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ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話  作者: 橋元 宏平


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第10話 お医者さんの助手

 目の前に立っていたクロネコのクロさんに、質問する。


「クロさん、左足をケガしていないミャ?」

「おれも何日か前に、成猫(おとな)儀式(ぎしき)を受けたニャァ。でも、着地に失敗して左足をやっちゃったニャァ」


 クロさんは恥ずかしそうに、苦笑(にがわら)いをして(うなづ)いた。

 やっぱり、さっき頭に浮かんだのはクロさんの症状だったのか。


 ぼくが(さず)かった特別な力は、手を向けた対象の病気やケガを調べる力。

 それこそ猫のお医者さんになりたいぼくに、ピッタリの能力じゃないか。


 長老のミケさんにこのことを報告(ほうこく)したら、とても喜んでくれた。


「シロちゃんは優しい子だから、きっと猫の神様がお医者さんになれる力を授けてくれたんにゃ」


 猫の神様だったら、人間から猫へ転生する時に会った。

「次は簡単に死なないように気を付けて生きるのだぞ、少年」と、言っていた。


 そうか! 猫の神様がぼくの夢を叶えてくれたんだっ!

 ありがとう、猫の神様。

 神様が与えてくれた力を使って、猫のお医者さんになるよ。


 ミケさんは集落の猫たちに向かって、声を()る。


「みんな、シロちゃんはお医者さんの力を授かったにゃ!」


 集落中の猫たちがワァッと歓声(かんせい)を上げて、笑顔で「おめでとう」と、祝ってくれた。

 これを聞いたお医者さんが前に進み出て、ぼくの頭を撫でる。


「シロちゃんは、お医者さんになるのニャ~? だったら今日から、わたしの助手にならないかニャ~?」


 まさかこの場でお医者さんの助手にならないかと、誘われるとは思わなかった。

 だけどこういう大事なことは、お父さんとお母さんに相談してから決めないと。

 お父さんとお母さんを見ると、ニコニコと笑顔を浮かべている。


「シロちゃん、お医者さんの助手になるニャー? 良かったニャー」

「茶トラ先生、シロちゃんをどうかよろしくお願いしますニャ」 


 ふたりは(そろ)って、お医者さんに頭を下げた。

 お医者さんも、頭を下げる。


「こちらこそ、ありがとうございますニャ~」


 いきなり今日からぼくがお医者さんになっても、みんなも受け入れられないだろう。

 お医者さんとしての経験も、信頼(しんらい)もない。

 まずはお医者さんの助手になって、お医者さんとしての経験を積もう。


 ฅ^•ω•^ฅ


「シロちゃん、次の患者さんを()てニャ~」

「は~いミャ」


 助手になってから分かったことだけど、猫は良くケガや病気をする。

 毎日なんらかのケガや病気で猫たちがいっぱいやって来るから、なかなかに忙しい。

 今までひとりで集落の猫たちの治療をしてきたのかと思うと、茶トラ先生はスゴい。


走査(そうさ)』は、めちゃくちゃ便利な力だ。

 患者さんに手をかざすだけで、症状と治療方法が一発で分かる。


『病名:|化膿性皮膚疾患《傷口が細菌に感染している》』

処置(しょち):傷口洗浄(せんじょう)後、抗菌薬(こうきんやく)塗布(ぬりつける)


 抗菌薬(こうきんやく)には、ヨモギの葉っぱをすり潰したものを使う。

 ヨモギには、殺菌作用(さっきんさよう)抗炎症作用(こうえんしょうさよう)があるらしい。

 ほとんどの傷は、ヨモギをすり潰した薬を()れば良い。


走査(そうさ)』は植物にも有効(ゆうこう)で、(ため)しにヨモギに使ってみたら万能薬(ばんのうやく)であることが分かった。

 用法(ようほう)用量(ようりょう)さえ間違えなければ、色んなケガや病気に使えるようだ。


 ぼくが患者さんを『走査(そうさ)』して結果を伝え、茶トラ先生が処置(しょち)するという流れになっている。

 自然完治(寝れば治る)の場合は、ぼくから患者さんに直接伝える。

 茶トラ先生は、「シロちゃんが来てくれて、大助(おおだす)かりニャ~」と喜んでくれた。

 ぼくも可愛い猫たちが苦しんでいるのを見るのは(つら)いから、助けられて嬉しかった。


 ฅ^•ω•^ฅ


 猫は人間と違って、お金のことは考えなくて良い。

 そもそも、お金というものが存在しない。

 薬代もその辺に()えているヨモギだから、タダ同然(どうぜん)だし。

 治療費は、患者さんの家族が狩ってきた獲物(えもの)を持って来てくれる。


 ケガや病気の猫がいない時は、茶トラ先生とのんびりとお話をする。


「先生は、なんでお医者さんになったんですミャ?」

「ケガや病気で苦しんでいる猫たちを、放っておけなかったからニャ~」

「ぼくと同じミャ」

「シロちゃんは、とっても優しい良い子ニャ~。だから神様から、お医者さんの力をもらえたんだニャ~」


 茶トラ先生はニコニコ笑いながら、ぼくの頭を()でた。


「茶トラ先生もイチモツの実を食べて、お医者さんの力を(さず)かったんですミャ?」

「わたしは何度(いど)んでも、イチモツの木には登れなかったニャ~……」


 茶トラ先生はしょんぼりとして、大きなため息を吐いた。

 ぼくも登ってみて分かったけど、イチモツの木はとにかくデカい。

 高さが10m以上あるから、登るのも降りるのもめちゃくちゃ大変。

 古い木だから樹皮(じゅひ)()がれやすく、転落(てんらく)する危険性も高い。


 いくら猫でも8m以上の高さから転落したら、ケガをしたり死亡したりすることがある。

 イチモツの木に(いど)んで、ケガをした猫もたくさんいたに違いない。

 もし高さに足がすくんで、降りられなくなっちゃった猫はどうなるのかな?

