53話:破算
第1部完!
「死ぬかと思った。もう二度と飲まないからな!」
うん。危なかったな。
急いでドワーフ共に担がれて、運ばれていった時はダメかと思ったわ。
セドリックが復活した次の日である。
俺は執務室から逃げ出して、ダラダラと新聞を読みながら休憩していた。
一面には【ナイト・オブ・シャベル】と【ハルバード】の衝撃的な写真が映し出されていた。これで世論がどう動くかわからないが──
“デカ耳”の情報戦勝ちだな。
あのまま残ったあとは、各新聞社や映像関係の伝手を動かしまくって、俺たちの悪事を有耶無耶にしてくれた。
こうしてのんびりしていられるのも”デカ耳”のおかげだろう。はー。一安心。
そうして、ぼけーっと茶を飲みながら新聞を畳んだ。
いやほんと、俺を知識階層の一員に組み込まれても困る。
書類仕事とか得意じゃないんだよ。あとはグラハムに全部任せるわ。
「で、どうなったんだ」
えーとだな。うん。
計画は全てご破算になりました。
「なんだって?」
そうセドリックが呟くと、執務室の扉が開かれ、全員が一気に出てきた。
「あかん! クレジット無さすぎや! 今月分の星見予報を全部集めぇ! 近くに落ちた塔を攻略しにいくやで!」
「タコ社長とカラスさんは他の傭兵たちと交渉して、塔の攻略状況の把握と、攻略権の整理をしてきてください。こっちは偽装ギアを動かせるようにでっち上げます。【飲んだくれ】さんたちもギア修理くらい出来ますね!?」
「あたぼうよ! 整備できねぇドワーフのギア乗りなんかいねぇ!」
「でもまだこれ乗んのかよ。弱ぇぞ」
「せめて名前くらい付けましょうよ」
「じゃあ、【寄せ集め】だな」
「【ガトリング工房】に連絡して列車輸送の枠を確保します。
【クロスガード】を送るので残った偽装ギア、ええと【ハッチポッチ】ですっけ?
それの残りを輸送してきて入れ替えさせてもらいます」
「団長の一撃のダメージが深すぎるからな。装甲板が割れた【クロスガード】は動かせん。
妥当な判断だ。攻略する塔と航行ルートの策定はこちらでしておく。地図はあるな!」
「こちらに!」「列車状況調べておきます!」
な?
「うわぁ」
お前にも働いてもらうぞ。
なにせ、お前、指揮官だからな。実働部隊は任せる。
「カラスさん! サボってないで早く第三セクターの傭兵のところへ走ってください!
情報収集! 交渉! 殴り合いでの解決! 全部任せます!」
はいはい。わかったわかった。
いくぞセドリック!
「なんで僕も?」
ああ? お前も傭兵になるんだよ! 騎士の立場のままで塔の攻略なんか出来るか!
分かるか? 俺たちはな。
このクソみたいな塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてるんだよ!
傭兵のやり方を覚えておけ! 見せてやるからよ!
いくぞぉ!
『完』
「待てやぁ! 続けるやで! なんとしてもクレジット稼がなきゃならんのや!!
こんなところで終わらんやでぇー!」
誰に何を言ってんだ!
タコ野郎お前も行くんだよ!
*
なんやかんやあった。
*
はい。新人研修はじめまーす。
メイドさん2人、自己紹介お願いします。
「アルマです。カラスさんに四肢をもがれて傭兵になりました」
「ヒルダです。同じく踏み潰されて転がされて傭兵になりました」
はい、拍手〜ぱちぱちぱち。
「何してるんですか」
いやさー。
なんか貧乏傭兵するの久々だし、ボロギアだから新人に教えながらやるのもいいかなって。
はい、今回の目的は〜!
激安! 貧乏廃棄塔攻略チャレンジです!
機体説明!
「僕が【オンボロ】、それ以外は【ハッチポッチ】ですね」
武装説明!
「全員右手武装は安価なライフル。【オンボロ】は他の装備変わりません。
【ハッチポッチ】はカラスさんの機体だけレーザーブレードを装備。
肩に至っては何も持ってませんね」
はい。
貧弱な武装ですね。
「【オンボロ】のローラーは損耗が激しすぎるので外しています。
この前の機動で全部すり減りました。意外と高いんですねアレ」
はい。
これの貧乏武装で塔の攻略をしていきます〜。
さて、あちらの塔を御覧ください。
植物の生育具合と周囲の設備展開具合からして、結構時間が経ってるね。
年代物ってほどじゃないけど、最低1年は放置されている塔なんじゃないかな。
流石に他の傭兵も戦争で疲弊してたし、近場は選べなかったねー。
でも2つ同時攻略出来るくらい近い塔があって良かったねぇー!
