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ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


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第33話 家族内感染

 ヒョウ兄貴(あにき)縄張(なわば)りを出て、数日後。

 どうも、お父さんとお母さんの様子がおかしい。

 元気がなさそうだし、たまに(せき)もしている。

 いつも綺麗(きれい)だった毛並(けな)みも、(つや)がなくなって毛玉(けだま)が付いている。

 (よう)()した後に、お尻歩き(猫が地面にお尻をこすり付けるように歩く)しているのを見かけるようになった。

 しっかり食べているはずなのに、ふたりとも()せてきた気がする。


「お父さん、お母さん。ふたりとも具合悪(ぐあいわる)そうだけど、大丈夫ミャ?」

「そうだニャー……。なんかこの(ごろ)、体が重くておなかの調子(ちょうし)も良くないニャー」

「私も疲れやすくなって、毛もパサパサしてきた気がするニャ。ちゃんと、毛づくろいは()かさずにしているのにニャ……」


 やっぱり、ふたりとも具合(ぐあい)が悪かったらしい。

 お母さんが心配そうに、ぼくの毛づくろいをしながら言う。


「シロちゃんも毛がパサパサで、ずいぶん()せちゃっているニャ。可哀想(かわいそう)ニャ……」

「ぼくもミャ?」


 全然、気が付かなかった。

 言われてみれば、ぼくの毛もパサついているような気がする。

 最近、ちょっとゴロゴロピーちゃん(おなかをこわしている)っぽいんだよね。

 なんとなくおなかが()っている気がするし、ぽんぽん(おなか)ぺいんぺいん(いたいいたい)な感じもするし。


 ダルさも旅疲(たびづか)れかと思っていたんだけど、これは病気の可能性があるな。

 どうやらぼくたち全員、同じ病気に(かか)っているようだ。

 そうと分かれば、お父さんとお母さんを『走査(そうさ)


『病名:猫回虫症(ねこかいちゅうしょう)


猫回虫症(ねこかいちゅうしょう)処置(しょち)駆虫薬(くちゅうやく)を、定期的(ていきてき)投与(飲ませる)


 え? ウソでしょっ?

 ぼくのおなかの中に、寄生虫(きせいちゅう)がいるってことっ?

 うわ~っ、イヤだ~! 早く出てってくれ~っ!

 助けて~っ、なんとかして~! 『走査(そうさ)』!


対象(たいしょう):キク科ヨモギ属ニガヨモギ』


薬効(やっこう):リウマチ、ペスト、コレラ、扁桃腺炎(へんとうせんえん)中耳炎(ちゅうじえん)、虫歯、健胃(けんい)(胃を元気にする)、駆虫(くちゅう)防虫(ぼうちゅう)、ヒト免疫不全(めんえきふぜん)ウイルス、新型肺炎感染症(SARS-CoV-2)、A型インフルエンザウイルス、ノロウイルス、ネコカリシウイルスなどの抑制(よくせい)


 ありがとう、『走査(そうさ)

 近くに、ヨモギに似た草が()えていた。

 これはみんなに薬草の見分け方を教える時に、「ヨモギと間違(まちが)えないように」といつも注意しているニガヨモギ。

 よし! これさえあれば、猫回虫症が治るっ!

 急いで薬を作って、みんなで飲むぞっ!


 ニガヨモギを採り、石で叩いて(つぶ)していく。

 ヨモギって名前が付いているけど、ちょっと匂いが違うな。

 ヨモギは、ヨモギもちみたいな美味しそうな(にお)いがするんだけど。

 ニガヨモギは、ヨモギより薬っぽい匂いがする。

 だけどイヤな臭いじゃなくて、(さわ)やかなメントールみたいな香り。


 薬を作っていると、『走査(そうさ)』が発動(はつどう)した。


警告(けいこく):ニガヨモギの含有成分(に入っている)thujone(ツジョン)」に、毒性あり』


過剰摂取(かじょうせっしゅ)(食べ過ぎ)すると、神経麻痺(しんけいまひ)嘔吐(おうと)幻覚(げんかく)錯乱(さくらん)痙攣(けいれん)などの症状(しょうじょう)発現(出る)


 ニガヨモギって、毒があるのっ?

 それを、早く言ってよっ!


『ただし、生草(なまくさ)の状態で数kg以上摂取(せっしゅ)しなければ、上記のような症状(しょうじょう)は起こらない』


 なんだ、(おど)かさないでよ。

 つまり、薬として飲むくらいなら大丈夫ってことか。

 教えてくれてありがとう、『走査(そうさ)


 ヨモギを、kg単位(たんい)で食べることはないよ。

 どんなに良い薬も、過剰摂取すれば毒となる。

 だけど、毒があるって知っちゃうと、やっぱりちょっと怖いな。

 (ねん)(ため)、葉そのものは食べないで(しぼ)った汁だけにしておこう。


 さっそく、自分の肉球に付いたニガヨモギの汁をひと()めしてみる。

 うわっ、名前の通りめっちゃ苦いっ!

 ずっと舌に残る苦さじゃなく、一瞬でスッとなくなるイヤミのない苦み。

 あとには、ニガヨモギ特有のメントールみたいな匂いだけが残った。

 う~む……、これはたくさん飲みたいと思う味じゃないな。


 とりあえずこれを飲めば、猫回虫症は治るんだ!


