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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第一章 僕の学園生活?
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02.状況を説明してもらえるだけありがたいかもしれません。

※初日のみ3話の連続投稿しています。4話以降は一日一話(午前11時)の予約投稿の予定です。

 身体がしびれる。ボランティアと称してコキ使われた後のように体中がだるく、ついでに全身がなにかズれたような違和感が襲う。何かのマユに包まれているような曖昧さ。自分の体が自分の物ではないような違和感が強く感じられた。

 これはアレだ、疲労で体機能が麻痺しかかってるってことだと思う。元々少ない栄養(食事)しかとれてないのだがら当たり前かもしれないが、そんなに奉仕活動を強いられていただろうか?

 ここんところはエロジジイも外目を気遣って無茶なことをさせなかったはずなんだが。やっぱ病院に担ぎ込まれるってのは効くよね。役所の人も『庇いきれないんで適当にしてくださいよね』って大きな封筒片手にニコニコ話してたのを覚えている。こういうの見ちゃうと世間の大人ってのは信じちゃいけないってよくわかるよ。


「あら? 起きた? やっぱちょっと無茶だったのかしらね。次から注意するから許してね」


 そういえばあの女に何か?されたんだったか。通じなかったはずの言葉を理解させたり、額に紙を当ててなにかを調べたりとどう考えても現代日本の変態科学技術でも追いつけないようなファンタジーなことを実際に実行してくれてるんだから、まぁそろそろ諦めて認めるべきなのかもしれない。


 一応「全部夢」って選択肢もあるんだが、あの激痛の後でそれはないだろう。あぁ一応確認しておくと、夢の中で自傷行為をしても全く痛くないんだと。起きちゃうかららしいけどね。昔に崖のぼりをしている最中に手を滑らせて落下した夢を見たことがあるけど、起きてしばらくは床にでもめりこんでいるかと思うくらいに体が沈み込んだ感触があった。普段の煎餅布団がこれでもかってくらいに沈み込んでいる気がしてたもんだ。


「ちょっと起きてよ。やっぱ本人の希望も聞いておく方がいいかな~って思ってるのに。こっちで勝手に決めちゃうわよ?」


 落下の衝撃が体に残ってる気がしてまったく動ける気がしなかった。あれがリアルだったら全身複雑骨折どころか、超お手軽投身ダイエットってところだ。思いっきり体がスリムになるだろう。主に前後方向にだけだが。いや、もしかすると前から見ると膨らんで太って見えるのか?


「ね~何か希望とかないの~? 使いたいスキルとか~、希望する才能とかさ。魔術も何か覚えた方が便利じゃないの?」


「魔術!?」


 うん。ステキワードだよね。魔術。


「やっとこっち見た。んじゃきめましょうかね~、って私は殆ど攻撃寄りだから防御とか後方支援系で考えてくれると助かるんだけどな~。元々そのつもりで従魔の召喚陣使ったしね~。あ、探知とかの斥候系でもいいんだけどね~。途中の宝箱とかも見逃したくはないし、いい出物って隠し部屋にこそあるっていうじゃない?」


「いやいやいやいや、ちょっとまって欲しいんですが。え~~~マジでゲームじゃないですか。魔術? 魔術ってあれでしょ? 手のひらから火の玉がど~んってな具合の」


 つい反応してしまったが、魔術とかってなんだよ! 使えるならマジで欲しいわそんな才能。


「知力も高いしね~やっぱ魔術よね~。状況によっては精霊魔術の方が効果があることもあるけど、あれは元から好かれる体質でもないとちょっとね~、ってポイントあるからふっちゃえば一応可能か…… でもそこまでしても半分運になっちゃうからちょっとお奨めしにくいわね~。やっぱ単純属性魔術からの複属性、派生の統合魔術までを含めた『純魔術』がおすすめよね。でも応用のことを考えたらちょっとした賭けだけど『魔術術理』を取って新魔術創生ってコースも捨てがたいわね。当人の資質次第なところだけど……」


 なんかこの姉さんやたら饒舌なんですが、自分はどうしたらいいんでしょうかね? なにやら本気でこの人に人生握られちゃった気がしてきたよ。


「ちょっと落ち着いて下さい。さっきっから混乱しまくりで何にもわかんね~んですけど、一つ教えて下さい」


「ん? なに?」


 ブツブツとお悩み中だったのだが、僕の一言でこちらに向いてくれた。

 クリッとした大きな目がとても印象的な、意志力の強さを感じさせてくれる。なんだろう、こんな悪意のこもらない目線って初めてじゃなかろうか?


