表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/158

第82話 嵐の爪痕《つめあと》

 アマゴ(体長約30cmのサケの仲間)を雨水(あまみず)綺麗(きれい)に洗って、(くし)()して焼いていく。

 魚の焼ける良い(にお)いが、巣穴(すあな)いっぱいに広がった。

 気象病(きしょうびょう)でぐったりしていたお父さんとお母さんが、くんくんと鼻を動かして目を()ました。


「ニャニャー? ()いだことがない、美味(おい)しそうな匂いがするニャー」

「とっても良い匂いニャ、早く食べたいニャ」

『焼いた魚を食べるのは、初めてだ。シロちゃんが作ったものは、みんな美味しいから楽しみだ』


 3匹とも待ちきれない様子で、(よだれ)()らしている。

 ぼくだって猫になって初めての魚だから、楽しみで仕方ないんだよね。


 本来猫は肉食で、魚を食べない。

 実は「猫は魚が好き」というイメージがあるのは、日本だけなんだよ。

 その昔、日本は肉を食べる文化がなくて(おも)に魚を食べていた。

 漁村(ぎょそん)の近くに()んでいる猫は、人間が()った魚を食べる習慣(しゅうかん)がある。

 もちろん、猫にも魚を(あた)えていた。

 だから日本だけ、「猫は魚が好き」と勘違(かんちが)いしちゃったんだ。 


 アニサキス食中毒(しょくちゅうどく)やチアミン欠乏症(けつぼうしょう)を防ぐ為、アマゴを念入(ねんい)りに焼く。

 生焼(なまや)けの魚を食べて、病気になっちゃったら大変だからね。

 しっかり火を通そうとしたら、ちょっぴり()げちゃった。

 でも、生焼(なまや)けよりはいいよね。


 皮にはコラーゲンが(ふく)まれているから、食べた方が良い。

 真っ黒に()げちゃった皮は、体に悪いから食べちゃダメだよ。

 焼けたら串と骨を取り除いて、(さわ)れる温度になるまで()ます。


 お父さんとお母さんとグレイさんは、「まだかまだか」と待ちかねている。

 早く食べたい気持ちは分かるけど、みんな猫舌(ねこじた)だから食べられないよ。

 みんな、「待て」だよ。

 (さわ)れる温度になったところで、みんなに魚を差し出した。


「みんな、そろそろ食べて大丈夫ミャ」

「待ってたニャー!」

「いただきますニャ」

『肉とは全然違う味がして、これはこれでとっても美味(おい)しいぞっ!』 


 みんな大喜びで、ガツガツと食べている。

 さっそく、ぼくも食べてみよう。

 魚の肉は(あぶら)が少なくさっぱりしていて、ほっくりほろほろと(やわ)らかくて(くせ)もなくて食べやすい。

 肉とは違う、魚特有(さかなとくゆう)美味(おい)しさが口いっぱいに広がる。


 人間の頃に食べたことがある、(さけ)の味に似ている気がする。

 猫になって初めて食べる魚は、とっても美味しかった。

 お父さんとお母さんとグレイさんも、満足げに口元(くちもと)()めている。

 食べられないアマゴの骨は、焚火(たきび)に入れて燃料ねんりょうとした。


 ฅ^•ω•^ฅ


 数日振りに雨が()んで、お日様が顔を出した。

 昨日まで雨で、空気がひんやりとしていたのに。

 夏の強い日差(ひざ)しで(どろ)に染み込んだ水が蒸発(じょうはつ)して、ムシムシするような暑さに変わった。

 暑くなってきたので、焚火に泥を掛けて火を消した。

 雨雲(あまぐも)が去ったから、気象病も治った。


 嵐が去ったから、(せみ)たちも嬉しそうに大合唱している。

 この世界にも、蝉がいるんだよね。

 ちなみに、猫は蝉も食べられる。

 ぼくは虫が苦手だからあまり食べたくないけど、お父さんとお母さんは食べるよ。


 みんなが寝ている間に大きく伸びをすると、ひとりで巣穴から飛び出す。

 外へ出ると、()(しげ)った木の枝葉の隙間(すきま)から青い空と白い雲が見えた。

 久々に、お日様(ひさま)と青い空が見られて(うれ)しい。

 なんで青い空を見ると、気持ちが良いと感じるんだろうね。

 ここは森の中だから、まだ涼しいけど。

 直射日光を浴びたら、きっと焼けるように暑いんだろうな。


 川の様子を見に行くと、茶色い水が荒れ狂うように激しく流れていた。

 どこかからか流されて来た枯れ枝や草が、河原(かわら)にたくさん落ちていた。

 今は危ないから、川には近付かないようにしないと。


 どこもかしこも水浸(みずびた)しで、地面がドロドログチャグチャになっている。

 泥に足を取られて気持ち悪いし、歩きずらい。

 地面が乾くまで、待った方が良いかな?


