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ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


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第63話 猫神様が見てる

 グレイさんが頑張(がんば)って掘ってくれたおかげで、ベントナイトが手に入った。

 次は、白花虫除菊(シロバナムシヨケギク)の花の部分だけを()む。

 白いマーガレットみたいな花で、とっても綺麗(きれい)

 せっかく綺麗に咲いたのに、摘んじゃうのは可哀想(かわいそう)な気持ちになる。

 猫たちの病気を治す為だから、ごめんね。


 シロバナムシヨケギクは、花に殺虫成分(さっちゅうせいぶん)(ふく)んでいるんだって。

 ノミ取り粉にするには、お日様の力で乾燥させた花を使うらしいんだけど。

 目の前で苦しんでいる猫たちがいるのに、乾燥を待っている余裕はない。

 そこで使うのが、ベントナイトだ。


 今回は珪藻土(けいそうど)の代わりに、ベントナイトを使う。

 ベントナイトは珪藻土同様、高い吸水性(きゅうすいせい)を持っているらしい。

 シロバナムシヨケギクの水分を、ベントナイトに吸わせよう。 

 ベントナイトは、食べられる土だから、猫の体に掛けても安全安心。


 ベントナイトをシロバナムシヨケギクの花と混ぜれば、ノミ取り粉の出来上がり。

 グレイさんは掘り出したベントナイトの(かたまり)を、叩いて粉にする作業を手伝ってくれた。

 グレイさんは感心した様子で、ぼくの作業を見守っている。


『ノミ取り粉まで作ってしまうなんて、シロちゃんはスゴいな』

「ぼくは、全然スゴくないミャ。『走査(そうさ)』が教えてくれた通りにやっているだけミャ。スゴいのは、『走査(そうさ)』の力をぼくに(さず)けてくれた、猫の神様ミャ」

『猫の神様は、本当に素晴らしい神様だな。オレは、猫の神様に心から感謝したい』


 グレイさんは空に向かって両前足を合わせて、猫の神様に祈った。

 猫の神様は、めちゃくちゃスゴい神様だよね。

 人間だったぼくを猫に転生させてくれたり、生き返らせてくれたり。


 何よりも『走査(そうさ)』は、ぼくが困った時にはいつも助けてくれる。

 猫の神様は、いつでもぼくを見守ってくれているって言っていたよね。

 だったらきっと、ぼくの声も聞こえているはず。

 ぼくもグレイさんと同じように、両前足の肉球を合わせると目を閉じて神様にお祈りする。


「猫の神様、いつもありがとうございますミャ。これからも、よろしくお願いしますミャ」

『こちらこそ、少年』


 猫の神様の言葉が、脳内に直接流れ込んできた。

 えっ? 神様っ?

