第150話 美味しいジビエ肉の作り方
グレイさんに起こしてもらった火で、お肉を焼いて食べた。
ハーブなどは全然使っていない焼いただけのお肉が、感動するほど美味しかった。
「食欲がない」と食べなかった数日間が、もったいなかったと後悔する。
お肉の旨味が口いっぱいに広がると、食欲が湧いてきた。
「久し振りに美味しいものを食べた」と、満たされた気持ちになった。
美味しいものを食べると、幸せな気持ちになるよね。
グレイさんも、焼いたお肉を美味しそうに食べてくれた。
『やっぱりシロちゃんが焼いてくれた肉は、とても美味しいな。シロちゃんも、たくさん食べて早く元気になるんだぞ』
「ミャ!」
とはいえ、ふたりでPhenacodus(もこもこしていないヒツジ)1匹は食べきれない。
グレイさんの臭いが付いちゃっているから、集落にもお裾分けすることも出来ない。
このまま置いておけば、森のお掃除屋さんたちが食べてくれるだろうけど。
どうにかして、集落の猫たちにお裾分けする方法はないかな?
そうだ! お肉を川の水で洗って、グレイさんの臭いを消せばいいんだっ!
流水にさらせば、血抜きも出来る。
野生動物のお肉を美味しく食べるには、血抜きがとても重要らしい。
血抜きをしないと、血が酸化して臭みの原因になるという。
血抜きをすると細菌の繁殖を防いで、腐敗を遅らせることも出来るそうだ。
今まで気にしたことがなかったけれど、血抜きしたお肉ってどんな味なのかな?
血抜きしたお肉も、食べてみたいな。
血抜きが終わったら、お父さんとお母さんに取りに来てもらおう。
血が抜けた分だけ軽くなって、運びやすくなるはず。
お肉を食べたら元気が出てきたし、ふたりを呼びに行くくらいは出来そう。
血抜きしている間は、グレイさんに見張りを頼もう。
血の匂いに釣られて、森のお掃除屋さんたちが寄ってきちゃうからね。
「グレイさん、この残ったお肉を川に入れて欲しいミャ」
『どういうことだ?』
不思議そうな顔でグレイさんが首を傾げたので、詳しく説明した。
話を聞いたグレイさんは、納得した顔で大きく頷く。
『なるほどな。そういうことなら、オレに任せてくれ』
さっそく、グレイさんが残ったお肉を川へ放り込んでくれた。
川の水が赤く染まり、お肉から血が抜けていく。
グレイさんは河原で伏せをして、見張りをしてくれた。
「それじゃ、お父さんとお母さんを呼びに行ってくるミャ」
『ああ、いってらっしゃい』
ฅ^•ω•^ฅ
毛づくろいをしてグレイさんの臭いを消したあと、ホタルブクロの集落へ戻った。
集落では、猫たちがのんびりと寝そべっていた。
その中にはお父さんとお母さんもいて、お互いを毛づくろいしていた。
「お父さんとお母さん、ふたりとも病気は治ったのミャ?」
「この通り、もうすっかり元気ニャー」
「シロちゃんこそ、大丈夫ニャ?」
「うん、ぼくも治ったミャ。グレイさんがフェナコドゥスを狩ってくれたから、集落まで運んで欲しいミャ」
「フェナコドゥスニャー? それは楽しみニャー」
「さっそく、持って帰りましょうニャ」
ふたりとも大喜びで、血抜きしたお肉を取りに来てくれた。
血抜きしたお肉を、お父さんとお母さんとぼくの3匹で集落へ運び込んだ。
「みんな~っ、お土産ミャ!」
大声で呼びかけると、おなかを空かせた猫たちが一斉に集まってきた。
みんな「うみゃいうみゃい」と、喜んで食べてくれた。
ぼくはさっき食べたところだけど、血抜きしたお肉も食べたくてひとくちだけもらった。
血抜きされたお肉は、血生臭さがなくてひんやりと良く冷えている。
まるで、お肉のお刺身を食べているみたい。
同じお肉なのに、血抜きする前後で味が全然違ってビックリした。
これは面白い発見だ。
次は血抜きしたお肉に乾燥したハーブを振って、焼いて食べてみたいな。
ฅ^•ω•^ฅ
みんなの病気が治ったところで、ホタルブクロの集落を旅立つことにした。
「ぼくたちはそろそろ、自分たちの集落へ帰りますミャ。皆さん、どうかお元気でミャ」
「仔猫のお医者さん、お世話になったナァー。くれぐれも気を付けて、帰ってナァー」
