表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/160

第131話 ヴァスーキ・インディカス

 ぼくたちは草むらの中で息をひそめて、ヴァスーキ・インディカス(巨大ヘビ)が立ち去るのを待つしかなかった。

 ヴァスーキは、ズルリズルリとゆっくりと蛇行(だこう)しながら進んでいく。


 細長い舌を、チロチロと出し入れしている。

走査(そうさ)』によると、ヘビは周囲の(にお)いを舌で集めているらしい。

 集めた臭いを、口の中にある嗅覚器官(しゅうかくきかん)へ入れる。

 嗅覚器官で臭いを分析(ぶんせき)して、獲物(えもの)天敵(てんてき)居場所(いばしょ)が分かるんだって。


 あんなデッカいヘビに見つかったら、ぼくたちなんて丸呑(まるの)みされる。

 グレイさんですら、(かな)わない。

 ぼくたちは身を寄せ合って、グレイさんの下に(もぐ)り込む。

 ぼくにとって、グレイさんの側が一番安全な場所に思えた。

 グレイさんもクゥンと小さく鼻を鳴らし、ぼくを隠してくれた。


 しばらくすると、ヴァスーキが鎌首(かまくび)をもたげた。

(にら)みつけるような動きで、首を持ち上げた)

 ヴァスーキのまんまるい目が、こちらを見る。

 マズい! 見つかったっ!


 見つかったと気付いた直後、グレイさんはぼくの首根(くびね)っこを(くわ)えて逃げ出した。

 お父さんとお母さんも、大急ぎでついてくる。

 今まで何度も運んでもらったことがあったけど、ここまでの速さは初めてだ。

 物凄(ものすご)い速さで景色が横へ流れていき、風を感じた。

 振り落とされそうな勢いで怖かったけど、グレイさんがぼくを落とすはずはない。

 グレイさんを信じて、()えるしかなかった。


 いったい、どれだけ逃げたのだろう。

 お父さんとお母さんが少しずつ速度を落としていき、それに合わせてグレイさんも速度を(ゆる)めた。

 グレイさんは足を止めると、そっと地面に下ろしてくれた。

 ぼくとは違い、全力で走り続けていた3匹はゼーハーと息を(あら)げている。


 ぼくはみんなが心配で、声を掛ける。


「みんな、大丈夫ミャ?」

「全然大丈夫じゃないニャー……」

「たぶん、逃げ切れたと思うニャ……」

『シロちゃんも、怖かっただろう? 大丈夫だったか?』

「ぼくは、グレイさんが守ってくれたから大丈夫ミャ。ありがとうミャ」

『そうか、良かった。お父さんとお母さんも、無事で何よりだ』


 グレイさんは疲れた顔をしていたけれど、安心したようにぼくを舐めてくれた。

 ちゃんと逃げ切れたかどうか教えて、『走査(そうさ)


対象(たいしょう):マッツォイア科ヴァスーキ属ヴァスーキ・インテカス』


位置情報(いちじょうほう):東方向600m』


 ヴァスーキから、だいぶ離れられたようでひと安心。

 恐怖で口の中がカラカラになっちゃったし、みんなも走り疲れているから、川へ水を飲みに行った。

 川の水を飲んでいたら、シカが現れた。

 どうやら、シカも水を飲みに来たらしい。


 そのシカの(つの)はめちゃくちゃ大きくて、巨大な鳥が翼を開いたような形をしている。

 ぼくの隣で水を飲んでいたお父さんが、小さな声で話し掛けてくる。


「あれは、エウクラドケロスニャー。狩るなら、今ニャー」

『シロちゃん、おなかが空いていないか? アイツを狩るか?』


 グレイさんは姿勢を低くし、エウクラドケロスに向かって鼻を突き出した。 


「お父さんが合図をしたら、(おそ)い掛かるニャー」

「分かったニャ」

『よし、オレに任せろ。すぐに仕留(しと)めて、シロちゃんに美味しいお肉を食べさせてやるからな』

「ミャ」


 ぼくが(うなづ)くと、3匹も頷き合う。

 ぼくたちは姿勢を低くして、お尻を左右に振りながら飛びかかるタイミングを見計(みはか)らう。

 エウクラドケロスはまだぼくたちに気付いていないのか、のんびりと水を飲んでいる。

 狩るなら、今がチャンスだ。


「今ニャーッ!」


 ぼくたちが飛び出すと、エウクラドケロスが驚いて慌てて逃げ出そうとする。

 逃げられないように4匹で囲い込み、追い詰めて仕留(しと)めた。

 ぼくたちはずっと一緒に狩りをしているから、連携(れんけい)を取るのも慣れている。


「さぁ、みんなで食べるニャー」

「いただきますニャ」

『シロちゃん、これでまた美味しいものを作ってくれ』

「ミャ」


 ぼくたちはエウクラドケロスの肉を食いちぎって、解体(かいたい)しながら美味しく食べた。

 エウクラドケロスは、見た目通りシカって感じの味で美味しかった。

 満足するまで食べたら、残りは保存用にする。


 肉を適当な大きさに叩き切って、セージとバジルの粉をまぶしてクマザサの葉で包む。

 クマザサの包みは、グレイさんの背中の巻き付けて運んでもらうことにした。

 大きな(つの)と骨も、運びやすい長さに叩き割ってグレイさんのおやつとして持っていく。

 さすがに全部は運びきれないから、あとは森の掃除屋(そうじや)さんたちに食べてもらおう。

 これでしばらくは、お肉に困らないぞ。


 ฅ^•ω•^ฅ


 Vasuki(ヴァスーキ)(巨大ヘビ)と出会ったあたりから、どうも調子が悪い。

 急にトイレが近くなったし、おなかも壊している。

 これ絶対病気でしょ、『走査(そうさ)


