第157話 秋の花粉症対策
お父さんとお母さんをゆっくりと休ませてあげたいから、しばらくカタバミの集落でお世話になることにした。
蚊遣火や虫除け首輪なども、教えておきたい。
蚊の繁殖時期は、4~11月と長い。
夏と言わず、11月までは蚊遣火を焚いた方がいい。
蚊遣火は蚊に限らず、ハエ、ダニ、ノミにも効果がある。
ただし、頭文字Gやムカデなどの大きな虫には効かない。
頭文字Gやムカデくらいなら、猫が食べるから大丈夫だけどね。
いや、大丈夫じゃないか。
ムカデ自体は食べても問題ないけど、毒牙を持っているから咬まれると大変なことになる。
傷口に焼けるような激しい痛みが起こったり、熱が出たりする。
最悪の場合、重度のアレルギー反応を起こして命に関わる。
イヌも人間も、ムカデに咬まれないように気を付けてね。
頭文字Gは毒こそないけど、恐ろしい食中毒を起こす病原体を持っていることが多い。
日本では食べないけど、頭文字Gなら食べる国はたくさんある。
もちろん、きちんと清潔な環境で食用に養殖された頭文字Gだけだよ。
例えどんなに美味しくても、ぼくは絶対に食べたくないけどね。
だって、頭文字Gって怖いじゃん。
見ただけで、おぞましくて全身の鳥肌が立つ。
男の子が大好きなカブトムシやクワガタと同じ昆虫なのに、頭文字Gだけは苦手という人が結構多い。
なんで頭文字Gだけ、こんなに嫌われているのかな?
「頭文字Gは怖いもの」という、思い込みがあるのかもしれないね。
そういえば、そろそろ秋の花粉症の時季だな。
秋の花粉症の原因といえば、ヨモギと豚草。
ブタクサは毒にも薬にもならない雑草で、秋に大量の花粉を撒き散らかすことから害草とされている。
ブタクサと似た植物で、背高泡立草という雑草がある。
似ているので間違えられやすいけど、セイタカアワダチソウは花粉を飛ばさない。
セイタカアワダチソウは食べられるし、薬にもなる。
ただし、saponinという成分が含まれるから、猫は食べられないけどね。
人間の花粉症は春が多いけど、犬猫の花粉症は秋が多いと言われている。
見ればカタバミの集落の猫たちも、痒そうに目を掻いたりくしゃみをしたりしている。
どうやら、花粉症対策をしなければならないようだ。
花粉症に効く薬草といえば、ローズヒップ、イチョウ、ムラサキバレンギク、甘草、紫蘇。
ヨモギにも抗アレルギー作用があるんだけど、ヨモギが原因だから逆効果になってしまう。
前に秋の花粉症にヨモギを使った猫たちがいて、悪化させていたな。
ローズヒップはイヌバラの実のことで、「ビタミンの爆弾」と言われるほどビタミンたっぷりだけどめちゃくちゃ酸っぱい。
イチョウは苦くて飲みにくいし、淹れ方を間違うとGinkgolic酸という有害物質が出てしまう。
ギンコール酸をたくさん飲んでしまうと、皮膚炎や胃腸不調などのアレルギー症状を引き起こす。
イチョウ茶を淹れる時は、茶葉の量と蒸らし時間を正確に測らないと危険なんだよ。
猫は酸味と苦味が苦手だから、ローズヒップとイチョウは不評だった。
今回はイチョウとムラサキバレンギクとシソと甘草とイヌハッカで、花粉症のハーブティーを作ってみるか。
イヌハッカには抗アレルギー作用はないけど、免疫力強化や猫のストレス解消に効果がある。
花粉症に効くブレンドハーブティーを淹れて、猫たちに飲ませた。
イヌハッカが入っていると、みんな喜んで飲んでくれるんだよね。
ブレンドハーブティーの配合は難しいから、猫たちには一種類ずつ淹れるように教えた。
ハーブティーは、一種類で淹れるのが普通。
ブレンドする時は、癖が強くて飲みにくいハーブの場合。
ハーブ特有の匂いや苦味が苦手という人は、ブレンドすることで飲みやすくなるよ。
砂糖やハチミツなどで甘味をつけても、美味しい。
ミント系のハーブはハーブウォーターにすると、スッキリして美味しいよ。
全身の毛にまとわりついた花粉は、ブラッシングして落としてあげると花粉症の症状が軽くなる。
猫は毎日5000本くらい毛が抜けるから、ブラッシングは大事。
11月頃には秋の換毛期があるから、抜け毛も多くなるしさ。
目の痒みを訴えている猫たちには、アロエの汁を目に点す。
アロエには抗炎症作用があるから、花粉症の目薬になるんだ。
目箒の和名を持つバジルの種は、目に入れると目の病気を治すと言われている。
考えてみたら、種を目に入れるってちょっと怖いよね。
誰が最初に、バジルの種を目に入れるなんて思い付いたんだろう?