「お父さんとお母さん、お薬が出来たミャ。とっても苦いお薬だけど、これを飲めば病気が治るから我慢(がまん)して飲んで」

「苦いのは、イヤニャー……。でも病気は、もっとイヤニャー……」

「せっかく、シロちゃんが作ってくれたから苦くても飲むニャ」


 ふたりともニガヨモギの汁を()めて、その苦さにビックリして飛び上がった。


「苦いニャーッ!」

「お水、お水ニャッ!」


 ふたりは大慌(おおあわ)てで、川へ水を飲みに行った。

 可哀想(かわいそう)だけど、猫回虫を出す為だから仕方がない。 

 ぼくもニガヨモギの汁を飲んだ後、口直(くちなお)しに水を飲みに行った。


 ところで、「定期的(ていきてき)投与(飲む)」ってどのくらい?


用法(ようほう):2週間に1回』


 毎日これをずっと飲み続けなきゃいけなかったら、キツかったけど。

 2週間に1回だけなら、まぁ良いか。


 ฅ^•ω•^ฅ


 ニガヨモギを飲んだ翌日、猫回虫が出た。

 こんなものが、ぼくのおなかの中に()んでいたかと思うとゾッとする。

 すぐに、(あな)()って土に()めた。

「苦いからイヤだ」とワガママを言わずに、これからも定期的(ていきてき)にニガヨモギを飲もう。


 猫回虫が出て数日()つと、少しずつ体調が良くなってきた。

 (みょう)()っていたおなかも、ひっこんだ。

 パサパサだった毛並(けな)みも、(つや)を取り戻しつつある。

 ()せてしまった体と体のダルさは、そのうち戻るだろう。


 元気を取り戻すには、食べなきゃね。

 ぼくたちは山の(ふもと)沿()って歩きながら、獲物(えもの)を探す。

 しばらくすると、キリンのような首の長い動物の()れを見つけた。

 お父さんがキリンを見て、狩りの目付きになる。


「シロちゃん、あれはアエピカメルスニャー。さっそく、みんなで狩るニャー」


 お父さんの合図で、ぼくたちは一斉(いっせい)()け出した。

 (おそ)ってきたぼくたちを見て、アエピカメルスの()れは(あわ)てて逃げ出す。

 お父さんは1(とう)のアエピカメルスの足に飛び付き、(ころ)ばせる。

 アエピカメルスが地面に(ひざ)()いたところで、長い首を登って顎下(あごした)()らい付く。

 急所(きゅうしょ)()みちぎられたアエピカメルスは、大きな音を立てて地面に倒れた。

 相変わらずお父さんは軽やかな身のこなしで、急所(きゅうしょ)(ねら)った攻撃が上手い。


 ぼくも、お父さんみたいに狩りが上手くなりたい。

 でもぼくは大きな獲物(えもの)(あば)れられると、簡単に振り落とされちゃうんだよね。

 仔猫(こねこ)(つめ)(きば)も小さいから、獲物(えもの)に深く()さらないんだ。 

 爪出して、じっと見つめる。

 この小さな体が、(にく)い……。

 

 落ち込むぼくの頭を、お母さんが優しく()で撫でしてくれる。


「シロちゃん、どうしたのニャ? たくさん食べて、元気になるニャ」


 お母さんが言う通り、落ち込んでいても、仕方がない。

 せっかく、()れたてのお肉が目の前にあるんだ。  

 たくさん食べて、元気を取り戻そう。


 アエピカメルスのお肉は脂身(あぶらみ)が少ない赤身(あかみ)で、シカやウマに似た味でとても美味しかったです。

猫回虫症(ねこかいちゅうしょう)とは?】

 猫回虫は、猫の小腸(しょうちょう)()みついて、栄養を(うば)い取って成長する寄生虫。

 自覚症状(じかくしょうじょう)がないことが多いので、飼い主さんもなかなか気付けないらしい。

 知らないうちに、猫が弱っていく恐ろしい病気。


苦蓬(ニガヨモギ)とは?】

 7~9月頃に、黄色い小さな花を咲かせる雑草。

 ヨモギの葉が(あざ)やかな緑色なのに対し、ニガヨモギは白っぽい緑色。

 化粧品では、防腐(ぼうふ)の補助的役割で使用される。

 食品添加物(しょくひんてんかぶつ)としても認可(にんか)されており、苦味料(くみりょう)分類(ぶんるい)される。

 清涼飲料水、リキュール、ハーブ酒、(あめ)、サプリメントなどの香り付けにも利用されている。

 著名(ちょめい)な芸術家たちが愛した薬草蒸留酒(じょうりゅうしゅ)、「absinthe(アブサン)」の材料としても有名。


【|Aepycamelusアエピカメルスとは?】

 今から約2000年前~200万年前に生息(せいそく)していたといわれている、ラクダの祖先(そせん)

 古い資料には|Alticamelusアルティカメルスと書いてあり、「背の高いラクダ」という意味がある。

 ラクダだけど砂漠(さばく)じゃなくて、大草原(だいそうげん)()んでいた。

 木の葉を食べる草食動物(そうしょくどうぶつ)

 どう見ても、キリン模様(もよう)がないキリン。

 推定(すいてい)肩高約2m

 体重は不明。 

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