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塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる  作者: 梅酒わいん
mission6:公開処刑阻止/第二セクター襲撃

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44/60

44話:困惑

よくあるロボットアクションで「なんで近接武器を使うのか?」の答えです。


 今更な話だが、標準的なギアとアームズは近接装備を搭載している。


 特にアームズなどは顕著であり、莫大な出力から繰り出されるエネルギーを利用するか、膂力を頼りにした武器を必ずと言っていいほど装備している。


 理由としては歴史的な経緯もいろいろあったのだが――

 根本の原因は単純だ。


 射撃武器だけではスクラップもアームズも倒しきれないからである。


 機械生命体であるスクラップは、銃弾を打ち込んだところで致命傷になる訳ではない。

 弱点を理解しないまま、銃を乱射したところで倒すことは難しい。

 体力を消耗させることは出来るだろうが、大型スクラップなどは倒れはしないだろう。


 射撃武器はどうしても発射機構の質に左右されてしまい威力には限界がある。弾薬も有限だ。


 スクラップを倒し切る攻撃力を備えることも出来るが――取り回しか、エネルギーか、コストのいずれかを犠牲にする必要がある。あまり現実的では無い。


 ギアに対しても同じことが言える。

 なにしろギアは防御力の高い兵器だ。

 それはほぼコアフィールドを由来としており、”静止”状態で防御姿勢を維持するのが最も防御力を高められる。


 具体例を出すと――

 構えて動かない【オンボロ】に対して、【キャタピラ脚】のグレネード群を全弾ぶち込んで、倒せるかどうかは多分ギリギリだろう。


 特段装甲が分厚い訳ではない【オンボロ】ですらその想定が成り立つ。

 実際には近接機が盾を持ってくることを想定しなければならない。

 盾を持つ鎧機(アームズ)に対して射撃戦をしたところで、互いに弾薬を無駄に損耗するだけの結果になりうるだろう。


 そのため、防御姿勢を取らせ続けないための近接武器の存在が重要視されているのだ。



 故に、騎士は機動と近接戦闘の訓練を最重要視していた。


 *


 剣筋の残光は、戦場ですら美しさを感じる軌跡を描いていた。


 目の前の騎士は近接戦において相当の実力を持つと感じた。容易に誘導弾を切り払った実績もある。



 騎士グラハム。

 第七セクターの戦いで繰り広げたその戦闘力に、俺は疑いを持たなかった。



「遅参した。状況はモニターで確認済みだ!エイプは任せて盾を取りに行け!」



【クロスガード】は駆け出した。

 肩に装備した誘導弾を単発でティラノへ射出。

 そのままシャードブースターを吹かせ横に急速に機動し、エイプへと素早く接近した。

 セドリックから意識を切り離し、両スクラップに対処しようとしている。

 その行動は効果的に働き、誘導弾に被弾したティラノは怒ったかのようにオートキャノンの照準を【クロスガード】へと向け、斉射した。


 グラハムが駆る騎士を捉えることは出来ず、背後の地面を破砕し続けた。

 エイプは跳躍、接近する【クロスガード】を迎え撃つように飛びかかった。


「猿め、私に歯向かうとは!落ちて貰う」


【クロスガード】は手にライフルのような武装は持っていなかった。手に収まるサイズの大型の拳銃二丁を所持しており、機動しながらエイプへと正確に射撃。空中にいる猿をたたき落とした。


 騎士が持つ武器にしては補助武装でしかない拳銃だが、その装備の意図は即座に判明する。


「切り刻む――!」


 左腕のレーザーブレードは冷却中で使えない。

 ならばと言わんばかりに”右腕”のハードポイントに取り付けられた光の小刀を展開した。

 レーザーダガー。

 威力は低いが取り回しに優れるそれで転落したエイプを、宣言通りに切り刻んだ。


 一、二、三、四、五撃。


 機動を絶やさず、オートキャノンを回避し、エイプへの誤射すらさせながら、循環液すら焼き尽くす熱線の乱舞で手早く止めを刺した。



 強っ。



 記憶より遥かに強いぞこいつ。


「ふん。愚鈍な汚らわしいスクラップめ。セドリックに手出ししようとしたその罪、あと百度切り刻もうとも足りん」


 記憶より性格が悪いぞこいつ。



 *



『ヴァレリアンよ』


 王は騎士へと声を掛けた。

 既にこの部屋には二人だけしか居ない。



『私の白濁した眼には何も見えぬ、世界などもはや私にはとうの昔の記憶しかない』



 王は視力を失っている。

 何故か全てを知覚出来ているが――

 実際にその眼からは光しか入ることはない。


『故に問おう、ヴァレリアン』


「はっ、なんなりと」


 即座にヴァレリアンは膝をつき、王の言葉を待った。

 何を聞かれるのだ、王は――




『――やり過ぎではないか――?

