第119話 夏に食べられるキノコ
外耳炎と皮膚糸状菌症は、2~4週間ほどで治る。
食中毒は、数日~1週間。
Key-Gaskell症候群は、どれくらいで治るの?
『Key-Gaskell症候群の治療期間は個人差が大きく、数ヶ月~1年ほどかかる』
それじゃ、治るまでここにいるってことは出来ないな。
とりあえず食中毒が治るまでは、ぼくが看病するけど。
食中毒が治ったら、薬草の見分け方と薬の作り方を教えて自分たちでなんとかもらおう。
あと食中毒が治るまで、生肉は食べさせない。
肉を柔らかくなるまで煮て、スープを作ろう。
薬草やキクラゲを入れて、薬膳スープにしてもいいかもね。
そんなことを考えながら薬草を集めていると、『走査』が発動した。
『対象:ナス科クコ属枸杞』
『薬効:強壮作用、抗炎症作用、解熱作用、高血圧、糖尿病、動脈硬化、脂肪肝、視力減退』
クコって、聞いたことがあるぞ。
杏仁豆腐の上にちょこんと乗っている、赤い実のことだよね?
クコは、猫も食べられるの?
『若芽、葉茎、根皮、果実、いずれも食用可』
そっか、クコの実って猫も食べられるんだ。
今は花も咲いていないから、実が成るの秋頃だろう。
猫になったら、果物がほとんど食べられなくなったと思ってガッカリしていたけど。
オリーブの実やクコの実が食べられるなら、秋が楽しみになってきた。
さっそく、薬膳スープを作ってみよう。
薬膳スープには、ミント系のハーブは向かないよね。
よく考えてみたら猫が食べられる薬膳スープに、入れられる薬草は少ない。
薬膳スープには、ネギやニンニクなどのネギ類が使われていることが多い。
ネギ類は、猫にとって毒。
ショウガは猫も食べられるけど、この世界では見たことがない。
スープといえば、秋にキノコ汁をよく作っていたけど。
初夏に採れるキノコって、あるの?
『対象:ベニタケ科ベニタケ属藍茸』
『概要:夏~秋にかけて雑木林や草地に生える、傘の直径5~12cmの食用キノコ。柔らかくクセのない風味で、汁物にすると良い出汁が出る。ただし、ビタミンB1を破壊する酵素を含有する為、多食は避ける』
『対象:ヒラタケ科ヒラタケ属薄平茸』
『概要:梅雨~初秋にかけて広葉樹の倒木や切り株に群生する、傘の直径2~8cmの食用キノコ。非常に香りが良く、口当たりが良くしっとりとした歯触りが好まれる。汁物や鍋物の利用に向いている』
『対象:オウギタケ科オウギタケ属扇茸』
『概要:夏~秋にかけて、マツ林にアミタケに寄生して地中に生息する、傘の直径3~8cmの食用キノコ。適度なぬめりがあって、美味。油炒め、揚げ物、すまし汁、煮物などに合う』
『対象:テングタケ科テングタケ属卵茸』
『概要:初夏~秋にかけて、広葉樹や常緑樹、針葉樹などの雑木林に群生する、傘の直径6~20cmの食用キノコ。柔らかくて舌触りもよく、旨味も強い。傘が開いたものより幼菌の方が食用に適している』
『対象:ヒラタケ科ヒラタケ属楡木茸』
『概要:初夏~初秋にかけて広葉樹の根元や切り株、倒木、立ち枯れ木に群生する、傘の直径2~10cmの食用キノコ。クセがなくさっぱりした風味で、どんな料理にも合う。別名“ゴールデンシメジ”』
『対象:ハラタケ科ノウタケ属鬼贅』
『概要:日本特産で夏~秋にかけて、人家の庭先や田畑の畦、公園、庭、雑木林、竹林などに生じる、傘の直径20~50cmの食用キノコ。幼菌は柔らかく“はんぺん”のような食感で、皮を剥いて焼き物、汁物などに利用する。成熟するとアンモニア臭がきつくなり、食用にならない。また、脱皮馬勃という生薬になる』
『脱皮馬勃の薬効:抗菌作用、止血作用、清熱解毒、吐血、鼻血、特に口腔内の疾患に効果がある。外傷や凍瘡には粉末を塗布』
