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宇宙泳魚


 「宇宙を泳ぐ魚になりたいなあ」

どこまでも続く空を眺めて君は小さく呟いた。

放課後、教室、ざわめきから遠い場所で、問題集を解くその手は随分前から止まったままだ。

「なにそれ、呪文?どこがわかんないの?」

早口でそう言うと君と目が合った。

「違うって。」

静かに否定しながら君はくすりと笑った。

「僕、魚になりたい。」

三秒の間、見つめ合ったまま、私は苦笑した。

「君何歳?もう高校生よ?それに魚は海や川でしか泳げないの。」

ため息まじりに言うと君はまた笑った。

悔しい、大好きな笑顔だ、またときめいた。

「澪ちゃんは将来何になりたいの?」

悪びれもせず君はふわりと笑う、つまり無視。

「…学校の先生」

正直に答えてしまう自分が悔しい。

「わあ!すごい!澪ちゃん先生!」

ほんとに無邪気に笑い、手をたたく、心なしか目まで輝いてる気がする。

不覚にも顔が熱くなるのが分かった。

「まだ先生じゃないし、てか悠くん、さっきから全然進んでないじゃん」

照れ隠しに顔をそらして問題集を指差す。

「魚だってさずっと海や川やそんな狭いとこで

泳ぐなんて出来ないよ。そんなの我慢出来ないよ。

もっと広いとこで泳いでみたいと思うんだ。

でもさ実際宇宙へ行くじゃない?そしたら後悔するんだ彼らはきっと。

広すぎて無重力で、家族や友人や恋人たちと会いたい時に会えない、

こんなに寂しい思いをするんだったらこなきゃよかった。ってね。

だから僕は魚になって宇宙の入り口で魚達を止めるんだ

海や川へ帰りなさい、ここは案外いいとこじゃないよって」

心地いい声、君はそう言い終えるとにっこり笑った。

「…ばか」

ばか。私はどうなるの?置いていくの?

悠くんは一人で寂しくないの?

色んな言葉達を一言で済ました、言えなかった。

やっぱり君はにっこり笑ったままだった。


 「…おちゃん、澪ちゃん」

「んあ?」

聞きなれた声で目を覚ます。

「おはよう、随分寝たね?」

君の顔を数秒見つめ、思い出す。

「…寝てた?」

「うん、ぐっすりね」

窓の外を見るとすっかり暗くなっていた

「起こしてくれればよかったのに!

…あ!てか私問題集!」

机の上に視線を戻し問題集のページが白紙であることに気付く

「澪ちゃんの幸せそうな寝顔見てたら起こせないよ

あ、問題集、僕の写していいよ」

笑顔のまま君は得意げに言う

「…んぐ、今回だけだから!」

「うん、分かってる。さあ、帰ろう」

立ち上がって軽く背伸びをした君はまた笑った

いつの間にか伸びた背は私よりも大きい。

些細な仕草にドキドキした。


「あ、ねえ、どんな夢見てたの?」

学校を背に帰り道、思い出したように君は私の顔をのぞく。

「…っ!

わ、忘れた!」

そう早口で言って顔をそらした

「あ、うそつき~」

目が合い、数秒、二人でくすくす笑った。

ああ、今日も好きだな

その笑顔を見つめふと思った。


とっても幸せな気がした夢を忘れてたのはほんとだった。

けどちょっとせつない気がして思い出すのはやめた。

今このときに君と笑いあえてればいいや、空を見上げた私の顔は頬が緩んでいた。


end


読みにくかったらすみません

私の何かが読んでくれた貴方に届きますよう。

見つけてくれて、読んでくれてありがとうございました。



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