ま、ドラゴンなんて大物そんな出会うわけじゃないし大丈夫でしょう!
居たとしてもコマンダーが徴収したと思うのよ。
だから大形スクラップは居ないか、居ても弱いやつという目算だね。
「目算でしか無いですね。本当にドラゴン居たらどうするんですか」
その時は塔の攻略を諦めて増援を呼ぶしかないな。他の傭兵に協力要請を出してもいい。
出来ない時は出来ない、って言い切るのも重要だぜ。
特にドラゴンなんか放置できないだろ。
「まぁ道理ですね」
期限は三日!
ドワーフどもとセドリックは合わせて別の塔を攻略中! つまり増援無し!
補給も無し! 弾薬も無し! 修理キットも各自一個づつ!
機体も武装も貧弱! 新人二人!
自信はありますかー!?
「ごめんなさい無理です」
「すみません許してください」
「機動力欠けた【オンボロ】とか一般機とあまり変わりないですね。なんとかしますけど」
コテツはともかく、メイドさん達は自信なさげだね。
いいかい?
俺たちは持ってる手札でなんとかしなきゃいけないの。
そして教えるって言った次第もあるし、悪いけどハードモードでやらせてもらう。
というかお金ないの!!
まともな武装積めるんならそっちのほうが楽だわ!
だからこれでやるしかありません! 諦めて!
「「えぇぇーそんなぁー」」
操作説明は特にしないよ。動かしてた実績あるからね。
さて。傭兵として君たちに覚えてもらいたいことは一つ。
コアフィールドを信じて、”攻撃を避けるな”。
下手に動くより、構えて動かない方が被害は軽減できる。
機動に関しては慣れが必要だ。それにかまけると攻撃が疎かになる。
最悪防御するなら攻撃をせずに、立ち止まって、構えて、守れ。
そして他の味方を頼れ。
それが初心者としてはベストな行動だ。下手に動くな。
機動兵器だから最終的には機動して被害を軽減しなきゃいけない。
だが最初から難しいことは要求しない。防御する事に割り切れ。仲間を信じろ。
コテツは──なんか別にいいや。
「扱い悪いですね」
騎士団長相手に平然と機動戦してた奴に言えることは無いよ。
距離取っててもレールランチャーを回避出来るのは、普通に上級傭兵扱いだよ。
そもそもね。
上下方向含めた、”三次元の機動”が出来る傭兵はごく一握りだからな。
ベテランどももタコ野郎も機動は”横”に限定されてるんだぞ。
騎士ですら、空中戦が得意なエリシア嬢くらいじゃないか?
【ミサイルパレード】は武装を誘導弾に限定しているおかげで、攻撃力は火器管制システム任せなんだよな。脚に近接武器ついてるが補助的だし。
「そうだったんですか、しまったな。
カラスさんが出来るもんだから普通に出来るものだと」
なんか隠すつもりだった?
悪いが俺の中では最低でもセドリックより上だ。
だいたい【飲んだくれ傭兵団】と同格の扱いとさせてもらうからな。
「ですね。どうやら厳しい労働が待っていそうです」
残念、目論見は失敗したな。
さて。説明に戻るぞ。
武装が貧弱だとはいえ、ギアは強力な兵器です。
そもそも四肢が動くなら、ギアは小型スクラップ程度ならば殴りあって勝てます。
武装流用も出来るしね。最悪無手を想定していたけど、ライフルが余ってて良かったね。
格闘戦をしろとは言わない。まずは射撃を当てることからだねー。
【グラスホッパー】に1発も当てられなかったからな、君たち。
だからまずは、ライフル使って塔の周りのスクラップを倒す!
そこから、使えそうな武装をひっぺがす!
簡単! 武装増強!
「皮算用ってこういうことを言うんですね」「無計画です」「行き当たりばったりです」
だまらっしゃい! 分かってんよそんなのは! でもお金が無いの! 仕方がないんですよ!
狙い目はライフルマン! あいつの砲は確実に使い物になる!
さあ、略奪の始まりだ!
続くんじゃ。
マジで第1部完、ってして一旦区切りをつけるつもりでした。
ですが、意外と読んで頂けてるのと、低予算貧乏廃棄塔攻略なんて面白い企画思いついちゃったので……
今回以降は本気で気軽なドタバタ節約バトルです。
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