55話:変更
はい、計画見直し!
武装と役割変更するぞ。
まずコテツ。一旦ヒルダ機をチェックしてもらって良いか?
セッティングがミスってないかだけは確実に確認したい。
だけど俺の予想は問題なしで、本人が重度のノーコン。
正直、今回は射撃を教えるのが完全に無駄で、断念するレベル。
「酷いです!」「先程のものを見たら、まぁ妥当ですかね──」
せめて弾薬に余裕があるときにやろうか。
だが、ヒルダにガッツがあるのを俺は知っている。
俺に踏み潰されながら、それでも戦うのを諦めなかったのは評価してるぜ。
だから、今回学ぶことは「防御」と「格闘」を中心にしよう。
機動は純粋な操作時間がものを言う世界だ。
だから後回し。時間が必要だが、逆に殆どを時間が勝手に解決してくれる。
さて、防御の話だ。
弱い攻撃をさっき受けたから、体感で理解できたかな?
「はい、思ったより弱かったです」
あれは防御専念で動かなかったからコアフィールドが最大限に活用出来た状態だ。
だから、ダメージのほとんどをシャットアウトできる。
通常戦闘中だと、タコ野郎の【キャタピラ脚】の重装甲でも薄く削られるからな。
「社長の無限軌道のギアですよね。あれでも削られるんですか」
ああ、レールランチャーを全弾撃ち尽くすレベルの連射でやっと倒せる重装甲機体だ。
だけど、そんな堅牢な機体でも小さな攻撃を全部シャットアウトするのは、コアフィールドを使わない限り無理だろう。
“物理的に”、大なり小なり、攻撃を受けてダメージを受けないものは存在しない。
だから、”物理”を別の法則で塗り替えるコアフィールドの意識が防御に必要なわけだな。
ということで、ヒルダ! ライフル取り上げ!
余ったライフルはアルマの”右肩”に装備させるぞ。
右手武装の照準と連動させて攻撃を二連射にする。
武器切り替えはいらないから操作も変わらない。
“やることを増やす”と途端に混乱するからな。今はやることを一つずつ増やしていこう。
「はい!」「了解しました」
まとめるぞ。
武装交換!
カラス機:レーザーブレードとレーザーチェーンソーを【オンボロ】と交換。
コテツ機:同上。
ヒルダ機:アルマにライフルを移動。つまり無手。
アルマ機:貰ったライフルを右肩に装備。右手武器と連動。
はい、作業開始~。アルマとヒルダはコテツに従う! コテツ後全部任せる。
「カラスさんはどうするんです?」
んー。そこのスクラップどもの生産設備をハッキングしてくる。
ビースト加工して、武器防具にしようぜ。
*
俺は【ハッチポッチ】のコックピットから出てクラッキングツールのコードを這わせた。
スクラップが製造した生産設備の鍵穴へとツールのコネクタをぶち込み、電子戦を開始した。
スクラップの設備にアクセス出来るように作られたそれらは、いつ頃から存在したのかは定かではない。
だが、一般的に普及しており、傭兵たちが塔を攻略するのに欠かせないアイテムのひとつだ。
【ハッチポッチ】のモニターコンソールに表示されたそれは、知的生命体が理解できるように変換された文字列や数値をもとに、パズルのように各種要素を組み合わせて翻訳していく。
ちょっとした謎掛けのようなものがほとんどだが、なぜこのような形式で出力され、どのような計算が行われるか判明していない。
この翻訳機は、誰がどのようにどうやって作り上げたか、それらはすべて謎とされ続けている。
改修も出来ないブラックボックスでしか無い。
しかし、遥か太古からずっと使われている代物であり、多少の手間はかかるがバージョンアップの必要性を感じていない優秀なツールである。
正直、適当にやっても簡単に終わるだろう。
外部の生産設備なんて、塔内部のものに比べれば遥かに簡単な内容しかない。
タコ野郎やコテツなんかは片手間に終わらせることが出来るだろう。
対した労力を要することでは無いが、新人メイド二人に教えながら覚えさせるには負荷が高い。
難易度ではなく、頭と身体に叩き込む内容が多すぎるからだ。
今回はギアの操作と戦闘に集中させるべきだ。
塔の攻略は雑談程度の内容として学習させる、その方針でコテツと先に話し合っていた。
いや、コテツも同レベルの予定だったので完全に予想外だったのだが。
新人三人だと思っていたら、コテツが近接以外は騎士と同格みたいなベテランなんだもの。
不思議なやつだな、そう考えつつ、俺の方が遥かに不可解な存在なので気にしないことにした。
さて。やるか。
かちゃかちゃかちゃ、たーん!
