第30話 公開ディベート後日談〜ゴールデントリオは永久不滅〜
獅子寮の談話室に入ると、まだ昼間の公開ディベートの緊張感がほのかに残る空気の中で、俺たちは机の上に並べたお菓子やコーラを囲んで座った。
「やっと落ち着けるね…」
エマがつぶやく声は、少し疲れているはずなのに楽しげだった。
テオは早速チョコを口に放り込み、満足そうに伸びをする。
「やっぱ甘いものは最強だな!」
その無邪気さに俺も思わず笑う。テオのズレた元気さは、いつも俺たちを和ませる。
そしてエレナ――小さな体で机にちょこんと座り、クッキーを頬張りながら目を輝かせる。無邪気な笑顔と、無防備な好奇心は、俺の胸をぎゅっと掴むようで、言葉では表せない安心感を与えてくれる。
「ハヤトー!」
エレナが突然駆け寄り、俺に抱きついてきた。思わず体が固まる。
「そ、そんな…急だって…!」
頬が熱くなり、心臓がバクバクする。エレナの笑顔は、照れや緊張を一瞬で溶かす力がある。
テオとエマはその様子を見逃さず、顔を見合わせて笑いをこらえた。
「見て見て、ハヤト赤くなってる!」
「いやー、最高の演出だな、ゴールデントリオ劇場!」
談話室の空気は一気に和み、俺たちはコーラの入った杯を手に取った。四人で目を合わせる瞬間、全ての緊張と不安が溶け、ただ笑いと温かさだけが残った。
「さあ、行くぞ!」
「ゴールデントリオは、永久不滅――!」
泡の立つ炭酸が口の中で弾けると、俺の胸に幸せな余韻が広がった。目を閉じると、今日までの試練や、共に乗り越えた時間、笑い合った瞬間が次々と浮かぶ。エレナの無邪気な笑顔、テオの天然のノリ、エマの優しさ――全てが俺の心に刻まれている。
俺はそっと心の中でつぶやいた。
「どんな未来が待っていても、今日のこの瞬間は永遠だ…」
エレナが小さな手で俺の手を握り返す。柔らかくて温かい感触が、胸の奥までじんわりと広がる。彼女の笑顔は言葉以上の安心感をくれる。
窓の外に沈む夕日が、談話室の四人の笑顔を黄金色に染める。
この光景は、何年経っても色あせることはないだろう――大きな試練を乗り越えた喜び、仲間との絆、そして無邪気な小さな奇跡。それらが混ざり合い、胸の奥に静かに、しかし確かに余韻として残った。
俺は心の中でそっとつぶやく。
「ゴールデントリオは、永久不滅だ――本当に。」
夕暮れの光の中、四人の笑い声が柔らかく重なり合い、未来へと続く希望の余韻を残した――これが、俺たちの大団円だった。