そうそう、バジルの挿し木は植木鉢で大切に育てているよ。
バジルは美味しくて、食欲増進、消化促進、鎮静作用、鎮痛作用、殺菌、抗菌、防虫効果などがある。
イチモツの集落に戻ったら、地面に植え替えるんだ。
たくさん収獲出来るようになったら、みんなにも食べさせてあげたい。
バジルは夏の暑さには強いけど、寒さには弱いから冬を越せない。
種が採れれば、来年の春に種蒔きが出来る。
冬が来る前に、種が採れると良いな。
ฅ^•ω•^ฅ
猫たちが寝静まったら、集落を出てグレイさんの元へ向かった。
『走査』を使わなくても、くしゃみでグレイさんの居場所が分かる。
グレイさんは、重度の花粉症なんだよね。
花粉症の患者は、花粉がちょっとでも飛び始めるとすぐ分かるんだって。
鼻水と涙で顔がグシャグシャになっちゃって、せっかくのカッコイイ顔が台無し。
何度も大きなくしゃみをくり返しているし、鼻が詰まって息も苦しそうだ。
「グレイさん、大丈夫ミャ?」
『ちっとも、大丈夫じゃない……。鼻がムズムズして、鼻水とくしゃみが止まらん。それに、あちこち痒くてイライラする』
鼻声でそう言いながら、グレイさんはあちこち掻きむしっている。
どうやら、アレルギー性皮膚炎も起こしているみたい。
ハーブティーより先に、全身にまとわりついた花粉を洗い流した方が良さそうだ。
「だったら、一緒に水浴びしようミャ」
『ああ、そうだな。水浴びしたら、スッキリしそうだ』
グレイさんは水浴びが大好きだから、大喜びで川へ飛び込んだ。
ぼくも川へ入って、ふたりで仲良く水遊びをした。
昼間はまだまだ暑いけど、夜は少し肌寒くなってきたし水も冷たくなってきた。
そろそろ、水浴びは厳しいかもな。
花粉を洗い流したら、焚火に当たって毛を乾かす。
火起こしは、グレイさんが手伝ってくれるようになったらずいぶんと楽になった。
グレイさんもすっかり慣れたもので、すぐに火を起こせるようになった。
ハーブティーを淹れる前に、グレイさんにアロエの汁を塗っておいた。
体があったまると、また痒みがぶり返しちゃうからね。
「はい、どうぞミャ。花粉症用のブレンドハーブティーミャ」
『ありがとう……。せっかくシロちゃんがオレの為に作ってくれたのに、味が分からんのがとても残念だ』
ブレンドハーブティーを飲んだグレイさんは、しょぼんと悲しそうな顔をした。
鼻が詰まっている時は、味が分からないよね。
呼吸も上手く出来ないみたいで、飲むのも辛いそうだ。
落ち込むグレイさんを、わしゃわしゃ撫でて慰める。
「花粉症用のハーブティーは美味しくないから、味が分からない方が良いミャ」
『なに? このハーブティーは、美味しくないのか?』
「病気を治すことが目的だから、美味しくないハーブティーもあるミャ」
『なるほど、そういうこともあるのか』
グレイさんは納得した様子で、ホッとした顔で笑った。
【背高泡立草とは?】
9~11月頃に、河原や空き地などで群生して黄色い花を咲かせる雑草。
名前の通り背が高く、1~4mくらいまで成長する。
日本生態学会によって「侵略的外来生物」に指定されている、北アメリカ原産の外来種。
ブタクサに似ているので、よく間違えられる。
薬効は、抗真菌作用、抗炎症作用、抗酸化作用などがある。
冬前に大量の蜜を集められる最後の機会となるので、蜂と養蜂家にとっては重要な蜜源植物。
……なんだけど、強烈な悪臭がするので日本ではあまり好まれない。
養蜂書には、「使い古した靴下のような酸っぱい臭いがする」と書かれている。
熟成させると、ブラックムスク系のスパイシーな匂いへ変わる。
アメリカやカナダでは「Golden Rod Honey(黄金の鞭のハチミツ)」という名前で、絶大な人気を誇る。
ゴールデンロッドハニーは、輸入食品店や通販などで購入出来る。




