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ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


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第21話 アロエ

 傷だらけで苦しんでいる猫に、残酷(ざんこく)なお知らせをしなければならない。


「すみませんが、これからあなたを川へ入れますミャ」

「ニャ、ニャンだってっ? 水はイヤニャン! 怖いニャンッ!」


 やっぱり、この猫も水が苦手だった。

 逆に水浴びが好きな猫の方が、珍しいからな。

 患者さんは水を恐れて逃げようとしたが、暴れたせいで痛みが増してしまったようだ。

「ニャーニャー」と、痛がって泣いている。


「水は怖いと思いますが、どうか我慢(がまん)して下さいミャ。傷を水で洗い流して冷やさないと、もっと痛くなりますミャ」

「うぅ……、分かったニャン……。水はイヤだけど、痛くなるのはもっとイヤニャン……」


 丁寧(ていねい)説得(せっとく)したら、渋々(しぶしぶ)ながら受け入れてもらえた。


「患者さんは傷だらけだから、そっと運んでミャ」

「分かっているニャー」

「水は怖いけど、頑張(がんば)るニャ」


 お父さんとお母さんも水が苦手なので、少しでも()れないように気を付けながら患者さんを川へ運んでくれた。

 患者さんは水に入れられると、注射(ちゅうしゃ)される子供みたいに目をギュッと閉じて体を固くしている。  


 川の深さは15cmくらいで、(おぼ)れるような深さじゃない。

 ぼくも川へ入ると患者さんの体に水をバシャバシャかけて、汚れを落としていく。

 猫って水に濡れると体がほっそりして、別の生き物みたいになるよね。

 患者さんはケガの痛みと水によるストレスで、げっそりした顏で聞いてくる。


「いつまで、水の中にいれば良いニャン……?」


 それは、ぼくにも分からない。

 傷口は、流水(りゅうすい)で洗えたから良いんだけど。

 打撲(だぼく)は、いつまで冷やせば良いんだろう?


 もう一度『走査(そうさ)』したら、詳しく教えてくれないかな?


 そんなことを考えながら、とりあえず『走査(そうさ)』してみる。


打撲(だぼく)処置(しょち)冷却(れいきゃく)時間は20分程度が目安(めやす)。痛みと()れが引くまで、2~3日は()り返す』


 なんだ、聞けば分かりやすく説明してくれるんじゃないか。

 最初から、そうしてくれれば良かったのに。

 でも、20分と言われても時計がないから、時間も分からない。

 

 ()れているってことは、炎症(えんしょう)を起こしているってことだよね。

 炎症(えんしょう)作用のある薬草が効くってことかな?


 ヨモギは体を温める薬草だから、炎症(えんしょう)には逆効果(ぎゃくこうか)

 確か、アロエに抗炎症作用(こうえんしょうさよう)があったはず。

 ちょうど河原(かわら)()えていた、アロエに向かって『走査(そうさ)


対象(たいしょう):ツルボラン亜科アロエ属アロエ』

薬効(やっこう)抗炎症(こうえんしょう)作用、血液の循環(じゅんかん)作用、殺菌(さっきん)作用、保湿(ほしつ)作用、(かゆ)み止め、火傷(やけど)、切り傷、()り傷、虫刺(むしさ)され、健胃(けんい)便秘(べんぴ)

禁忌事項(きんきじこう):熱を冷ます薬草の為、胃腸が冷えやすい人や妊婦(にんぷ)服用(ふくよう)禁忌(ダメゼッタイ)


 よし! これだっ!

 お父さんとお母さんに頼んで、患者さんを川から出してもらった。

 患者さんはびっしょりと()れたまま、河原(かわら)でぐったりと寝そべっている。


 今日は天気も良いしひんやりとした川風(かわかぜ)が吹いていて、(すず)しくて気持ちが良い。

 このまま日向ぼっこしていれば、お日様(ひさま)と風の力で乾くだろう。


 次は、打撲(だぼく)炎症(えんしょう)(おさ)えるアロエの汁を()らないと。

 アロエは、葉を(つぶ)したり(しぼ)ったりする必要はない。

 葉をポキッと折るだけで、透明(とうめい)のヌルヌルした汁が出てくる。


 困ったことに猫は全身が毛に(おお)われているから、どこをケガしたのか分かりにくい。

 人間だったら、打撲(だぼく)した場所が青や赤に変色(へんしょく)するからすぐ分かるのに。

 困った時の『走査(そうさ)』頼み。


打撲(だぼく)、および、()り傷の箇所(かしょ):両(ひじ)、両(ひざ)、右手根(しゅこん)(手首)、左飛節(ひせつ)(足首)、臀部(おしり)