 私の時代ではもう少し、弱かったような――』




「は?」


『竜は、無い。流石にやりすぎだ。

 やはり記憶だよりにやるべきでは無かったな――』


「は、はぁ。手配そのものは私は関われませんでしたので――」


『次、やる時はもう少し弱くするように。

 いや、もうやるべきでは無いか――』


 ただ。そう前置きをおいて王は呟いた。


『騎士セドリック――

 刑の受刑者本人が申し込んだことではあったがな――』




 *



 投擲した【ハルバード】の盾を回収し、それをティラノとセドリックの間へと突き刺し、立てた。

 これで流れ弾をかなり防げる。突撃さえ防げば守り切れるだろう。


 あとはティラノを倒せば一段落だ。


「――本当に【ハルバード】を動かせるのだな貴様」


 お。この緊迫した状況で雑談かい?

 余裕あるね。早く突っ込めよハブられ騎士さんよ。


「ハブられ――辛辣だなッ!」


【クロスガード】は駆けた。俺も【ハルバード】を機動させる。互いにティラノを挟み込むように左右に移動し、セドリックへの突撃を防いだ。


 ティラノはオートキャノン三門をばらまいた。

 狙いがかなり荒い。

 ――どうやら内部は結構”ダメ”になっているようだ。

 捕らえて訓練に使われていたのだろう。重量以外は見掛け倒しかな。

 鉤爪と尾に気をつければ問題なさそうだ。


 まずは牽制。

 ショットガンとデュアルグレネードを撃ち、中距離で制圧する。【クロスガード】も誘導弾を撃ち、体力を削る選択に出ている。

 俺の方を向いたな。火力が高いのは間違いなく【ハルバード】のほうだ。


 受け止めてやるよ。

 ブーストランサー、点火。


 加速。

 一気に接近し、更にシャードブースター、バーニアスラスターを全開にする。


 この装備は単純極まりない武装である。

【ハルバード】の全推力を加速に回すことで一点を突き抜ける、騎士の誉れとも言える豪快な突撃槍だ。


 ティラノは対応してオートキャノンで【ハルバード】を撃った。しかし半分ほど大型槍に弾かれ、ほとんど減速することは無かった。この程度じゃ止まらねぇよ。


 衝撃。


 ティラノの左肩から腕にかけて半身を貫き、こそぎとり、そのまま突き抜けた。


「っち。生意気だな。騎士の武器を傭兵が使いこなすな」


 追撃。【クロスガード】が右腕をオートキャノンごと、後ろからレーザーブレードで叩き切った。

 そのまま即座にレーザーダガーを起動。

 背中を刺して、刺して、刺して、切って切って素早く離脱し、通り抜けた。

 一連の動作が極めて迅速だ。本当に近接戦強いな。


 一瞬で【ハルバード】と【クロスガード】の左右の位置が入れ替わる攻防だった。



 ――やったか?



 ティラノは、轟音立てて、崩れ落ちた。

 ふぅ。これで一息つけるぜ。



 *



 寝てら。

 治療中のセドリックは呑気に気絶していた。

 まぁ、いいよ。あとはお前を拾って逃げるだけだからな。


『簒奪者よ』


 コロシアムの中へと機械の声が響いた。


『私から言葉を送ろう。見事だ。

 ――この身体では拍手は出来ないな。

 ヴァレリアン。私の代わりに盛大な拍手を送れ』


 “王”が、俺たちへと労いの言葉を掛けてきた。

 遅れて、ぱちぱちぱちと緩い拍手が聞こえた。

 なんか騎士サマ完全に手玉に取られてるな――


『試練は突破された。騎士セドリックの罪はこれで償いを得た。自由となるであろう――』






 え?





 いいの?


『――』


 思わず声に出てしまった。

 え?いいのか?


『どうやら、何か、齟齬があるらしいな――』



 なんだか、互いに困惑している。



『そうか。理解した――』



 エルドレイン王は機械音声で俺へと言葉を投げかけた。



『名誉刑である【ラスト・モンスター】は増援を認められているのだが、もしかすると誰も知らなかったのか――?』




 おおおおーい!


「文芸:アクション」に戻しました。もうブレないようにします。


評価、ブックマーク、そしてたくさんのリアクションありがとうございます。

すごくモチベーションに繋がっています。

よろしければご意見、ご感想気軽によろしくお願いします~

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― 新着の感想 ―
わろた、確かに設定的には増援ありでもおかしくないな あと王様わりとうっかりだなw
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