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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第二章 僕の日常生活?
31/45

08.もうなんというか、隠しようがありません。マッパですから。

 結局裸に剥かれました。



 そのままお風呂に投げ込まれました。24時間風呂とかいうものだそうです。超羨ましいです。


 というか事務所と思っていたんですがそのまま住居を兼ねるようなものだそうです。

 で、何をのんきにしているかというと、絶賛髪を洗われ中です。当然二人とも裸です。もうごまかしようがありません。前も後ろも磨かれ放題でした。もうお婿に行けない…… って開き直ったんでしょうか妙に余裕が出てきました。


「このお店さ、私のなんだけど店員とか雇ってないのよね。本気で私の趣味だけの店だから」


 収入も安定せずその日の気分で決まるような営業方針についてこれる人は少ないみたいです。


「でもさ、一応これでもこの業界でそれなりに名前は売れてるのよ。ほとんど両親のおかげだけどさ。あと私に出資してくれるスポンサー。まぁ色々とコネがあるから意外とお客さんは来てくれてるのよね。依頼っていうか相談みたいなものも貰うし」


 元々布関係で有名だったご両親の影響で服のデザイン関係に進むも自身の才能の無さを自覚してから一転、コーディネートの方向で生きていくことを決めたそうです。


「一言でコーディネートって言ってもね、その人に合った服装っていうのは案外難しいもんでね」


 人の着る服というのは収入や生活習慣、普段の行動からその時の体調に至るまで千差万別。着方によっては運命さえ変える力があると力説されても、ちょっとわかりませんでした。


「まぁつまり、優ちゃん可愛いよねってこと。OK?」

「あ、はい。もう何でもいいです」


 既に浴槽に入っています。というか僕は小森さんに抱えられるようにして入っているのです。ナンデでしょうか? 妙に落ち着くのがなんだか不思議です。


 それはともかく、僕の可愛さなんて所詮はAPPによる底上げ。自然に美人になったり努力で勝ち取った人たちなんかと比べたら何の実も無い、言ってしまえば虚像に過ぎません。


「ん~、謙虚なのは美徳っていうけどね。美貌を隠そうとするのはただの罪悪よ?」

「罪悪……悪いことですか?」

「ん~ま~、トラブルの元になることもあるし出しっぱなしってのは悪いけど、隠し続けて隠しきれるもんでもないし、普段から隠しているだけに露見した時の衝撃ってのは酷くなるものよね」


 イマイチ言いたいことがわかりません。


「ま、君が男の子として生活していた女の子ってのはわかったわ。つまりこれからも男の子として生活したいのよね?」

「はい」


 少なくとも孤児院を出るまでは現状を維持したい、そう考えてます。


「そっか~、でもね。それって結構キビシイと思うのよね」

「そ、そうですか?」

「いや、優ちゃんは女の子の身体のことなめすぎ。まだみたいだけど第二次成長っていって男は男らしく、女は女らしく身体が作られていく時期にそろそろ差し掛かると思うの。そうなったら絶対隠せないわよ?」


 今でもなんだか疑いの目で見られているのです。あと1年もしないうちにそれは顕著になるでしょう。あの舐めるような視線が、まだ「男の娘?」程度の興味と好奇の目で見られているうちはいい(?)かもしれませんが、どう考えても普通の女子っぽくなってしまった身体を誤魔化してあの孤児院内で生活が、できるとは俄かには、ちょっと考えられなくなってきました。


 そう、考えるまでもなく考えておくべきことだったのでしょう。あのエロオヤジの居城で生活するという意味を少しでも考えることができるなら。たまに見かけた無気力な女子の態度を、見ればどういう扱いをされるかなんて想像できてしかるべきだったのでしょうか。


「しかし不思議よね。男として生きてたんでしょ? どうしてたの? その、水着とか」


 まぁ誰も信じませんよね。デフォルト設定だと男だったなんて言われても。全く意味がわかりません。


「……まぁ難しいことはそのうち学者先生にでも突き止めてもらえればいいし、別に原因を知りたくなければそのままでもいいしね」


 根掘り葉掘り聞かれる訳でもなく、とりあえず現状として「こうなっている」僕をそのまま受け止めてくれる、この小森という人のことを僕は信用しかけているんだと思います。まぁどちらかというと信用しないと僕が破滅するからかもしれませんが。


「まぁ、私としてはね。私の選んだ服を着て欲しい。もうそれだけだし、それ以外に興味はないの。ただ普段の生活を維持したいというなら手伝うし、環境的に改善されないならそっちでも協力できると思うしね」


「そ、それって?」


 環境が変わるなんてどうやるんだか、あの孤児院って出るのって意外に面倒みたいなんですよね。それこそちゃんとした就職先を見つけるとでもしないと。でも孤児院出の何の後ろ盾もないガキなんか雇おうって人はいないんですよね。未成年だし。


