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塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる  作者: 梅酒わいん
mission6:公開処刑阻止/第二セクター襲撃

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51話:撤退

 ──やったか!?


【ハルバード】のランサーの突撃が直撃した。

 その穂先は【ナイト・オブ・シャベル】の左肩を貫通して、突き刺さっている。

 分厚い装甲により引き裂くまではいかなかったが、腕は既に力なく垂れ下がっていた。

 最低でも、もう両手でシャベルを振ることは出来ないだろう。


 だが、【ハルバード】も力尽きた。動かない。


 おそらく、本人が語っていたように操作の受け付け時間が過ぎたのだろう。

 騎士団長の声が響く。


「まだ、だ──!

 まだ──!


 ああ、くそ。


 そう、言いたいところだったが──

 だめだな、どうやらここまでのようだ──」


 騎士団長デュランはため息をつきながら、疲れ切った声で静かに呟いた。

 静寂。空気を吸い、吐いた呼吸音が静かに響き、言の葉を紡いだ。



「私の負けだよ」



 静かに、事実を確認するかのように、騎士団長デュランは宣言した。

 この声色は騙すつもりもなさそうだ。

 俺はゆっくりと警戒しながら【オンボロ】を動かし、近づいた。



「私を殺すかね傭兵。やるならば派手にやってくれ」



 ──やんねぇよバカ。お前のところの兵士との約束だ。


 “誰も死人を出さない”。

 こんなバカげた戦いで誰かの命を散らしていいわけが無い。

 敵も味方も、俺たちも、セドリックも、騎士も──

 誰もかもが無事に明日を迎えれるようにする。



 それが約束だ。



 お前のところの兵士の教育が行き届いてることに感謝しておけよ。


「そうか。そうだったか──兵士を引き上げさせておいてよかったな。

 ライトフレームを出さない約束はこっちとしても願ったり叶ったりではあった。

 兵士のギアを散らせたのは結果的に余計だったな。無念だ」


 通信越しに自嘲した声が聞こえる。


「ああ、すべての計画は終わった。


 ”勝敗がどうなろうと”別にどうでも良かった。


 私の仕事は終わった。


 あとはせいぜいセンセーショナルにやらせてもらおう」



 ──あのさ。

 ──お前、なにがしたかったんだ?



「答える義理は無いが──そうだな。

 発生したこと、実行したこと、願ったこと、望んだこと。

 これらすべてが思惑と違った、とだけは言い訳させてもらおう。


 半分くらいは塔に潰された父の計画が勝手に動いただけ、というのもある。


 私は、父の愚行の尻拭いだ。


 損な役回りをしたよ──本当に」



 諦観の声。

 誰かに深く語りたいが、それをした場合色々不利にもなるのだろう。


 うん、ちょっとあれだな。


 これ、しっかり聞かない方がいいやつだ。

 政治劇に確実に巻き込まれることになるやつだ、これ。



「傭兵。こちらが敗者の分際で悪いのだが、頼み事がある」



 今の会話の流れですげぇ聞きたくねぇタイプの頼み事だな。やだなぁ。



「君等にとっても損は無い提案だ」



 ──んだよ、面倒事ならば聞かねぇぞ。政治劇には巻き込むなよ。



「いや、簡単だよ。



 写真を撮ってくれ。



 逆賊を撃つ【ハルバード】、貫かれた【ナイト・オブ・シャベル】。



 ──”王を暗殺しようとした”愚かな騎士団長を止めた英雄。



 まさに理想の絵じゃないか」



 ──お前。まさか最初から。



「いいや、下策だよ。

 上策、中策を用意したがすべて君にご破算にさせられたからな。

 最低限の目的達成を期待できるプランだ」


 滑るように語るデュランは、そこそこ楽しそうにしていた。

 詳細は話さない。どうせ消えた計画だった。聞いたところで価値があるわけでもない。


「長過ぎた停滞は澱みを産みすぎた。

 枯渇した第二セクターの領主に繰り上げられたものだからな。

 反逆のひとつでもしたくなるというものだ。下策ではあったがな──」



 疲れた声で、騎士団長デュランは答えた。



「残るは憎まれ役の幕引きだ。


 貴様の勝ちだよ、イレギュラー」



 ああ、俺の勝ちだ。

 これで終わりにしよう。



「ああ、終わりだ──ああ、すごく、疲れた──」



 それは、こっちのセリフだぜ。バカ野郎が。

 そんな秩序に縋るくらいなら、いっそ壊したほうが手っ取り早いだろうがよ。

 のーみそで考えすぎるからこんなバカみたいなことになるんだ。


 もう少し楽に生きておけよ。


「そうか、そうだな。そうだったな──」


 騎士は静かに、納得を得た。





 この茶番の幕は、ついに閉じられることとなった。


 青い月が出た空は久々に澄んでいて、その光は俺達を穏やかに照らしていた。





 *





 ──【ハルバード】の加速に耐えられなくて気絶してたってマジ?



