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ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


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第118話 親不孝者の後悔

 イチモツの集落(しゅうらく)へ帰ってきてから、1週間が過ぎた。

 キャリコにオリーブの()し木の育て方を教えたり、一緒に薬草()み作ったりしてのんびりした。

 ゆっくり休んで疲れが取れたらしいグレイさんから、旅に(さそ)われた。


『シロちゃん、そろそろ旅へ行かないか?』

「そう言ってくれるのを、ずっと待っていたミャ」

『そうか。待たせてしまって、すまない。この通り、すっかり元気になったぞ。だから、また一緒に旅へ出よう』

「じゃあ、お別れの挨拶(あいさつ)をしてくるから待っててミャ」


 ぼくはそう言って、イチモツの集落へ戻った。

 日向ぼっこをしているお父さんとお母さんに、話し掛ける。


「お父さん、お母さん、グレイさんと旅へ行って来るミャ」

「グレイさんは、もう大丈夫ニャ?」

「ゆっくり休んだから、元気になったみたいミャ」

「それなら良かったニャー。だったら、また4匹で行くニャー」

「え? ふたりも、ついて来てくれるのミャ?」

「当たり前ニャ」


 どうやら、お父さんとお母さんも一緒に来てくれるらしい。

 お兄さんもいなくなったしイチモツの集落にも帰って来たから、もう来てくれないものだと思っていたんだけど。 

 お父さんとお母さんは、体力的に旅をするのはキツいと言っていた。

 ついて来てくれたらとてもありがたいけれど、無理はして欲しくない。


 そう思っていると、ふたりは(やさ)しく微笑(ほほえ)んでぼくを抱き締めてくれた。


「今までの旅で、シロちゃんはひとりに出来ないって分かったからニャー」

「逆に、一緒に行かない方が心配ニャ」

「ごめんなさいミャ……」

「だからこれからも、お父さんがシロちゃんを守るニャー」

「私たちはいつだって、シロちゃんの味方(みかた)ニャ」

「ありがとうミャ」


 結局、今まで通りお父さんとお母さんがついて来てくれることになった。

 ふたりの優しさがとても嬉しいけれど、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 ぼくはなんでもかんでも思い付きで行動してしまうし、すぐ周りが見えなくなる。

 自分からトラブルに巻き込まれに行くお節介(せっかい)な性格で、その(くせ)はいつまで()っても治らない。


 そのせいで、周りにたくさん迷惑をかけてしまう。

 いくつになっても親に心配ばかりかける、親不孝者(おやふこうもの)だ。

 今度こそ、本当に最後の旅にする。

 だから、絶対に後悔(こうかい)しない旅にしよう。

 イチモツの集落の猫たちに別れを()げて、ぼくたちは再び旅立った。


 ฅ^•ω•^ฅ


走査(そうさ)』によると、オリーブの挿し木から根っこが出るのは3ヶ月後だそうだ。

 土にしっかりと根が()るまで、植え()えは出来ないらしい。

 植え替えに最適(さいてき)時季(じき)は、来年の3月頃なんだって。


 急ぐ必要はないけど、冬になる前に帰りたい。

 キノコや薬草を()ったり(まき)を用意したりして、冬支度(ふゆじたく)もしなくちゃいけないからね。


 秋になったらもう一度オリーブの集落へ行って、オリーブの実をたくさんもらってこよう。

 オリーブの実を(しぼ)って、オリーブオイルも作ってみたい。

 オリーブの(たね)も、育ててみたい。


 イチモツの集落へ帰ってきたら、やりたいこともやらなきゃいけないこともいっぱいある。

 最後の旅だから全部は無理でも、集落を出来るだけ多く回りたい。

 南と北の方角にある集落は、だいたい行ったことがある。


 南には、大きな山があって山の向こうには海があった。

 北には、広い草原と大きな湖があった。

 あとは、東と西か。


 アオキ先生の集落は、イチモツの集落から西へ約32km

 エノコログサの集落とオリーブの集落も、西にあった。

 片道2週間くらいで行ける距離までしか、行けていない。


 イチモツの森はとても広いから、行ったことがない集落はまだありそうだ。

 今まで行ったことがない集落へ案内して、『走査(そうさ)

 いつも通り、病気やケガの猫を優先でお願い。


位置情報(いちじょうほう):左折460m、直進520m、右折90m』


 1kmくらいなら、今日中に着けるだろう。

 集落の外でグレイさんと合流すると、ぼくたちは案内に(したが)って走り出した。


 ฅ^•ω•^ฅ


 イチモツの集落から旅立つこと、数日。

走査(そうさ)』が発動した。


対象(たいしょう)食肉目(しょくにくもく)ネコ科ネコ属リビアヤマネコ』


『病名:Key(キー)-()Gaskell(ガスケル)症候群(しょうこうぐん)外耳炎(がいじえん)皮膚糸状菌症ひふしじょうきんしょう、食中毒』


処置(しょち)患部(かんぶ)洗浄(せんじょう)、および消毒(しょうどく)抗炎症剤(こうえんしょうざい)抗菌薬(こうきんやく)抗真菌薬(こうしんきんやく)点耳薬(てんじやく)塗布(ぬる)駆虫薬(くちゅうやく)胃腸薬(いちょうやく)鎮痛薬(ちんつうやく)抗生物質(こうせいぶっしつ)自律神経調整薬じりつしんけいちょうせいやく止瀉薬(げりどめ)投与(飲む)