「まぁウチで雇うってのが一番シンプルなんだけどさ、きっとそれは優ちゃんの希望とはちょっと違うと思うんだ」


 あれ? てっきりここの子としてお世話になるみたいな流れかと思ってたんだけどなぁ。


「うん、まぁそれもいいなぁって気はするんだけどさ、優ちゃんはここで生活するってことは「男の子」として生きていかないといけなくなると思う。やっぱ男の子として産まれて生きた優君としての人生ってのがこの土地にはあるんだと思う」


 まぁ、僕が僕として生きてきた以上、僕のままでいないと僕がどうなるかわかったもんじゃない。考えててややこしくなってきたなぁ。


「そうするとさ、いっその事ここから出て新天地に向かうほうがいい。新しい土地で『女の子』として新しく生まれ変わった気分で。それがいいと思う。まさか自由に男女を切り替えられるとかないよね? そんなゲームみたいな超能力の持ち主だったら全く考える必要も無いことなんだけど」


 実は一度考えてみたことがあります。スキルのリストにないかなぁって。

 まぁありませんでしたけどね。「性転換」とかどんなスキルだって話で。

 精精が「変装」とか「偽装」とかくらいだと思う。変り種で「幻覚魔術」というものあったけど、どちらにせよ付け焼刃にしかならんし。


 魔法が万能なら何か方法があるのかもしれないけど、僕にはその手段が許されていないみたいだ。


「じっくり考えて、と言いたいけどあまり時間は無いと思う。君は今とても危ういんだ。君自身でいられる場所が、今まで過ごして来た場所が君であることを許さない。むしろ一番許さない場所かもしれない。ここもそんなに安全でもないしね」


「小森さん……」

「……なぁにぃ? 聞こえないなぁ~?」

「た、孝子さん?」

「はいはい、孝子さんですよ~、なに? 優ちゃん」


 孝子さんは実はDカップくらいあるので結構なボリュームなのだ。いきなり揉まされた時は本当にドキドキしたよ。なんでそんなこと言うかって? 凄い勢いで押し付けられてるんですよ。というか抱きしめられる形でがっちりホールドされてるんです。既に脱出不能な状態だってことですね。まぁ気持ちいいんですけど微妙にちくちくします。これが女の子としての嫉妬ってやつでしょうか? えぇちょっと羨ましいです。


 と、芽生えかけた嫉妬心はどうでもいいのです。どちらかというと孝子さんのことです。なんでこんなに親身になってくれるんでしょう? どう考えてもデメリットしかないっていうのに。


「どうして孝子さん、は僕に親切にしてくれるんです? 別に何もメリットないですよね?」

「そりゃぁ、優ちゃんカワイイし? あたしの服着てもらいたいしね」

「僕は可愛くなかったって言ったら信じます?」


 生まれつきこんな感じじゃなかった。僕はゴミと同列に扱われていたんだって。三人娘だって僕のことをまともに見たのは最近なんだってことを。丁寧に説明したつもり。あまり自信はないけど。


「ん~、まぁつまり、不思議な事が起こったんだね」

「あ、まぁそうですけど、なんていったらいいんだが」


 魔法なんて説明しても説明しきれない気がします。一応実証できるといえばできるんですが見せていいものか悩んだりしますし。更に異世界のことを話したところで理解してもらえるか、ここまで行くとイタイ子として見られる可能性のほうが強い気がしますし。う~ん。派手な攻撃魔法とか覚えたほうがいいんでしょうか。


「なんというかさ、君はね。ガラスの靴を見つけたんだよ。もしかた見つけられたのかな?」

「ガラスの靴?」

「そう。魔女との取引。12時になったら消えてしまうはずの一夜限りの素敵な魔法。君の場合はこれまでの人生が魔法で隠されたものだったんだよ」


 シンデレラはお城の舞踏会に出て王子様とダンスをするために魔女と契約した。一夜限りの夢のために。どんな代償を求められたのかな。 僕はどんな代償を支払ったんだろうか?


「昔の苛められっ子の僕というのは魔法をかけられた姿で、本当は女の僕こそが本物、今の姿こそが魔法が解けた僕そのものだっていうんですか?」

「意地悪な魔女がいたものだね。でもそれはそれで意味があったんだと思う。私はむしろそこまで酷い生活をしながら、周囲をうらむでもなく真っ直ぐ育って来た君だからこそ、今の姿に相応しいと思うよ?」


 そう、だろうか。確かに周囲を恨むようなことは、多分してない。そんな余裕が無かったってだけなんだけど。孝子さんは僕を過大評価している気がする。

 でも、なんだか嬉しい。変えられてしまった僕だけど。多分戻れなくなってしまった僕だけど。僕は僕。その僕のまま、今のままでいいと言ってくれる人なんて。誰もいなかったし。そもそも相談できなかったけど。


