第153話 猫の糖尿病
続いて、お父さんとお母さんが狩ってきてくれた|Macrauchenia(ラマみたいな動物)で料理をしよう。
マクラウケニアを川へ放り込んで、流水で血抜きをする。
みんなで協力して解体したら、石のナイフで食べやすい大きさに切り分ける。
ヒマワリの仁を叩き潰してお肉にまぶし、熱しておいた焼き石の上に乗せる。
ジューッという音とともに、お肉が焼ける香ばしい匂いが広がった。
美味しそうな匂いを嗅いで、みんな興奮して近寄ってくる。
「良い匂いニャー、早く食べたいニャー」
「美味しそうニャ、待ちきれないニャ」
『シロちゃん、まだか? まだか?』
「みんな『待て』ミャ。ちゃんと食べさせてあげるから、待っててミャ」
焼き上がっても、熱いからすぐには食べられない。
冷まさないと、火傷しちゃうぞ。
焼いているうちに仁から油が出て、さらに良い匂いがする。
肉の表面がこんがりと良い色になったら、葉っぱのお皿に取り分けて冷ましておく。
触れるくらいまで冷めたら、みんなに配る。
「はい、みんなお待たせミャ」
「待ちかねたニャーッ!」
「とっても美味しいニャッ!」
『おおっ? 前食べた肉とは違う味がして、これもめちゃくちゃ美味しいぞ! シロちゃんが作るものは、なんでも美味しくてスゴいなっ!』
みんな、いつもよりも食いつきが良くてビックリした。
ヒマワリ油って、そんなに美味しいのか。
ぼくも、仁をまぶして焼いたお肉を食べてみる。
仁から油が出て、いつもよりもふっくらジューシーで美味しい。
ヒマワリ油は初めて食べたんだけど、匂いや味に全然癖がないサラダ油みたいだ。
これなら、どんな料理に使っても合いそう。
猫になってから植物性の油を食べることがなかったけど、やっぱり油は美味しい。
そういえば、人間だった頃も揚げ物が大好きだったっけ。
おばあちゃんの作る唐揚げが、大好きだったなぁ。
もう二度と食べられないかと思うと、余計に食べたくなる。
猫は肉食動物だから、油が大好きなんだよ。
オオカミも同じ肉食動物だから、油が大好き。
肉食動物は、獲物の肝臓を好んで食べるといわれている。
肝臓には豊富な油や栄養素が含まれていることを、本能的に知っているからだそうだ。
「うちの猫は、生クリームやバターが好き」と言う飼い主さんがいるけど、猫も油を美味しいと感じるからなんだ。
油の匂いは、犬猫にとっても食欲をそそる匂いなんだね。
便秘予防、毛球症予防、被毛や皮膚の健康を保つ為に、猫にオリーブオイルを与える飼い主さんもいるよ。
与える量は小さじ半分くらいで、ごはんに混ぜると食べてくれるよ。
といっても、与えすぎるとデブニャンになっちゃうぞ。
逆に猫の健康を考えて油抜きのダイエットフードばかり食べさせていると、猫もストレスが溜まる。
人間だって、ずっと味気ないダイエットフードばかりじゃ嫌でしょ?
猫もダイエットさせようとすると、イライラしちゃうんだよ。
猫にダイエットさせる時は、猫がストレスを感じないようにいろいろ工夫してあげてね。
残ったお肉は切り分けて、セージをまぶしてクマザサで包んでおいた。
クマザサには、防腐作用と抗菌作用がある。
セージには、強い抗酸化作用がある。
川の水で血抜きもしたから、腐敗処理も出来ているはず。
これで、明日も美味しいお肉が食べられるぞ。
ฅ^•ω•^ฅ
セージの集落から旅立って数日。
あともうちょっとで、オリーブの集落に着くはずだ。
オリーブの集落の長と、「オリーブの実が成る頃にまた来る」と約束したんだよね。
もうそろそろ、オリーブの実が出来ているはず。
5月に訪れた時から、ずっと楽しみにしていたんだよね。
猫の大好物だというオリーブの実は、どんな味がするのかな?
