表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/160

第59話 猫汎白血球減少症

 ぼくが倒れてから、どれくらい時間が()ったのかな?

 体が重くて、眠ることしか出来ない。

 お父さんとお母さんは、集落(しゅうらく)の猫たちはどうなったんだろう?

 ぼくを看病(かんびょう)してくれている、グレイさんは?


 肌寒(はだざむ)さを感じて目を開けると、暗い洞窟(どうくつ)の中にひとりぼっちだった。

 周りを見回しても、誰もいない。

 あれ? グレイさんは?

 どこ行っちゃったんだろう?


 重い体をどうにか動かして、ヨロヨロとゆっくり歩き出す。

 ずっと眠っていて、水を飲んでいなかったから(のど)がカラカラだ。

 とにかく、水が飲みたい。

 体が上手く動かないから、川まで歩けそうにない。


 そうだ! 長く雨が()っていたってことは、水たまりが出来ているはずだっ!

 水たまりでもなんでも、飲めれば良い。

 洞窟の外へ出れば、水たまりのひとつくらいはあるだろう。

 よし、水たまりを探そう。


 ピチョンピチョンと、洞窟内に水音が(ひび)いているのが聞こえる。

 暗いから見えないけど、雨漏(あまも)りでもしているのかな?

 音が反響(はんきょう)しているから、音で探すことも無理そうだ。

 やっぱり、洞窟(どうくつ)の外へ出るしかなさそうだ。


 水を飲みたいという気持ちだけで、外へ向かって足を動かす。

 かなり時間が掛かったけど、やっと洞窟の入り口まで辿(たど)いた。

 洞窟の外は明るく、雨はすでに()んでいた。


 雨の(にお)いを()げば、さらに喉が(かわ)いて水を飲みたくなる。

 洞窟の外へ出ると、すぐ近くに大きな水たまりが出来ていた。

 やった、水だ!


 水たまりに顔を突っ込んで、ガブガブと飲んだ。  

 土が混ざっていて美味(おい)しくはないけど、喉の渇きは収まった。

 おなかも空いていたから飲みすぎちゃって、おなかがチャプチャプいっている。

 でも水を飲んだら、ちょっとだけ元気になった気がする。


 そこで、何かが近付いて来る足音に気が付いた。

 今何かと出くわしたら、確実(かくじつ)に食べられるっ!

 洞窟の中へ戻ろうとしたら、聞き覚えのある声が聞こえてくる。


『シロちゃん、やっと起きたのか! ずっと起きないから、心配したぞっ!』

「グレイさん、どこへ行っていたミャ?」


 振り向くと、そこにいたのはグレイさんだった。

 狩りから戻ってきたところらしく、足元に|Hyracotheriumヒラコテリウム(体長約50cmの小さいウマ)が置いてあった。


『ひとりぼっちにしてしまって、すまなかった。腹が減ったから、狩りへ行っていたんだ。シロちゃんも、食べるか?』


 ぼくが返事をするよりも先に、「ぐ~きゅるる~っ」とおなかが鳴った。

 おなかの音を聞いて、グレイさんが吹き出すように笑い出す。


『そうか、良かった。シロちゃんも、腹が減っているんだな。じゃあ、一緒に食べようか』

「ミャ!」


 ぼくとグレイさんは、仲良くヒラコテリウムを食べた。

 とてもおなかが空いていたから、いつもよりもずっと美味しかった。

 ()み上がりだから、たくさんは食べられなかった。


 水を飲み過ぎたせいか、それとも胃が弱っているのに無理して食べたからか。

 なんだか、おなかがゴロゴロして痛くなってきた。

 おなかがいっぱいになったら、急に眠くなった。

 うとうとし始めると、グレイさんが小さく笑ってぎゅっと抱っこしてくれる。


『シロちゃん、眠かったら寝てくれ。大丈夫だ、オレが側にいる。だから、安心して寝てくれ』

「ミャ……」


 言われなくても、眠気(ねむけ)には勝てない。

 グレイさんの毛は、お父さんやお母さんの猫毛(ねこげ)とは全然違うけど。

 グレイさんのあったかい毛に()もれると、とっても気持ちが良かった。

 落とし穴に落ちるように、ストンと意識がなくなった。


 ฅ^•ω•^ฅ


 気が付くと、真っ白な場所にいた。


「死んでしまうとは何事(なにごと)だ? 少年」


 脳内に直接、声じゃなくて言葉が流れ込んでくる。

 この感覚は、覚えている。

 あなたは、猫の神様ですか?


「そうだ。『次は、死なないように気を付けて生きろ』と言ったはずだがな、少年」


 すみません、死んだ記憶(きおく)がないんですが。

 ぼく、また死んじゃったんですか?


