表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/158

第42話 お医者さんの使命

「みんな! あのトマークトゥスは虫歯で弱っているから、集落(しゅうらく)には(おそ)いませんミャッ!」 


 ぼくは集落のみんなに、例のトマークトゥスが襲ってこない理由を説明した。

 だけど、誰も信じてくれなかった。


 そりゃそうか、だって天敵(てんてき)だもん。 

 どんなに襲ってこないと言われても、怖いものは怖い。

 ぼくだって、怖いもん。 

 あのトマークトゥスには悪いけど、早くいなくなってくれることを願うしかない。


 ฅ^•ω•^ฅ


 翌日。

 戻って来た偵察部隊(ていさつぶたい)が、(うれ)しそうな顔で報告(ほうこく)する。


「今日は、トマークトゥスの姿は見つからなかったニャー」


 それを聞いた集落の猫たちは、「良かった良かった」と喜んだ。

 みんなホッとした顔で、あったかい場所で猫団子(ねこだんご)になってお昼寝し始める。

 よっぽど眠かったらしく、すぐにスヤスヤと寝息(ねいき)を立て始めた。


 あのトマークトゥスは、集落を襲うのを(あきら)めてどこかへ行ったのか。 

 それとも、ついに力尽(ちからつ)きたのか。

 何はともあれ、これでトマークトゥスにおびえる必要はなくなった。

 でも、これで本当に良かったのだろうか。


 偵察部隊がどこまで調べたのかは、ぼくには分からない。

 たぶん集落の周りを、木の上から軽く見ただけじゃないかな。  

 茂みの中や動物の巣穴(すあな)の中までは、調べていないと思う。

 偵察部隊を警戒して、どこかに隠れているかもしれない。


 やっぱり気になるから、あのトマークトゥスを探してっ! 『走査(そうさ)


走査開始(そうさかいし)


対象(たいしょう):食肉目イヌ科イヌ属トマークトゥス』


個体名(なまえ):グレイ』


『病名:齲蝕(むしば)、および、歯冠破折(はがおれている)飢餓状態(おなかが空いている)により、意識不明(気を失っている)


位置情報(いちじょうほう):直進600m、右折90m、直進300m』


 見つけた!

 良かった、まだ死んでなかった。

 トマークトゥスは、おなかが()きすぎて、死にそうになっているらしい。


 今すぐ助けに行けば、まだ間に合うかもしれない。

 いや、助けていいのか?

 相手は、天敵のトマークトゥスだぞ?


 助けるべきなのかな?

 助かる命を見捨てるのは、お医者さんとして間違っている気がする。

 助けられないとしても、トマークトゥスの様子だけ見に行きたい。


 だけど、みんなに言ったら絶対止められる。

 仕方がない、黙って行くか。 

 みんなに見つからないように隠れながら、集落から飛び出した。

 ぼくは集落を飛び出すと、『走査(そうさ)』の案内に(したが)って走り出した。


目的地周辺(もくてきちしゅうへん)到着(とうちゃく)。案内終了』


 その言葉を最後に、『走査(そうさ)』の案内は終わった。

 どうやら、この辺りにトマークトゥスがいるらしい。

 キョロキョロと周りを見回すと、1匹のトマークトゥスが草むらの中でぐったりと倒れていた。


 イチモツの集落からここまで、1km近く離れている。

 たぶん偵察部隊は、集落の周りしか見回りをしていないから気付かなかったんだ。

 そろりそろりと近付いて、様子を見る。


 一見(いっけん)すると寝ているみたいで、ちゃんと息もしているから生きているっぽい。 

 (あらた)めて見ると、やっぱりトマークトゥスって大きいなぁ。

 ぼくが生後3ヶ月の仔猫(こねこ)サイズだから、なおさら大きく見えるのかもしれないけど。

 大きさを比べたら、軽く5倍以上はあるぞ。

 

 トマークトゥスの顔を、こんなに近くで見たのは初めてだ。

 こうして見ると、大きい犬って感じ。

 猫は可愛いけど、犬はカッコイイな。


 おっと、こんなことしている場合じゃなかった。

 このまま放っておいたら、死んじゃう。

 ごはんを食べさせてあげれば、良いんだよね。

 トマークトゥスって、何を食べるの?


(おも)に肉食。有蹄類(シカ・ヤギ)齧歯類(ウサギ・ネズミ)魚類(ぎょるい)、一部の野菜と果物(くだもの)


 やっぱり、肉が好きなのか。

 猫と違って魚や野菜や果物も食べられるのか、(うらや)ましい。


 猫って、意外と食べられるものが少ないんだよね。

 人間と違って甘味(あまみ)も感じられないし。

 魚は美味(おい)しく食べられるけど、体が受け付けてくれなくて病気になっちゃう。

 人間だった頃は、なんでも美味しく食べられたのに……。


 でも、歯がないと食べられないよね?


