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塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる  作者: 梅酒わいん
mission9:水上都市外敵排除

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86話:伝言

戦闘終了です。

この話こんなに長くなるとは……

 気が抜ける結末だったが、シュラは気絶したようだ。


 マジで強かった。

 純粋性能(スペック)が強い奴は本当にキツイ。

 中身が未熟だったのが幸いだったが、あの"権能"をうまく使われてたら足も切られてただろう。

 しかし、"権能"とは一体なんなのか。不可思議すぎる技術だ。

 どういう理屈のものなのか考えたいが──自分も似たような技術を使っている気もする。


 よし、考えるのはやめておこう。今、この瞬間は重要じゃない。

 それよりも、この混沌とした現状を把握したい。

 俺はシュラとの戦いに集中しすぎていた。そんなことを考える余裕は一切なかったほどにだ。

 だから、どのように状況が遷移していったかさっぱりわからない。

 周囲の音を拾えるよう、【サークル・ザンバー】のセンサー群を調整して情報を集める。



 まだこのドタバタ騒ぎは終わっておらず、まだ喧騒は収まっていない。

 所々で激しい爆発音、連射する射撃音、砲撃の射出音、なんか高笑いする女の声。



 暴れてるやつのベクトルがさっきと違うな。なんだろう。

 だが、セドリックたちが生き残ってるか確認しなきゃな。

 そう、再び【サークル・ザンバー】を走らせようと、エネルギー調整をした時だった。



 月を隠すように倉庫の上に、一機の騎竜(ドラグーン)が立っていた。

 右腕を喪失しているが、出血は弱い。二機の内どちらかがこっちまで抜けてきたのだろう。


「作戦失敗だな。そこの未熟者を回収したい。邪魔する?」


 女の方のリザードマンの声がした。無個性な伝統的な武装を装備したうちの一人だ。

 ナイフを投げて妨害した老成した男の方では無いが──足止めには成功してるのか?

 まぁいい、回答をしよう。



 ──俺を襲った目的だけ言えば、シュラを持っていって良いぞ。



 正直、こいつらと戦って俺は一切得をしていない。

 そして、あの二機を同時に相手して片腕の喪失だけで済んでいるこいつと戦いたくない。

 シュラより明らかに技量が高いであろう女リザードマンと戦って勝ち目があるか怪しいからだ。


 だからちょっと人質を取る気分で答えた。

 いや、実際には人質になんか取るつもりは一切ない。

 戦士として倒れているこいつに刃を向けるのは、俺のプライド的には無しの行動だ。

 真正面からの全力闘争でスッキリと戦えたのだから、酒でも飲んで水に流したいところだ。


「目的は聞いていない。聞いていないものはわからない。これで答えになるだろうか」


 実直な答えが帰ってきた。

 うーん。嘘を付いている感じが一切しないな。

 極めて情報量が少ない回答だが、これ以上でもこれ以下でも無いだろう。

 そして、ここで質問攻めにしたところで回答も得れる気配はない。


 大人しく帰すか。



 ──お前らのボスに伝えといてくれ。

 ──俺に何か用があるなら八本脚運輸オクタライン・ロジスティクスに依頼でもするんだな。



 ま、考えるのはタコ野郎に丸投げすりゃいいだろう。あいつ今何してるんだ。

 その言葉を聞いて、女リザードマンは無言で行動した。

 数ステップだけで倉庫の屋根から降り【イチモンジ】に近寄り、片腕だけで担ぎ上げた。


 恐ろしくスムーズな挙動だ。全然隙が無い。すげぇ戦いたくない。

 相手の話を聞かず、戦闘をそのまま初めずに本当に正解だったな。

 そう思いつつ、行動を眺めていたら、女リザードマンは俺に言葉を告げてきた。



「【天使】よ。伝言がある」



 誰から、なんの伝言だよ。

 そう思いつつ、次に聞いた言葉は衝撃を与えてくれた。



「えーと『ヒナの父親そのCより。僕スクラップの下僕になっちゃった。笑えるよね』だってさ」



 ──あー。

 ──あのー。

 ──あのさー。




 ぶちころすぞあのクソオヤジ!!!!!!!




 俺はキレた。



 *




 女リザードマンは【イチモンジ】を担ぎ、そして湖に放り投げて、素早く逃げていった。

 もう一機のリザードマンの機体も浮いているようだ。ボロボロだな。

 騎竜(ドラグーン)は耐水性が高い機種だ。基本性能に関して全機種の中でも最高峰だろう。

 操作上の難点さえ除けば最高の機種なんだが、あまりにも難があるので使えるやつは少ない。

 使ってみたいけどな―。痛いのはやだなー。



 さて。周囲を見渡す。

 このドンパチの戦いは終わりに近づいている。

 俺としては巻き込まれただけだし、50機も倒したなら充分な活躍が出来ただろう。

 セドリックたちの状況を把握しなければならない。

 そう思い、先程の地点に戻ってみたら──



 ──何があったのか詳しく聞かなきゃならない程の激戦があったらしい。



 暴れまわった四機により、倉庫街は壊滅的な被害を受けていた。

 既にリザードマンたちは撤退済みだが、騎竜(ドラグーン)の破損している腕部が残っている。

 途中で吹き荒れていたあの暴風の発生点もここだな。思い切ったことしたな。

 そして残っているのは──


 コックピット以外無事なところがない程に、切り刻まれた【エスクワイア】。

 "結晶のようなもの"に覆われて、身動きが不可能な状態の水陸両用機(ダイバー)


