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命の在り方  作者: けもにゃん
14/81

挿話 太陽暦と世界の歴史

 太陽暦制定以前


 我々の生きるこの世界には様々な種の竜族ドラゴスが住んでいる。

 今でこそ我々は竜族ドラゴスとしてひとつの総称を持っているが、太陽暦の制定以前は様々な言語、様々な思想があったため、種族間の衝突が間々起きていた。

 竜族ドラゴスは総じて無駄な争いを好まない。

 だが、思想の違いにより争いになることは多く、初代国王であるマイラスは世界で初めてそんな世界を統一した偉大なる王である。

 初代国王マイラスは言語も思想も違う者達を、その言葉に込められた想いを聞き取ることの出来る種族であった。

 また同様に言葉を用いず、自分の意思を伝えることができた。

 マイラスはその力を用いて様々な種族の思想を理解し、そして共に思想のズレを和解させ、長い年月を掛けてついに世界に住む竜族ドラゴスたちを一つにまとめた。

 言語を統一し、全ての種族の納得のゆく共通思想を産み出し、初めて国家を形成した。

 そして、国家誕生の日を太陽暦元年に制定し、全ての者が生きやすくするために、様々な法を生み出していった。

 法を作り、国を造り、竜族ドラゴスを一つの種としてまとめた初代国王マイラスは、またの名を『法王マイラス』と呼ぶ。



 太陽暦814年


 初代国王マイラスが老衰により死去。

 惜しまれつつ亡くなられた初代国王の意志と座を継ぎ、二代目国王アルビサスがこの年国王の座を即位した。

 二代目国王は屈強な肉体を持ち、豪腕で名の知れた王だったが、決して力で物事を解決せず、より多くの者が生きやすい世界を作るため、国王自ら国の発展に尽力した。

 初代国王は自然の中に生きることを大事にしてきたが、二代目国王アルビサスは自然の中に人々の行きやすい世界を作ることを推し進めた。

 この思想にはもちろん反対もあったが、国王自らその反対意見を述べる者の元まで足を運び、国王が直接話し合いの場を設け、頭を下げたことは今でも有名な話である。

 二代目国王アルビサスの誠意ある対話により、国はより発展し、今までとは比べ物にならないほどに技術が発展していった。

 初代国王は方に注力したが、二代目国王は他種族の者達がここに持っていた技術の発展に注力していった。

 魔法と呼ばれる不思議な力を扱う者たちのために魔導の研究施設を造り、道具を用いて自動的に動く、機械と呼ばれる物を作ることのできる者達のために科学の研究施設を造りあげた。

 無論、二代目国王であるアルビサスはこれらの技術を理解はしていたが、扱うことはできなかった。

 それでも世界を発展させるために、その後もその種の中で受け継がれていた技術を全面的に支援し、様々な種が活躍することのできる世界を作り上げた。

 その後太陽暦1427年には世界最高峰と謳われる最上位総合学術院『グリモワール』を竣工し、今まで種族内で受け継がれていた技術は、求める者が学ぶことのできる世界へ変わっていった。

 技術の進展と、国民の利便性の向上を行い、力に頼らずどんな者とも平等に対話を行った二代目国王アルビサスは、またの名を『義王アルビサス』と呼ぶ。



 太陽暦1682年


 二代目国王アルビサスが病により死去。

 人望も厚く、若々しさもあった二代目国王アルビサスのあまりに急な病死は多くの者に衝撃を与えた。

 国中が動揺し、言葉にできない不安を抱える中、三代目国王セラフィスがこの年国王の座に即位した。

 先代国王の病死もあったためか、三代目国王セラフィスは療養学に注力した。

 後に魔導医療学と呼ばれる、魔導学の中でも単純な回復を行う魔法ではなく、肉体の根本的な治療を行うための先行研究機関を設け、同様に医療学や薬学も三代目国王セラフィスの支援により飛躍的に技術力が上がった。

 また三代目国王セラフィス自身が女性でもあったため、将来を担う子供によりよい教育、よりよい環境を与えるために、一箇所に集中していた国を分散させ、様々な環境を体感することができるようにその分散した小国間を結ぶ道を作り出した。

 土地が増えたため、新たに様々な発見や、現存の技術の発展も行われた。

 新たな発見は、更に療養学全般の後押しをし、三代目国王セラフィスの即位後は病死、事故死が激減していった。

 そうして多くの者の心に余裕が生まれたためか、この頃から同様に娯楽の文化も少しずつ発展をし始めた。

 中でも三代目国王セラフィスは音楽を非常に好まれ、音楽の分野は娯楽の文化の中でも進歩が早かった。

 療養学を発展させ、娯楽という文化を確立した三代目国王セラフィスは、またの名を『療王セラフィス』と呼ぶ。



 太陽暦3864年


 三代目国王セラフィスが老衰により死去。

 国も大きく発展し、人々の心も豊かになっていた時に訪れた三代目国王セラフィスの死去の一報は、多くの者に深い悲しみを与えた。

 三代目国王セラフィスの跡を継ぎ、四代目国王コルマーシュがこの年国王の座を即位した。

 四代目国王コルマーシュは先代までの国王とは違い、平等な価値観というものを生み出した。

 商業においてこれまでは物々交換が常識であったため、トラブルが何かと多く、先代までの国王達もこのことに頭を悩ませていた。

 そこで四代目国王コルマーシュは多くの者を魅了する、金や銀などの鉱物を一定の工法を用いて共通の価値のある貨幣という物に作り変えた。

 最初に国王自身がその貨幣の価値を制定し、貨幣という共通の価値のある物を対価にすることにより、商業の業界のトラブルは次第に解決してゆくこととなった。

 しかし、貨幣の登場により商業におけるトラブルが減少した代わりに、価値のある貨幣を狙った窃盗や偽造が行われるようになり始めた。

 四代目国王コルマーシュはこれも新たな法律を定め、素早く対応し、同様に悪事を働く輩を取り締まるための自警団を作り出した。

 そして窃盗の多くは国家間の道中でよく行われていることに注目し、整備を行い見通しが良く、荷車などで運搬しやすいようにしたため、横行していた犯罪が徐々に減少していった。