ウキウキしながら歩いていると、『走査』が発動した。
『病名:肥満症、糖尿病、急性膵炎、脂質異常症、変形性関節症、膀胱炎、打撲、骨折、下痢』
『概要:オリーブの過食が原因』
『処置:非ステロイド性抗炎症剤、鎮痛剤、アセトアミノフェン製剤、スタチン系薬剤、小腸コレステロール吸収阻害薬、フィブラート系薬剤、ニコチン酸誘導体、肥満治療薬、食欲抑制剤、GLP-1受容体作動薬の投与。非ステロイド性抗炎症薬の塗布。インスリンの皮下注射。食事療法、運動療法、行動療法、外科手術』
前にオリーブの集落を訪れた時も、猫たちは肥満症に罹っていた。
だけどあの時は、ここまで酷くなかったぞ。
もしかして、悪化しちゃったのか?
食事療法、運動療法、行動療法、外科手術は、どれも野生の猫には不可能だ。
症状に合わせた対処療法しか、打つ手がない。
オオバコは、下痢、消炎、むくみ、利尿、整腸作用、高血圧、糖尿病、慢性気管支炎、ダイエット、毛球症などに効果がある。
レモングラスは、胃炎、腸炎、消化不良、肝炎、糖尿病、解毒作用、解熱作用、老化防止、むくみ、腸炎による下痢や腹痛などに効果がある。
甘草は、抗酸化作用、免疫力強化、血流改善、抗炎症作用、解毒作用、鎮静作用、鎮痛効果、抗ウィルス効果、動脈硬化、高血圧、低血圧、老化予防、コレステロール低下、骨粗鬆症、関節痛、湿疹、打撲、むくみ、冷え性、不眠症、食欲不振、便秘、膀胱炎、糖尿病、リウマチ、抗アレルギー作用などに効果がある。
オリーブにも、血圧降下、血糖値低下、コレステロール降下、殺菌作用、抗酸作用、抗炎症作用、老化予防、抗ガン作用、美肌効果、便秘、心臓病、利尿、骨粗鬆症、毛球症などに効果がある。
あとは、抗生物質のムラサキバレンギク。
ぼくが知る限りでは、こんなもんかな。
よし、これらでブレンドハーブティーを作ってみんなに飲ませよう。
オリーブの集落の猫は、ほとんどデブニャンだ。
前に見た時よりも、明らかに太っている。
原因は、オリーブの実の食べすぎ。
オリーブの実は抗酸化作用や免疫力強化など、良いことがいっぱいあるけど。
食べすぎたら、逆効果になる。
オリーブの実は、1個で約4~6kcaℓ
1個なら大したことないように思えるかもしれないけど、油の塊を食べているようなものだからね。
オリーブの実の収穫時期は、9~2月とめちゃくちゃ長い。
しかもオリーブの木1本から、収穫出来る実の量は15~20kg
このあたりには、オリーブの木が何本も生えている。
14匹の猫がいくら食べたところで、なくなることはない。
つまり半年間は、オリーブの実が食べ放題になる。
以前ぼくたちが訪れた時は5月で、ちょうど実が食べられない時季だった。
だからあの時は、軽い肥満症くらいだったんだ。
今は収穫時期を迎えて、食べ放題になったから症状が悪化した。
半年間食べられなかった分、今が一番太っているんだろうな。
おそらくこの集落の猫たちは、ダイエットとリバウンドを半年ずつ繰り返してしている。
これじゃ一生、痩せられないよ。
猫に「食べちゃダメ」と言っても、何がダメなのか理解が出来ない。
美味しかったら、食べたいだけ食べちゃうよね。
猫の一番の楽しみは食べることだから、取り上げるのも可哀想だし。
オリーブの実を取り上げるなんて、無理な話だ。
デブニャンは可愛いけど、肥満は万病のもと。
太ると、いろんな病気にかかりやすくなる。
体重が重いと足腰に負担がかかって、腰痛になったり膝の関節が変形したりする。
太ると動きが鈍くなって、ケガをしやすくなる。
打撲や骨折は、ジャンプ力が落ちて木登りに失敗したのかもしれない。
ケガをすると運動不足になって、もっと太ってしまうという悪循環。
脂質異常症は、血液の中を脂肪が流れている状態。
血管内で脂肪が詰まると、心臓病や脳卒中っていう怖~い病気になっちゃうぞ。
砂糖を摂らなくても、脂肪が増えすぎると糖尿病になるんだ。
糖尿病になると、疲れやすくなる、喉が渇きやすくなる、空腹感が強くなる、トイレの回数が多くなる、毛づくろい不足になる、感染症にかかりやすくなる、病気やケガが治りにくくなるなどの症状が現れる。
ただでさえ短い猫の寿命が、さらに縮まってしまう。
どうしたものか……。




