47話:異物
元ネタ作品の伝統的なセリフで終わらせたかったのでちょっと短めです。
ただし全部盛りです。
「騎士団長は味方やで」
話は襲撃前に遡る。
それは会議中の前提条件のすり合わせの際の発言だった。
【バスティオンキャリア】の会議室でタコ野郎が衝撃の一言を言った。
グラハム卿──この時点では名前を知らなかったが──も告げた。
「ああ、私も騎士団長に保護されていた身でね。
今回の作戦に加わるように告げられた。
騎士機である【クロスガード】も用意できる。
相応の戦力として役に立てるのは約束しよう。期待していてくれ」
「情報たんまり仕入れることでけたし、あちらさんの騎士機は動かさんって確約も貰えたやで!」
コテツは疑った。
「信用出来るんですか、確かヴァレリアン卿と敵対派閥ですよね」
顔分からん貴族(グラハム卿)が叫んだ。
「団長を疑うのか! 不敬だぞ! 清廉潔白で公明正大! 騎士の中の騎士だ!」
タコ野郎が諌めた。
「あー、落ち着けや。塔のアレで鉱石貴族、親父さんやな。
それが死んだ関係で一気に当主になったんやと。
敵対していたのは親父さん世代が険悪だったからやから遺恨はないんやて。
元々騎士サマの部下やったらしいしな」
コテツは訝しみながら納得した。
「わかりました。ならそれ前提で作戦を組みますよ」
──ふーん。
まぁ、そのあたりは任せるよ。調略とか俺無理だし。
騎士が出てこないなら、それに越したことは無い。
強いやつと無理に戦う必要は無いだろうよ。
ま、騎士団長となんか戦うこと一生無いだろうさ!
はははははは!
*
「騙して悪いが──秩序のためだ。犠牲となってもらおう」
嘘つき!
【ナイト・オブ・シャベル】がその背丈ほどもある大きさの超大型シャベルを、両手で振りかぶり、シャードブースターを吹かせ、瞬時にこちらへと疾駆した。
接近戦なんぞさせるか! デュアルグレネードで迎撃──!
爆発。
避けもしないだと──!
爆炎の中から姿を再び表した【ナイト・オブ・シャベル】は、両肩の”大盾”を展開して防御していた。
グレネードの直撃を食らい、速度は少し落とせたが、有効なダメージを与えたとは言えないだろう。
被害の一切合切を無視し、【ハルバード】へと直進し距離を詰め続けた。
今から回避は間に合わない。
右腕ハードポイントの大盾で防御を──
──悪寒。
俺の生存本能が叫んだ。
思考を他所に、直感が勝手に手足を動かす。
”前進”だ!
攻撃のタイミングを強制的にズラせ!
思考より先に行動が走り、後から納得を引き寄せる。
引くのは悪手。シャードブースターを全開にし瞬発的な加速を実行した。
直感任せだが、突進による盾撃ち!
相手が振りかぶったその瞬間に大盾をぶつけ、その一撃を不完全なものへと変えた。
そしてシャベルの一撃は不完全に振り下ろされ──
衝撃。
コックピットが激しく揺れる。
瞬間的な加速度を内臓に感じた。
【ナイト・オブ・シャベル】の一撃は、体勢を崩されるほどではなかった。
しかし、重量機である【ハルバード】で大盾で受け止めたにも関わらず、衝撃を殺しきれず浮き上がるように吹き飛ばされた。
着地。転倒したら追撃が来る。
バーニアスラスターを制御し、第二セクターの硬質な岩盤の地面を削りながら、砂埃を巻き上げつつ大きく後ずさる。
確認とばかりに、見てみれば【ハルバード】の頑丈な大盾に、派手な亀裂が入っていた。
今の不完全な一撃ですらこの威力──!