『トマークトゥスは、食べ物を()まずに丸呑(まるの)みする習性(しゅうせい)がある為、歯がなくても食べることは可能』


 なるほど、猫と同じで噛まずに呑み込んじゃうタイプか。

 猫の歯も、獲物(えもの)の肉を()み切る為にあるんだよ。

 ってことは、呑み込めるサイズに小さく切ってあげれば食べられる。


 だったらぼくでも狩れそうな小動物を狩って、食べさせてあげよう。

 トマークトゥスが食べられそうな果物も、あったら探そう。

 トマークトゥスが、どれだけの量を食べるかは分からないけど。

 体が大きいから、たくさん食べるよね?

 出来るだけ、たくさん狩った方がいいかな?


 もしトマークトゥスが目を覚ましても、歯が折れているから襲われる心配はないだろう。

 よし、さっそく獲物を狩ってこよう!


 倒れているトマークトゥスをその場に残して、ぼくでも狩れそうな小動物を探す。

 狩りは、自分の実力で狩りたいんだよね。

走査(そうさ)』にお願いすれば、どこにどんな動物が何匹いるかまで、正確に分かるんだけど。

 それじゃ、攻略本(こうりゃくぼん)を読みながらゲームやるみたいで、つまらない。


 自分の耳で獲物の足音を聞き、鼻で臭いを()ぎ分け、(かん)気配(けはい)を感じる。   

 目で動きを(とら)え、獲物の(すき)を突いて、追い詰めて仕留(しと)める。

 自分自身の力で、狩りをした時の達成感(たっせいかん)が最高なんだよ。

 自分で狩った肉の味は、ひと味違う。


 これが正しい狩りというものだと、ぼくは思っている。

 出来る限り、狩りで『走査(そうさ)』には頼りたくない。

 これは、ぼくなりのこだわり。

 食べられる野草や果物の見分け方は難しいから、必要な時は頼るけど。


 ฅ^•ω•^ฅ


 そんなこんなで、パラミス(体長30~60cmのネズミ)を10匹ほど狩ってきた。

 あとは、食べられる薬草も()ってきた。      

 トマークトゥスが食べられそうな木の実も探したんだけど、見つからなかった。


 それもそのはず、木の実が()る季節は、ほとんど夏~秋。

 冬に成る実は、毒があって食べられないものが多い。

 冬の木の実を食べられるのは、鳥くらい。  

 鳥だけが冬の木の実を食べられるのは、(たね)を遠くへ運んでもらう為なんだよ。


 さて、今度はパラミスを食べられる大きさに切らなきゃ。

 まずは、パラミスを解体(かいたい)する為に河原(かわら)へ運ぶ。

 続いて、河原で拾った平べったい石を()ぐ。

 河原の石は水を掛けながら平たい石にこすり付けて()ぐと、石のナイフが出来る。

 さすがに、包丁みたいに切れ味は良くないけどね。


 石の刃を使って、パラミスをひとくちサイズに小さく切っていく。

 包丁みたいに切る感じじゃなくて、細い骨ごと叩き切るって感じ。

 なんだか、料理しているみたいな気分。


 そういえば、調理実習(ちょうりじっしゅう)以外では料理ってしたことないかも。

 家でも、料理をしたことはなかった。

 料理なんてしようものなら、お母さんに怒られるから。


 猫になってから、石で薬草を叩いて薬を作るようになった。

 でも、料理と薬を作るのは全然違うよね。


 よし、パラミスの盛り合わせが出来たぞ。

 一番の問題は、どうやってトマークトゥスに肉を食べさせるかだ。

 眠っている相手に、食べさせることは難しい。


 口を開けさせようにも、仔猫の力ではとても無理だ。

 ぼくとコイツじゃ、体の大きさが違いすぎる。   

 起こして、自分で食べてもらうしかない。 


 肉を鼻先(はなさき)まで持って行ったら、匂いで起きてくれないかな?

 (ため)しに、パラミスの肉をトマークトゥスの顔の側に置いてみる。


「お願い、起きてミャ~! 食べないと、死んじゃうミャ~ッ!」


 なんとかして起こそうと、トマークトゥスの顔を肉球(にくきゅう)でプニプニして何度も声を()け続けた。

 しばらくすると、トマークトゥスの鼻がヒクヒクと動いてゆっくりと目を開けた。

 まんまるい金色の目は、とっても綺麗(きれい)だった。


 目を開けた直後、驚いたように「ウォンッ!」と一声(ひとこえ)鳴いた。

 起きた時に、目の前に猫がいたら誰だってビックリするよね。

 トマークトゥスに猫語が通じるか分からないけれど、構わず話し掛ける。


「君、おなかが空いているミャ? だから、君の為にお肉をいっぱい狩ってきたミャ。これ食べて、元気になってミャ」


 トマークトゥスは足元に置いてある肉の山を見て、よだれを()らしてしっぽをブンブン振り出す。

 ガマン出来なくなったのか、ガツガツと食べ始めた。

 少し離れたところから、トマークトゥスが食べる様子を見守る。


 ひとくちサイズに小さく切っておいたから、食べられたみたい。

 これでしばらくは、おなかが空いて死んじゃう心配はなくなったはず。


 よし、やることはやった。

 あとは、自力でなんとかしてね。

 これからは、(つがい)()れの仲間に助けてもらうんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