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塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる  作者: 梅酒わいん
mission6:公開処刑阻止/第二セクター襲撃

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41話:正義

マジでこの回、書いてて本当に大丈夫かと思いました。僕は正気です。

 軽い。


 大きく、重武装で、重装甲である【ハルバード】を動かして、俺はそう感じた。

 実際に軽いのではない。


 機体を駆動させた時の、トルクの圧力が違った。

 歩みを進めたときの、地面に沈み込んだその膂力に驚いた。

 シャードブースターを軽く吹かせたとき、その巨体は浮き上がった。


 出力が大きい。

 今まで乗ってきたギアと比べ物にならない、圧倒的パワーを感じる。


【ハルバード】の三基も連なった心臓は低く唸り続ける。

 その圧倒的なパワーを、道理を知らぬ搭乗者である俺へと、ただただ示した。


 これが、鎧機(アームズ)

 これが【ハルバード】か。


 この機体ならば、いくらでも戦い抜ける。

 俺はそう確信した。



 *



 コテツの作戦はシンプルである。



 正面から突撃して、大暴れして、セドリックを助けて、離脱する。



 バカだろ。



 常識的に考えれば、自殺行為以外の何者でも無い作戦である。

 なにせ、前提としている戦力比はほぼすべて判明していた。



 一基構成のギアを六機編成としたものが十隊存在しており、合計編成数が60機。

 二基構成の騎士機が二機。

 三基構成の騎士団長機が一機。


 騎士機が異常に少ないが、理由は判明しているので割愛する。


 対してこちらの機体は――

 三基構成の【ハルバード】が一機。

 名前知らん貴族が二基構成の機体を一機調達出来るらしいので一機。

 それ以外は一基構成のギアが七機。


 比較するのも馬鹿らしい戦力差だ。勝負になりはしない。

 ジェネレータの個数を単純に戦力換算する計算をするのであれば、それだけで五倍以上の戦力差が存在する。

 出力に差があるスクラップとの戦いと比べて、比較にならないほどの”勝ち目が無い”戦いになる。



 だが。

 俺達には勝算があった。



 “正義”という都合の良い力が。

 俺達を勝利へと導いてくれる――




 いやでもマジで本当に嫌なんだよな。

 やりたくねぇ~~~!



 *



「敵襲!敵襲~~~!」



 サイレンが鳴った。

 バカどもの陽動作戦が開始された。



「ガハハハハ!敵は騎士団!こちらは貧弱な機体!最高じゃねぇか!」

「死地だ!死地がやってきたぜぇ!月の女神よご照覧あれ!」

「ふひひひひ!マシンガンの弾のおかわりはいくらでもあらぁな!」

「おお!我らがグレネードよ!地上を業火で焼き尽くすときが来ましたぞ!」



 危険人物×4達の機体が駆け、銃弾、砲弾、延焼弾、誘導弾をあちらこちらにぶっ放した。

 第七セクター襲撃事件の際に運用されていた機体は、その時と性能に代わりは無い。


 だが、中身が圧倒的に違う。


 そこら辺を歩いているような領民やメイドと、長年戦い続けていた歴戦の傭兵の動きが同等なわけが無い。

 こいつらの誰か一人でも搭乗していたのならば、あの防衛戦は遥かに苦戦を強いられていただろう。



 でもお前ら分かってる?

 俺達の方針は”誰も死者を出さない”だぞ??


 それをミスると大義名分を失う。

 調子に乗ってライトフレームに攻撃をぶち込むなよ。

 ギアと違ってコアフィールド無いから死んじゃうからな??

 

 「あーい」「ほーい」「へーい」「うーい」


 返事が緩いなぁ!?

 お前ら、絶対守れよ!?



