表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/158

第6話 ぽんぽんぺいんぺいん

 恐怖と緊張で、全身の震えが止まらない。   

 この世界には、あんな恐ろしい生き物がいるのか。

 ティタノボアは、ぼくたちに気付かずに立ち去ってくれた。


 安心した、その時だった。 

 遠くから悲鳴のような鳴き声と、走り回るような足音。

 ヘビ特有のシャーッという、威嚇(いかく)する音が聞こえてきた。

 ティタノボアが獲物(えもの)を見つけたんだ。


 大迫力(だいはくりょく)のティタノボアの狩りを見たい気もするが、命は()しい。

 狙われてしまった動物には申し訳ないけど、ティタノボアが狩りをしている間に急いで逃げなければ。


 親猫たちはぼくを(くわ)えて木から飛び降り、猛スピードで逃げ出した。

 ぼくたちの代わりに襲われた見知らぬ動物さん、ごめんなさい、ありがとう。


 ฅ^•ω•^ฅ


 ティタノボアから、命からがら逃げ延びたぼくたちは、集落しゅうらくへ戻ってきた。


「たくさん走って、疲れたニャー……」

(のど)(かわ)いたニャ。お水を飲みに行きましょうニャ……」


 親猫たちは全力疾走(ぜんりょくしっそう)で逃げ帰ってきたので、疲れ果てていた。

 ぼくも極度の緊張と恐怖で、(のど)がカラカラだ。


 集落の中には小さな川が流れていて、猫たちはそこを水飲み場にしている。

 野生で生きている猫は、水たまりの水よりも川で流れている水の方が、新鮮で綺麗(きれい)だと知っている。

 あまり水を飲まない猫でも、流水(りゅうすい)は好きという猫は多い。


 (かわ)いた喉に、冷たい水が美味しい。

 たっぷり水を飲んだら、ようやく落ち着いた。

 ちょうど、水を飲みに来ていたミケさんが、ぼくたちに声をかけてくる。


「おや、サバトラさん。ご家族で、狩りに行かれたのではなかったのにゃ?」

「実は、ティタノボアがいまして逃げ帰ってきましたのニャー」

「ティタノボアにゃっ?」


 ティタノボアと聞いて、ミケさんは飛び上がって驚いた。

 あれを見たら、誰だって恐怖を覚えるよね。

 動揺しながら、ミケさんは続ける。


「と、とにかく、シロブチさんもシロちゃんも、みんな無事で何よりにゃ。それで、ティタノボアはどこにいたのにゃ? 集落を襲ってくることはないにゃ?」

「集落からは離れていましたから、襲ってくる危険はないでしょうニャ」


 シロブチの言葉を聞いて、ミケさんはこわばらせていた体から力を抜いた。


「それは、良かったにゃ。みんな、ケガはないかにゃ?」


 ミケさんは恐怖が過ぎ去ると、ぼくたちの心配してくれた。


「ティタノボアを見ただけで、襲われてはいませんニャー」

「逃げる時に、木の枝や葉っぱにひっかかったくらいですニャ」

「どんな小さなケガでも、お医者さんに()てもらった方が良いにゃ。シロちゃんは、大丈夫にゃ?」


 ぼくは親猫たちに守ってもらったから、特にケガはない。

 ずっと気を張り詰めていたから、気疲れしたくらい。


「大丈夫」と応えようとした時、急に眠くなってきた。

 しまった、もう電池切れのようだ。

 眠気に耐えられず、その場で寝落ちした。


 ฅ^•ω•^ฅ


 空腹で目が覚めた。

 おなかが、「早く飯をよこせ」と鳴いている。


 昨日は、ティタノボア騒動でごはんどころではなかった。

 水しか飲んでいなかったから、当然だ。


 仔猫は疲れすぎたり強いストレスを受けたりすると、ごはんを食べられなくなることがあるらしい。

 ごはんを食べるにも、体力がいるからだ。

 これは、人間も同じだよね。


 特に体が未熟(みじゅく)な仔猫は、お腹を壊しやすい。

 どうやらぼくも自分では気付かないうちに、強いストレスを感じていたらしい。

 ぽんぽん(おなか)ぺいんぺいんで(が痛くて)ゴロゴロピーちゃんだ(おなかを壊している)


 ()らさないうちに親猫の間から抜け出し、集落内にある公共の砂場(トイレ)で用を足した。 

 出すもの出して、すっきりげっそりぐったり。


 ピーちゃんのせいで、もともと少ない体力をさらに使ってしまった。

 なんか、急に寒くなってきた気がする。

 日差しはポカポカ温かいのに、風もそよ風くらいしか吹いていないのに。

 どうして、こんなに寒いんだろう?

   

 ひょっとして、これはヤバいのでは? 

