表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/160

第37話 やってみせ

 猫は文字を書けないし、読めない。

 何かを伝えようと思ったら、実際に目の前でやってみせて口頭(こうとう)で伝える(口で説明して教える)しかない。


「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、()めてやらねば、人は動かじ」という有名な言葉もある。


 落ちていた木の(ぼう)を1本拾い、地面に線を引いていく。

 線を引くぼくを見て、猫たちは不思議そうに首を(かし)げた。


「シロちゃん、何してるニャー?」

集落(しゅうらく)の皆さんが水を飲めるように、川を引くんですミャ。皆さんにも手伝って頂きたいのですけど、お願い出来ますミャ?」

「なんだか分からないけど、シロちゃんの(たの)みならなんでもやるニャーッ!」


 お父さんが張り切り出すと、他の猫たちも「やるニャーッ!」と、やる気満々(きまんまん)の声を上げた。


「皆さん、ありがとうございますミャ。ぼくが引いたこの線に沿()って、(みぞ)()っていって下さい」


「こんな感じで」と、水路(すいろ)を掘って見せた。


「この水路を集落まで掘り進めて、川を作りますミャ」

「そのくらい、お安い御用(ごよう)ニャーッ!」


 猫たちにも分かりやすいように、ひとつずつ説明しながらやって見せた。

 猫たちはぼくの指示(しじ)(したが)って、水路を掘っていく。

 集落くつろいでいた猫たちも、土木工事(どぼくこうじ)(道や川などを作る作業(さぎょう))を見て「なんニャなんニャ?」と集まって来る。

 集まって来た猫たちに、質問する。


「皆さんに教えて頂きたいのですが、この集落で一番日当(ひあ)たりの良い場所はどこですミャ?」

「ここニャン」


 猫たちはある場所の地面を、ポンポンと叩いた。

 日向ぼっこが大好きな猫たちは、あったかい場所を知っている。

 教えてもらった地面を(さわ)ってみると、確かにあったかい。

 ここに池を作れば、太陽光で水があったまるはずだ。


「ではここに、水飲み場の池を掘りましょうミャ」


「このくらいで」と、棒で丸く線を引いた。

 水飲み用の池なので、大きな穴じゃなくて良い。

 丸まった成猫(おとな)1匹分くらいの大きさがあれば、充分(じゅうぶん)じゃないかな。


 猫たちに池用の穴を掘ってもらい、水飲み場が完成。

 引き続き、排水路(はいすいろ)を掘り進めてもらって下流(かりゅう)の川へ(つな)げた。

 そんなこんなで、工事は半日くらいで終わった。


 あとは、川の水を引くだけだ。

 川と水路を繋げると、水が流れていく。

 猫たちは「ニャーッ!」と歓声(かんせい)を上げて、流れる水を追いかけていく。

 はい、可愛い。


 池に水が()まるのは、少し時間がかかった。

 池の水がいっぱいになると排水路へ水が流れて、下流へ戻っていく。

 これで一応、予想通りのものが出来たかな?


 作ったばっかりだから、今は水が茶色く(にご)っているけど。

 しばらくすれば、綺麗(きれい)な水に入れ()わっていくだろう。

 あとは池の水が、あったまってくれるかだな。


  ฅ^•ω•^ฅ


 池を作った、翌日(よくじつ)

 池の様子を見に行くと、昨日は茶色く濁っていた水が綺麗に()き通っていた。

 よし、これなら飲めそうだ。


 さっそく飲んでみると、太陽光であっためられたおかげで冷たくない。

 お日様(ひさま)の力って、スゴイ!

