39話:決意
ロボットアクション作品で会議だけで一話使う暴挙
処刑の日時と場所、そして方法が決まった。
場所は第二セクター。
資材採掘を担当する上位セクターの中では、唯一他と隣接していない”離れ小島”である。
要塞街の場所の選定には、この第二セクター地下にある鉱石群の存在が大きかったらしい。
最初は塔の存在に頼らない鉱石発掘と輸出で栄え、そこから発展したのが要塞街の歴史の始まりである。
だが、それも過去の話。
流石に数百年も経てば当然資源は枯渇し、僅かな希少鉱物の採掘、石材の切り出しを除いて、広大な土地は資材置き場程度の意味しか持たなくなり、物流の倉庫程度の扱いに寂れてしまった。
しかしながら、人気がなく、土地に価値がなく、複雑で広いだけならば、逆に利用価値があった。
軍事演習場である。
つまり、要塞街の騎士団本部が置かれた防衛・攻撃を担当する第三セクターに変わり、第二セクターは"反撃"を担当する重要な「砦」へと変貌した。
セドリックの処刑は明朝、そこで行われる。
つまり、俺達は騎士団の砦へと、殴り込みに行かなければならない。
*
「正面から突っ込んでください」
は?
俺達は【バスティオン・キャリア】の会議室に集まっていた。
ぶん殴っておいたタコ野郎。何故か仕切ってるコテツ。情報集めに奔走していた”デカ耳”。【飲んだくれ傭兵団】のドワーフども。コテツの手伝いをするメイド。知らん顔の貴族――誰?
それらの面々が集まる会議室で、作戦の相談をしていた。
「時刻は明朝、つまり作戦を練り切る時間はありません。騎士エリシア嬢をお借り出来れば出来たかもしれませんが、こちらは戦闘はプロ揃いですが軍事は素人なので不可能です」
コテツが淡々と告げた。
「無謀なんで冷静に考えたら絶対止めるんですが、カラスさんがやると言っているのでここに居る全員巻き込みます。というか社長は責任とってください」
「ワイはそんなつもりなかったんや〜!」
「軟体種族め、どの口が言う――」
苦々しい顔で知らない貴族が言う。だから誰だよ。
「ただ、”デカ耳”さんの情報、調略によるとそこまで無謀でも無いです」
「へぇ、士気が最悪でした。騎士たちにも反発が強く、全く統率出来てねーでしたぜ」
“デカ耳”が前に出て説明した。
「個人的に大きい”貸し”がある騎士には話を通してますぜ。少数であれば潜入すら可能でしょうよ」
情報屋の貸しとか怖いなぁ。絶対弱味にぎってるだろ。
メイドに地図を渡されながらコテツが続けた。
「潜入するメンバーの選定は後回しにするとして、【ハルバード】をお借り出来たのは大きいですね。権威を利用できます」
「待った」
顔知らない貴族が口を挟んだ。
「借りられただけでも凄いことだが――
――”そもそも【ハルバード】を動かせる”のか?」
なんかおかしいのか?知らん顔貴族。
「知らん顔――まぁ、いい。
【ハルバード】や上級騎士機には”生体ロック”が掛けられている。
上位貴族やそれの血縁でなければ指1本動かせん」
ふーん。
「なんだ、その反応は」
だから騎士サマ軽い感じで貸したんだな。
騎士サマ本人は処刑場へ、支配者側のメンバーとして出席予定だ。
だから、騎士サマ本人が動かさない限り、騎士サマの陣営には動かせる人物が居ない。
――つまり、他の上級貴族が盗んで動かした、の言い訳ができるってことか。頭いいなぁ!
「”動かせれば”の話だ」
よく知らん顔貴族が言った。
ああ、そうだな。普通はそうだ。
――だが、“俺は例外だ”――
「――まさか、貴様――ヴァレリアン卿の――?」
え、違うよ?
俺育ち、要塞街じゃないし。
そもそも、多分騎士サマより”年上”だし。
「「「「「は???」」」」」
なんだよその反応。
「んだ、騎士サマってよぉ、若いがガキこさえてもおかしくねぇ年齢だろうがよ」
「大きくても子供でしょうが、有り得なくはないですねぇ」
「で、それに比べるとよ、お前明らかにガキだろうが」
「なんたって酒飲ますのも良いのか最初考えたくらいだぜ?」
【飲んだくれ】どもがわちゃわちゃと喋り始めた。
いいだろ。別に。
傭兵には秘密が付き物だぜ。
「せやな」
「そうですね」
「俺たちはナンもねぇぞ」「ねぇ」「あります」「無いな」
なんかあるやつ居たな。
まぁ、気にしないでくれ。
俺は【ハルバード】を動かせる。その前提でいい。
多分!!
「多分じゃ困るやないか!後で試しとき!」
タコ野郎が素早くツッコんだ。
「不確かだな、こんなやつに負けたのか――」
貴族が嘆いた。メイドも同調して頷いた。
なんか戦ったことありました?
