56話:指示
ですます口調×3はあまりにもセリフで判別出来ないので砕けさせました。
元々ヒルダさんは元気っ子予定でしたが立場最悪だったもので……
そういえばさ。君ら口調硬くない?
同じ傭兵同士、上下関係あるわけでもないし、もっとフランクに来て欲しいんだけど。
「あの、カラスさん? 忘れてません? 貴方副社長ですよ」
コテツに突っ込まれた。
あー! 明確に上下関係あったわ!
あまりにもその認識が無さすぎて違和感がある!
すっぱりとその事実が抜けてた!
でも、出来れば同僚に接するようにしてもらいたいんだよね。
上下関係があるのはあんまり慣れてないんだ。
「僕はこのままでやらせてもらいますよ」
コテツはいいよ別に。お互い扱い雑だし。
「はーい。わかったよ。これからもよろしくねカラスさん!」
おっ。ヒルダ切り替え早いな。いいよいいよ、そんな感じ。
「ええと、はい。なんとか。頑張ります」
アルマは硬いな。まぁ、おいおい慣れてくれ。
じゃあ、塔下層にアタックするぞー!
「「おー!」」「はい」
あ、ちょっとだけ待ってね。
ざっくりだけど作戦の指示するから。
まずは──
*
塔の下層。内部の広い空間は、発光する苔と植物で視界が塞がれることは無い。
ギア四機が問題なく機動出来るほどの空間に、多数の小型機スクラップが蠢いていた。
空中型多めだな! 作戦通りにやるぞ!
「了解です」「わかりました!」「はーい! 一番手! 行きます!」
敵機編成を確認する前に、ヒルダ機がシャードブースターを吹かせて一気に前に出る。
そしてそのまま、“前方”へと向けて狙いを一切付けずに、右手で持ったものを投擲した。
塔の周辺に転がっていた石。それを持ちきれるだけ持たせて、投げさせた。
なんの変哲も無い、ただの石である。
知的生命体で持てるギリギリのサイズのそれを【ハッチポッチ】の右手に持たせた。
【ハッチポッチ】の腕部は地味で重めで射撃補正も弱いが、腕力だけはある。
そのトルクとジェネレータの出力任せにぶん投げることで、それは強力な散弾に変貌した。
狙いは空中の敵機。
一撃でも当たれば良し。当たらなくても、ヒルダの攻撃は後発に何ら影響を与えない。
その気軽さで実行させた先制範囲攻撃は、偶然三機程のフライアイを巻き込んだ。
直撃か、衝撃によるものかわからないが、命中した三機を叩き落とすことに成功した。
大戦果だ。
「やった! 落とせました! 後は作戦通り、この位置でひたすら構えてます!」
ヒルダの歓喜の声が聞こえ、盾を構え防御姿勢をすぐ取った。
思い切りが良いじゃないか。優秀な前衛になれる素質があるな。
「ヒルダ。後ろは任せてください。守ります」
「お願いねアルマ! 信じるよ!」
アルマは即座にヒルダの後方に移動した。
俺たちが自由に機動する程度の隙間を開けてそこを陣取る。
後方へと回り込む敵機を優先して攻撃するように指示させている。
知性が無いスクラップの攻撃を、派手に攻撃したヒルダへと集中させる。
そして、その攻撃を前方からに限定させる狙いだ。
以降、二機は俺かコテツの指示があるか、もしくは危機的状況にならない限り動かない。
想定では下層の戦闘において、メイド二人が実行する”最初で最後”の移動だ。
戦闘において最も重要なのは位置取りだ。
常に有利な位置に居られるのであれば、それだけで戦闘が決すると言ってもいい。
今回の2人の役割はひたすら邪魔な盾役と、その後ろで延々射撃し続ける堅牢な射手役だ。
役割に徹することが出来るならば、初心者としてはこれだけで充分な戦力となる。
遊撃は俺とコテツでなんとかする。
コテツの実力を見計らっているところだが、なんとか出来るという想定で動かせてもらう。
こちらから過度の要求を期待しないことで力量も知れるだろう。
秘密を抱えている本人を疑ってる訳ではない。そんなことは正直どうでも良い。
しかし、どれほどの戦闘における判断力と戦闘力を備えているかを把握することは重要だ。
それに応じて、どれほどまでの”無茶”を任せていいかの判断に用いたい。
さて、スクラップの攻撃の前に必要な機動は終えた。
戦力分析としよう。空中の敵機が多いな。
地上にビーストが多数。エイプ二匹。何処にでも出てくるフライアイがいっぱい。
あとワイバーン。
──ワイバーン?
──げぇぇ! ワイバーンユニットが居るじゃねぇか!
ワイバーンユニットはドラゴンの後ろに着いている、有翼スクラップだ。
あの巨体を浮かせるレベルの馬鹿げた出力を誇るが、単独でも稼働できる。
その場合、中型程度の空中スクラップとして扱われ、空中から重砲撃を行う厄介な機体となる。
が、そんなことよりもその存在の方が問題だ。
それは、ドラゴンの”完全体”へと変貌させる製造拠点であるという事実を示している。
つまり、この塔の警戒レベルが一気に跳ね上がったことを意味するからだ。
またドラゴンかよ~やだよ~!
