイトシチューにコッペパン(+マーガリン)とオレンジ一切れと牛乳パック1つ。ごはんじゃなかったけど美味しく頂こう。


「おいチビ! お前シチュー嫌いだったろ? 俺が喰ってやるからよこせよ!」


 ……うわぁ、またかぁ。

 スプーンを口に入れる直前に正面に立ちふさがるように両腕を組んで現れたのは、レトロガキ大将まっしぐらのおガキ様とその取り巻き子分が2人だった。

 大将の名前は「菅原 勘八」。子分は左のひょろとしたのが「渋川 轟」、右の太ったヤツが「尼唐 誠二」とこれまた名前まで微妙な奴らだ。意味も無く威張り散らすこのクラスの鼻つまみ者。なんだが何故か僕に妙に絡んでくる厄介者だ。


「ほら、せっかく勘八様が手伝って下さるってんだ! 早く差し出せ!」

「そ、そ、そうするん、だ、だな~!」


 こいつら、自分達の分を確保しつつ僕のに目を付けに来るのが面倒で仕方ない。早く自分の席に戻ればいいのに。度胸も無いのにタカりにくるので非常に面倒なのだ。そのくせ先生とかの前だといい子ぶってるもんだから始末に負えない。


 相手にするのも面倒なのでそのまま食べ始めようとしたとき、シチュー皿にスプーンが突っ込まれた。


「お、おれのツバのついたスプーンが入ったからこれ俺んだかんな! もう決まったんだかんな!」


 ……小学生か己は。 まったく中学にもなって恥ずかしいことだ。

 あほらしいので無視して食べ始める。誰かのツバ入り? そんな程度でシチュー(肉入り)を逃すほどお人よしじゃぁないのだよ。


「うわぁ! こいつきったね~!」

「人のツバ入りとか、なんで平気で食えるんすかねぇ?」


 自分のツバだろうに、よくそう言えたもんだ。そもそもの次元としてその程度の嫌がらせ何ぞ通じる訳がない。飯が食えないことの方が遥かに問題なのだ。


 何やらブツブツと文句が飛び交っている気がしたが、面倒なので無視を決め込んだ。そういえばこいつらのはチェックしてなかったな。どれどれ…… おんや?


「え? オムツ……?」


「ん?」

「う~?」

「はっ!?」


 [ステータス]が[鑑定]になって詳細情報が見れるようになり、相手の装備品もチェックできるようになったのだけど、その装備品の一つにオムツがあったのだ。あまりの場違いさについ口に出していたらしい。


「あっ、いや、特になんかあるわけじゃないから。うん。僕は気にしないよ?」


 にんやりと、微妙に目線を下げつつも笑顔で答える。最初は興奮していたのか真っ赤な顔が、僕の目線が下に下がりつつニヤリしたところでぼか~んとした表示になり、先ほどのセリフを思い出したのか急に血の気の失せた青に染まる。まったく忙しいことで。


「何いってるんすか? わけわかんないっすよ。ねぇ勘八様?」

「そ~、そ~なんだな~」

「……そ、も、もういい! こいつの事はもうどうでもいい! てめえら戻るぞ!」

「え? は、はい!」

「はっはいぃなんだな~」


 突然の心変わり(?)により僕の昼食の平和は守られた。いやぁ何がなんだかわからないうちに解決(?)してくれて助かったよ。

 君の中学校生活の平和は僕の発言次第で守られるってことなのかな? いやぁいいこと知った。これからも平和な給食を満喫したいものだね。



※始業時間が明らかに間違い(早過ぎる)ので修正。またルビ表記になってしまっていた表現を訂正。


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