第146話 水分補給の重要性
キャットタイムの集落の猫たちは、脱水症状、熱中症、膀胱炎、尿路結石症、慢性腎臓病、歯周病、夏バテなどに罹っていた。
これらの病気は全部、しっかり水分補給をしていれば防げるはずなんだよね。
猫は気まぐれで、本当にちょっとした理由で水を飲まなくなる。
ここの猫たちは暑さを理由に、ハーブティーを作らなくなってしまった。
フレッシュハーブティーは、お湯を沸かして淹れなければならない。
火を起こすのは結構大変だし、熱いから火の前にいたくないという気持ちもよく分かるよ。
基本的に猫は面倒臭がり屋さんだし、熱いのはとっても苦手。
ハーブティーを飲まなかったから、水分不足が原因の病気になっちゃったんだ。
ハーブティーじゃなくても、ちゃんと水を飲んでいたら病気にならなかったはずなのに。
きっとこの暑さで、水を飲みに行くのも面倒臭くなっちゃったんだ。
面倒臭がり屋さんは、本当に困ったものだ。
この集落の猫たちは特に、面倒臭がり屋さんの集まりなんだろうね。
仕方がないので、代わりに水出しハーブティーの作り方を教えることにした。
背負い籠の中を見てみると、乾燥したイヌハッカとレモングラスとヨモギが入っていた。
それらを使って、水出しハーブティーを作ってみせた。
「こんな感じで、乾燥させた薬草を水に浸けておくだけですミャ」
「なるほどニャオ~、これは簡単ですニャオ~」
集落の長は水出しハーブティーを見て、感心した様子で何度も頷いていた。
水出しハーブティーは、茶葉を水に浸けたらほったらかしで良い。
これなら、面倒臭がり屋さんでも出来るはず。
暑い夏は、ハーブウォーターもオススメ。
ハーブウォーターは、新鮮な生のハーブを浸した水のこと。
作り方は簡単で、ミント系のハーブをちぎって水の中に入れて冷蔵庫で24時間くらい冷やしておくだけ。
長い時間浸けておくと、ちぎったハーブから成分や味や香りが水に溶け出す。
「フレーバーウォーター」とか「デトックスウォーター」とか、呼ばれるそうだ。
おしゃれなカフェだと、氷水代わりにハーブウォーターが出てくることもあるよ。
無糖の炭酸水で作っても、美味しい。
誰でも手軽に作れるし砂糖も使っていないから、ジュース代わりに飲むとダイエットに効果がある。
季節のフルーツとハーブと炭酸水で作っても、美味しいよ。
せっかくだから、レモングラスとムラサキバレンギクとイヌハッカでハーブウォーターを作ってみた。
水出しハーブティーとハーブウォーターを集落の猫たちに配ると、みんな美味しそうに飲んでくれた。
作り方を教えると、「これなら面倒臭くないニャー!」と喜んでくれた。
水出しハーブティーもハーブウォーターも、火を使わずに手軽に出来る。
時間がかかることだけが、欠点。
お湯出しはお湯を沸かす手間はあるけど、すぐ淹れられる。
時間を取るか手間を取るか、どちらを選ぶかは自由。
水出しとお湯出しは、味も成分も違うんだよ。
毎日飲むものなら、簡単な方がいいに決まっている。
作るのが大変だと、面倒臭なって作らなくなっちゃうからね。
ハーブウォーターや水出しハーブティーを飲むようになれば、水分不足が原因の病気は防げるはずだ。
ฅ^•ω•^ฅ
経過観察で、キャットタイムの集落でしばらくお世話になることにした。
面倒臭がり屋さんの猫たちが、ちゃんと水出しハーブティーとハーブウォーターを作るか心配だったんだよね。
イチモツの集落のキャリコや葛の集落のアオキ先生は、ハーブティー作りに生きがいを感じているというのに。
この集落の猫たちときたら、水を飲むことすら面倒臭がるんだから。
今回教えたハーブウォーターは手軽に出来るから、気に入ってくれたようだ。
猫の好きな匂いがする薬草を入れているから、みんなも水をよく飲むようになった。
これで、水分不足が原因の病気は少しずつ治るはずだ。
「面倒臭がり屋さん」という病気は、一生治らないだろうけどね。
イチモツの集落へ帰ったら、キャリコにもハーブウォーターを教えてあげたい。
だけどイチモツの集落に帰り着く頃には、秋になっているはず。
猫は冷たい水を飲みたがらないから、寒くなったらハーブウォーターは飲まない。
またあったかくなった頃に、教えれば良いか。
ฅ^•ω•^ฅ
ぼくたちも、集落でゆっくりと休むことが出来た。
たまには安全な集落で休まないと、旅疲れしちゃうからね。
お父さんとお母さんも無理してついて来てもらっているから、あまり無理はさせたくない。
昼間は集落の周りに生えている薬草を調べたり、猫たちの看病をしたりする。
夜になったら、集落の外で見張りをしているグレイさんに会いに行く。
1日でも会いに行かないと、寂しがって拗ねちゃうからね。
グレイさんとお喋りしながらお散歩をしたり、狩りをしたりする。
これが、集落にいる時のぼくの日課だ。
全然休んでない?