 *


 【ハルバード】のシャードブースターを吹かす。

 その堅牢な威容は正しく俺に従い、全力で混乱の戦場を駆けていった。



 俺は、すでに起動しているギアの集団の元へと突っ込んでいった。



「なっ、【ハルバード】!? ヴァレリアン卿は処刑場に居るはずでは!?」

「盗まれたという情報があります! よもやこのような場所にいようとは!」

「盗まれたところで起動出来まい――まさか上位貴族の反乱――!?」

「ヴァレリアン卿には血縁が居ない――まさか盗難事件も上位貴族の陰謀!?」

「早く情報を回せ~!上位貴族の反乱の可能性あり!上位貴族の反乱の可能性ありだ!」



 説明ありがとう。誰が内通者かさっぱりわからん。

 だが、俺の情報を、そちらの部隊全体へと共有して頂きたい。



 この戦いは、電撃戦であり、かつ情報戦である。



 とにかく早く、そしてとにかく情報を敵側にぶちまける。

 誰が敵なのか、本当に味方なのか、ひたすらに疑心暗鬼にさせることが大前提だ。


 俺はタコ野郎から、とりあえずこいつらを叩けと言う指示が出ていた。

 このような状況でもこの部隊の隊長は裏切らないと言う話が出ているため、【ハルバード】の見せしめとしてぶっ飛ばす必要が有るからだ。



 ――いや、何かしらの私怨が混じっている可能性はある。評判が悪い隊長らしい――



 まずは初手、右肩のレールランチャーをぶっ放した。

 電磁イオンが砲塔を包こみ特徴的な快音を響かせ、電磁加速した弾丸を高速で投射した。

 それは即座と言って良い速度で着弾し、隊長機と認識している機体へ容易く直撃した。


 速っ。


 防御も回避も間に合わない超高速の弾頭は、隊長機とされているギアの右腕を貫く。

 出力と機体サイズが足りるのならば、載せない理由が無いと言われる程の武装である。

 その威力を俺は”体感”した。こりゃ強い。


 そのまま【ハルバード】は加速し接近しながら右手のヘビィショットガンを放つ。

 これそのものは【オンボロ】でたまに使っていた武装であるが、とにかく取り回しが良い。

 大量の散弾を放つ武装だが、中距離程度の位置でも充分な効果を発揮する。

 ドラゴン戦の時は整備のために売ってしまっていたからな。久々に使うなぁ。


「わああああ!」


 命中。

 レールランチャーの衝撃が抜けない隊長機は、そのまま散弾の一撃で脚を止めた。

 弱い。機動兵器に乗ってる身で機動を切らすな。


 更に加速。左手に構えたブーストランサーを使用する。

 ゴブリン戦の時は、囲まれたグレムリンを蹴散らす事にしか使っていなかったが、この大型槍には持ち手の後ろ、手の甲に位置する部分に増設ブースターが装備されている。


 点火。


 莫大な速度でそのまま突撃する。コックピットからずらして、隊長機の腰あたりに直撃させた。

 突き刺しながら加速で前方へと押し込み続け、隊長機を引きずり続ける。

 そしてその推力だけで腰部を割き、機体を上下に引き裂いた。


 上下に分割した隊長機の中身は多分気絶したのだろう。楽勝。



「うーわぁ――」

「マジかぁ~、一瞬で倒せるんかぁ――」

「囲んでる状況だけど全然勝ち目感じない」

「ヴァレリアン卿じゃないから勝てるかもとか思ったけど、そんなことねぇわ」

「中身、どうあがいても上級騎士クラスだぞ」



 さて、なんか色々聞こえてるが――



 やる?



「うっ!機体の調子が!動けない!」

「ぐっ!戦争での後遺症が!操作出来ない!」

「嫁さんにギャンブルでの借金がバレるのを防がなきゃならんのだ!」

「俺も浮気がバレるだけはなんとしてでも!」

「タコさんに借金してるんだ俺!」



「「「「「うわー!もうだめだ~!」」」」」



 そっかぁ。

 お前ら全員誰かに弱み握られてんのね?

 おっけーおっけー。頑張って負けた偽装しとけよ~。



「「「「「はーい!くたばっておきまーす!」」」」」



 情けない奴らだなぁ――

 俺はこいつらを放置して戦場を駆け抜けた。




 *



 月が登った。

 世界が照らされていく。



 つまり、セドリックの処刑が始まる――



 俺たちはセドリックの居場所を突き止めることは出来なかった。

 この扱いならば雑に扱われそうなもんだが、政治的に重要になってしまったセドリックを丁重に扱わなければならなかった。


 なぜなら、セドリックの処刑方法に理由はあった。


 その、処刑場所が分かっていた俺たちは、処刑が実行されるその時しか救出するタイミングは無いと悟っていた。


【ハルバード】に余分に持ち込んだ、増設モニターで通信を拾う。

 要塞街の公的放送局が持ち込んだカメラから映し出された”ソレ”はセドリックがどのように処刑されるかを映し出していた。



 そう、これは”公開処刑”だ。

 それが意味するところ、すなわち――



 この処刑は、エンターテインメントだ。




【ラスト・モンスター】



 錆びたライトフレームを渡され、捕らえられたスクラップと決闘をする由緒正しき戦士たちへ捧げる処刑法である。



 騎士サマと、上級貴族の面々が見守るコロシアムの檻の中にセドリックは座っていた。

 戦う意思はある。たとえ絶望的な戦いだろうが諦めはしない。

 そのような決意をした顔で、その時を待っていた。




 時間が、無い。




 *




「止まれ! ヴァレリアン卿の【ハルバード】を盗む狼藉者め! 何用だ!」


 来ちゃったぁ。はぁー。


 俺は処刑場の前、コロシアムまでたどり着いた。

 ここは第二セクターでの騎士団の詰め所の一つであり、多数のギアが配備されている要所である。


 ここに、セドリックが居る。


 しかし、俺の眼に見えるだけでもここの防御は堅牢であり、ギアの数は10を超えていた。

 その銃口は【ハルバード】に向けられており、いつでも銃弾の雨を浴びせることが可能だった。



「狼藉者め!名を名乗れ!」



 この指揮をしているやつは内通者確定である。

 ここまでのやり取りが予定通りなんだもの。



 本当にバカみたいな作戦なんだよ。



 でもな。今、こいつらは正義ではない。

 理不尽な権力に従い、正義を失い、仲間を見捨て、道徳心の欠片もない行動をしている。

 士気なんてものが一切存在しない、ただ命令だから従う程度の弱い心で戦っているのだ。



 だから、俺はこいつらの”正義”を突く。



 俺は今から、ここに居る全員にとっての、”絶対の正義の象徴”そのものへと変貌する。

 こいつらが”騎士”である限り、こいつらの心に”正義”が残っている限り。

 “正義の象徴”へと変貌した俺を止めることは出来なくなる――!




 だけどさぁ。

 本当に誰がやりたがるんだよ、こんな”役”。


 ああ、本当に。

 理不尽をされたのならば、馬鹿にし返すのが一番”効く”。

 そんなことはよく分かっている。


 気合を入れろ。セドリックを救うためだ―――

 俺のすべてを捧げろ――!





 お前らに”絶対の正義”を突きつけてやる!



 いくぞ!!!!






『名乗りましょう!


 理不尽なんて断じて許さない!


 ~絶対正義☆灼熱革命~!“シグナール卿”ただいま正義執行に見参!


 正義を前に立ちはだかるものが居るならば、かかってきなさい!』




 空気が固まった。




 戦場が、無音となった。




 俺はどうやら時間も止めることが出来るらしい。





「は?」





 うん。俺もそう思うよ。

 大丈夫。君は正常だ。



 はは。



 ――誰か俺を殺してくれ――




「うわーもうだめだー!」



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