88話:片付
お絵かきして遊んでました。遅れに遅れて申し訳ない。
「ということで亡命しますにゃ!」
【バスティオン・キャリア】の貴賓室で、農業協働連合の総議長ミードは軽い口調で宣言した。
ほーん。
いいの?
俺はテオドール卿に聞いた。
「綱渡りですが、仕方がありません。湖上都市の空気が不穏過ぎます。
氏の安全の確保は元より、要塞街や海賊略奪同盟双方の前提でした」
「少なくとも湖上都市から離れるべきという結論です。
なので御身に関しては海賊略奪同盟で確保させて頂きます」
セレネも答えた。テオドール卿とのすり合わせは終わっているらしい。
事態は俺を置いて勝手に進んでいく。
俺は副社長としてこの会合に出席しているだけで、なんの意見も発言も無かった。
それも【八本脚運輸】側としてはグラハムとタコ野郎がまとめて進行してくれている。
そのお陰で。やることが本当に無い。
いやまぁ、政治は全く興味がないから、話題を振られても非常に困る。
俺抜きでどうぞ好き勝手やってくれという感覚だ。
世界は俺を放置して勝手に動いてくれている。俺はこの感覚が嫌いではない。
知的生命体たちが、必死で今を生きている脈動を少しだけ感じることが出来る気分だからだ。
だが、俺は微妙にそこに混じっていい存在なのかよくわからないときがよくある。
だから、あまり"血液"の中に混じりたくないな、と考え少し意図的に無視しているのだ。
だから、会議室の天井を見ている途中に話は進んでいった。
セドリックは過労と心労でぶっ倒れている。
リザードマンの達人級と戦ってたからな。
機体性能差があったとしても相打ちは大戦果だろ。神経が削りに削られてもおかしくない。
だから高熱を出してうなされるほど衰弱してて情けないとは全く思わない。
激戦だったなー。俺もそのままねっ転びたいところだ。
だが、この暇な時間に今回の出来事を考察しておこう。
想定の十倍近い、理由のわからない襲撃。
これは本当によくわからない。
だが、参加者全員が、いつもの茶番のドンパチくらいのつもりだった想定だった。
しかし、明らかに数の差がある大軍を連れてきたらしい感じだ。
しかも、第一目標であるミード総議長の方にはあまり攻撃が来なかったらしい。
それよりも外の機体の撃破を優先して攻撃を仕掛けてきたのだとか。
だから俺とセドリック、ハンサムとタコ野郎&セレネ姫。
あとさらっと紛れ込んでた"増援"の四機と一機の合計九機と延々戦ってたらしい。
本気で議長を取りに行くというのなら【バグベア】をあれだけ動員出来たなら行けただろう。
半歩兵とはいえ生存力だけは高いからな。逃げ切るのも難しい。
となれば総議長ミードよりも、奴らが掲げていた第二目標の方が優先順位が高かったのだろう。
つまり俺だ。
なんで俺なんか狙うのか、というのが一切理解出来ない状況だが、恐らく仮説がある。
それは、俺を狙ったリザードマンたちの一団。そして、親父そのC。
あいつが生きていたのも不思議だが、スクラップの手下になったという情報も重い。
リザードマンたちは、俺の事を【天使】と言っていた。
しかしハレーとは最近は会ってないような反応。
つまり情報の出どころはハレー経由ではない。しかし、俺の事を完璧に把握していた。
そしてハレーと目的を共有しているわけでもない。というより"組織的に動いている"。
俺を無理やり連れて行くように"命令を受けている"。つまり上役が居る。
良いか悪いかを考えず盲目的に従うことを求められた組織。行動指針も違いそうだ。
一部、やる気が無いやつも居たし、バカも居たが──
シュラが単純な若武者であったが実力は充分だった。技量だけでもセドリックと同様だろう。
あのレベルのリザードマンの異能者の三人を、こんな雑な戦いに気軽に投入出来た事実。
それらを指揮出来る"奴"が居ると思った方が良いだろう。
そして親父そのCとの繋がり。
スクラップの下僕になったとのことだが、詳細はよくわからない。
だが、最低でもあいつは"ゴブリンの王"との繋がりがあったはずだ。
なんたってゴブリンの王は学者で、親父Cも学者だからな。俺の写真でも見せたのか?
そして、それに連動して思い出されるコテツの発言。
──「僕の脳は”外”のゴブリンと同じような状態に陥っていると思っていいです」──
うーん。親父Cはゴブリンと同じ状態になっているっぽい気がする。
あとリザードマン達を指揮する存在と、親父Cとの連携──
俺の狙うやつを一旦"敵"だとカテゴライズするとして──
敵方に【天使】が居るな。
となるとあの【バグベア】の指揮官の誰かは”のーみそハッキング”を食らったな。
具体的な全体図は想像出来ないが、あのクッソ雑な襲撃の具合が説明出来そうだ。
「じゃあ、それでええかカラスはん」
タコ野郎が俺を現実に引き戻した。
やっべ、何も聞いてなかった。全員が俺を見ている。
──え、ごめんなんも聞いてなかったんだけど、いいよ決まったことに従うよ──
「あ、聞いてなかったん? ならちょーどええわ。副社長として、これにサインしてや~」
あん? 何? ここに書けばいいの?
よくわからんままに出された書類にサインをした。
「 万事OKや。 じゃ、カラスはん。 出張ヨロシク~ 」
は?
結論から言うと俺はタコ野郎に売られた。
*
俺は【バスティオン・キャリア】のハンガーへと逃げた。
深夜だろうが稼働しているこの空間は喧騒と工事音に包まれている。
循環液の蒸気と機械油の香りに包まれたこの騒がしい空間が、俺は好きだ。
大破している【エスクワイア】は流石にここでの修理は不可能だ。
パーツ外しすらここでやって意味が無い作業になる。
今後の進路は要塞街への帰路であり、騎士団の設備を借りて修理することになりそうだ。
帰還そのものは航路予定に組み込まれているし、既に輸送物資の搬入などは終わっていた。
グラハムとコテツが、俺達がパーティ参加してる間に終わらせてくれたらしい。優秀だ。
いや、まぁ。俺はこれから別行動になるんだけどな。
【サークル・ザンバー】も両腕を全損している状態であり、フレームまで傷んでいる。
応急処置は出来るかもしれないが優先度は低いだろう。
要塞街での本格的な整備に任せることになるため、ここで整備しても仕方がない。
だから俺は今後乗る機体として、セレネ姫の機体を見せてもらうことにした。
異型過ぎる大型AGは、ハンガーの一角にどっかりと座っている。
どういうデザインセンスをしているのかさっぱりわからないが、名前だけは判明していた。
湖上都市での戦いで八面六臂とも呼べる大暴れをした機体。
【ガトリングヒュドラ】
その名前を聞いた時に、俺はこいつのことを何もわからなかったが──
誰が作ったのかだけはよく分かった。
Mission終わり! 長かった!!!アドリブだけで書いちゃダメですね!!!!