「その、ここ。どこなんです? 時差が凄すぎて日本じゃない気だけはするんですが」


 そもそも寝てたしね。多分だけど。

 そんな当たり前の疑問に軽く。本当に軽くお答え頂けやがりました。


「え~~っと、たぶん『ニホン』って町? 国? のある世界じゃないわね。ここはアルタイム王国にある私のお屋敷。ついでに言うと貴方は私の従魔扱い。簡単に言うと奴隷みたいなもんね」


「……奴隷? 主人のいう事を聞かないと罰とかでムチ打ちされちゃうような?」


「そういうことはしたくないけど、してる人はいるみたいね。それともして欲しいの?」


 僕はノータイムで断った。痛いの嫌いだし。



----------


 なんか色々と勢いで捲し立てられながら事情説明を頂いた。


 目の前のファニシエール嬢はこのエードルクツヴェン家のお嬢様、ということらしい。豪商の娘で、今は学生の身であると言っていた。

 取り出した紙は「呪印紙」というマジックアイテムで…… まぁもうわかってるけどここはどんな風に解釈しても地球ではない。物理法則すら同一であるとは思いにくい。

 で、その紙を使って戦うことの出来る『呪紙魔術』の使い手だそうだ。メリットとして使用するMPを抑えつつ魔術師のように攻撃したり、肉体を強化しての物理攻撃等があげられるらしい。といっても彼女は攻撃がメインで補助的な役回りには向かないとのこと。

 呪紙魔術は呪文詠唱等の制約も無く、予めMPを呪印紙に封じ込めておくことで緊急時の対応までこなせる万能魔術なのだ! とか自慢してたけど、自分のフィーリングに合わない系統の魔術はほとんど発現しないピーキーなものらしい。


 で、このフィリー姉様(結局こう呼べと命令された)は『攻撃って言ったら一撃必殺!』ってな性格で、とにかくド派手で高威力な魔術とか一撃必殺系が好みらしい。逆に言うと探索とか索敵とかそういうったものがからっきしダメなのだそうだ。

 初等部の頃はそれでも通じたらしいけど、中等部から始まる迷宮実習では散々な目にあって酷いことになったとか。このままだと落第だとも言っていた。


「それならご学友と一緒にってことなんじゃないですか? この場合の定番だと」


 まさかソロ攻略ってことはあるまい。そんなシビアな世界なら使い魔とか許可されそうにないし。


「まぁ定番って言われちゃうとそういうもんだと思うけどね~。私ほら、金持ちの子でしょ? 周りからなんか変な目で見られちゃってて、誰かと組むって感じじゃないのよね」


 さり気に金持ちアピールされても仕方ないのだけど、どうやらハブられているらしい。

 フィリー姉様の通う学院だが、本来なら貴族が拍付に入るようなところらしい。つまり金だけある庶民の子などはここに来るなって空気があるそうな。

 ならそんな子供を受け入れる制度なんかつくんじゃねぇって言いたいが、学院の維持費捻出にはそのへんから吸い上げる寄付金という名のワイロが重要らしい。貴族だってメンツのためにたっぷり払うだろうに。そこんとこどうなのかね。


 ってなわけで微妙にハブられているせいでソロ攻略を余儀なくされたフィリー姉様は「学友が確保できないなら使い魔を使えばいいじゃない!」という考えに至ったのはいいのだが、問題は方法である。


 元々『召喚魔術』といった文字通り使い魔を呼び出す系の魔術を覚えているならいいのだが今更路線変更できるほどの余裕はないらしい。かといって『錬金魔術』といった魔術物質の生成によるゴーレム等の護衛を作り出すような真似も論外。そもそも彼女の性格上そんな繊細な魔術は範疇外だそうだ。


 そこで登場するのが『呪札魔術』。元々こちらの才能は伸ばしていたものもあり「あらかじめ召喚魔術を込められた呪印紙を使えばよくね?」という発想に至った彼女は、父親に泣きついて四方八方に手を尽くしてもらったようだ。

 汎用性も高く利便性も高い正に万能魔術とも言える呪印紙だが、術者の才能に左右されるという最大のデメリットのためにこの手の魔術を込めた呪印紙はほとんど手に入らなかったようだ。元々製造段階でのコストパフォーマンスが最悪なために取得する人は少なかったらしい。


