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塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる  作者: 梅酒わいん
mission5:指揮官再討伐

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29/59

29話:雷嵐

短いですが構成が美しかったのでこれで行きます。

前話も言いましたが、この作品はSFロボアクションです。

 塔の鼓動が聞こえた。


 再稼働!?状況が掴めない。

 ハレーはどうした!?どうなった!?


 俺の疑問と共に、指揮官が一瞬”戸惑った”。

 そして俺も、セドリックも、指揮官ですら、その動きを止めて空を見た。



 *



 空が陰る。月が隠れた。



 なにか、ポツリと降ってきた。


 雨だ。

 先程まで欠け月が見えていたのに、空が陰り、雨が降っている。


 いや。


 嵐だ。

 先程まで零れ落ちた程度の水気しかなかったのに、空は閉じ、嵐が吹き荒んでいる。



 塔を雷光が照らした。



 竜が叫ぶ。

 慄き恐怖し、逃げ惑った。



 空を雷光が照らした。



 竜に紛れてなにか影が見える。



 それを雷光が照らした。



【トライヘッド】だ。



 雷嵐の中。槍を携えたそれは静止したかのように空中に浮かんでいる。



 槍を掲げた【トライヘッド】は、雷の一撃をその槍に受け、竜に向かい投擲した。



 雷鳴が響き、一つの竜がその煌めきに貫かれた。



 *



 あまりの光景に完全に思考が停止した。

 ハレーは完全に主星の神話の世界に生きている。


 呆然としていた俺達に通信が入った。

 聞こえてきた呑気な声が、今が戦闘中であることを敵味方全員に思い出させた。



「あのさ~パーティまだ続いてる~?」



 スナイパーネキの呑気な声が聞こえてきた。

 雑音が混ざっている。


 正気に戻った【ドグウ】の光撃を俺達は必死に防御し、距離を離した。

 もう竜は”あれ”の対処を指揮官の命令よりも優先するだろう。


 超接近戦を続けた代償として【ガトリングクラブ】は脚部の半分を喪失した。

 跳躍はもう不可能で、あの速度はもう出せない。

 せっかく取り付けたライフルマンの砲も粉々だ。勿体ねぇ。


 そしてビームチェーンを使い続けたことによりエネルギー残量も怪しくなってきた。

【ガトリングクラブ】も息切れしている。少し休ませたい。


「僕が時間を稼ぐ、合流しろ!」


 セドリックが叫ぶ。

【エスクワイア】は右腕ごと半身の武装を喪失している。

 そのため、セドリックはそのまま接近戦を続け、注意を惹きつける判断を下した。

 先程までの状況より、遥かに防御に意識を割くことが可能になる。

 そのため【エスクワイア】の防御力ならば確実に時間を稼ぐことが可能だろう。


「わたしさ、旦那とのデートの待ち合わせに間に合ったことないんだよね~

 今日も遅刻しちゃった。許して~」


 なんだよそのテンション。

 緩い、あまりにも緩すぎるが――

 通信のノイズがひどい。声の輪郭がぼやけている。



 スナイパーネキは状況が悪いほどふざける。

 だから、俺は笑って答えた。



 これからラストダンスの時間だ。好きだろ?



「大好き~、エスコートお願い出来る~?背中貸して~」

 笑っている。だが、かすかに震えてる吐息が聞こえた。


 おうよ。

 俺の背中は広いからな。いくら足腰がダメになっても家まで帰れるぜ。

 そうしてシャードブースターの音と共に、上層まで上昇してきた【ニードルワーカー】の姿を見た。



 その姿は悲惨だった。



 まず、視認できたのはスナイパーライフルと右腕だけだった。

【ニードルワーカー】のコックピット部分と背面シャードブースター、右腕以外は全損している。

 そのコックピットも開けっ放しで、口と頭から血を流しながら笑っているスナイパーネキの姿が見えた。


「イメチェンだぜ~ドレスチェンジに時間かかっちゃった。

 女の子の着替えは時間が掛かるんだぜ~」


【ニードルワーカー】のコックピットにコードを這わせ、スナイパーライフルに接続していた。

 右腕に補助アームも取り付けられている。応急処置的に左腕だったものを利用したのだろう。


 残っている右腕はスナイパーライフルの保持を行う機構しか持たないはずだ。


 俺はシャードブースターで無理やり浮かんでいた【ニードルワーカー】を左のハサミで掴み、背中に載せた。



 ――行けんのか?寝てたら?