 あとは、猫たちがこの水を飲んでくれるかだ。


「皆さん、新しい水飲み場が出来ましたミャ! 飲みに来て下さいミャッ!」


 ぼくが呼びかけると、猫たちが集まって来る。


「昨日は飲んじゃダメって言ってたけど、今日は飲めるニャオ?」

「水路と池の土が落ち()いて、水が綺麗になったので、今日から飲めますミャ」

「やったニャニャ! やっとお水が飲めるニャニャッ!」

「待ってたニャ~ン!」


 (のど)(かわ)いていたのか、猫たちは池の水を飲み始める。


「ニャニャッ? お水が、冷たくないニャニャ!」

「これなら、飲めるニャオッ!」

仔猫(こねこ)のお医者さん、ありがとニャ~ンッ!」


 猫たちは喜んで、水を飲んでくれている。

 これで、ひと安心。

 脱水症状(だっすいしょうじょう)下部尿路疾患(かぶにょうろしっかん)も、冷たい水によるゴロゴロ(おなかを)ピーちゃん(こわす)も予防出来る。

 あとは、下部尿路疾患になっている猫たちにカモミールの薬を飲ませよう。


 その後、この周辺(しゅうへん)()えている薬草の見分け方と薬の作り方を教えた。

 前にこの集落を(おとず)れた時は、キランソウしか教えなかったからな。

 ひと通り教え終えたところで、集落の(おさ)感激(かんげき)した様子でガバッと抱き()いてくる。


「やっぱり君は、この集落の救世主(きゅうせいしゅ)ナォ! 君はずっとここにいて、我々を助けるナォッ! もう、絶対離さないナォッ!」


 モノスゴい強い力で抱き()められて、めちゃくちゃ痛くて苦しい。


「ぼくは、救世主(きゅうせいしゅ)なんかじゃありませんミャーッ!」


 ぼくの悲鳴を聞いたお父さんが、すぐに(おさ)を取り押さえてくれた。

 お母さんは、ぼくを抱っこして助けてくれた。


「シロちゃんを、(はな)すニャーッ! こんな集落(ところ)には、もう二度と来ないニャーッ!」

「シロちゃん、早くイチモツの集落へ帰るニャッ!」


 お父さんとお母さんはめちゃくちゃ怒って、ぼくの首根(くびね)っこを(くわ)えて集落から飛び出して行った。

 (おさ)は、走り去って行くぼくたちを未練(みれん)がましい((あきら)めきれない)顔でいつまでも見つめていた。


 ฅ^•ω•^ฅ


 キランソウの集落の猫たちとは、ろくに挨拶(あいさつ)も出来ずに出てきてしまった。

 (おさ)が、ぼくたちを追って来ることはなかった。

 他の猫たちに、引き止められたのかもしれない。


 お父さんとお母さんが怒る気持ちは、よく分かるんだよね。

 (おさ)は、ぼくを便利に使おうとしていた。

 (ぎゃく)立場(たちば)で、お父さんとお母さんが利用(りよう)されたらぼくだってめちゃくちゃ怒る。


 でもきっと、(おさ)は悪い猫じゃないと思う。

 悪い猫だったら、(おさ)として認められないはずだし。

 ぼくを必要としたのも、自分の集落を大切に思っているからこそだと思う。


 ぼくだって生まれ故郷(こきょう)であるイチモツの集落を、とても大切に思っている。

 旅の間だって、イチモツの集落のことを考えない日はなかった。

 イチモツの集落の猫たちが、苦しんでいたり困っていたりしたら絶対に放っておけないし、1匹残らず助けたい。

 だから、(おさ)()める気にはなれないんだよね。


 だけど、お父さんとお母さんがスゴく怒っているから、たぶんもうキランソウの集落へ立ち()ることはないだろう。


 ฅ^•ω•^ฅ


 それからしばらく、3匹だけの旅が続いた。

 川に沿()って、川上(かわかみ)へ向かって歩いて行く。

 キランソウの群生地(ぐんせいち)へ11匹の猫を移動させる時も、この川に沿()って川下(かわしも)へ向かって歩いたっけ。

 このまま川上へ向かうと、毒虫が好む植物の群生地(ぐんせいち)(いっぱい生えている場所)に入ってしまう。


「この先には、毒虫がいっぱいいて危ないミャ!」

「そうなのニャー? だったら、違う道を通るニャー」

「シロちゃんは、スゴいニャ。全然分からなかったニャ」


 毒虫が巣食(すく)う森は、()けて行くことにした。

 (あや)うく、毒虫の縄張(なわば)りに入ってしまうところだった。

 危ない危ない。

 入る前に思い出せて良かった。


 毒か……。

 毒も使い方によっては、薬になる。

 猛毒(もうどく)のトリカブトも、正しく使えば漢方薬(かんぽうやく)となる。


 しかし、毒性(どくせい)を持つ薬は(あつか)いがとても(むずか)しい。

 ほとんどの毒は、(さわ)るだけでも危ない。

 ぼくみたいなシロウトが、手を出して良いものじゃない。


 どんなに良い薬だって使い方を間違(まちが)えたら、ケガや病気を悪化させてしまう。

 最悪の場合、死なせてしまうかもしれない。

 それに毒がなくても、虫には(さわ)りたくない。 

 やっぱり、毒虫を薬にしようなんて考えは捨てよう。

【「やってみせ」とは?】

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、()めてやらねば、人は動かじ」

「話し合い、耳を(かたむ)け、承認(しょうにん)し、任せてやらねば、人は育たず」

「やっている、姿を感謝で見守って、信頼(しんらい)せねば、人は実らず」


 これは、大日本帝国海軍元帥(げんすい)海軍大将、山本五十六(いそろく)格言(かくげん)

 この格言は、警察予備隊、保安隊、自衛隊の教育方針として、現在も引き()がれている。

 山本五十六は軍人としてだけではなく、教育者としても(すぐ)れた人物だったと言われている。

 ちなみに「元帥海軍大将」は、海軍で一番偉い階級。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