表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/63

第28話 彼方より

 ゆっくり休んで疲れも()えたところで、旅立ちの時を(むか)えた。

 縄張(なわば)りの猫全員が、お見送りに来てくれた。


仔猫(こねこ)のお医者さん、ありがとニャ~ン」

「教えてもらったお薬は、ずっと(かた)()いでいくニャゥ」

「どうか、お元気でナ~」

「仔猫ちゃん、またおいでニャゴ。体調は大丈夫ニャゴ? 忘れ物はないニャゴ?」


 キジブチは、ぼくの頭を()で撫でしながらあれこれ聞いてくる。

 ぼくは、キジブチに向かって、ニッコリと笑い返す。

 

「キジブチさんも皆さんも、どうかお元気でミャ」

「アンタはまだちっちゃいんだから、お父さんとお母さんの言うことを良く聞くニャゴ。お父さんとお母さん、どうかこの子を守ってあげて下さいニャゴ」

「もちろん、シロちゃんは、大事なうちの子ですニャー。絶対に守り抜くと、お約束しますニャー」

「可愛いシロちゃんを守ることは、親として当然ですニャ」


 お父さんがぼくを抱き上げて、(のど)をゴロゴロ鳴らして顔をスリスリした。

 お母さんも喉を鳴らして、スリスリしてくる。

 くすぐったくて嬉しくて、ぼくも喉を鳴らした。


 トマークトゥスの()れに(おそ)われて、ひとりぼっちになって(あらた)めてお父さんとお母さんの()(がた)みを知った。


 そんなぼくたちを見て、キジブチも安心したように笑う。


「お父さんとお母さんに愛されて、とっても幸せそうニャゴ。これからもずっと幸せでいられるように、心から祈っているニャゴ」


 こうしてぼくたちは、キジブチの縄張りから旅立った。


 ฅ^•ω•^ฅ


 縄張りを出た後、またしばらくは気ままな家族旅を続けた。

 川に沿()って(たに)を抜け、ついに山の向こう側へ出た。


 山の向こう側にあったのは、広い広い大草原(だいそうげん)

 その先にはお日様(ひさま)()らされて、水面(すいめん)がキラキラと光っている大きな海があった。


「海ミャーッ!」


 ぼくは大喜びで、海へ向かって()け出した。

 海と空は、両方とも青なのに全然違う。

 これが、マリンブルーという青なのか。


 海水は綺麗(きれい)()き通っていて、海中(かいちゅう)に沈んだ岩や泳ぐ魚まで()けて見える。

 白い波が浜辺に打ち寄せ、引いて行くを何度も()え間なくくり返している。


 ザバーン、ザザー……という波の音も耳に心地良(ここちよ)い。

 海の音に(いや)されるって、本当なんだな。


 ずっと波を見つめていると、まるで海が生きているみたいだ。

 理科の授業で習ったけど、波は月の引力と風によって起こるものらしい。

 海以外では、この現象は起こらない。

 海は不思議だ。


 (さわ)やかな風が吹くと、海の(にお)いがする。

 大きく()びをして、深呼吸(しんこきゅう)したくなる。

 空には海鳥(うみどり)達が「みゃあみゃあ」と鳴きながら、飛んでいる。

 想像していたよりも、海鳥って大きいんだな。


 ぼくは猫になってからはもちろん、人間だった頃も海を見たことがなかった。

 動画や写真では見たことがあるんだけど、本物の海は初めて見た。


 ぼくは、初めて見る海の美しさに感動して、胸がいっぱいになる。

 海って、こんなにも綺麗(きれい)だったのか。

 綺麗すぎて、怖いくらいだ。

 あまりにも美しすぎて、ずっと見ていられる。

 この美しい景色を見られただけで、ここまで来て良かったと思える。


 イチモツの集落(しゅうらく)長老(ちょうろう)のミケさんは、「森の外には何もなかった」と言っていた。

 ミケさんは、「この山を越えたら、何があるのか」とは思わなかったんだな。

 山を越える行動力と好奇心があれば、こんなにも美しい海が広がっていたのに。

 ミケさんは、なんてもったいないことをしたんだろう。


 イチモツの集落へ帰ったら、ぜひとも教えてあげたい。

 カメラがあったら良かったのに。

 いや、この感動は直接見なければ味わえない。


 お父さんとお母さんも、初めての海が珍しいらしい。

 波打ち(ぎわ)で引いていく波を追いかけて、波に追われて逃げるをくり返している。

 波を追いかけて、「ニャー」

 波に追われて、「ニャー」


 ぼくのお父さんとお母さんが、可愛すぎる。 

 でも逃げ遅れたら、びしょ()れになっちゃうぞ。

 ふたりとも()れるのが苦手なのに、なんだかスゴく楽しそう。

 波と追いかけっこが楽しそうだったから、ぼくも参加することにした。


 追いかけっこをして遊び疲れたので、3匹で身を寄せ合ってお昼寝。

 寝ている間に(しお)()ちて、気が付いたら海の中でした――

 なんてことが起こらないように、砂浜(すなはま)から少し(はな)れた草原まで移動した。


 聞こえてくる波の音。

 心地良(ここちよ)海風(うみかぜ)

 ぽかぽか陽気(ようき)で、お昼寝日和(びより)

