第124話 負の連鎖
次の集落まで案内して、『走査』
病気やケガで苦しんでいる猫が近くにいたら、教えて。
『対象:食肉目ネコ科ネコ属リビアヤマネコ』
『病名:食中毒、胃腸炎、脱水症、膀胱炎、尿路結石』
『処置:抗生物質、止血薬、抗炎症薬、尿酸化薬、止瀉薬、鎮痛薬、抗不安薬の投与。十分な水分補給。尿石症対応の食事療法】
猫はおなかが弱いから、消化器系や泌尿器系の病気に罹りやすい。
消化器は胃や腸で、泌尿器は腎臓や肝臓のこと。
野生の猫に、食事療法は現実的じゃない。
この時季は肉が腐りやすいから、食中毒になる猫が多い。
脱水症と胃腸炎は、食中毒が原因だと思う。
膀胱炎の原因は、尿路結石かな?
尿路結石は、文字通りおしっこの通り道に石が出来る病気。
この石によって道が塞がれて、おしっこが出なくなって膀胱炎になる。
膀胱炎は、おしっこをする時におなかが痛くなったり(排尿痛)、
トイレが近くなったり(頻尿)、
おしっこが我慢できなくなったり(尿意切迫感)、
おしっこをしても出し切っていない感じがしたり(残尿感)、
おなかの下の方が痛くなったり(下腹部痛)する病気。
これらを全部治すには、尿路結石と食中毒を治さないと。
尿酸化薬って薬は、初めて見たぞ。
『尿酸化薬は、尿酸値を下げる薬』
しかし、そんなものはないのである。
尿酸化薬の代わりになる薬草はあるの?
『対象:サルノコシカケ科チョレイマイタケ属猪苓舞茸』
『薬効:消炎、解熱、利尿、抗癌作用、抗腫瘍効果』
『対象:オモダカ科サジオモダカ属匙沢瀉』
『薬効:抗腎炎作用、抗アレルギー作用』
『対象:滑石(含水ケイ酸アルミニウム、および二酸化ケイ素)』
『薬効:利尿、解熱鎮痛、排尿痛、排尿困難、熱性下痢、むくみ、口渇、小便不利、日射病、熱射病、汗疹、湿疹、滲出液の多い皮膚炎症』
『対象:阿膠(ロバの皮を水で加熱抽出して作られる膠)』
『薬効:補血、止血、解熱鎮痛、月経不順、子宮の不正出血、出産後の滋養、抜け毛、便秘、骨粗鬆症、肌荒れ、新陳代謝の促進』
キノコと薬草と石とロバの皮?
生薬の世界は、奥が深いな。
でも、一番の問題は手に入るかなんだよね。
『チョレイマイタケの収穫時期:夏の終わり~秋の始め』
『サジオモダカの塊茎の収穫時期:11月頃』
『カッセキ:粘土鉱物の為、いつでも入手可能』
『カッセキの位置情報:北西方向3355km』
『アキョウの入手方法:|Hyracotheriumの皮から、加熱抽出する』
うん、だと思ったよ。
どんなに良い薬も、手に入らなければ意味がない。
あと、猫が食べられなければ使えない。
アキョウは作り方さえ分かれば作れそうだから、今度ヒラコテリウムを狩った時に作ってみたい。
いつも通り、薬草を使うしかなさそうだ。
利尿、抗炎症作用、抗酸化作用、抗菌作用、鎮静作用があって、今の時季に手に入る猫が食べられる薬草といえばムラサキツメクサ。
利尿、解毒、消炎作用、鎮痛作用、鎮静作用、解熱なら、クマザサ。
抗生物質は、ムラサキバレンギク。
これで、ブレンドハーブティーを作ればバッチリだ。
知らない生薬を探すより、すぐ手に入る薬草を使った方が良い。
ฅ^•ω•^ฅ
いつも通りグレイさんとは集落の手前で別れて、集落の中へ入った。
猫たちは、食中毒と脱水症状でぐったりとしている。
股間あたりを、ずっと毛づくろいしている。
尿道内に結石があるから、痛みと違和感を覚えているんだろう。
おしっこする度に、結石が尿道内を傷付けて痛みが起こる。
痛いとおしっこが出来なくなって、膀胱炎になっちゃうんだ。
膀胱炎になると、水を飲まなくなる。
食中毒になると脱水症状を起こすから、たくさん水を飲ませないといけないのに。
毛づくろい以外にも地面にお尻を擦りつけて、お尻歩きしている猫もいる。
擦りすぎると、肌が傷付いて炎症を起こしてしまう。
炎症した場所に菌やウィルス感染したら、もっと大変なことになる負の連鎖。
病気から病気を引き起こす負の連鎖を、断ち切ってあげなくてはいけない。