走査(そうさ)』のおかげで、打撲(だぼく)した場所が分かったぞ。

 ここに来てようやく、『走査(そうさ)』の使い方が分かってきたような気がする。


 (さいわ)いなことに、岩山から転がり落ちる時に、頭や腹は打たなかったようだ。

 もし脳や内臓(ないぞう)にダメージを受けていたら、ぼくにはどうすることも出来なかった。

 ぼくに出来ることは、応急処置(おうきゅうしょち)民間療法(みんかんりょうほう)レベルだからな。


「傷にお薬を、()りますミャ」

「ぬるぬるべとべとして、気持ち悪いニャン……」


 アロエの汁を()ると、患者さんは不快(ふかい)そうに顔をしかめた。

 どんな()り薬も、()った後はしばらくベタベタして気持ち悪いよね。


「ケガを治す為ですから、薬が乾くまで我慢(がまん)して下さいミャ」


 患者さんに言い聞かせて、打撲(だぼく)した部分にアロエの汁をたっぷりと()りつけた。

 とりあえず、この状況でやれることはやったと思う。


 テープで固定(テーピング)は、テープがないし巻き方も分からない。

 あとは、安静(あんせい)にして寝て治すしかない。

 やることやって疲れたので、()れた毛を乾かしながら河原(かわら)でお昼寝をすることにした。


 ฅ^•ω•^ฅ


 お昼寝から目が()める頃には、毛は乾いていた。

 お日様が(かたむ)いて、空がオレンジ色に変わっている。

 どうやら、かなり長い時間眠っていたようだ。


 大きく欠伸(あくび)をしながら、思いっきり伸びをする。

 欠伸(あくび)をしながら伸びをすると、気持ちが良いよね。


 お父さんとお母さんも起き出して、毛づくろいをしていた。

 ぼくもふたりにならって、毛づくろいを始める。

 毛づくろいってやり始めると結構楽しいから、夢中になってやっちゃうんだよね。

 リラックスするから、(ひま)さえあれば毛づくろいしている。

 毛づくろいしているぼくに気付いて、お父さんとお母さんが近付いてくる。


「シロちゃん、毛づくろいしてあげるニャー」

「シロちゃんは、いつも可愛いニャ」


 毛づくろいしてもらうと「愛されているなぁ」って感じがして、とても嬉しい。

 だからぼくもお父さんとお母さんに、お返しの毛づくろいをしてあげるんだ。 

 毛づくろいをしてあげると、お父さんとお母さんも気持ち良さそうに目を細めて喜んでくれる。


 ぼく達3匹が仲良く毛づくろいをしていると、患者さんも起きたようだ。

 目覚めた患者さんは驚いた様子で、自分の体を確認している。


「ニャニャ? だいぶ、痛くなくなったニャン」

「どうやら、薬が()いたようですミャ」


 ぼくが笑いかけると、患者さんは嬉しそうに笑ってお礼を言う。


「仔猫のお医者さん、ありがとニャン。(がけ)から落ちた時は、体中(からだじゅう)痛くてもう死ぬかと思ったニャン」

「どういたしましてミャ。痛みが軽くなったからって、無理して動いちゃダメですミャ。無理したら、川にバシャーンしますからミャ」

「分かったニャン、大人しくしとくニャン」

「ところで、なんで(がけ)から落ちたんですミャ?」

「パサンを狩ろうとして、失敗しちゃったニャン……」


 患者さんはションボリ顔で、ポツリと答えた。

 狩りが得意なお父さんですら、「狩るのが難しい」と言っていたヤギか。


「どうして、パサンを狩ろうとしたんですミャ?」

「食べてみたかったんだニャン」


 食べたことがない、珍しい物を食べてみたい好奇心(こうきしん)かな?

 アイツに近付くのは危ないから、(あきら)めた方が良いと思うよ。


 ฅ^•ω•^ฅ


 夜になる前に巣穴(すあな)になりそうな、小さな洞穴(ほらあな)を見つけた。

 洞穴ってのは、(がけ)岩壁(いわかべ)に自然に出来た穴のこと。


 夜になると、活発(かっぱつ)になる天敵(てんてき)が多い。

 仔猫のぼくは、(ねら)われたらあっという間に狩られてしまう。

 ケガや病気で弱っている猫も、(ねら)われやすい。

 ヤツらは血の臭いを()ぎ付けて、(おそ)ってくる。


 ぼくと患者さんは、洞穴(ほらあな)に隠れてお留守番(るすばん)

 患者さんに追加のアロエを()っている間に、お父さんとお母さんが狩りへ行ってくれた。

 ふたりが狩ってきたのは、パラヒップス(小さなウマ)だった。


「シロちゃん、パラヒップスを()ってきたニャー」

「みんなで、食べましょうニャ」

「ありがとニャン、いただきますニャン」

「いただきますミャ」


 パラヒップスを美味しく食べた後、4匹で身を()せ合って眠った。

【猫にアロエを食べさせても大丈夫?】

 アロエは猫にとっては毒なので、絶対に食べさせちゃダメ。

 だけど、有毒(ゆうどく)成分を(のぞ)いたアロエ入り猫用商品はたくさんある。

 ・猫用アロエベラジュース

 ・アロエ入りキャットフード

 ・猫用アロエシャンプー

 ・猫砂用アロエ消臭剤



【猫の毛繕(けづくろ)いとは?】

 猫にとって、毛づくろいはとっても大事。

 猫が毛づくろいをする理由は、いろいろある。

 ①からまった毛や汚れを取り(のぞ)き、綺麗(きれい)毛並(けな)みと健康を(たも)つ為。 

 ②ストレスを感じた時に毛づくろいすると、リラックスするから。

 ③仲良し同士で()め合うことで、愛情表現(あいじょうひょうげん)をしている。

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