 集落中の猫たちみんなで、協力して助けてあげるのかな?


「みんながみんな、イチモツの木を登れる訳じゃないニャ~。もともと、高いところが苦手な猫もいるニャ~」


 人間だって高いところが好きな人もいれば、高所恐怖症こうしょきょうふしょうの人だっている。

 運動神経が良い人もいれば、運動が苦手な人もいる。

 猫にも人にも、個体差がある。


 ぼくは成猫の儀式に合格して、やっとひとりで狩りへ行けることが許されたのに。

走査(そうさ)』の力を()たら、お医者さんの助手が忙しくなって狩りへ行けなくなってしまった。

 ぼくがお医者さんの助手になってからは、お父さんが狩りを頑張っている。


「お医者さんを頑張っているシロちゃんの為に、美味しいお肉を狩ってくるニャー」と、張り切っていた。

 お父さんや狩りに行ける猫たちのおかげで、集落のみんなは美味しいお肉を食べられる。

 ぼくはぼくに出来ることを、頑張れば良いんだ。


 茶トラ先生はお医者さんの力を(さず)かった訳でもないのに、知識(ちしき)経験(けいけん)だけで、お医者さんをやっている。

 茶トラ先生も先代のお医者さんから、治療の仕方を教えてもらったのかな?


 そんなことを話しているうちに、だんだんと眠くなってきた。

 茶トラ先生も、眠そうな顔であくびをしている。


(ひま)だニャ~……シロちゃん、一緒にお昼寝するかニャ~?」

「ミャ」


 (ひま)を持て(あま)したぼくと茶トラ先生は、患者さんが来るまでお昼寝をすることにした。


 お医者さんになるには、『走査(そうさ)』だけでは意味がない。

 ぼく自身が、お医者さんとしての技術を身に着ける必要があった。

 最初のうちは分からないことが多かったけど、茶トラ先生が優しく教えてくれた。


 失敗して落ち込んでも、「シロちゃんが頑張っているのは、ちゃんと分かっているから」と茶トラ先生も患者さんも(はげ)ましてくれた。

 茶トラ先生から指導(しどう)を受けて、薬草(ヨモギ)の使い方や処置(しょち)の仕方を覚えて患者さんへの対応も出来るようになっていった。

 手際良(てぎわよ)く処置出来るようになったぼくの頭を、茶トラ先生はニコニコ笑って()でてくれる。


「シロちゃんは、すっかり立派なお医者さんになったニャ~。教えることは、もう何もないニャ~」 


 茶トラ先生から()められて、とても嬉しかった。

 茶トラ先生に認められることが、お医者さんとしての最初の目標だったから。

 自信がついたぼくは、長老のミケさんに相談することにした。


「茶トラ先生に認められたので、そろそろ旅へ出たいですミャ。行く先々(さきざき)で、ケガや病気で苦しんでいる猫を救いたいんですミャ」

「シロちゃんが旅に出たら、寂しくなるにゃ。でも、シロちゃんの夢を止める気はないにゃ」


 ミケさんは少し寂しそうな笑顔で、ぼくの頭を撫でながら続ける。


「シロちゃんはちっちゃいから、集落を出たらきっとたくさん苦労するにゃ」


 ぼくは成猫になっても仔猫サイズだから、みんなからいつまでも子供扱いされている。

 外の世界へ出ても、「仔猫だから」という理由で、バカされることもあるだろう。  

 危険な野生動物に、襲われることもあるに違いない。


 それでも、ずっと集落の中だけで生きていくのはもったいない。

 せっかく異世界転生したんだから、広い世界を見てみたい。


「いきなり、ひとり旅は危ないにゃ。サバトラさんもシロブチさんも、とっても心配するにゃ。誰かと一緒に行った方が、良いんじゃないかにゃ?」


 確かに旅に()れないうちは、ひとり旅は危険すぎる。

 安全な集落と違って、森の中には野生動物がうじゃうじゃいるんだ。

 ぼくと一緒に旅に出てくれる仲間を、探さないと。


 お父さんとお母さんは心配性だから、「旅に出たい」と言っても反対されるだろう。

 まずは、お父さんとお母さんを説得(せっとく)するところから始めよう。 

【猫が高いところへ登る理由とは?】

 猫は狩りをする野生動物なので、「敵に襲われにくい」「周りを良く見る為」などの理由から高いところへ登る。

「今まで高いところが好きだったのに、急に登らなくなった」という場合は、ケガや病気の可能性があるから病院へ連れて行こう。

 高いところから転落したトラウマで、高所恐怖症こうしょきょうふしょうになってしまう猫もいる。

 生まれつき運動が苦手な猫や、高いところが好きじゃない猫もいるよ。

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