「死んだ」


 死因(しいん)は、なんだったんですか?


猫汎白血球減少症ねこはんはっけっきゅうげんしょうしょう


 猫汎白血球減少症?

 なんですか? それ。


「猫パルボウイルスに感染(かんせん)した猫や、その猫の排泄物(はいせつぶつ)から感染する伝染性胃腸炎でんせんせいいちょうえんだ。少年は、ウイルスが入った水を飲んで感染した」


 ウイルスが入った水って、もしかしてあの水たまりですか?


「その通り。感染力(かんせんりょく)が高く、野生の仔猫(こねこ)突然死(とつぜんし)する原因のひとつだ」


 うわ~……、マジか。

 あの時は喉が渇いていて、飲めればなんでも良いと思っていたからなぁ。

 まさか、その水が原因で死ぬとは思わなかった。


 よりにもよって、グレイさんの腕の中で死んじゃうなんて……。

 グレイさん、めちゃくちゃビックリしただろうな。

 いや、ビックリなんてもんじゃないよね。

 きっと今頃、めちゃくちゃ悲しんで泣いていると思う。

 ごめんなさい、グレイさん。


「して、どうする? 少年」


 どうするって……?

 まさか、また生き返らせてくれるのですかっ?


「猫の命は、非常に短い。それに、少年はまだ若い。お前にもう一度、機会(きかい)(あた)えよう」


 ありがとうございます、猫の神様っ!


「私はいつでも、少年を見守っているからな。再びこのようなことが起こらぬことを祈っているぞ、少年」


 その言葉を最後に、また意識が飛んだ。


 ฅ^•ω•^ฅ


 誰かの泣き声が聞こえる。

 声を()まらせながら、激しく泣きじゃくっている。

 強く抱き締められていて、体が()れていた。


 誰かなんて、確かめるまでもない。

 ぼくが死んでしまったから、グレイさんが泣いているんだ。

 いつも凛々(りり)しくてカッコイイグレイさんが、こんなに泣くなんて。

 ぼくが死んだことが、そんなに悲しかったんだね。


 グレイさんは、ぼくのことが大好きだもんね。

 ぼくも、グレイさんのことが大好きだよ。

 死んじゃって、ごめんね。

 でも悲しんでくれて、ありがとう。


 人間のぼくが死んだ時も、悲しんでくれた人はいたのかな。

 もし悲しんでくれる人がひとりもいなかったら、(さび)しいな。


 泣きじゃくっているグレイさんを(なぐさ)めようと、顔をペロペロと()めた。

 グレイさんはビクッと、大きく体を()らした。

 大粒の涙がボロボロ(こぼ)れ落ちる目で、ぼくをじっと見つめる。


『シロちゃん……っ?』

「グレイさん、そんなに泣かないでミャ」

『死んだんじゃなかったのかっ?』

「死んじゃったミャ。だけど、猫の神様が生き返らせてくれたミャ」

『そうか! 良かった、本当に良かったっ! 猫の神様、シロちゃんを生き返らせてくれて、ありがとうっ!』


 グレイさんは物凄(ものすご)(いきお)いでぼくを舐め始めて、しっぽも千切(ちぎ)れんばかりにブンブン()りまくっている。

 ぼくが生き返ったことを、こんなに喜んでくれるなんて。

 やっぱり、生き返って良かった。


 まだ、ぼくには帰れるところがあるんだ。

 こんなに嬉しいことはない。


 ぼくはグレイさんが落ち着くまで、よしよしと撫で続けた。

 グレイさんの興奮が冷めるまで、ずいぶんと時間が掛かった。

 しばらくして、グレイさんが落ち着いたところで話し掛ける。


「あれから、集落がどうなったか、グレイさんは知っているミャ?」

『オレはシロちゃんが倒れてから、ずっとここにいたからな。集落には、一度も行けていないんだ』


 グレイさんは、申し訳なさそうに目を()せた。

 グレイさんは、ずっとここでぼくの看病をしてくれていた。

 それに、グレイさんは猫の集落に入ることが出来ない。


 お父さんとお母さんは、今頃、どうしているだろう?

 どうなったかは、やっぱり自分の目で確かめるしかないか。

 集落を見に行こうと体を起こそうとしたら、体が重くて動かなかった。

 グレイさんが(あわ)てて、ぼくをぎゅっと抱き締めて止める。


『シロちゃん、まだ無理しちゃダメだ。猫たちが心配なのは分かるが、まずは自分の体を治さないと』

「ミャ……」


「それもそうか」と思い直し、少しでも早く体を治そうと目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