他にも、細裂一夜茸、正源寺、白木耳、白滑猪口、煤山鳥茸、乳茸、仁王占地、錦茸、滑杉茸、滑鍔茸、脳茸、畑占地、初茸、花弁膠茸、松茸、紫山鳥茸、森藤色茸、山鳥茸(ポルチーニ茸)、山猪口など。
キノコは秋というイメージがあるけど、夏にも食べられるキノコがたくさんあるんだね。
だったら、薬膳スープじゃなくて薬膳キノコ鍋に変更だ。
キノコ鍋を作るには、まずは材料を集めなければ。
キノコは見分けるのが難しいから、ぼくには見分けることが出来ない。
『走査』にお願いして、食べられるキノコを探してもらった。
おなかを壊している猫たちもいるから、薬草も入れよう。
お父さんとお母さんにお願いして、Gastornis(体重500kgの飛べない鳥)を狩ってきてもらった。
鳥肉と薬草とキノコを食べやすい大きさに切って煮込めば、薬膳キノコ鍋の完成。
美味しそうな匂いに釣られて、集落の猫たちが集まってきた。
ちょうどいいので、猫たちに薬膳キノコ鍋を振るまった。
猫たちは、「うみゃいうみゃい」と美味しそうに食べてくれた。
美味しいものを食べると、それだけで元気になれる。
美味しいって、実は結構大事なんだよ。
どんなに体に良いものでも、美味しくないと悲しくなっちゃうからね。
味を変えたりごはんをあっためたりして、猫の食欲が湧くようにすることも大事。
元気になる為には、体に良くて美味しいものをしっかり食べないとね。
ฅ^•ω•^ฅ
傷に薬を塗ったりハーブティーを飲ませたりすること、約1週間。
食中毒でおなかを壊していた猫たちは、元気になった。
外耳炎と皮膚糸状菌症はまだ治っていないけれど、症状はだいぶ軽くなったみたいだ。
Key-Gaskell症候群は、すぐ治る病気じゃない。
あとは、自分たちで治してもらおう。
集落の猫たちに、薬草の見分け方と薬の作り方を教えた。
火の起こし方やハーブティーの淹れ方、肉スープの作り方も教えた。
キノコの見分け方は、ぼくにも良く分からないから教えなかった。
間違えて毒キノコを食べちゃったら、大変だからね。
すると、一匹の猫がぼくに話しかけてきた。
「わたしは、この集落の長のクロトビですにぃ~。あなたの作ったキノコ鍋が、とても気に入りましてにぃ~。ぜひとも、作り方を教えて欲しいですにぃ~」
「キノコは見分けるのが難しいから、ダメですミャ」
断ったけど、クロトビは「どうしても」としつこく頼み込んでくる。
悩んだ末、楡木茸だけ教えることにした。
『走査』によれば、タモギタケはどんな料理にも合う万能キノコらしい。
紛らわしいキノコが他にないから、簡単に見分けられるそうだ。
クロトビにタモギタケの見分け方のコツと、注意点をしっかりと教える。
「絶対に、タモギタケ以外のキノコは食べちゃダメですミャ。生で食べるとおなかを壊しますから、必ず火を通してくださいミャ。あと、食べすぎないように気を付けてくださいミャ」
「ありがとうございますにぃ~」
クロトビはタモギタケの匂いを嗅いで、嬉しそうに笑った。
【枸杞とは?】
日当たりのよい原っぱ、川の近く、土手、海岸、道端などに生える雑草。
7~11月頃に薄紫色の花が咲き、秋頃に2cmくらいの紅い実を結ぶ。
葉は6~8月、果実と根皮は秋に採取して、水洗いしたものを天日で乾燥させる。
果実は、枸杞子。
根皮は、地骨皮。
葉は、枸杞葉という名前の生薬になる。
【生姜とは】
昔から世界中で香辛料や薬として使われている、超有名な植物。
ショウガの原産地は熱帯アジアといわれているが、野生種が発見されていないので詳しいことは正確には分かっていない。
漢方では、生薑。
皮を剥いて蒸して乾燥させたものは、乾姜と呼ばれる。
薬効は、興奮作用、強壮作用、健胃作用、食欲不振、悪心、しゃっくり、風邪などに効果がある。
「脱皮馬勃」に、卑猥な妄想を搔き立てられたのは自分だけでしょうか?