 しかし、犯罪の現象速度はこれまでに比べて低く、あまり効果がないようにも思われたためか、商売を行っている者たちから不満の声が上がった。

 それに対し四代目国王コルマーシュは奇抜とも言える新たな業種、『冒険家レンジャー』なるものを作り出して、この問題を打開した。

 世界を冒険し、新たな発見を報告するだけで報奨が貰えるその業種は今でも多くの若者の人気の業種となり、この業種が定着する頃には犯罪は激減していた。

 商業の発展と新たな業種、奇抜な発想で多くの者を魅了した四代目国王コルマーシュはまたの名を『商王コルマーシュ』と呼ぶ。



 太陽暦3912年


 四代目国王コルマーシュが殺害され死去。

 史上初の国王の凶報であり、この年初めて竜族ドラゴス以外の種族を我々は目の当たりにした。

 後に人族ヒュムノと呼ばれる者達がこの日海を渡り、我々の国へ訪れた。

 見たこともない巨大な、海に浮かぶ建造物から彼らは次々と現れ、対話を試みようとした四代目国王コルマーシュを一方的に惨殺した。

 国中が恐怖で怯える中、後に五代目国王となる、当時自警団総隊長を務めていたファイスが指揮をとり、この驚異へ立ち向かった。

 国内へ進行されることを辛くも避け、次の進行の前に戦う術を得なければならず、彼らは落胆した。

 竜族ドラゴスに比べ、人族ヒュムノは圧倒的に小さく、力も弱かった。

 だが、彼らは非常に賢く、非力なはずの彼らに様々な策を用いられ、防戦を行うことで精一杯だった。

 種のみを見れば、竜族ドラゴスが圧倒的に有利であったのにも拘らず、我々竜族ドラゴスは戦うことの知識があまりにも乏しすぎた。

 自警団を支援するため、力ある者は彼らの助太刀を行い、魔導師や医師は傷ついた者を治療していた。

 長きに渡ると思われていたその争いはその日から十五年後には終焉を迎えた。

 魔導師が魔法を攻撃へ転化する方法を考えついたことにより、その局面は一瞬にして竜族ドラゴスが圧倒的なまでに有利になった。

 魔法による攻撃で人族ヒュムノの拠点は壊滅し、生き残った者も既に多くが負傷しており、争いはそこでようやく終わった。

 竜族ドラゴスたちも多くの者が命を落とし、人族ヒュムノへの恐怖や怒りを募らせていたが、ファイスは彼ら人族ヒュムノを根絶やしにすることはなかった。

 小さく、力のない人族ヒュムノ竜族ドラゴスが恐ろしかったのだろう。とファイスはその時語っている。

 争いの後、生き残った人族ヒュムノの目は竜族ドラゴスの国民達と同じ怯え切った目をしていたと言い、最前線で戦っていたファイスは人族ヒュムノを庇った。

 人族ヒュムノを庇ったことは多くの竜族ドラゴスに反感を買ったが、彼らが前線で戦ってくれなければ我々がどうなっていかかも分からなかった。

 結局、その功績と人望から、太陽暦3928年に五代目国王としてファイスは即位した。

 即位後、五代目国王ファイスは人族ヒュムノにまつわる法律を作り、人族ヒュムノの反乱を防ぐため、現存する人族ヒュムノを全て奴隷という身分にした。

 なんとか人族ヒュムノ竜族ドラゴスの生活の輪の中に含まれはしたが、肉親や親友を失った竜族ドラゴス人族ヒュムノと、五代目国王ファイスを良しとはしなかった。

 しかし、五代目国王ファイスは初代国王の意思を忘れず、全ての者が生きてゆける世界を作ることを頑として変えなかった。

 同時に五代目国王ファイスは今後、人族ヒュムノの襲撃のような事が起こった際のことを考え、戦闘技術の向上とその道具の開発、攻撃用魔法の研究を行える施設を新たに設けた。

 人族ヒュムノと戦い、それでも人族ヒュムノを許し、多くの者の反感を買いながらも信念を貫いた五代目国王ファイスはまたの名を『慈王ファイス』と呼ぶ。



 太陽暦3942年

 五代目国王ファイスが怪死。

 寿命ではなく、病でもなく、明らかに誰かの手によるものだったが、その証拠は見つからず、五代目国王ファイスの死は謎のままとなった。

 五代目国王ファイスをよしと思わぬ者が多く、何が起きてもおかしくはなかったが、ついに怪死を遂げ、国中が不信から混乱に陥っていた。

 そんな中、五代目国王ファイスと親交のあったファザムノが現国王である六代目国王として即位した。

 六代目国王ファザムノは以前の国王達とは違いとても寡黙で、静寂を好んだ。

 多くを語らず、しかし世界がよりよく変わってゆくことに様々な面から支援を行っていたため、国民からの信頼は厚い。

 そのためか、現状六代目国王ファザムノはまたの名を『黙王ファザムノ』と呼ばれている。



 世界の歴史 ~太陽暦と国王の項より抜粋

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