終わり! 楽勝!
終了キーを強く弾きたくなるやつ、あれ、なんでやりたくなるんだろうな。
多分知的生命体の習性だな!
たーん!
*
はーい、みんな~相談~。
というより俺が勝手に決めることの通達。異議ある場合だけ意見を言ってくれ。
「はい。作業しながらですが聞きます」「判断が出来ないので従います」「左に同じです」
おっけー。
今回ぶっ倒したビーストを武装化しちゃいます。
生産設備をハッキングしました。
これを稼働させて、ビースト四機を材料として突っ込んで盾二つとレーザー砲を作る。
「レーザー砲ですか。ビーストだと大した威力の武器ではないですよね」
うん。低威力だから速射式の対空武装として扱う。
普通の塔だから小型空中スクラップのフライアイが出てくる想定している。
だけど、対空可能な装備がライフルだけから弾切れが怖い。
そうなったら、俺が頑張ってチェーンソーで全部切らなきゃならないから対処が遅れる。
「道理ですね。誰に持たせます?」
コテツ持つ? 対地火力はロケット一つで充分だと思うんだよね。
それを空中浮遊している相手にぶち当てる技量を持っていないなら俺が持つ。
「持ちましょう。空中の相手に当てるのは流石に自信が無いです。命中率は半分程度でしょう。
そもそも、あれは防御を固めた騎士機を想定した装備でしたし、突貫で積んだだけですからね」
半分って言える時点ですげえな。あれロックオンが出来ないから補正出来ない装備だぞ。
余ったロケットは俺が持つよ。ということで追加で装備入れ替え!
コテツ機:対空レーザー追加、小型ロケットをカラス機に移行。
カラス機:コテツ機からロケットを移行。
ヒルダ機:盾装備。前に出て防御する用。
アルマ機:盾装備。後ろで射撃しながら構えておく用。
よし! 塔侵入前に生産装置動かす時間が出来たな!
作業一段落したら食事用意! 休憩しなおす!
「そこは任せてください」「腕を振るいますよ!」
メイド二人が気合を入れた。いや休憩するんだよ?
*
遠くでスクラップがもよもよウロウロしているのを見ながらテントを展開した。
メイド二人が慄きながら、食事の準備をしている。
「すごく怖いんですが」「突然行動方針変わらないですか?」
んー。大丈夫。行動方針が変わる時はだいたい"塔"の方に異常が出るから。
発光したり振動したり、"なにか"が起きた兆候はあるから気にしなくて大丈夫だよ。
しかし、手際良いなぁ。街の外での調理経験がお有りで?
「貴族淑女としては船に乗って、一通りの装備習熟は義務ですから覚えますよ」
「ギアに乗るのは騎士になるのでなければ、基本的な操作を把握する程度でしたけど」
ふーん。やっぱり育ちは良かったんだなぁ。
今更なんだけど、なんで傭兵になろうと思ったの?
君たちの立場がそんな良いものではないのは承知している。
だけど、タコの秘書と経理やってるだけでも生きていけるでしょ。
「あまり言いたくないのですが、貴方に憧れました」
「街を飛んでいった貴方がすごく自由に見えたんです」
そうか。どうやら君たちをこの道に歩ませたのはどうやら俺らしいな。
「「ただ本当に怖かったです」」
ははは。
さーせん。
*
その後、残って作業を続けていたコテツも休憩に入って、食事を楽しんだ。
まぁ本格的な食事でなく軽食程度だ。腹にものを溜めすぎるのも機動を阻害する。
鎧陸海老のパン包みかぁ。
最近食事のグレードが上がっているから、良いもの食べれて良いわ。
装備は貧弱だが食事くらいはちょっと贅沢にやらせてもらおう。
メイド二人が茶も淹れてくれて、緊張を弛緩させながら喉を潤す。
はー。俺が淹れるよりやっぱり数倍美味い。専門職の二人には叶わないわぁ。
あー。やっぱ教官&指揮官役は疲れるなぁ。
苦手ってわけでもないけど気苦労がすごい。グラハムにでも任せたいわ。
いやでもあいつの指揮には疑問があるな。あんな雑な戦闘を展開したくらいだからな。
今度何をもってあんな展開にしたのか聞いてみよう。
そうして俺達は生産設備稼働終了まで休憩し、装備を整えて塔の攻略を再開した。
あけましておめでとうございます。
今年も拙作をよろしくお願いします。
評価、ブックマーク、そしてたくさんのリアクションありがとうございます。
すごくモチベーションに繋がっています。
よろしければご意見、ご感想気軽によろしくお願いします~