そんなことはないよ。
疲れたらお昼寝するし、夜明けまでグレイさんとも一緒に寝ている。
たぶん、7時間くらいは寝ているはず。
……あれ?
人間の睡眠時間として考えたら、7時間睡眠は普通だけど。
猫として考えると、睡眠時間が足りなさすぎる。
普通の猫は、1日12~16時間くらい寝る。
仔猫やお年寄りは、1日20時間くらい寝る。
季節や体調によっても、睡眠時間は異なる。
寒い冬の方が、体力温存の為によく眠る。
病気になると、睡眠時間が増える。
もしかするとぼくは、集落にいる方がストレスなのかもしれない。
集落にいると、やらなきゃいけないことがたくさんある。
病気の猫たちが心配で、寝ていられないんだよね。
旅をしている時の方が、よっぽど寝ている。
猫にとって、ストレスと睡眠不足は大敵。
睡眠不足になると、イライラして毛づくろいをしすぎることがある。
免疫力が下がって、感染症にも罹りやすくなる。
頭がぼ~っとして動きが悪くなり、無意識にあちこち歩き回ることもある。
ぼくももうちょっと、意識して寝るようにしないといけないな。
「これからも面倒臭がらずに、ハーブウォーターを作って飲んでくださいミャ。飲まないと、また病気になっちゃいますミャ」
「分かったニャオ~。もう、痛い思いはしたくないニャオ~」
尿路結石症の原因が水を飲まないせいだと教えたら、やっとハーブウォーターを作って飲むようになってくれた。
おしっこをする度に痛い思いをするから、懲りたらしい。
面倒臭さよりも、痛い方が嫌だもんね。
これで安心して、旅立つことが出来る。
「それでは皆さん、どうかお元気でミャ」
「お医者さん、ありがとうニャオ~。また来てニャオ~」
長の茶シロトビだけが、お見送りに来てくれた。
そういえば、前に訪れた時もお見送りをしてくれたのは長だけだったな。
他の猫たちはその場に寝そべったまま、しっぽの先を軽く振った。
猫がしっぽの先だけで返事をする時は、面倒臭がっている。
もともと猫は、面倒臭がり屋さんが多いからなぁ。
猫が涼しい場所でダラけるのは、夏の風物詩。
それにしたって、お別れの挨拶もしてくれない集落なんて初めてだぞ。
困った時には、ぼくがまた助けに来ると思っているんだろう。
面倒臭がり屋さんほど、一度助けてもらったらまた助けてくれるに違いないと期待する。
残念だけど、もう来ないからねー。
助けに来たくても、イチモツの集落からここまで離れすぎている。
教えることは教えたから、あとは自分たちでなんとかしてね。
引き留められたら面倒だから、本当のことは言わない。
さすがにぼくだって、同じことが何度もあれば学習するよ。
お父さんとお母さんにも迷惑をかけたくないから、何も言わずに出て行った。