とにかく、たくさん水を飲ませておしっこを出させないといけない。
さっそく、ブレンドハーブティーを作って猫たちに差し出した。
だけど、猫たちはブレンドハーブティーを飲んでくれなかった。
水分を摂ってくれないと、ますます病状は悪化してしまう。
どうしたものか……。
そうだ、食事療法を試してみるか。
サバシロお兄さんが原虫性肺炎で衰弱して食欲がなかった時、鳥肉を柔らかく煮たスープを作って飲ませた。
スープだったら、食欲がなくても飲める。
そうと決まればスープの材料にする、Gastornis(体重500kgの飛べない鳥)を狩らなきゃ。
「お父さん、お母さん、狩りに行こうミャ。出来れば、ガストルニスが良いミャ」
「分かったニャー、ガストルニスを探して狩るニャー」
「みんなで、美味しいお肉を食べましょうニャ」
ぼくたちは集落を出ると、グレイさんも誘ってガストルニスを狩ることにした。
しばらく走り回ってようやくガストルニスを狩り、頑張ったご褒美として4匹で先に生で食べた。
残りを集落のお土産として、持って帰った。
これで、鳥肉のスープが作れるぞ。
みんな、今から美味しいスープを作るから待っててね。
たくさんのスープを作るには、鍋を作るところから始めなくてはならない。
倒木から木の器を作り、水、鳥肉、叩き折った鳥の骨を入れる。
焚火で焼き石を作って、放り込んで石焼き鍋風にする。
鳥が柔らかく煮えたら、少し冷まして出来上がり。
大きな葉っぱで作ったお皿にスープを入れて、病気の猫たちに配った。
美味しそうな肉の匂いに釣られたのか、猫たちは肉のスープを飲んでくれた。
スープを飲んだら食欲が出てきたのか、鳥肉も食べてくれた。
この調子でハーブティーも、飲んでくれたらいいんだけどな。
猫が水を飲まない理由は、いろいろある。
ウェットフードを食べていると、水分が足りているから飲まないこともある。
臭いに敏感な猫は、少しでも気に入らない臭いがしたら飲まない。
水が冷たいと、飲まなくなる。
ケガや病気で体力がなくて、飲みたくても飲めないってこともある。
水の器や置き場所が気に入らないって、理由もある。
さっきウェットフードを食べさせたばかりだから、飲まないのかもしれない。
ハーブティーを飲んでくれないと病気は治らないし、どうしたものか。
とりあえず、ハーブティーはしばらく置いておいて様子を見よう。
それでも飲まない場合は、ハーブティーを変えてみるか。
もしかしたら、ハーブティーの匂いが好きじゃないのかもしれない。
そうだ、猫が好きなイヌハッカを浮かべてみるか。
ところが、このあたりにはイヌハッカが生えていなかった。
どうしよう、イヌハッカの代わりになるものを探さないと。
猫が好きな植物って、マタタビやイヌハッカ以外にもいろいろあるんだよね。
このあたりに、猫が好きな植物ってあるの?
『対象:シソ科ニガクサ属苦草』
『概要:猫が好むハーブのひとつで、別名cat-thyme』
『薬効:利尿作用、殺菌作用、消化促進、防虫作用、強壮作用』
見れば深緑色の草がいっぱい生えていて、ちっちゃな紫色の花が咲き始めている。
これが、キャットタイムか。
猫は、シソ科の植物を好んで食べる。
イヌハッカもキャットミントも、同じシソ科の植物なんだよ。
キャットタイムを嗅いでみると、猫が好きそうな香りがする。
これなら、いけるかも。
葉っぱをちぎって、ハーブティーに浮かべてみた。
あったかいハーブティーで温められて、キャットタイムの匂いが強く香った。
さっきまで全然興味を示さなかった猫たちが、匂いを嗅いでムクリと起き上がる。
みんなフンフンと鼻を鳴らして、ハーブティーの周りに集まって来た。
前足でハーブティーをすくって、安全確認するような動きを見せる猫もいる。
野生の猫は警戒心が強いから、初めて飲むハーブティーを疑っているのかも。
しばらくすると、顔をおそるおそる近づけてハーブティーを飲み始めた。
良かった、やっと飲んでくれた。
やっぱり、匂いって大事だね。




