ーSpare time at Playー Last Part
「いや、やるっつっても基本的な設定とか決めとかないと…」
あまり乗り気ではないが一応やってみよう
今後何かの役に立つかもしれない
というのは少し大げさかもしれないが
「内容を決めるって事?そんなら俺はオトナの恋愛モノを…」
ライカがいやらしい眼で女性陣を見る
「1人でやってろ…子供がいるだろ!」
アルトが眼を釣り上がらせてライカを叱る
「でも、新境地開拓という意味では…」
セレンは胸をドキドキさせながら言う
「セレン辞めとけ、ロクな事ねぇぞ」
ラルクはセレンの肩に手を置く
「このままでは話しが進まないので学園モノとかどうですか?」
シルヴィアにしては意外な意見が出てきた
「はい、因みに学校行ってた人~」
はーい!と言わんばかりにメリッサだけ手を挙げる
「あ、はい…アタシだけと…アルト士官学校は?シルヴィア君もあんなに高度な魔術使うんなら魔術学校通ってたんじゃないの?」
「いや、私は士官学校でする訓練を全部グレンさんに指導してもらったから…」
「僕も基本的な事はグレンさんに習い、後は独学で…」
「俺はそのシルヴィアに勉強教えてもらってたしな…」
「えっとぉ…みんな学校行った事ないなら出来なくないかなぁ?」
ライカがもっともな事を言う
「だから創造性があるのでは…」
「私も学校行った事無いのでやってみたいです!」
シルヴィアを遮りセレンが眼を輝かせながら言う
「う~んじゃあやろうかぁ~」
ライカが肩を揺らしてセレンに賛同する
(野郎…!)
きっとセレン以外全員がそう思った事だろう
「それでは始めましょう…」
シルヴィアが言うとラルク以外がそれぞれ準備に取りかかる
「おい…そんなにすんなり始める…?」
戸惑いながらとりあえずラルクは部屋を出てみた
「はい席着けぇ、授業始めるぞ~。じゃあ教科書は35ページ開いて…」
先生役のラルクが黒板に字を書く真似をするが
「………」
「………」
黙々と授業を続ける
「…いや、俺も間違ったぁ~って思ったけどさ……お前達続けようとしろよ!!」
我慢出来ずに後ろを振り返る
「今のはラルクが悪い」
アルトが腕を組む
「すみません広げられなくて…」
「学園生活ってもっと華やかなもんじゃねぇの~?」
「つまんなぁ~い」
「学校に行った経験がないから仕方ありませんね」
5本の言葉の矢がラルクの胸をえぐる
「だってさぁ…もうだってさぁ…!」
何も言い返せなかった
「えと、もう一回やりましょう」
そう言ってラルク達はもう一回仕切り直す事にした
「お~い!お~い!」
「バッ…!やめろよぉ~」
ラルクとライカが掃除用具でチャンバラを始める
「ちょっと男子~!真面目に掃除やってよ!!」
メリッサが2人を追いかけまわす
「ちょっといい~?ラルクって人いる~?」
アルトが部屋の扉の所からラルクを呼ぶ
「何?何か用?」
ちょっと面倒そうなのを装いながら返事をする
「アンタに話しがあるって娘がいるの」
アルトに連れられ廊下に出るとセレンとシルヴィアが立っていた
なるほど…校舎裏での告白の場面というわけか…
ベッタベタじゃねぇか!
「ほら来たよ!頑張って!」
セレンがシルヴィアの背中を押すと
背中を押されたシルヴィアはラルクの前で頬を紅く染めモジモジとした態度を見せる
「あ…あの…!」
ん?ちょっと待て待て待てと…
えっとぉ…今は告白の場面ってのはまずいいよな?
ラルクはセレンとシルヴィアを見る
どうやらそれは間違いなさそうだ
それで、と…俺の告白のお相手は…っと
もう一度2人を見ると
え?何でセレンが(頑張れ!)って感じなの?!
何でシルヴィアがモジモジしてるの?何でちょっと可愛いらしさ演出してんの?!
確信した、シルヴィアが女役をえんじている
「…せめて性別合わせろぉぉっ…!!」
思わず叫んでしまった…
「ラルクお前やる気あんの?」
「ちゃんとやってよ~」
「すみません、面白そうだったんでシルヴィアに役を代わってもらいました…」
え?でもさ普通性別合わせるよね?
いや、期待してましたよそりゃ。本音を言うとさ、セレンかなぁって…
「もう一回!もう一回チャンスくれ!」
ラルクは陳謝するしか出来なかった
「ラルクよぉ…お前もっと素直になれよ、前から好きなんだろ?シルヴィアちゃんの事…」
ライカと並んで座り語り合うラルク
あ、さっきの場面続けないんだ…
んで俺がシルヴィアを好きという事になってると、ハイハイ分かりましたこうなったら最後までお付き合いしますよ
「でもさ…」
ラルクがウジウジした態度を見せるとライカは勢いよく立ち上がるとラルクの胸ぐらを掴み頬を殴る
「なっ…!何すんだよ!」
殴られた勢いでラルクは床に倒れこむ
えぇ??何で俺殴られてんの?!
普通寸止めだろ!
「てめぇがそんなウジウジしてんだったらシルヴィアちゃんは俺が告っちまうぜ!…てめぇはそこで寝ながら指咥えて見てな!」
ライカはラルクに背を向けてシルヴィアの元に行こうとする
「待てよ…シルヴィアは…渡さねぇ!例えライカでも…誰にも渡さねぇっ!!」
ラルクは立ち上がりながらライカに向かって叫ぶ
あれだろ?こういうのが欲しかったんだろ?
「素直になれたじゃねぇか…でも相手が間違ってるぜ?」
「ライカ…」
「ったく…世話が焼けんな…」
2人はシルヴィアの元に向かった
「ちょっとアンタ!」
アルトがこちらに気づく
「シルヴィアの告白断っといてよくこれるわね!」
メリッサがテーブルを叩く
「シルヴィア行こう…」
セレンが手を引いて行こうとするが
「シルヴィア!来てくれ!!」
「えっ…でも…」
細い声を出すシルヴィアの手を引いて駆け出す
「試してたのかい?」
ラルクとシルヴィアが部屋を出て行った後にライカがアルト達に聞く
「えぇ、だって面白そうだったから」
「でも、これなら合格だねぇ!」
どうやらラルクがシルヴィアの事を本当に好きかどうか試していたようだ
「私達も行こう!」
友人役のセレンが言ってライカ達が2人を追う
一方シルヴィアを連れ出したラルクは
「ラ、ラルク君…どこに行くの?」
「いいから来てくれ!!」
最後の告白っつったら夕日が背景だろ!
自分達の部屋を出て階段を降りていく
周りの視線がちょっと痛いけど今度こそ…!
受付を通って入り口の扉の取っ手に手をかける
最初はあまり乗り気じゃなかったけど
演劇ってやってみると案外楽しいんだな
あの扉の先にはきっと最高の夕日とフィナーレが待ってる筈だ!
「今度こそ…決めてやるぜぇっ!!」
勢いよく宿の外へ飛び出す
「ラルク!シルヴィア!」
少しするとライカ達も追いついて宿の外に飛び出してきた
しかし、熱を帯びたラルク達のテンションとは裏腹に
冷たい雨がラルク達の熱をゆっくりと冷ましていく
「……今日…雨…だったな…」
演技に夢中になり過ぎて忘れていた
…今日は雨だ…夕日が出ている訳ない
「………」
「………」
ラルク達は皆無言で部屋に戻って行った
そして誰も眼を合わそうとしなかった
暇潰しになったからいっか…