「こんな楽しいパーティで寝るの勿体ないじゃん。

 固定はなんとかするからさ、動けないからそこんところヨロシク~!」


 仕方がねぇな。機動は任せろ。



 *



「僕を向け!このクソスクラップが!何が!何が指揮官(コマンダー)だよ!」


 セドリックは激昂している。連続使用しすぎて左手のレーザーブレードは加熱状態(オーバーヒート)に陥り、出力が不安定だ。なんのエネルギーも出ていない瞬間もあった。


「お前らのせいだ!仲間を失ったのも!部下を失ったのも!」


 光鞭の一撃を逸らし、電磁障壁(ビームシールド)で受け止め、接近戦を継続する。

 エネルギーは形成されていない。

 このまま振りかぶってもなんの効果も発揮しない。

 だから【エスクワイア】は左腕を振りかぶって【ドグウ】ユニットをぶん殴った。

 装甲が削れた。


【エスクワイア】の左手の装甲が、だ。


【ドグウ】ユニットの硬質な装甲に、殴り合いを重視していない【エスクワイア】の拳で敵う道理はなかった。



 だが。

 道理なんてどうでも良かった。


 眼が輝き光撃を繰り出す。電磁障壁(ビームシールド)も連続使用で限界が近い。

 ならば、シャードブースターを吹かせ、前進。加速。

 左肩を前に電磁障壁(ビームシールド)を出力したまま肩部突撃(ショルダータックル)を繰り出し、【ドグウ】へぶち当たった。


 揺らぎ、歪み、ぱらりと割れた。

 しかしその身体は依然として健在であった。



「チクショウ――時間稼ぎ程度しか出来ないのか」



 光の剣(ビームブレード)の反撃を受け、ついに電磁障壁(ビームシールド)は限界を迎えた。

 弾け飛んだ斥力の反発により【エスクワイア】は吹き飛ばされ、瓦礫の山へと叩きつけられた。



 *



 ライフルマンの砲が取り付けられて居た位置に新たな"武器"を接続した。

【ガトリングクラブ】の背面に【ニードルワーカー】を載せ、再び戦域へと戻った。



「そういえばさ。たぶん私狙われるんだよね~。塔に入る前に指揮官倒したの私だからさ~多分恨まれてる~」


 マジ?それ先に言ってくれない?

【ニードルワーカー】出現と共に指揮官は確かにこちらを向いた。

 ハレーを遥かに凌駕した警戒レベルを感じる。あ、やべっ!


 弾け飛んだ【エスクワイア】に隙を晒すことを受け入れてすら、光の剣(ビームブレード)と目から発生する光線を連続で叩き込んできた。


 ――めちゃくちゃ恨まれてるじゃん!


 右手の光線鎖(ビームチェーン)で接続されている鋏で光の剣(ビームブレード)を逸らし、左手の鋏でスナイパーネキを必死で守った。



「あはははは!ごめん~☆」



 ――マジでどうすんだよ!コックピット開けっ放しだと本当に死ぬぞ!?



「なんとかするよ~」



 スナイパーネキは、開いたままのコックピットでよろりと立ち上がった。


 普段はまとめている髪は乱れ解かれ、嵐が吹きすさぶたびに風に靡いた。

 額から血が流れ、左目は血で覆われ塞がれている。


 だがメガネ型のコンソールは生きているらしく、右目のモニターは照準を合わせていた。

 何も操作デバイスを持っていないように見えるが、伸びたコードが首元へ接続されていた。

 神経接続だ――



 右手の指で、子供のように銃の形を作り――

 左手でそれをそっと支え――



「ばん」



 撃った。


 神経に繋がれた針子の腕は、その命令を違わず実行した。

 高速の弾丸は、吸い寄せられるように、指揮官の薄い瞳の中心を貫いた。


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