「僕、そんなに、いい子じゃ、無いですよ?」

「いい子かどうかなんて自分で決めるもんじゃないさ。いい子ぶるだけのヤツよりよっぽどいい」

「千恵さんや恵理さん、恭子さんだって、いい子ですよ? 僕のこと、心配、してくれました、もん」

「あいつらだっていい子さ。ちょっとばかしワガママが鼻につくくらいだよ。手伝いが欲しいって頼めばちゃんと手を貸してくれるしね」

「僕は、僕は、僕は……」


 ダメだ、言葉が続かない。


「いいから。今日合ったばかりのヤツに何言われたって信じられないのはわかるよ。でも、だから判ることもある。優ちゃんはいい子さ。あたしが保障する。自分のことは案外見てないもんだからね。いいじゃないか少しくらいアタシのことを信じてくれたってさ」

「は、はい。僕、孝子さんのこと信じてますよ? 僕のこと信じてくれてるって信じてます」

「あら、嬉しいこといってくれるじゃない。やっぱり優ちゃんはいい子だよ」


 やっぱりお風呂はいい。とてもいい。でもなんだろう。今日は体がというか、胸の奥がジンジンと。なんだかあったかい。



========== (孝子) ==========



 あれから優ちゃんは寝てしまった。やっぱり心理的に相当に追い詰められていたんじゃないかな。


 というかよく保っていたと思う。これだけの変化の中でよくあんな過酷な日常を送れたと思う。

 さて、実際に目にして思ったのは「本当にいたんだ」ってことだ。半信半疑だったけど、こうして触れて確認したんだから間違いない。

 さて、連絡連絡っと。おぉっと相変わらず早いな。いつ寝てるんだろう?


「……あぁ、お久しぶり。そっちはどうです?」

『相変わらずね。で、どうしたの? 貴方から連絡なんて珍しい。増資の無心かしら?』

「この店だけでも満足ですよ。まぁちょっと話が変わりそうですけど」

『……どういうことなの?』

「いました。というか来ました。今日」

『……、確認するけど、本当なのね?」

「えぇ。言われた通り、『元男の女の子』、『名前はユウ。優しいと書いてユウ』。間違いないでしょう」

『そう。……どうだった?』

「元気ね。ちょっと落ち込んでたりしたり、環境の変化がどういうことなのかを理解し始めた頃って感じ」

『そう、あんまり良くはないけどまぁいいわ。で、貴方から見てあの子はどう?』

「あれ? 『惚れるわよ』って」

『それ、贔屓目で見てる自覚はあるけど、それを差っぴいてもいい子よ』

「そうね。惚れるって感じじゃないわね」

『……へ~、意外ね。貴方がそんな反応だったなんて』

「良くてベタ惚れね。うん。一目見たときから決めてましたって感じ」

『……はぁ?』

「やばいわぁ、ツヤツヤだしプニプニだし、良い匂いがするって良く言うけどアレね。アレがそうなのね。香水作ったら億万長者ね」

『……ねぇちょっと?』

「ほんとウチの子にしちゃだめ? 駄目でもついてっちゃうかも。結構マジに」

『……孝子ぉ?』

「あ~うん、ちょっと調子に乗り過ぎた。ゴメンナサイ」

『……とりあえずその話は片付いてからね。迎えをやるから保護してて頂戴。明日には連絡取れると思うから』

「いいんですか? 優ちゃんの意見も聞かずに」

『いいの。結局だけど彼女は選ぶから。えっと、グ、じゃないや、あ~っと、た、たけもよ?君は知ってるわね』

「あ~はい。彼ね。一度来ましたから。彼は信用していいんですか?」

『大丈夫。アレは裏切らないから。今回は特に』

「はぁ。まぁいいんですけど。でも軟禁みたいなことはしませんよ? 優ちゃんがいやがると思いますし」

『わかってるわ。アレの好きにやらせて頂戴。まぁ無事に済むとは思うのだけど。合流前のことは話したがらなかったから良く知らないのよね』

「流石の代表でも知らないことはありますか」

『当たり前でしょ。何でも判るならこんなことしてないわよ』

「それもそうですね。それじゃそちらの手配はお願いします」

『わかったわ。それと』

「……なんでしょう?」

『気をつけて。多分何かあるから』

「なんかヤだなぁ。具体的には?」

『引っ越すかも』

「え~、いいお店なんですけどここ」

『代わりは用意するわ』

「まぁ五体満足で優ちゃんに服着せられるならなんでもいいですけど」

『それは当人と交渉して頂戴。それじゃ』


 あぁ、やっぱり何かあるのか。あの人絡みだといつもこうだ。

 まぁそれでも、こんな可愛い子に関われると知った今なら何の問題もない。うん。がんばろう私。



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