「で、話を戻します。
【ハルバード】は生体ロックの関係もあり、上級貴族しか動かせません。
しかし騎士サマには血縁が居ない状態――
つまり、存在しない上級貴族の負の象徴として機能します。
なので――」
コテツが一拍置いた。
手に持っていた書類を集めてトントンと机を叩いた。
「――”正義”を騙りましょう――」
――マジでお前、騎士サマの参謀出来るよ。
*
そもそもの話。
お前らを巻き込んだのは確実に俺なんだが――
いいのか?マジモンの反乱だぞ、これ。
「今更です?」
コテツが言った。ああうん。今更だよ。
「まぁ、待て。まずは俺たちからだ」
【飲んだくれ傭兵団】の面々は酒瓶を取り出した。
ゴトゴトとテーブルに置かれたそれは、テープで縛り付けて、開かないようにしている。
「俺たちは、断酒した」
――マジかよ。
【飲んだくれ傭兵団】の名に恥じぬ酒狂いどもが、酒を断った。
「次に飲む時は、セドリックの坊主も一緒だ」
「結局飲めませんでしたからねぇ」
「あの若造は男を見せた。俺たちの戦友だ」
「祝杯をあげにゃならねぇってことだ、つまりは――」
【飲んだくれ傭兵団】たちが俺を見て笑った。
「あの扱いに憤ってるのはお前だけじゃねぇぜカラス」
こいつらの不退転の決意を俺は思い知った。
「あっしはセドリック卿とはなんの関係もないですが、上級貴族には思うところありましてね。一泡吹かせられるならいくらでもお付き合いしましょう」
洒落た帽子を被り直して、”デカ耳”は言った。
頼むぜ、情報戦だとお前だよりだからよ。
「なぁに。旦那から受けた恩も、頂いた額も、こんなものでは返し足りませんぜ、便利に使ってくだせぇ」
深いニヒルな笑みで”デカ耳”は答えた。
続いて貴族は言った。
「私には誤ちと責任がある」
強い決意だった。
「私の身ならば最後に生贄にでもするがいい。だがセドリックは違う。彼はこんな目にあっていい人物ではない。生命に変えても救い出す――!」
歯を食いしばるような憤り、深い後悔。理不尽への絶望。
それらを込めた強烈な気迫と強い原動力。
覚悟は、俺へと確実に伝わった。
うん。伝わった、んだが――
だから、こいつ、マジで誰なんだろう――
その疑問に誰も答えることなくコテツが続けた。
「僕に覚悟は無いですよ。ミスったらほかの街へと逃がしてください」
お前さぁ――
「でもまぁ、カラスさんとタコ社長と地獄に行くなら面白そうなんで付き合いますよ」
「ワイ巻き添えやん!?」
「着いてきてくださいよ。巻き込みます。
というか、社長は確実に元凶の1人ですからね。
絶対に付き合ってもらいますよ」
「ワイが何したって言うんや!
アホ貴族に軽い情報流して騎士サマを上級貴族の席につかせただけやん!?
悪いことあんましてへんよ!?」
マジの元凶が何言ってんですかねぇ!?
「――おい、軟体種族。ふざけるなよ貴様」
なんか貴族もタコ野郎にキレてる。
タコ野郎に何かされました?
「まぁ、しゃあないな〜。乗りかかった船や!
全員乗せてドンブラコしたるで!逃げ道は確実に用意しちゃる!」
ああ、うん。逃げ道、というか船は確かに今乗ってるからな。
【バスティオン・キャリア】が接収でもされない限り逃げられるだろう。
「私たちにできることはありませんが、船を動かす準備だけは整えておきます」
「私たちには選択肢は無いのですからね。ですが選択肢があったところでお付き合いします。セドリック様は親戚でもありますし」
メイド達がそう言った。
君らは、なんというか変な立場だな。
「終わったらギアの乗り方を教えてください」
「貴方に教わりたいと思います、なのでこの船を動かせる準備だけして待ってます」
ああいいよ。終わったら教えてやる。
頼むわ。船を動かせる準備だけしておいてくれよ。
さーてと。うん?
――あのさ。コテツ。
「なんです?」
そういえば動かせるギア、あるの?
覚悟は聞いたけど、ドワーフどもとか機体全損じゃん。
派手にドンパチするにもギアが無いとどうしようも無いぜ。
「何言ってるんですか。こっちには襲撃の経験者がいっぱいいるんですよ」
俺はメイド達を見た。
ああ。だから呼ばれたのね。
「ガトリング工房に、”大量の身元不明の機体”があるじゃないですか」
あるわ。いっぱいある。
俺がぶっ潰した機体が、10機くらいあるな。
それもまだ半分くらい残ってたのを、この前見たわ。
「今度は僕らが襲撃者です。
――第二セクターへ襲撃と行きましょう」
襲撃だオラァ!
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