 でも今日は晴れてても、明日はまた雨かも知れないしなぁ。

 晴れているうちに、少しでもイチモツの集落(しゅうらく)へ近付きたいんだよね。

 イチモツの集落の猫たちは、無事だろうか。


 猫は気圧の変化に敏感(びんかん)だから、雨が()り出したら高いところへ避難(ひなん)しているだろうけど。

 周囲の安全確認を終えると、巣穴に戻った。


 お父さんとお母さんとグレイさんも巣穴から出て、日陰(ひかげ)で涼んでいた。

 戻って来たぼくを見て、3匹がニッコリと笑い掛けてくる。


「シロちゃん、おかえりニャー」

「どこへ行っていたのニャ?」

『シロちゃん、あまりオレから離れるなよ。シロちゃんはとっても可愛いんだから、どこで誰が(ねら)っているとも知れんからな』

「そんなに遠くへ行ってないミャ、ちょっと安全確認して来ただけミャ」

「安全確認ニャー?」


 お父さんが不思議そうに、首を(かし)げる。


「旅が出来そうか、周りを見て来ただけミャ」

「シロちゃん、ひとりで行っちゃ危ないニャ! 次からは、みんなで行くニャッ!」


 お母さんに「めっ!」と、しかられた。

 ぼくはしょぼんとして、謝る。


「ごめんなさいミャ。少しでも早く、イチモツの集落へ帰りたくてミャ」

「気持ちは分かるけど、シロちゃんに危ない目に()って欲しくないニャ」

 お母さんはぼくを抱き()せて、よしよしと頭を()でてくれた。


 ฅ^•ω•^ฅ


 日差(ひざ)しが(あつ)いけど、木々を抜ける風が心地良(ここちよ)い。

走査(そうさ)』に聞いたところ、イチモツの集落まであと10kmくらいらしい。


 Argentavis(アルゲンタヴィス)(巨大なたか)に拉致(らち)されたせいで、予定がだいぶ変わってしまった。

 今さらどうこう言っても仕方がないので、イチモツの集落へ戻るだけだ。


 洪水(こうずい)激流(げきりゅう)で流されたのか、森の中は荒れ放題になっている。

 草や低い木は()こそぎ流され、茶色い泥塗(どろまみ)れになってあちこちに散らばっている。

 この辺りの薬草は、全部流れてしまったに違いない。

 キノコも流されてしまったのか、どこにも見つからない。


 (おぼ)れてしまったらしい、泥塗れになった動物たちもたくさん転がっていた。

 きっと、物凄(ものすご)く苦しかったに違いない……。

 可哀想(かわいそう)に……。

 どうか、安らかに眠って下さい。

 ぼくは、両前足(りょうまえあし)を合わせて祈った。


 川が(あふ)れて打ち上げられた魚も、地面にたくさん転がっていた。

 夏の暑さで(くさ)っていて、とても(くさ)い。

 昨日はグレイさんが拾ってきた魚を食べたけど、さすがにこれは食べられない。

 腐ったものを食べたら、それこそ食中毒を起こしてしまう。

 薬草も手に入らない今、おなかを(ゴロゴロ)壊し(ピーちゃんになっ)たら大変だ。


 このまま置いておいても、森の掃除屋(そうじや)さんたちが片付けてくれる。

 ハイエナやジャッカル、ハゲワシやカラスは腐った肉を食べる。

 ずいぶん前に見た、|Andrewsarchusアンドリューサルクス(イノシシのような体とワニのような口を持つ、4mの大型肉食動物)も、腐った肉を食べるらしい。

 腐った肉を食べる動物は、みんな乱暴(らんぼう)で狩れない動物ばかりだ。

 猫が食べられちゃう天敵(てんてき)しかいない。

 森の掃除屋さんたちがやって来る前に、出来るだけ早く立ち去ろう。


 どこまで行っても、同じような光景が広がっていた。

 地面は全部、茶色い泥に(おお)われている。

 どうやら、洪水(こうずい)被害(ひがい)は、かなり大きかったようだ。

 こうなってくると、洪水の被害を受けた猫の集落もあるかもしれないな。

 どうかみんな、無事でいて欲しい。


 ฅ^•ω•^ฅ


 連日(れんじつ)の雨が、(うそ)のように晴れ上がっている。

 晴れている間に、少しでも距離を(かせ)いでおきたい。

 だけど地面が泥だらけで、思うように歩けない。

 一歩踏み出すごとに、柔らかい泥に足が沈む。


 泥が足にまとわりついて足が重くなり、歩くだけで体力を使う。

 泥を()けたくても、泥のないところがない。

 歩く度に泥が()ねて、ぼくたち4匹とも泥塗れだ。


 体を洗いたくても茶色い水が荒れ狂うように流れていて、川には近付けない。

 川の流れが落ち着くまで、待つしかない。

 お日様が早く、地面をかわかしてくれれば良いんだけど。

 森の中は日陰(ひかげ)が多く空気もひんやりとしていて、湿度(しつど)も高いからなかなか乾かないんだよね。


 ぼくはみんなよりも体が小さくて体力もないから、すぐ疲れてしまう。

 疲れて立ち止まってしまったぼくを見て、3匹が心配そうに声を掛けてくる。


「シロちゃん、疲れたかニャー?」

「じゃあ、ここらへんでお休みしましょうニャ」

『シロちゃん、大丈夫か? あまり無理はするなよ? そこで、ちょっと休憩(きゅうけい)しようか』


 グレイさんはぼくの首根(くびね)っこを(くわ)えて、近くにあった少し高い丘の上へ()け登る。

 洪水の被害(ひがい)を受けなかった丘の上には、緑色の草が()(しげ)っていた。

 グレイさんは、草の上にぼくをそっと下ろしてくれた。


『ここなら、安全だ。お父さんもお母さんも、みんなゆっくり休んでくれ』


 グレイさんも疲れているのか、ぼくの横に()せをした。

 お父さんとお母さんも追い付いてきて、草の上でお昼寝を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