「うるさいな!!! 未熟者で悪かったよ!!!」


 セドリックはキャンキャンと吠えた。まぁお前さん結構傷だらけだしな。

 でも、実際【ハルバード】はこのまま置いていくしかないなぁ。

 エリシア嬢頼める?


「ええ、構いませんよ。こちらの後始末はお任せください」


 ああ、頼むぜ。

 しかし、この戦場、合計13機も居たのに、動かせるのはたった3機だけしか居ない。

 しかも残ってるのは増援組の二機だから、初期に居たやつは敵も味方も全員動かせない。

 なんて不毛な戦いだったんだ──


「アドリブで【オンボロ】動かすからでしょ。みんな本当に作戦守りませんね」


 コテツが愚痴った。

 はーい! ごめんなさい! わたくしは、なんの言うことも聞きませんでした!


「まぁ自分も、どうせカラスさんが乗るんだろうなとは思ってました。装備変えずに正解でしたね」


 ああうん。なんだよあれ、俺わざわざ取り外したのにさ。ほぼ装備一緒じゃん。

 ショットガンない程度しか変わらなかったぜ。


「あれ、用意してませんでしたか。おかしいな。グレネード用意してたはずなんですが」


 ──もしかすると、タコ野郎かドワーフに取られた?


 コテツがため息をついた。


「とりあえず【キャタピラ脚】起こしてください。社長は回収しないとダメですからね」


「弾薬費──修理費──あかん! わかっとったけど! なんの益もあらへん~!」

 なんかずっと計算してるやつが居るな。本当に起こす?


「放置していて良いこと無いんで。履帯剥がれた程度なら修理キットでなんとかなるんで動かすように急かしてくださいよ」


「使わへんよ! 酷い赤字なんや!! 損失削れるところ削らんとあかんのや!」

 うわ、めんどくせぇモードに入ったな。説得してよコテツ。


「嫌ですよ。さて、【飲んだくれ傭兵団】のみなさんは──もう脱出済みですね。

 手早くて助かります。【クロスガード】どうします?」


「というかグラハムくん、ここに居て良いの? ほとぼり冷めるまで要塞街から離れてた方がいいんじゃない?」


 スナイパーネキがなんか普通に会話に合流して来た。

 あのさー。ついさっきまで俺達バトってませんでした?


「いやーセドリックくんには本当に悪いな~って思ってたからカラス来てくれてほんと良かったよ~」


「いや、来てくれなくて本当にどうしようかと思った。

【ラスト・モンスター】の増援、タカメ女史とジャックに頼むつもりだったからな」


 セドリックが愚痴を吐いた。

 へー。まぁこの二人なら対スクラップ戦力として申し分ないしな。


 グラハム卿は答えた。

「私は、王の罪の裁きを受けるつもりだ。

 第七セクターの件は申し開きは無い。

 二方向から扇動された結果だったが、軽率で愚かな判断だった。

 あれは、私の責任だ。


 セドリック。【クロスガード】は持っていけ。お前を守ってくれる」



「グラハム兄さん──」


 ──あのさ、従兄弟同士で感動のやり取りしてて悪いんだけどさ。


 そろそろ撤退しないとマズイのよ。後始末もあるからグラハム! お前も来い!


「なっ! おい! 貴様何を勝手に!」


 知るかよバーカ! 面倒増えたのは元はといえばお前のせいなんだからな!

 せいぜい後始末全部やってもらうぞ! 下っ端としてこき使ってやる!


 スナイパーネキ! あと頼むわ! 適当にいい感じにやっといてくれ!


「なにそれ雑すぎじゃない!? 酷いよ~! まぁいいよ、いい感じにやっておくね~☆」


 うわ、なんか余計なこと頼んだかもしれない。めんどくせぇ~。

 まぁいいや。



 おまえら~! 撤退だ撤退! ダラダラここに居る理由ねーんだから帰るぞ!



 ちゃんと帰るまでが襲撃だからな~!



帰るまでが遠足のノリ。


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