実感として、その圧倒的な膂力に戦慄する結果となった。
「そこの傭兵」
【ナイト・オブ・シャベル】からの声が響く。
「なぜ貴様が【ハルバード】を操れるかは知らない。
だが”第七セクター”から邪魔をしてくれた礼を、しなければならないとは思っていた」
第七セクター。
今の状況に一切関係が無いそれは、俺とこいつとの関係を明確にさせた。
──“黒幕”はこいつだったのか。
一番の違和感は、グラハム卿がどのような論理で戦いを始めたのか。だった。
なんのことはない。
第二セクターの”王”が背後に着いているのならば、簡単に支配者の椅子をすげ替える想定がされていたのだ。
あの時点では騎士サマと比べ、貴族としての格は上──
継承権の正当性に対する意見封殺すら可能だったのだろう。
──俺が勝たなければ、の話ではあったが。
そもそも、第七セクター襲撃において、十機もの正体不明のギアが存在していたこともおかしかった。
タコ野郎の扇動も結果としてはあっただろうが、そんなもの、簡単に手に入るわけでは無い。
しかし、騎士団長。
あまりにも簡単にギアを手に入れることが出来る立場の人物が支援していたのであれば、十機程度の数を揃えるのは造作もないことであった。
ヴァレリアン卿への情報妨害もそれの延長線上の行動か?
疑念は尽きない。答えなんて出ないだろう。
だが──
全部だ。
最初から、全部。
スクラップである指揮官とは別の黒幕。
この一連の戦いを引き起こした張本人が、目の前に居た。
その黒幕が俺へと語りかけて来ていた。
「傭兵。貴様は常に私の前に異物として現れた」
──へぇ、異物か。なかなか邪魔者だったらしいな。
「ああ、邪魔で仕方がなかった。
計画上でも──心理上でも、だ」
両肩のハードポイントに取り付けられた”二門”の稼働式の大盾を”開門”した。
そこから両肩部に”二門”のレールランチャーが顔を出した。
【ハルバード】にも積まれている、万能兵器と称される程の武装だ。
要求出力の問題さえ無視すれば、威力、速度、精度、射程、それら全てに優れた傑作武装である。
それが、二門。
搭載し、稼働し、機動している事実だけで、【ナイト・オブ・シャベル】の馬鹿げた出力が理解できる。
莫大な出力を前提とした圧倒的な膂力、堅牢極まりない重装甲、出力任せの砲撃力。
デカく、硬く、重く、強い。
シンプルさ故に最強。
それが【ナイト・オブ・シャベル】の姿であった。
「秩序を乱す異物よ」
秩序、秩序か。
俺とお前が考える、”ソレ”はだいぶ違いそうではあるな。
こいつは何を求めている──?
これが秩序を求めた行動か──?
戦いを呼び、裏切り、暗躍し、操り、支配を目論んだ。
なんて強欲な黒幕だ──と言いたいところだが──
淡々とした言葉からは熱を感じない。
“成すべきことを成す”
それだけを考えているような、温度の無さを感じた。
「第二セクターの”王”として、裁きを下そう」
マズイ、正当性はあちらに完全にある。
俺たちは第二セクターの襲撃者だ。それには疑いは無い。
初めは、この騎士団長そのものが上手く処理してくれるはずだったのだが──
完全に約束を反故にされたようだな。
この現状、いくら喚いたところで裁定は覆らないだろう。
そして、地面に再び刺された超大型シャベルの柄を持ち、騎士団長は宣言した。
「──イレギュラーは排除する。私はそう判断した──」
【ナイト・オブ・シャベル】がその瞳に暗い炎を灯した。
その溢れ出た闘争心を抑えきれていない。処刑の命令をただ待ちわびていた。
「騎士団長デュラン、【ナイト・オブ・シャベル】。障害を排除する」
一瞬の静寂。
爆音の前の小休止のように、戦場の音が止まった。
騎士団長デュランは俺へ、その言葉を告げた。
「 消えろイレギュラー! 」
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