『病名:特発性膀胱炎とっぱつせいぼうこうえん急性胃腸障害きゅうせいいちょうしょうがい、下痢』


概要(がいよう):ストレス性疾患(せいしっかん)


処置(しょち):ストレス要因(よういん)除去(じょきょ)鎮痛剤(ちんつうざい)抗炎症薬(こうえんしょうやく)抗鬱薬(こううつやく)胃腸薬(いちょうやく)止瀉薬(げりどめ)の投与(をのむ)


 やっぱり、ストレスか。

 この世界に転生してまもなく、Titanoboa(ティタノボア)(巨大ヘビ)を見た恐怖でおなかを壊した。

 あの頃は、本当に何も知らない未熟(みじゅく)仔猫(こねこ)だった。


 あれから色んな経験をして、少しは強くなったと思うんだけど。

 今もストレスがたまると、ときどきおなかを壊しちゃうんだよね。

 特発性膀胱炎と急性胃腸障害は、安静(あんせい)にしていれば自然治癒力(しぜんちゆりょく)で治る。


 ねこねこだんごになって眠れば、すぐに治るさ。

 ――と思っていたんだけど。

 特発性膀胱炎と急性胃腸障害になっていたのは、ぼくだけじゃなかった。


 みんなもヴァスーキを見た恐怖とストレスで、おなかを壊していた。

 (つら)そうにぐったりとして、苦しそうに口呼吸(くちこきゅう)している。

 おなかを壊している時は食欲もなくなるから、無理して食べる必要はない。

 むしろ、何も食べずに胃腸を休ませた方が良い。


 だけど下痢で脱水症状を起こしやすくなっているから、温かい飲み物を飲むと良い。

 こんな時こそ、ハーブティーの出番だ。

 胃炎、下痢、抗酸化作用(こうさんかさよう)抗菌作用(こうきんさよう)抗炎症作用(こうえんしょうさよう)肝臓保護作用(かんぞうほごさよう)といえば、ウスベニアオイ。

 今回はシンプルに、ウスベニアオイだけで()れてみよう。


 夏が近付いて暑くなってきたけど、今日は雨が降っているから肌寒い。

 背負(せお)(かご)の中で、自然乾燥(しぜんかんそう)させておいたウスベニアオイの花を取り出す。

 よしよし、良い感じに乾燥してドライフラワーみたいになっている。


 お湯を()かして乾燥した花を入れれば、ふわりと香る花の甘い匂い。

 淹れたてのウスベニアオイのハーブティーは、海のように青くてとっても綺麗。

 良い匂いがするから、リラックス効果もあるんだよね。


「みんな、ハーブティーが出来たから飲んでミャ。これを飲んで寝れば、元気になるミャ」

「ありがとうニャー」

「良い匂いで、美味しいニャ」

『シロちゃん、ありがとう。シロちゃんの作るものは、どれも美味いな』


 グレイさんはハーブティーを飲み終わると、しょんぼりした顔で話し出す。


『あれほど、恐ろしいヘビを見たのは初めてだった。怖くて、逃げることしか出来なかった。オレとしたことが、情けない……』


 トマークトゥスが、本能的(ほんのうてき)に恐怖を感じる天敵(てんてき)は少ない。

 初めて会った天敵が、よっぽど怖かったんだね。

 ぼくはグレイさんに抱き着いて、スリスリして(なぐさ)める。


「あんなおっきなヘビは、誰だって怖いミャ。それでもグレイさんは、ちゃんとぼくを守ってくれたミャ。ありがとうミャ」

『ありがとう、シロちゃん』


 グレイさんは力なく笑って、スリスリくれた。

Vasuki(ヴァスーキ)Indicus(インディカス)について補足(ほそく)

 ヴァスーキ・インディカスは、食物連鎖(しょくもつれんさ)最上位(さいじょうい)だった。

 天敵がいなかったので、食べられることなく巨大化した。

 巨大化したせいで、体が大きく重くなりすぎて動きが遅くなった。

 泳いだり木に登ったりは、ほとんど出来なかったと考えられている。

 狩りをする時は待ち()せして獲物(えもの)に巻き付いて締め殺した後、丸呑(まるの)みしていたと思われる。


【|Eucladocerosエウクラドケロスとは?】

 今から約500万年くらい前に、生息(せいそく)していたシカの祖先(そせん)

 推定(すいてい)肩高約180cm

 推定体重300~350kg

 見た目は、シカらしいシカ。

 最大の特徴(とくちょう)は、鳥が翼を広げたように何本も枝分かれした大きな角。

 左右の横幅(よこはば)は、最大1.7mに(たっ)する。

 ちなみに、奈良にいるニホンジカは肩高60~130cm、体重25~200kg

 ニホンジカの角の大きさは、30~80cm

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