 お父さんとお母さんのふわふわもふもふの猫毛に()もれれば、いつもより眠れそうな気がする。


 ฅ^•ω•^ฅ


 波の音が気持ち良くて、寝すぎてしまったようだ。

 気が付いたら、空の色が茜色(あかねいろ)に染まっていた。

 夕日(ゆうひ)が沈んでいく海も、夕焼(ゆうや)け色にキラキラと(かがや)いている。

 このまま太陽が(しず)むまで、ずっと(なが)めていたいと思わせる美しさ。


 だけど夜が来る前に、食べる物を探さないと。

 海には、海洋(かいよう)生物がいっぱいいる。

 泳ぐことが出来れば、魚を捕れるかもしれない。


 と思ったけど、猫に魚は食べさせない方がいいんだよね。

 日本では、「猫は魚が好き」というイメージがあるけど。

 猫は肉食動物なので、海洋(かいよう)生物は食べられないものが多い。


 青魚(あおざかな)、イカ、タコ、貝類、甲殻類(こうかくるい)(カニやエビ)などは、猫にとって毒となる成分が(ふく)まれている。

 カツオやマグロも、キャットフード用に加熱処理(かねつしょり)されたものじゃないと食べられない。

 魚は小骨(こぼね)が多く、(のど)()さる危険性も高い。


 猫になったら、海の(さち)が食べられなくなるなんて……。

 人間だった頃に、もっとたくさん食べておけば良かった。

 岩場にフナムシっぽい虫がいるけど、これも甲殻類(こうかくるい)なので食べられない。

 お父さんが()らえて食べようとしていたので、(あわ)てて止める。


「お父さん! それは毒があるから、食べちゃダメミャーッ!」

「これ、食べちゃダメなのニャー? 美味しそうなのにニャー……」


 お父さんは残念そうに、フナムシを元の場所へ戻した。

 危ない危ない、食べる前に気付いて良かった。


 海の(さち)が食べられないとなれば、あと食べられるのは海鳥(うみどり)くらいか。

 見れば岩場には、ペンギンのような鳥が()れている。


「あれは、コペプテリクスニャー。みんなで、そ~っと近付いてって狩るニャー」


 お父さんの指示の(もと)、そろ~りそろ~りと近付いて一気に(おそ)いかかった。

 コペプテリクスたちは驚いて、次々と海へ飛び込んで行く。

 海中(かいちゅう)へ逃げたヤツは、(あきら)めるしかない。


 逃げ遅れたコペプテリクスが1匹だけ狩れたので、家族で分け合って美味しく食べた。

 鶏肉(とりにく)みたいな味がして、とても美味しかったです。


 ฅ^•ω•^ฅ


 お父さんとお母さんと3匹で、仲良くおてて(つな)いで、白い砂浜(すなはま)をブラブラ歩く。

 砂に足が沈んでちょっと歩きにくいけど、砂の感触(かんしょく)は気持ち良い。

 お散歩しながら、お母さんが首を(かし)げて聞いてくる。

 

「シロちゃん、次はどこへ行くニャ?」


 最初の目標は、森を出る。

 第二目標は、山に着く。

 第三目標は、山を越える。

 山の反対側には、海があった。


 さて、次はどこへ行こうか?

 海の向こうに、陸地(りくち)らしきものが小さく見えている。

 泳いで行ける、距離(きょり)だろうか。


 水が苦手な猫が多いけど、たまに水が好きで泳げる猫もいる。

 猫が泳ぐ時は、犬かきみたいに泳ぐんだよ。

 ぼくは猫になってから、何度も川に入ったことはあるけれど泳いだことはない。

 たぶん泳ごうと思えば、泳げると思う。


 でも向こう岸まで海を泳いで渡るなんて、たぶん無理だ。

 (しお)に流されて、(おぼ)れてしまうだろう。

 あそこまで、どのくらい距離があるかも分からない。

 近くに見えても、実際はめちゃくちゃ遠いかもしれない。

 仮に向こう岸まで辿(たど)り着けたとしても、何があるか分からない。


 うん、海を渡るのはやめよう。

 このまま海岸線(かいがんせん)を歩いて行ったら、どこへ辿たどくのだろう?

 いろいろ考えてから、答える。


「行けるところまで行ってみたいミャ」

「分かったニャー」

「私たちは、シロちゃんにどこまでもついて行くニャ」

「お父さんお母さん、ありがとうミャ!」


 お父さんとお母さんは、ニッコリ笑って、ぼくのワガママを受け入れてくれた。

 ふたりの優しさが(うれ)しくて、ぼくも笑い返した。


 そういえば、ふたりは行きたいところはないのかな?

「シロちゃんの行きたいところが、私たちの行きたいところ」と、答えてくれると思うけど。

 もしかしたら、イチモツの集落(しゅうらく)へ帰りたいかもしれない。


 ぼくも、イチモツの集落が(こい)しい。

 イチモツの集落のみんなに会いたい。 

 海岸線(かいがんせん)(はし)っこまで行っても何もなかったら、イチモツの集落へ帰ろう。


 帰ったら、長老のミケさんにお土産話(みやげばなし)をたくさん話すんだ。

Copepteryx(コペプテリクス)とは?】

 今から約4100万年前~1500万年前に生息していたと言われている、海鳥(うみどり)祖先(そせん)

 水鳥みたいな長い首が付いた、ペンギンのような見た目をしている飛べない鳥。

 推定(すいてい)全長約2m

 体重は不明。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