 やっとのことで手に入れたのは、なんと国宝指定級のビンテージ物の逸品。昔に勇者召喚をせしめた一流術者の残したものだそうだ。といっても実際に勇者とやらが召喚された呪札ではなく、何かを召喚できるものであるとの鑑定はされていたが『何が出るかわからない』とかいうやっかいな紙でしかないわけで。下手すると魔物とか出てきたら困るよね~ってことで以後その存在を忘れられるまで放置されていたらしい。


 その程度で引かないのがお嬢様の凄いところではある。


「いやほら、殴れるなら従わせるのも簡単かな~って思って」


 いやそのテヘペロって可愛いですけど、言ってることまるで可愛くありませんから。


「殴って従わせる気があるなら、その辺の気弱そうな生徒を殴って従えればいいじゃないですか」


 実力行使前提ならどう考えてもそっちの方がお得でしょ。

 と思ったんだけどそういう訳にもいかないらしい。微妙に困った顔を横に向けながらフィリー姉様は口を開く。


「それで済むなら楽なんだけどね~。ほら、うちって商売してるでしょ? そんでもってあの学院の生徒って大抵貴族、つまりお得意様なのよ。下手に喧嘩売ったりしたらそりゃぁもう実家が大変なことになるってわけ」


 無鉄砲な性格にも思えたが意外と考えてたのか。


「そ~ゆ~わけで、貴方は私の護衛なのよ。本当は猫とか犬とかがよかったんだけど、まぁ女の子なら同室してても文句言われないっしょ」


 とかニマ~っとした笑顔を向けていやがります。

 いろんな事情があるのはわかりますけど、ついでに小柄で頼りないのもわかりますけど、いう事かいて女の子呼ばわりはないかと思んですけどね。


「でも僕、男ですよ? ここ12年くらい男として扱われてますし」


「あ~、無設定だと基本男っぽいのよね~。でもさっき女で確定したわよ? その方がMPに5%のボーナスあって便利だし」


 5%のボーナスって、本格的にゲームしててもう何がなんだか。






 女で確定したわよ?


 女で確定?




 オンナ?



 とりあえずジャージを降ろす。





「しっかし、その年齢になるまでステータスにすらポイント振ってないなんてどうかしてるわよね。って素でその知力になるまで伸ばしたってことでしょ? どんだけ本読んでたのよある意味凄いわよそれ。んでも体力も筋力も最低限に届いてないのは問題よね。おかげで魅力値まで影響されてるし。ちょっとぐらい増やしとかないと歩くだけで死にかねないわね…… まぁポイントも多いしちょっとくらい使ってもいいか」


 ってなんかしてるぞこのクソアマ。自分のことなんだから僕の許可くらい一応取ってだなって従魔扱いだから勝手していいと思ってるのか? 多分そういうの関係無しに性格な気がしてきた。


「ちょっとまって! 一応相談して決めようとかして欲しいんだけど! なんかスゲー後悔しそうだし! ってうわなんか体痛い! バキバキ言ってる!」


「あ~成長痛ね。もしかして初めて? そりゃそうよね~ステータスにも振ってないんだがら自然増分だけじゃぁまだ起こる気がしないもの」


 すんませんマジ謝りますからもう痛いの勘弁してください。泣いても無駄かもしれませんがもう本当。痛いのだけはイヤ。我慢してても痛いのだけはいつまでも慣れないから。


----------


 幸いなことに、気絶するような痛みは襲ってこなかった。さっきのよりは楽な変化だったのかもしれない。


 あぁそうですよ。無いですよまじで。ポロッと取れてるのかと思って、そのへん落ちてないか探しましたよ。

 探しましたよ……


「え~いいじゃない、貴方ちっちゃいからちゃんといじれば結構かわいくなれるわよ? まぁ元々の数値次第だけど、今なら何とでもできるし。っていうか可愛いほうがいいわよね? その方が色々得だし。私もその方がいいから」



 男が可愛いとか言われても嬉しくねぇっす。むしろ小っちゃくていじめというか搾取の対象でしたし。



 しかし女か…… エロジジィに見つかったらマジでヤバイな。魅力値高いなんて最悪じゃないか。

 そんな心配事しか思い浮かばなかったんですよ。いやほんとほんと。



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