「火力不足です。カラスさん切れます? 残りの空中とエイプは抑えます」
コテツが即座に判断と攻撃力の計算を終えた。状況判断と戦力の割り振りは的確だ。
──コテツの方針に賛同! 対空とエイプの対応を任せる!
──メイド二人の方針変更無し! アルマとヒルダ、地上を整地しろ!
──ワイバーンは当分無視! タイミングを見て俺が近接でたたっ斬る!
「任せてください」「はい!」「りょーかいです!」
──よし! 行くぞ!
指示を出して全機攻撃を開始、スクラップ側も反応して行動を開始。
下層での戦闘が始まった。
*
ワイバーンが何を持っているか、その塔の他のスクラップにより決まる。
だが、オートキャノンではないようだ。あれはかなり強力な武装だからな。
ライフルマンの砲を持っていた場合でもかなり厄介になる。
あれも単発威力が高く、空中からの攻撃としては脅威だ。
しかし今回はどちらでもなかった。ヒルダ機にぶち込み、”焦がした”それは──
「グレネードですかね」
厄介なやつ来たなぁ! 対処繰り上げしたほうが良い気がするぞ。
ヒルダ! 今の一撃大丈夫か!
「身構えてたからだいじょうぶ! です! このままいけます!」
延焼弾の効果で少しヒルダ機の【ハッチポッチ】に着火した。
コアフィールドが効果的に発揮され負傷は少ないが、継続したダメージが入りそうだ。
本人の感想的には問題なさそうだが、負傷度合いを計算出来ているわけではないと思う。
早めに地上の対処をしないとな。
フライアイの対処は完全にコテツに任せている。
アルマは地上のビーストを丁寧に、冷静に迎撃していっている。やることを増やさなくて正解のようだ。
命中精度は攻撃回数を増やすごとに良くなってきているし、攻撃力が増えた影響か対処速度が早い。
スクラップの攻撃目標策定の基準は雑だ。
特に近接型機体の場合だと、だいたいにおいて攻撃目標の策定は経験則だが以下になる。
①派手に攻撃したやつ
②明らかに攻撃力が高い危険なやつ
③最後に攻撃を当ててきたやつ
この程度の基準で攻撃を仕掛けてくる。
そのため、派手な投石による先制攻撃をしたヒルダ機へ攻撃が集中している状況だ。
つまり、横から簡単に殴りかかることが出来る。
レーザーチェーンソーを起動。
さー。数を減らすぞ。
シャードブースター点火。少し跳躍。接地。再跳躍。
斥力は抑え、鋭さを重点にした高速回転。
ステップ。接地。踏み込み。切り上げ。
っせい!
両断。次!
真横に跳躍。回転速度を抑え、斥力を倍増。地面に押し当て、意図的に反発させる。
その反発力を利用し、【ハッチポッチ】を回転。軸にした脚で跳躍。
身体を横に倒しながら落下の加速度を加え、真上から振り下ろし。
どりゃぁ!
叩き潰した。次!
逆回転。斥力そのまま自機を跳ね上げ、横ステップ。
接地、シャードブースター点火。そのまま再度横ステップ。蹴り。
おらぁ!
そのまま踏み潰す。次!
近すぎた別の敵機が攻撃しようとこちらを向いた。近いな。ロケット。爆発。
弾き飛ばされたそれに、後方へ退避しながらライフルを連射。沈黙。よし!
退避完了。ヒルダ機の後ろへと戻った。
「今、一瞬で四機撃墜しませんでした?」
「ちょっと鮮やかすぎて、本当に意味がわからないです」
アルマとヒルダが呟いた。
おいおい、俺を何だと思ってるんだよ。
なんだかんだ要塞街の最上位傭兵だぜ。ひれ伏せ新人ども。
「バカ言ってないで、ワイバーンかエイプの対処してください。
エイプは跳躍妨害は出来てますが、撃墜は無理そうです」
おっけー。対処する。
というか全部撃ち落としてんのか。すごいな。
アルマ、ビーストの数は減らしたから後は出来るな?
「はい! やってみせます!」
気負うなよ~。
落ち着いて冷静に数を減らすことだけ考えろ。
ヒルダは──あ、今!
「今! はい!」
接近して跳躍してきたビーストに対して、シャードブースターを点火。
タイミングを合わせ盾打ちを食らわせて、弾き飛ばした。
よしよし。お見事!
ヒルダは「防御」だけでなく「格闘」のタイミングも教えておいた。
接近戦に持ち込まれる瞬間に、シャードブースターを使って盾で体当たりすることだ。
小型スクラップならばほぼ重量差で弾き飛ばすことが可能であり、これで総合的な防御力を高められる。
意外と落ち着いて対処出来てるな。そしてやはり思い切りが良い。盾役向いてるな。
アルマとヒルダが結構安心できる状態だ。
俺の教え方が良かったんだな! ガハハ! 自画自賛しておこう!
「バカなこと思ってないで。早く。対処。お願いします」
思考を読まれちゃった。てへへ。
コテツが空中抑えて、フライアイ撃墜しまくってるのを手伝わなきゃならん。
さてエイプとワイバーンの対処を開始して良さそうだ。
シャードブースター起動。
敵集団の後方まで回り込み、単身殴り込みに向かった。
やはり投石!安くて強い!原初の武器は伊達じゃないですね!
拙作は蹴りと、体当たりと、純粋なパワーがめちゃくちゃ活躍する泥臭いロボバトル作品です。
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