 寒気を感じるってことは、絶対病気だ。 

 親猫たちに頼んで、お医者さんへ連れて行ってもらわなきゃ。

 砂場(ここ)からなら、巣穴よりもお医者さんの方が近い。


 こうなったら、自分でお医者さんに行くしかない。

 ぽんぽんぺいんぺいんのせいで、足に力が入らない。

 プルプルと震える足で、お医者さんの方角へ向かってヨロヨロと歩く。

 この分だと、たどり着く前に力()きそう。

 どうしよう、誰か助けて……。


「ミャ~……」

「シロちゃんっ!」


 助けを求めて弱々しく鳴き続けていると、親猫たちが駆け付けて来てくれた。

 巣穴からいなくなったぼくを、探しに来てくれたようだ。

 良かった、助かった。


 ぐったりしたぼくをかかえてくれたシロブチに、か細い声でうったえる。


「おなかが痛くて、ゴロゴロするミャ……」

「大変ニャー! シロちゃんが、病気ニャーッ!」 

「早く、お医者さんへ連れていかなきゃニャッ!」


 親猫たちはぐったりしたぼくを抱えて、お医者さんの元へ駆け付けた。


「先生! うちのシロちゃんが大変ニャーッ!」

「先生、早くシロちゃんを助けて下さいニャッ!」


 取り乱す親猫たちに、お医者さんは目を丸くして驚いている。


「そんなに慌てて、どうしたんですニャ~? ふたりとも、落ち着いて下さいニャ~」

「これが、落ち着いていられますニャーッ? うちの可愛いシロちゃんが、こんなにぐったりしているんですニャーッ!」

「昨日まであんなに元気だったのに、どうしてニャ……」


 サバトラはイライラしてお医者さんに詰め寄り、シロブチはぼくを抱えて泣いている。

 お医者さんがなだめようとしているが、ふたりとも落ち着かない。

 ここは、ぼくがなんとかしないと。


「ミャ~……」


 か細い声で鳴くと、親猫たちはハッとなった。


 ふたりともぼくの顔を(のぞ)き込み、頭を()でてくれる。


「シロちゃん、すぐ助けてあげるニャー」  

「今、お医者さんに()てもらうからニャ」


 ようやく落ち着きを取り戻したふたりは、お医者さんに向かって頭を下げる。


「取り乱して、すみませんでしたニャー」

「シロちゃんを、どうかお願いしますニャ」


 お医者さんは、ほっとした表情でふたりに優しく話し掛ける。


「では、シロちゃんをここに寝かせて下さいニャ~」

「はいニャ」


 ()き詰められた枯草(かれくさ)のベッドに、仰向(あおむ)けで寝かされる。

 お医者さんはぼくの体を調べながら、親猫たちに問診(もんしん)する。


「昨日、何かありませんでしたかニャ~?」

「3匹で、狩りに行きましたニャ。そこで、ティタノボアと会いましたニャ」

「ティタノボアですニャ~ッ? よくご無事でしたニャ~ッ?」

「見つからないように隠れて、やり過ごしましたニャー。ティタノボアの姿が見えなくなった後、逃げ帰って来ましたニャー」 

「たぶん、それが原因ですニャ~」


 お医者さんは納得した顔で、動物の毛皮らしきものをぼくに掛けながら続ける。


「シロちゃんは初めてティタノボアを見て、怖い思いをしたから具合が悪くなっちゃったみたいですニャ~」

「そうだったんですニャ……」

「体が、だいぶ冷えちゃってますニャ~。体をあっためて、ゆっくり休ませてあげて下さいニャ~」

「分かりましたニャ」


 シロブチがぼくを毛皮で包んで抱き上げ、帰ろうとする。

 お医者さんは、慌ててシロブチを呼び止める。


「あ、ちょっと待って下さいニャ~。シロちゃんに、お薬を飲ませますニャ~」

「お願いしますニャ」

「今、お薬を作りますニャ~」


 お医者さんは近くに生えているヨモギの葉っぱを、十枚くらい千切(ちぎ)った。

 石の(うつわ)にヨモギを入れ、丸い石でトントン叩いたりゴリゴリしたりしてつぶしていく。 

 つぶし終わると、お医者さんはぼくに器を近付けてくる。


「お薬が出来たニャ~。シロちゃん、あ~んするニャ~」


 え? それ飲まなきゃいけないの?

「病気になったらヨモギを飲む」とは、聞いていたけど。

 つぶしただけのヨモギを、そのまま飲むのはイヤだ。


 「ヨモギは、ゆでて灰汁(あく)抜きしないと食べられないよ」と、おばあちゃんが言っていた。


 小さい頃に一度だけ、ヨモギをそのまま食べたことがある。

 葉っぱの裏側にある細かい毛がケバケバして、青臭いエグみが強くて美味しくなかった。

 あの時の味を思い出して、思わず顔をしかめた。

 口を開けないぼくを見て、お医者さんが困った顔をする。


「シロちゃん、お薬を飲まないと治らないニャ~」

「シロちゃん、お薬飲んでニャ」

「シロちゃん、あ~んしてニャー」


 3匹の成猫(おとな)に押さえられたら、かなわない。

 無理矢理口を開けさせられて、ヨモギの汁を飲まされた。


「はい、おわりニャ~。お薬飲めて、えらかったニャ~」


 お医者さんはニコニコ笑いながら、ぼくの頭を()でてくれた。

【仔猫のゴロゴロピーちゃんには、要注意】

 仔猫は、ちょっとしたことでゴロゴロピーちゃんになる。

 ゴロゴロピーちゃんになると体温が下がって、低体温症(ていたいおんしょう)になる。

 仔猫の低体温症は命にかかわるので、すぐに病院へ連れて行こう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