 ハッと目を開けて、空を見上げた。

 それっきり、何度呼び掛けても猫の神様が(こた)えてくれることはなかった。 


 ฅ^•ω•^ฅ


 ノミ取り粉が出来たら、今度はノミブラシを作る。

 ノミブラシは、松の葉を(たば)ねるだけ。

 木の棒で持ち手を付けると、使いやすくなる。

 今回は持ち手は付けずに、とにかくたくさん作ろう。

 ノミブラシを作るぼくを見て、グレイさんが不思議そうに首を(かし)げる。


『シロちゃん、何を作っているんだ?』

「これは、ノミブラシミャ。こうして使うミャ」


 グレイさんをブラッシングすると、毛がごっそりと抜けた。

 犬科(いぬか)の動物も、春と秋が換毛期(かんもうき)だったな。

 抜けた毛を見て、グレイさんが感激している。


『おおっ、なんだこれは? オレもやってみたいっ!』

「どうぞミャ」


 ブラシを渡すと、グレイさんは楽しそうに自分の体をブラッシングし始める。


『スゴい! いっぱい毛が抜けていくぞっ!』   


「やりすぎると肌を痛めちゃうから、やりすぎないように気を付けてミャ」

『やりすぎってのが、どのくらいか分からないな。適当なところで、止めてくれ』

「分かったミャ」


 グレイさんがブラッシングするのを見守っていると、抜け毛の山が出来上がった。

 ブラッシングしたらボサボサの冬毛が抜けて、すっきりした見た目になった。


「グレイさん、ブラッシングしたら、綺麗になったミャ」

『ふふっ、また()れ直したか?』

「うん、カッコよくなったミャ」

『そうか! ならば、毎日、ブラッシングしなくてはなっ!』


 ()めてあげると、グレイさんは満足げに笑った。


 ฅ^•ω•^ฅ


 ぼくとグレイさんはノミ取り粉とノミブラシを抱えて、待ち合わせの約束をした場所へ戻った。

 待ち合わせ場所へ向かうと、お父さんとお母さんがヨモギとアロエを抱えて待っていた。


「シロちゃん、待っていたニャー」

「これだけあれば、足りるかニャ?」

「お父さんとお母さん、ありがとうミャ」


 とりあえず、これだけあればなんとかなると思う。

 これで、猫たちを助けに行こう。


「グレイさんは、見張りをお願いミャ」

『分かった。行ってらっしゃい、シロちゃん』

「行ってきますミャ」


 グレイさんに見送られて、ぼくたち3匹はノミアレルギーで苦しんでいる猫たちがいる場所へと急いだ。

 集落(しゅうらく)へ近付くにつれて、猫たちの悲鳴が大きくなってくる。

 猫たちの姿が見えてくると、みんな体を()きむしっていた。

 (はげ)しい(かゆ)みは、本当に気が狂いそうになるよね。


 可哀想に……、すぐに助けるからね。

 ぼくは大きく息を吸い込み、集落の猫たちに向かって声を張り上げる。


「ぼくは、お医者さんですミャ! 治療しますから、こちらに並んで下さいミャッ!」

「ニャ、ニャンだって~っ?」

「早く、この痒みと痛みを、なんとかして欲しいにゃあ~っ!」


 ぼくの声を聞いた猫たちが、一斉(いっせい)に集まって来る。

 取り囲まれたかと思うと、「さっさと治せニャー!」と、怒鳴(どな)るように(うった)えてくる。

 みんなノミアレルギーによる強い痒みで、イライラしているようだ。

 ここまで怒鳴(どな)られたのは、初めてかもしれない。

 大勢(おおぜい)の猫から怒鳴り付けられる恐怖で、体が固まってしまう。


「ミャ……」

「シロちゃんを傷付ける猫は、誰であろうと(ゆる)さないニャーッ!」

「治して欲しかったら、ちゃんと並んで下さいニャッ!」


 ぼくが困り()てていると、横にいたお父さんとお母さんが救い出してくれた。

 ふたりのおかげで猫たちは落ち着きを取り戻し、渋々(しぶしぶ)と並んでくれた。


「お父さんお母さん、ありがとうミャ」

「可愛いシロちゃんを助けるのは、当たり前ニャー」

「さぁ、シロちゃん、みんなの病気を治しましょうニャ」

「ミャ!」


 1匹ずつ、『走査(そうさ)』で診察(しんさつ)していく。

 お父さんとお母さんがノミ取り粉を()り掛けたり、アロエを()ったり、ヨモギの薬を飲ませたりしてくれる。

 掻きむしって傷になっているから、ブラッシングは出来ない。


 なんで1匹ずつ診断する必要があるかというと、違う病気に罹っている猫もいるからだ。

 ノミアレルギーに似た症状でも、毛包虫症(にきびだにしょう)皮膚糸状菌症ひふしじょうきんしょう、ストレス性の円形脱毛症えんけいだつもうしょう細菌感染症さいきんかんせんしょう

 単に、ケガってこともある。


 ぼくたちは手分けして、猫たちの治療をしていった。

 西の空へ(かたむ)いたお日様(ひさま)が、オレンジ色に(かがや)く頃。

 ようやく、集落の猫たち全員の治療が終わった。


 猫たちは、「痒くなくなったニャー」と、(よろこ)んでいる。

 みんなの笑顔を見ると、「頑張(がんば)って良かったな」と思える。

 だけどやっぱり、めちゃくちゃ疲れた。

 お父さんとお母さんも、疲れた顔でぐったりしている。

 患者さんが途切(とぎ)れるまで、働きっぱなしだったもんね。


 ぼくたち3匹が疲れて寝転(ねころ)んでいると、誰かが近付いてきた。

 そちらを見ると、グレートビネコがニッコリと笑い掛けてくる。


「お医者さんがた、お疲れ様でしたにゃあ。ワタシは、この集落の(おさ)のハイトビですにゃあ。集落を代表して、お礼を言わせて下さいにゃあ」

「初めましてミャ」

「集落の猫たちを助けてくれて、ありがとうございましたにゃあ」

「どういたしましてミャ。この集落には、お医者さんはいないんですミャ?」

「この集落に、お医者さんなんていないにゃあ。お医者さんが来てくれて、本当に助かりましたにゃあ。旅なんてやめて、ずっとここにいて欲しいくらいですにゃあ」


 その言葉を聞いて、お父さんとお母さんがバッと起き上がり、ぼくを抱き寄せた。

 ふたりは怒りで毛を逆立(さかだ)てて、「フシャーッ」と威嚇(いかく)する。


「そんなことを言うなら、今すぐ出て行くニャーッ!」

「シロちゃんをこき使う者は、誰であろうと許さないニャッ!」

「にゃにゃっ? 何をそんなに怒っているんですにゃあっ? ワタシ、何か怒らせることを言っちゃいましたかにゃあ?」


 毛を逆立てるふたりを見て、(おさ)はビックリして飛び上がった。

 ぼくは慌てて、お父さんとお母さんをなだめた。

 ふたりを落ち着かせた後、「何故、ふたりがこんなに怒っているか」を説明した。

 ぼくの話を聞いた(おさ)は、納得した顔で大きく(うなづ)く。


「その気持ちは、良く分かりますにゃあ。ワタシたちの集落にも、お医者さんが1匹欲しいですにゃあ」


 (おさ)は悪い顔で笑って、ぼくをじっと見つめた。

 その顔が怖くて、ぼくはお母さんにギュッとしがみついた。

 お父さんとお母さんも、ぼくをギュッと抱き締めてくれた。

 (おさ)はすぐに怖い表情を(くず)して、優しい顔で笑う。


「ですが、こんな小さな仔猫(こねこ)にそんなに(おび)えられちゃ、引き()めることなんて出来ませんにゃあ」

毛包虫症(にきびだにしょう)とは?】

 猫の体に()みつく、ニキビダニが原因の皮膚病(ひふびょう)

 毛が抜けて円形脱毛(部分ハゲ)になったり、フケが出たり、肌が赤くなったり、体が(かゆ)くなったり、かさぶたがたくさん出来たりする。

 

 

皮膚糸状菌症ひふしじょうきんしょうとは?】

 猫の体に、真菌(カビ)が生える皮膚病。

 症状は、毛包虫症に似ている。

 人間に感染した場合は、水虫(みずむし)になる。



【グレートビネコとは?】

 白毛に、灰色のトビ模様(もよう)がある猫。

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