 外耳炎は、耳ダニや寄生虫(きせいちゅう)が原因。

 皮膚糸状菌症は、真菌(カビ)が原因。

 食中毒は、(くさ)ったものでも食べちゃったのかな?

 あったかくなってきたから、肉も(くさ)りやすくなる。


 外耳炎と皮膚糸状菌症と食中毒は、何度か処置(しょち)したことがあるけど。

Key(キー)-()Gaskell(ガスケル)症候群って何?


『別名、自律神経失調症じりつしんけいしっちょうしょう交感神経(こうかんしんけい)副交感神経(ふくこうかんしんけい)のバランスが乱れた状態』


 なるほど、分からん。

 分かりやすく説明してくれる?


『温度差や気圧や湿度などが原因で、体の調子が悪くなること』


 気象病(きしょうびょう)みたいなものかな?

 確かに最近、天気が変わりやすい。

 晴れた日は急に暑くなるし、雨が()ると急に寒くなる。


 激しい気温差に、体がついていけないんだ。

 ぼくもなんとなく、体の調子が悪いような気がする。

 気圧のせいかと思っていたけど、自律神経失調症だったのか。

 自律神経調整薬っていうのは?


『自律神経系のバランスを改善(かいぜん)する薬。頭痛、倦怠感(だるさ)動悸(どうき)(うつ)、不安、冷え性、肩こり、食欲不振(しょくよくふしん)眩暈(めまい)耳鳴(みみな)り、脳の興奮を抑える』


 しかし、そんなものは手に入らないのである。

 でもよく考えたら、これってハーブティーが効くんじゃないか?

 ハーブティーにはリラックス効果があるから、脳の興奮を抑えることが出来そうな気がする。


 病気に(かか)っている猫の数は?


『14匹』


 ってことは、集団感染か。

 集落の猫は同じ場所に()んでいるから、集団感染しやすいんだよね。

 さっそく薬草を集めて、病気の猫たちを助けに行こう。


 ฅ^•ω•^ฅ

  

 途中でグレイさんと別れて集落の中へ入っていくと、ぐったりとしている猫がたくさんいた。

 外耳炎は耳が(かゆ)くなるから、しきりに頭を振ったり耳を()いたりしている。

 皮膚糸状菌症も、痒みがある。

 掻きすぎて、あちこち毛が抜けて傷だらけになっている。 

 可哀想(かわいそう)に……、今助けてあげるからね。


 ぼくは寝転(ねころ)がっている猫に近付いて、声を掛ける。


「ぼくは、お医者さんですミャ。すぐにお薬を塗りますからミャ」

「お医者さんですにぃ~? だったら、早く助けてにぃ~」


 病気の猫は、か細い声でぼくに助けを求めてきた。

 それを見たお父さんとお母さんも、ぼくに話し掛けてくる。


「シロちゃん、私たちもお手伝いするニャ」 

「何をすればいいか、教えてニャー」


 ぼくひとりでは手が足りないから、お手伝いしてもらえると助かる。

 傷を搔きむしっちゃっているから、まずは痒みを抑えて悪化を防がないと。

 ふたりにはアロエを()ってきてもらって、傷口に塗るように指示を出した。

 続いてヨモギを叩き(つぶ)して、ペースト状にして傷口に塗る。


 ヨモギには殺菌作用(さっきんさよう)抗菌作用(こうきんさよう)抗炎症作用(こうえんしょうさよう)がある。

 ハーブティーにしても、解毒(デトックス)効果、鎮静(リラックス)作用、冷え性、安眠作用(あんみんさよう)がある。

 イヌハッカも、鎮静効果、抗菌作用、(こう)ウィルス作用、整腸作用(せいちょうさよう)抗酸化作用(こうさんかさよう)などがある。

 抗生物質は、ムラサキバレンギク。


 今回は、これらでフレッシュハーブティーを()れてみよう。

 あったかいハーブティーは、飲めば心も体もあったかくなる。

 猫たちにハーブティーを飲ませると、「うみゃいうみゃい」と喜んで飲んでくれた。

 やっぱりイヌハッカを入れると、みんな良く飲んでくれるね。


 おなかも壊しているから、おなかもあっためてあげないとね。

 焼いた石を少し冷まして、温石(おんじゃく)として(くば)った。

 猫はあったかいものが好きだから、みんな嬉しそうに温石を抱きかかえた。

 これで、やれることはひと通りやったかな?

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