 そしてその機体の上に──


「っち、無様な姿をまた晒している──ックソ! 自分が情けない──!」

「相打ちのセドリック卿に比べたら、情けないのは俺の方だよ。腕一本しか取れねぇ大敗だぜ」

「いや、あれほど相性が悪さでよくもそこまでやったものだ、不本意だが称賛しかない」

「そりゃどーも。出来れば美女の慰めが欲しかったぜ」

「悪かったな男で」


 各々自分の機体の上に乗りながら、愚痴を言い合うセドリックとハンサムの姿が見えた。

 適度に警戒しつつ、戦いが終わったリラックスをした状態だ。

 あれ、仲良くなってるな?


「お、戻ってきたな。あの感じだと大型騎竜(ドラグーン)に勝ちやがったか」

「あんな使いづらい機体をよくもまぁ使いこなせ──なんか凄い姿になってるな」

「あらまぁ。相当の激戦だったのは間違いないな。あの"カラス"がここまでやられるとは」



 ──よう。ひどい有様だなお二人さん。こっちは勝ったぜ。結果はともかくありがとよ。



 いや、この二人が居なかったら確実に負けて攫われてたんだよな。

 シュラ一人であんだけ苦労したのに、あの技量の二人追加とか絶対に無理だっただろう。

 全力で逃げたところで湖上都市(ヴァルノール)は湖の上に浮いている都市だ。

 だから、実質的な逃げ場は無い状況だったと今になって思う。マジで詰んでた。


「最上位傭兵カラスに個人的な貸しが出来たと思えば充分だぜ。労力に見合う価値はある」


 ハンサムは胸元から取り出した煙草に火を付けて、一服しながら言った。

 正体不明の"権能"とやらを全力で受けてまで戦ってくれたのだから、これは重い"貸し"だな。


「実はダメージはそこまで無いんだが、関節部を執拗に狙われててな。

 セドリック卿に合流した時点でほぼ動けない状況だったんだ。相性最悪だったぜ」


 ハンサムの乗機は酷い惨状だ。

 青い硬質な結晶のようなもので覆われており、身動きを取るのがほぼ不可能な状況だ。

 これ一体どういう原理でこんな状態になっているかわからないが──


「一応無理やり動かして割れるくらいだから、外側から削ってくれりゃ出れる。

 セドリック卿はもう動けないし、ちょっと削ってくれや」


「一切の言い訳は無い。【エスクワイア】はボロボロで何も出来ない状態だ。

 修理したばかりなのに、この有様では当分動かせないだろうな」


「いや、だからあの状況から相打ちに持ち込んだだけでもすげーよ」


 セドリックが凄まじく機嫌が悪そうに愚痴っている。

 確かに【エスクワイア】の四肢はボロボロであり、どこもかしこも攻撃された後が見える。

 特に脚部周りは念入りに破壊されており、立つこともままならない状態だ。

 ビームシールドを纏ったバカ硬い【エスクワイア】の防御を良くもここまで貫いたもんだ。

 レーザーブレードも破壊されており、どうやって相打ちになったかマジで聞きたい。

 が──機嫌がなんだか本当に悪いので聞けないだろうなぁ。


 さて、ハンサムの機体を解放させるために光輪(ビームチャクラム)で結晶を削りますか。


「えっと、そのなんだ。中まで傷つけるなよ?」


 おいおい、そんな下手はしねぇよ。俺を何だと思ってるんだ。

 そう思いつつ、【サークル・ザンバー】の足を上げ、不安定な姿勢を維持しながら削り始めた。



 *




 ハンサムの水陸両用型(ダイバー)が動けるくらいの状況になった時には喧騒は収まっていた。

 馬鹿騒ぎは終わりを告げ、パーティはお開きになったようだ。


 会場あたりがどうなってるか定かじゃないが、まぁテオドール卿がなんとかしてくれるだろう。

 あっちにはヒルダとアルマが居るから、こっちで大暴れした分、楽も出来たはずだ。


 主催者の猫人(ケットシー)がどうなったかは定かじゃない。

 外交的には問題があるかもしれんが俺には今のところどうでも良い対象でしかない。



 はー。疲れた。帰って寝たい。



 そう思って、【エスクワイア】をどう運ぶかを考えていた時だった。

 のっそのっそと海賊略奪同盟パイレーツ・アライアンスの異型のAGがゆっくりと歩いてきた。

 この戦場で大量の【バグベア】を相手取ったのだろう。

 煤け、弾丸が弾けた後が見える装甲から、相当暴れたことが伺える。

 その巨躯は、二基ジェネレータ機であることを示すような重厚な大型機だった。


 しかし、なんというか、マジで異型過ぎて表現がしづらい機体だ。

 手足か頭かよくわからないものが"14本ある"機体というか──本当になんだこれ。


 こちらに歩いてきた意図はよくわからない。ハンサムにと合流しに来たのかな。

 そう思っていたら、俺は通信機越しにそのトボケた声を聞いた。



「あ~カラスはん。終わったん?」



 は?

 なんでお前が海賊略奪同盟パイレーツ・アライアンスの機体に乗ってんのかなぁタコ野郎!?


やーっとタコ野郎が戻ってきた。

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