ホタルブクロの集落の猫たちは、みんなでお見送りしてくれた。
面倒臭がり屋さんの集まりだった、キャットタイムの集落の猫たちとは大違いだ。
やっぱり、お見送りしてもらえると嬉しいよね。
お別れの挨拶を済ませると、集落をあとにした。
集落の外で待っていたグレイさんと合流して、次の集落へと向かう。
次の集落は、セージの集落だったな。
コモンセージは、肉料理の臭み消しや香辛料として使えるんだよね。
ホタルブクロの集落の周りに生えているバジルも、忘れずにたくさん採って行かなくちゃ。
バジルとセージはこのあたりにしか生えていないから、ぜひとも持って帰りたい。
まだ種が出来ていないから、種を持って帰ることは出来ない。
『走査』によると、どっちも挿し木で増やすことが出来るそうだ。
挿し木は作り方さえ覚えれば、誰でも簡単に出来る。
5~10cmくらいに切った挿し木を水に浸しておくと、1~2週間くらいで切り口から根っこが出る。
茎を切る時は水に浸しながら斜め切りにすると、水をよく吸って根が出やすくなる。
失敗することもあるから、挿し木は多めに作った方が良い。
根が出たら挿し木を土に植え替えて、たっぷりと水を与えて育てる。
バジルとセージは、初心者でも育てやすいハーブなんだって。
大きな葉っぱでコップを作って、挿し木と水を入れて持ち帰ることにした。
オリーブと違って、バジルとセージの挿し木はちっちゃくて軽いから持ち運ぶのも楽だ。
オリーブの挿し木を持って帰るのは、重くて大変だったな。
ぼくとお父さんとお母さんでは、重くてなかなか運べなかった。
グレイさんに頼んで、休憩を取りながら少しずつ運んだんだよね。
イチモツの集落に持ち帰ったオリーブの挿し木は、キャリコがお世話をしてくれているはずだ。
あれから3ヶ月くらい経つはずだから、オリーブも根が出ている頃だろう。
セージの集落まであと少しとなったところで、『走査』が発動した。
『病名:食中毒、逆流性食道炎、急性胃腸炎、脱水症状』
『概要:柿占地、黄占地、臭裏紅茸、笹茸、早松擬、粗柄原茸、白初擬、卵天狗茸擬、月夜茸、乳粟茸、土杉茸など、有毒キノコの誤食による食中毒』
『処置:整腸剤、解熱薬、抗生物質の投与。水分補給、電解質の補液』
毒キノコによる食中毒?
そういえばセージの集落の猫たちにも、キノコ鍋を食べさせたっけ。
キノコは、専門家でも見分けることが難しいと言われている。
ぼくだって、見分けられない。
猫たちにも、キノコだけは教えないことにしている。
間違って食べちゃったら、大変だからね。
だけど、長のクロトビはキノコ鍋がよっぽど気に入ったらしく、
「どうしてもあのキノコ鍋が食べたい!」と、頼み込んできた。
何度も断ったんだけどあんまりにもしつこかったから、楡木茸だけ教えたんだよね。
タモギタケは傘が綺麗なレモンイエローで、食用のシメジに似ている。
別名「黄金占地」
シメジと同じように、どんな料理にも合う美味しいキノコ。
タモギタケは紛らわしいキノコが存在しないから、素人でも見分けやすい。
「タモギタケ以外は、絶対に食べないように」と、言い聞かせておいたはずなのに。
タモギタケ以外のキノコを、食べてしまったようだ。
間違ったのか、それとも約束を破ったのか。
どちらにしても、きっちりお説教しなきゃいけないな。
その前に、まずは食中毒の治療をしなければ。
整腸剤は、オオバコやヨモギ。
解熱薬 は、イヌハッカやシソ。
抗生物質は、ムラサキバレンギク。
このあたりには、枸杞の木も生えている。
クコといえば、杏仁豆腐の上にちょこんと乗ってる赤い実が有名。
クコの実が収獲出来るのは秋以降だから、まだ先だけどね。
クコは葉っぱも根っこも、生薬になる。
クコの葉は乾燥させれば、枸杞葉茶というハーブティーが出来る。
枸杞葉茶には、抗酸化作用、抗炎症作用、免疫力強化、疲労回復、血行促進、肝臓機能改善、安眠効果、解熱作用などがある。
ちょうど良いから、クコの葉もブレンドハーブティーに入れてみよう。




